オーダーミッションNo.049【超巨大建造物強行調査】 CASE1「犬は駆けていく」
難易度: SSS 依頼主: アインベルター社 作戦領域: 重度汚染地域EF-01(AC3SLミッション「空挺部隊護衛」など) 敵対勢力: 不明 敵戦力: 未確認兵器大多数 作戦目標: 超巨大建造物の撮影及び輸送機の防衛 特記事項: 前払い報酬 200万Au
概要: アインベルター社営業担当のルスィエル・アインベルターです。 つい先日、この第9領域を外界から大きく隔てていた汚染地域の磁気嵐が消えたことは記憶に新しいかと思います。 その嵐が晴れた隙間より、我々は新たな地域開拓を行うことを決定しました。 この地域開拓する先で超巨大建造物を観測、調査するための人員を募集します。 現在確認している超巨大建造物は調査を行うには遠すぎて正体が不明となっています。 現地までの移動は我が社最新のAC用大型高速輸送機で赴きます。 遠距離からの観測では信じ難い程の未確認兵器の量を確認しており、中にはRAIJIN型と思われる大型爆撃機の自律行動も確認しております。 戦闘となった場合熾烈を極める事となるので、募集する人員は最低でも24名とします。 作戦は五段階を設定しており、建造物に接近まで輸送機の機上護衛を第一に、当該地区に到着後輸送機が着陸する場所を制圧確保する事が第二とし、着陸した後に調査必要分の時間まで輸送機を防衛が第三、離陸時の周辺領域の安全確保が第四で、離陸後の第9領域へ帰還するまでの護衛が第五となります。 調査したデータは全て輸送機に転送して保存するため輸送機の生存が最優先です。 OVA規定第6条第1種第1要項「クライアントの依頼条件に関する設定規定」の「生存確率5%以下の作戦行動で支払われる報酬額設定」に基づき、本作戦に参加する傭兵の方には一人800万Auの成功報酬と撃破報酬が付き、最大2000万Au支払われます。 大規模な作戦で名声と実績が得られるまたとない機会です。 皆様の参加を期待しております。
前払い報酬:2,000,000Au 成功報酬:8,000,000Au 撃破報酬:10,000,000Au(他の者より撃破数が多い一人のみ) |
「なにこれ、超怖い」
カルスキ・オフチャルがプロジェクターによってホワイトボードに映し出された情報を眺めて、おどけた様子でそんな事を言う。
シンプルなミーティングルームには、僕、
ベノム・チワワと二人の先輩隊員が座っているだけだ。
プロジェクターに映し出されているのはアインベルターが有する試験改修型ヘビーフライトキャリアーEHFC-r0X/cのスペックと重度汚染地域EF-01に関する情報だった。
お化けみたいなキャリアーは無誘導投下爆弾・CIWS・迎撃用パルスマシンガン・高出力レーザーカノン・ヒュージミサイル等々の武装が施されている他、キャリアーの本分としてACを推定では最大50機程度は運べるらしい。そして、新たに探査可能となったとされる重汚染地域は、有象無象に大量の未確認兵器が確認されているらしい。
正直、僕は事態が大きすぎて実感がわかないのが正直なところだ。S.T.C.C.の隊員から整備員や事務員まで慌ただしくしている光景を見れば、せかされる気分になるが、ここにいる二人の先輩は普段と変わらない様子だ。
その情報の出所は、開口一番になにやらおどけた様子で発言したカルスキ・オフチャルと、その隣で優雅に紅茶を飲んでいる
ヴィハンの二人が手に入れた情報だ。
カルスキ・オフチャルが独自のルートで手に入れた情報と、ヴィハンがバンガードの諜報部経由からの入手した情報。カルスキ・オフチャルが独自に汚染度の高い地域を調査していることは知っているが、どう調査すれば、暫定と推測が降り混ざっているとはいえ、これほどの情報が出てくるのか。
「どう、調べたのですか? 」
「それは、企業秘密、企業じゃねーけどね。チワワちゃんの尻が蒼くなくなったらヒントぐらいは教えてやるさ」
カルスキ・オフチャルは足を組んで、両手を小さく横に広げて手の平は天井に向け、どこかからかう調子だ。余り反応しすぎてもさらに増長するだけなので、不満を出来るだけ表情には出さずに黙っておく。
「余り、新人をからかうのは如何ですかね」
それは、保父だとか神父であったり、大草原の一軒家でのんびりと慎ましく生きているような農夫とも例えられそうな穏やかな雰囲気をまとったヴィハンが優しく言う。こういうときに、新人の身としては頼れる先輩だ。普通はだけど。
「彼には、平和を脅かす負け犬のクズども、特に超過兵装を無駄に持つような駄犬を地獄の果てまで追撃し、蹂躙し撃破し殲滅し処刑し壊滅させ肉も血も骨も魂も微塵も残らぬようにFuckし叩き潰して頂く貴重な隊員ですよ」
……先輩の期待でオーバーキルされそうな件。これもパワハラの一種でしょうか?
