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オーダーミッションNo.022【謀殺代行】CASE2 「いつだっけ? 」



難易度: B
依頼主: OVA
作戦領域: 渓谷地帯(HUGE CANYON)
敵対勢力: ミグラント
敵戦力: AC《テンペスト》
作戦目標: 目標の殺害
特記事項: 各所に隠しジャマー砲台設置(目標には非通知)
概要:
ある匿名の勢力からの暗殺依頼です。
次回のアリーナにて目標と対戦し、事故を装い殺害してください。
我々もある程度の“仕込み”は行いますが、目標もそれなりの実力者です。
万全を期して確実な任務の遂行をお願いします。



 私は混雑している会場の片隅にある狭いシートに座り、売店で買ったビールを飲んでいた。ここは地方都市のメインストリートにあるOVA観戦会場だ。遠方の試合会場で行われる試合をリアルタイムで見ることができるだけで、間近で見ることが出来るわけではないし、OVAの試合なんてネットでも見ることが出来る。それでも、会場は全席が埋まって、あるはずもない空席を探す人々が歩き回っていた。わざわざこんな会場にまで試合を見に来る理由は一つ、会場が試合を見ることに非常に長けているだけだ。ずらりと並んだシートを取り囲むように大型のスクリーンが設置され、高い天井近くではディスプレイ付の小さな飛行船が漂っている。実際に見る以上に臨場感と迫力が味わえる。
 と言っても、今日来たのは気まぐれだ。通りをブラブラししていたら親しくもない顔見知りに『アルミさん、昼間から今日は何処に行くんだい?』と深い意味は無いが少しばかりの嫌みを受けて、何も考えずに『アリーナ観戦へ』とこれまた深い考えも何も無いその場しのぎの言葉で茶を濁し、結局、することもないから観に来た。それだけだ。

『ただいま手元の時計では、試合開始まで10分をきりました。皆様大注目のザイフリードVSパトリオット・チャリオットの大勝負はもうしばしお待ちください。さて、今夜のゲスト解説者としてフランク・モール氏に来ていただいております。フランクさん、試合開始間もなくとなりましたが、この試合をどう読んでいますか? 』

 軽快な実況者の声に釣られ、私は月刊APC通信から顔を上げる。画面には、メガネをかけたスーツ姿の実況者、その隣には、実況者の皺一つ無いスーツに比べればヨレヨレのブラウンカラーのスーツに色あせたワイシャツ、棒ネクタイはしているが結びのバランスは滅茶苦茶だ。街で見かけたら失業中の貧しい老人としか思えないだろう。だが、その人物は知る人ぞ知る『何でも屋のフランク』という大成功を収めているミグラントであり、知らないミグラントはもぐりとまで呼ばれるほどの重鎮だ。今日は、私、アルミ・オガはミグラントではなくただの観客として来ているので、だからどうという事もないけど。

『そうじゅな、まずランクはこの際おいておくとして、パトリオットの坊主がザイフリードの坊主にどこまで立ち向かえるか、じゃな』
『と、言いますと? 』
『言うほどのことでもないが、如何に知恵と勇気を持って挑むか、それだけじゃな。お互いのオーバードウェポンの使いどころも見物じゃろうて』
『そうですね。ええ、そこが最大のポイントに……』

 SランクのザイフリードとBランクのパトリオット・チャリオット、どちらが勝つがと言われれば。

「あの宇宙戦艦が勝つわよねぇ」

 と大型スクリーンの左側を見れば、ザイフリードの機体《マッド・ブラッドソー》がレーザーキャノンを構えた静止画が映っている。構えているが、背負ったグラインドブレードの異様な巨大さも相まって、ACではなく別の兵器に見えなくもなく、そのまま飛んでいきそうな異様さを醸し出す。誰が言い出したのかは知らないが、宇宙戦艦グラインドブレード。本当に、誰が言い出したのやら。