「お前の人への期待のかけかたは、何かおかしい」
カルスキ・オフチャルが眉をひそめる。あそこまで過剰な期待のかけ方は普通なら嫌味にしか思えないけど、ヴィハンが言うと本当にそういった風に期待しているとしか思えないので、対処に困るところだ。
「人は期待され、褒められてこそ成長します」
「何その、飴で出来た鞭でビシビシ言っちゃう感じ? 」
個人的な所感ですが、その鞭は本当に飴でしょうか? 少なくとも、甘いが、砂糖ではなさそうだ。
「……それより、バンガードからの情報がよくここまで入りましたね」
バンガードとは外遊組織である故にか、情報が入ってきても、全てが入ってくることはない。だからこそ、カルスキ・オフチャルの情報網によって補填をしていることも多いらしい。
「昔のつてです。頼んだら、快く出してくれましたよ。僕は隊長とは違い、クーデター時にバンガード側でしたのでね」
「どう頼んだんです? 」
クーデター側に居た人間がどういう経緯でS.T.C.C.に流れてきたのかは気になるが、それよりもヴィハンは元バンガードだったとはいえ、そう簡単に情報が出てくるわけがないはずだ。
「教えないと、お前の大事な人を一人ずつ潰していくぞだとか、脅したんだろ? この狂犬め」
偵察専門にも関わらず、お目付役(厄介を押しつけられた)としてヴィハンに同行する度に酷い目に遭っているらしいカルスキ・オフチャルがあきれ気味に言った。最近はもう、何か色々と諦めたらしいが、何をどう諦めたのだろうか?
「僕をなんだと思っているんですか。そんな物騒なことは、超過兵装を持つようなクズ犬どもにしか言いません」
言うことは言うんですね。
「ただ、現状の危機を顧みても渡さないなら、直接に話しあおうと言ったまでです。あくまでも、話し合いの解決を目指しました。」
「うん、十分脅しだな」
きっそそれは暴力言語だ。
「ま、それより、幸か不幸か。どっちだろうな」
「アインベルターが保有し、運用できることは不幸、そして、イル・シャロムを侵攻するためにお披露目せず、リスクの高いミッションに投入し、運用不能になる可能性があることが幸ですかね」
ヴィハンがそう呟くように言い、カップにお茶を注ぐ。
「だろうな。土壇場じゃイル・シャロムが焦土になっていたかもな。俺にもくれ」
カルスキ・オフチャルがそう言って、空いているカップを手を伸ばしてひっくり返したが。
「僕が折角、有機栽培された茶葉を完璧なゴールデンルールで煎れたというのに、腐った泥水との違いも判らぬ有象無象に恵んでやると思っているんですか? 」
「何? その超上から目線? 」
普段通りの穏やかな返しに、ややムッとした様子でカルスキ・オフチャルがしゃべり出した。先輩がどうだの、どんな存在であれ味の違いが判らないなら等々揉めだし、紅茶一杯飲むためだけにまたもやレールから外れていた。
この先輩方は、この緊急事態に対してどの程度本気なのだろう。それとも、これがベテランS.T.C.C.隊員としての余裕なのだろうか。
僕も、そのうちに、ああなるのだろうか。
なっていいものだろうか?
……。
……。
……。
それはさておき。
アインベルターがイル・シャロムを焦土にするメリットがあるかどうかはともかくとして、可能かどうかという点から見れば脅威になるということだ。実際問題として、この第九領域にあんな化け物キャリアーを運用できる技術力と資金力があるとすれば、アインベルターぐらいなものであるし、作戦自体を決行するために傭兵を集めることが出来る資金力はもとより、OVAの古参スポンサーであることにより可能なコネクションをもっていることもある。
キャリアーを保有するだけなら、他のミグラントでも可能性はある。未探査領域なんて無視してイル・シャロムに突っ込んでくる過激派もいるだろう。
これほどの大規模な作戦を遂行できることが最も大きな脅威だろう。しかし、本当にこんな作戦に参加する傭兵なんてそういるものだろうか。
傍らでは、途中から無視していたが、どうやら紅茶を貰ったカルスキ・オフチャルが渋い顔で紅茶を飲んでいる。本当に、紅茶が渋いわけではないだろうとは思う。それを眺めていると、僕の目の前にもティーソーサーに載った紅茶が入ったカップが差し出される。差し出してきたのは、ヴィハンだ。ティーカップもティーソーサーにも、おまけにティーポットにも金色の模様が入っているが、華美と言えるほど決して下品ではなく、質素と呼べるほど貧相でもなく、とても上品そうだ。古い物に見えるが、どの程度古い物かは判断が付かない。骨董品と呼べるほど古い物かも知れないし、何気なくヴィハンは使っているが、高価なものかもしれない。だが、一見すれば優男風のヴィハンにはやけに似合っている。よく使っているので私物なのは間違いなさそうだ。
「冷えないうちにどうぞ」
「ありがとうございます」
「……俺、なんであんなに罵倒されてまで飲んでいるんだろうな。旨いけどさ」
「僕が煎れたのですから当然です」
僕とティーカップを一瞥し、カルスキ・オフチャルが独り言のように呟いた。
勧められるままに一口飲むと、確かにおいしい。味も良いが、香りが別物だ。違いのわからない人間に飲ませるには惜しいが、逆に、凡庸な品では違いがわからない人でも違いがわかるものだろう。
ティーカップをそっと置いて余韻を味わいながら、口を開く。
「ですけど、作戦決行できるまでの傭兵が集まる物でしょうか? 最低でもACが二十数機程度は必要になると言う見立てですが」
「集まります。それは間違いありません。定員一杯まで集まってもおかしくないでしょうね。まず、間違いなく、人員を集めることに支障は無いでしょう」
穏やかなまま、ヴィハンが断言した。
「根拠は? 」
「ミグラントだからです」
気の抜けた声のカルスキ・オフチャルの疑問に、ヴィハンはとても力強い調子で断言した。
「こんなお祭りに参加しないミグラントなど、ミグラントと名乗るだけの小物の偽物に過ぎませんし、我々にとっても脅威ですらありません。ミグラントは、リスクを冒してまで利を得るのではなく、もっと根本的に言えば、大なりに小なりのリスクを手に入れるためにリスクを冒す。そのリスクが、ミグラントをヒーローにし、ミリオネアに、権力を持たせますが、根本から言えば、そんなものすら、後付の動機でしかないでしょうね。リスクを得るためのリスク。自由と刺激と生と死の実感を得るために、彼らはリスクに挑む。それがミグラントです。ですから、集まらないなんて結末だけはありません」
そう言い、ヴィハンは再びティーカップに口を付ける。その姿だけなら、上品で優雅なのだけど。
「故にです。彼らは自らの力の大きさと責任を自覚しない」
これだけは、忌々しそうだった。
ミグラントというものの実情を知りはしないが、どうやら作戦決行に至までは問題がない。
「今回、最悪のケースは作戦が成功し、何かしらの危険物を入手し、バンガードの脅威となること。最高なのは、作戦失敗し、キャリアーも大量のミグラントも自滅してくれることでしょうか? 」
とりあえず、こんなものだろうか。大規模作戦自体を決行し、勝手に死んでくれるのは構わないけど、未知の脅威を入手することは、特にS.T.C.C.にとっては見過ごせない事案だろう。あるかどうかも判らない、狸の皮算だけど。
「いや、最悪はそんなことじゃない」