「いくら、OW同士のマッチングでもねぇ」

 次は右のスクリーンに目をやる。
 こちらにはパトリオット・チャリオットの搭乗機《テンペスト》が映し出されている。両手に構えたオートキャノンに普通は目がいくのでしょうけど、今は、彼の対戦者同様にさらに異様な物を背負っていることに目が引かれる。何本もの砲身がハリネズミ(図鑑でしか見たことないけどね)のように伸びたマルチプルパルス、グラインドブレード同様にオーバードウェポンと称される規格外の兵器だ。今回のマッチングでは、特別にOVAから貸されたらしいが、詳しい事情までは解説してはいないし、月刊APCには、誰もが驚く特殊ルールでマッチされるらしいとしか書かれていない。今日になって、対戦者同士が互いにOWを装備してのマッチだと発表された。誰もが驚くと表現すれば、大抵はOWが出てくるか多人数のバトルロワイヤルばかりだろうけど。元は、違法賭博から始まったものなので、変則ルールと八百長は大の得意なので、そうなるのも自然だろう。
 中央のスクリーンには、今日の試合会場となっている大型の水上スタジアムが映っているが、映像は突然と切り替わり、廃墟が点在する渓谷が映し出される。何か放送事故でもあったのだろうか。周りも、よりざわついてスクリーンを指さしている。

『と、ただいま、手元の時計では試合開始まで5分を切りましたが、ここで緊急連絡です。試合会場は水上スタジアムとなっていましたが、スタジアムに不備があったため、試合会場は近隣の砂漠エリアへと変更になりました。なお、選手と機体の移動は既に済んでいるそうですので、試合開始時間には変更はありません。しかし、突如のエリア変更ですが、試合運びにどう影響するでしょうか? 』
『障害物が増えたわけじゃが、定石通り、その障害物をどう利用するか。その駆け引きが魅力じゃろうな』
『はい、確かに。さらには……』

 急のエリア変更は、何度かあることだが、一体あの試合会場になんの不備があったのだろうか。ずっと見ている限りは、特に際だつ不自然さは無かったはずだ。こういったときに考えられる不備としては……。


 □


 試合開始から五分が過ぎていた。
 右のスクリーンには《マッド・ブラッドソー》のグラインドブレードを背負った姿が、左のスクリーンにはマルチプルパルスを背負った《テンペスト》の姿が、中央のスクリーンには戦場をデフォルメした平面図が映し出され、廃墟群の中に2機のマーカーが示されている。2機の距離はアスファルト舗装された橋を挟んで随分とあり、まだ互いの間合いには入っていない。
 定石であれば、《マッド・ブラッドソー》が攻めていき、それを《テンペスト》が迎え撃つ、とくるのだろうか。試合は動き出したが、橋を挟んで《テンペスト》がオートキャノンを散発的に放ってる。どことなく、動きのキレが悪いのは、緊張でもあるのだろうか。確かに、アリーナでBランクがSランクに立ち向かうなんて滅多にないことだろう。対する《マッド・ブラッドソー》は回避に専念し、なかなか接近していかない。両者はまだ、互いの機体に消耗すら与えられてなかった。
 マルチプルパルスを警戒してなかなか攻めに行かない……。が、搭乗者のザイフリードが淡々と攻めていくとも思えない。あれは、場を沸かせる事に長けたエンターテイナーだ。罠と判っても盛り上がると踏めば喜んで踏み込んでいく、そして勝つ。……場合によっては技術の割にはあっけない幕引きをして負けることもあるが。でも、常勝の強者を超えた勝敗さえも操る支配者だ。だから、単純に強い弱いでは賭けに勝てない。裏側の情勢をも予想しなければならない。
 《テンペスト》が一旦は、攻撃をやめて廃墟へと隠れる。他の映像を見ても、完全隠れきってしまってる。誘い込むつもりだろうか? そんな見え見えの罠にかかるほど……。

「もう? 」

 思わず、口から言葉がこぼれた。橋の手前に陣取った《テンペスト》が複数本のパルス砲を周囲に展開する。チャージングがなされ、その発射の瞬間までは随分と長く感じられる。《マッド・ブラッドソー》に距離を詰めていくが、普通に考えれば追いつけないはず。だが、一度は逃げればいいだけの《マッド・ブラッドソー》は逃げなかった。両足を大地につけ、シールドを展開し、レーザーキャノンを展開する。チャージの閃光が漏れ出しており、一方の《テンペスト》からは閃光が漏れ出している。
 お互いが、お互いの間合いに入っている。一方は超過兵装による周囲殲滅、一方はよく出回っているレーザーキャノンの一点突破。レーザーキャノンは、その種類の中では高い破壊力をもち、通常兵装の中でもトップクラスの破壊力を持つが、それでも、無数に伸びたマルチプルパルスに比べると随分と脆弱に見える。