カルスキ・オフチャルがそう言って空のカップをヴィハンの前に差し出すと、ヴィハンも浅く頷いていた。
□
弾痕だらけのACが仰向けに倒れ込み、さらに別のACが踏みつけてガトリングガンを頭部へと至近距離で向ける。倒れたACが逃れようと動く間もなく、ガトリングガンの砲身が回転し火花と弾頭を撃ち出していく。頭部へと弾丸が突き刺さっていき原型が砕かれていく。動きが鈍くなった瞬間を狙って、さらにレーザーブレードがコックピットへと突き刺さる。脱出すら不可能なまま、名も知らないミグラントが一人終わった。
『S-32。敵機撃破。全く、雑兵ぞろいですね』
今まさに、一人のミグラントを仕留めたピースメーカーに搭乗するヴィハンが連絡を入れる。その口調は、何人殺そうと戦場とはほど遠いほど穏やかなだ。
『S-22
ホファヴァルト。こちらも敵機撃墜。損傷軽微。周辺に敵機無し。補給を提唱する』
『了解。第一陣は凌いだようだ。各班、状況を見て補給を行え』
そして、他方面で戦闘していたホファヴァルトの通信に対して隊長からの連絡も入る。
『弾薬の補給のためヘリをよこしてください』
ヴィハンがそう言いながら、スクラップと化したACから離れだし、荒野の先を見るようにACを旋回させた。
この場所は、イル・シャロム近くの砲台陣地から少しだけ離れた荒野だ。周囲にはミグラントのAC、MT、戦車、ヘリの残骸が転がっている。僕とヴィハンが撃破した痕跡だ。
S.T.C.C.の面々が砲台陣地の防衛へと駆り出されているだけに過ぎない。だが、駆り出されている理由は、バンガード本隊から例の大規模作戦へのけん制のために駆り出されているから。バンガードから都合の良い使われ方をしているように思える。未探査地域と未確認兵器に関してはS.T.C.C.向きなのだろうけど、イル・シャロム防衛の要の一つである陣地防衛もとても重要に思える。あのお化けキャリアーを相手することもなくなった訳だけど、個人的にはイル・シャロムを守ることの方が優先したい僕にとっては、都合がいいように思えた。
でも、それだけ重要な拠点を任せるのも、バンガードに余裕が無い証拠だろうか。ミグラントが勝手に行った作戦とはいえ、捨て置くことも出来ない。だが、先日、二人の先輩が指摘したのはこういった状況だということ。
バンガードは、必ず、アインベルターの作戦を捨て置かない。監視だけだとしても動くだろう。それだけでも、それ相応の戦力を割り当てる。だとすると、必然的にイル・シャロムの戦力は減らさないが、周辺基地は手薄になる。
だから、その機を見て他のミグラントや勢力が動く。
イル・シャロムから遠方にある上に勢力としては決して大きくはないがカストリカは油断できる相手ではない。戦艦を保有している海兵隊、大規模な
ノマド、なりふり構わぬ姿勢に悪名轟く
市民の友、普段は防衛に専念するバタリアもここぞとばかりに反撃を仕掛けてくる可能性もある、その他と注意すべき勢力は多いが、その勢力がこの機を狙って動き出せば最悪の事態になりかねない。いや、今はOVAからの雑兵程度の傭兵が仕掛けてきているだけに過ぎないが、今後の流れ次第では、さらなる大規模戦闘が起きることもある。 最も、カルスキ・オフチャルとしては、直接的な戦闘ではなくAPCがどう動くかを気にしているようであるし、反対に、ヴィハンは何がこようと超過兵装搭載機でなければ穏やかなものだ。何故、名目上サポート機となっている機体が直接戦闘の主戦力としてカウントされているのかはともかく。
ただ、一つ言えるのは第九領域全体を巻き込んでの戦乱。
これが時代の節目になるなんて言い出す人もいるだろうか。
だけど、そんな先の話なんて誰にもわからないし、僕としては、イル・シャロムを戦場にすることだけは避けたいところだ。極論を言えば、例えバンガードが無くなったとしても、第九領域の心臓とも言える大都市を失うわけにはいかない。この都市だけは人々が生きていくために必要な物だ。
『こちら、S-29。第二陣出てきた。大型ヘリが三機に小型ヘリがいっぱい。ACは見えない。大型ヘリは堅そうな装甲を追加している』
どこか緊張感のない声、カルスキ・オフチャルからの通信が入る。この先輩は、僕たちよりもさらに先攻してのスカウト役についている。軽口が目立ち、はじめの頃は不真面目な人だと思っていたが、これだけ偵察能力に長け、的確な人というのも、この人以外には知らない。
『早いですね。矢張り、第一陣は様子見の捨て駒ですか』
『余裕があるか無いのかよくわからない攻め方してくるよな。それが狙いとして、別に奥の手でもあるのか。もしくはさらに奥の手があるとでも、思わせるだけなのか。あっちこっちが派手に動きすぎて、情報が錯綜しているんだよな……どうせ判らないなら、やっぱり、アインベルターのミッションでも監視した方が良かったな……』
カルスキ・オフチャルからぼやきが聞こえる。
『いくら腐っても、来たら潰す。それだけでしょう。貴方もブーストチャージで大型ヘリに先制攻撃を加えてみては? 』
『……だから、何故お前は偵察軽量機に突撃させたがるのかと』
『当然、僕も行きますよ? 』
『そういう問題じゃないからな? 来るなつーの。巻き込む気だろ!? 』
カルスキ・オフチャルとそんなやりとりをしながら、ヴィハンは補修し終わったガトリングガンを手に取った。ジェネレータージャマーを一つ外し、バトルライフルへに換装されている。超過兵装装備AC限定の装備よりも、数を潰すための支援火力能力に重点を置いているらしい。僕のイージーシューターも、補給は終わり、ハンガーにはハンドガンを追加で積んでいた。負荷が上がるために余りしたくはないが、次の補給が何時出来るかも判らない状況では、僕やヴィハンのような機体の通常アセンブルでは火力不足に陥る可能性があるので仕方ないだろう。
『お前ら……本当に、行く気か? 』
ピリピリとした口調で隊長から通信が入る。
『命令が無くとも、目標達成のためならば突撃する覚悟は常にしていますので』
『命令があっても行きません! 』
『お前ら、意見を足して割ってくれ』
やる気があるにせよ、無いにせよ、緊張感が感じられない二人に隊長も諦め気味らしい。若手はこれだからといった風に見ているのかも知れないが、僕もその中の一人にカウントされているなら非情に不本意だ。
『兎角、突撃するほど追い詰められているわけではありませんので、隊長、僕たちは東側から責め誘導し、
ドゥンケルと
ゴルスカヤに航空戦力を潰していただいて宜しいでしょうか? 僕たちだけでは大型ヘリ相手では厳しいでしょう』
ヴィハンから隊長への作戦提案がなされる。確かに、大型ヘリ相手では、キャノンクラスの火力が無ければ厳しいだろう。ならば、大火力を誇るドゥンケルと対空攻撃のスペシャリストのゴルスカヤが主力を相手するのが定石だろう。
『了解した。ドゥンケル、ゴルスカヤ、準備しろ』
『了解』
『了解。ヘリ相手なら任せて貰おう』
隊長からの指示に、二人が返事する。単機ではなしえない連携であるが、かといって細部までは決められていない。それでも合わせられるのは経験があるから。今の僕にとって、絶対的に足りていない素養だ。
猟犬らしく、追いかけ追い詰めて喉を噛みきる。
犬種をコードネームにしているのにピッタリな連携だろうか。
『では、突撃はせずとも、叩き潰す勢いでいきます。そのぐらいしないと進路変更しない程度には強気のようですしね』
ヴィハンは、いつもの穏やかな口調でも、気が入っていることがわかる。
『進路はそのまま陣地にまっすぐだ。がんばってねー』
カルスキ・オフチャルは結局は普段の気の抜けた応援。
『各機、行動に移れ! 臨機応変に対応しろ』
隊長からは、緊張感のある命令が下る。
暴力と信念が渦巻く戦場を駆けていく。
守りたい物、貫きたい物、それはまだ漠然として曖昧な僕ではあるのだけど、それでも、絶対に折れるわけにはいかない物がある。
遙か背後に佇むイル・シャロムに凶弾を届かせるわけだけにはいかない。
人は、生きていくべきだ。
少なくとも、日々を安穏に過ごし、ささやかな出来事に一喜一憂する戦う術のない人は守らなくてはならないはず。
例え、この両手が血に染まろうと。
例え、この身体に硝煙の臭いが染みつこうと。
例え、この生命が絶えてしまおうと。
例え、この精神が歪みきってしまおうと。
戦う術のある僕は、戦場を駆けていかなくてはならない。
fin.
最終更新:2013年11月18日 21:58