『来た! 《テンペスト》がいや、疾風の《パトリオット・チャリオット》が早くも勝負をしかけてきた!!! 』

 実況者も割れんばかりにボリュームを上げていく、だが、今日、もっともざわめいた会場の喧噪には消されそうだった。周囲には、前のめりに画面を見つめる人、興奮が突き抜けて立ち上がる人、どの映像を見ればいいのかキョロキョロと首ごとディスプレイを眺める人が折り混ざっている。

 その瞬間は来た。
 今日、もっとも大きな勝負の分かれ目だ。

 全てのディスプレが閃光に包まれる、会場全体がディスプレイから漏れ出す蒼い閃光に染まっていく。私の耳には声にならない喧噪だけが響き渡っていく。
 ディスプレイから閃光が収まって、映し出されていたのはマルチプルパルスの右前が少しだけ溶けて欠けていた《テンペスト》と、ボロボロに表面が溶けたグラインドブレードを背負った《マッド・ブラッドソー》の姿だった。両者間にあった橋は、半分ほどが消し飛んで、コンクリートから奇妙なオブジェクトと化した鉄筋が見え隠れする。《テンペスト》があっさりとマルチプルパルスを収納すらせずにパージして、距離を離して廃墟へと身を潜めていく。
 対する《マッド・ブラッドソー》は、構え姿勢から立ち上がり、こちらもボロボロのグラインドブレードをパージした。あれは、修理すれば使えるのだろうか? 修理するにしてもパーツの確保からして大変だと思うけど。
 でも、そうか、キャノンを撃つ構えの姿勢から打った直後に構えたまま急旋回し、グラインドブレードを盾代わりに使ってマルチプルパルスの猛攻を防いだ。防ぐ直前に放たれたレーザーキャノンはマルチプルパルスを一応は、破壊もしている。

「……なんで? 」

 そう、何故だろう。周囲の盛り上がりとは裏腹に、私は一人だけ、急激に温度が下がって、疑問にとりつかれ取り残されていく。周囲の声にならない声援も怒号も体から体へとすり抜けて流れていく。
 ディスプレイには《テンペスト》が両手にオートキャノンを持って、再び廃墟から現れる。それは、キャノン系の兵装は重く大きいために、マルチプルパルスに限らずオーバードウェポンのラックには収納できず、必然的にパージするしかない。マルチプルパルスではパージしたキャノンを破壊する恐れもあるので、一端はパージして隠し、再び回収したのだろう。確かに、ほとんど撃ち尽くしてからマルチプルパルスで止めを刺しに行くのが定石と考えがちなので、あれが《パトリオット・チャリオット》の勝負を決めるための奇策だったのだろう。タイミングとしても試合序盤でのことだ、そう簡単に使うとは思わないだろう。
 問題は。

『おおっと、レーザーキャノンが直撃だ! まだいけるか!? まだいけ、撃ち返してきた! まだまだ勝負はついてない! 』

 実況の声があいも変わらずに響き渡るが、それはもう頭に入らない。ただ、ディスプレイに映る2機の試合を淡々と見ていく。
 もう、この時点では、私は、アルミ・オガではなく逢魔狩へと切り替わっていたのだろう。観客ではなく、一人のミグラントであり傭兵である一人として、戦いを見ていた。《テンペスト》は、オートキャノンを主体に迎撃のスタンスをとりながらも、距離を見計らっては急接近を繰り返し、銃弾の猛攻を見せる。対するザイフリードはライフルとヒートロケットでけん制を繰り返しながら時折、レーザーキャノンを確実に当てに行っている。 現在進行形の試合には、不審な点が幾つかある。

 その壱、特殊ルール。
 これは、時々であれば問題ないが、後に続く不審点と合わせると奇妙な点に見えてくる。

 その弐、急な試合会場の変更
 これも、無いとは言い切れないが、その壱同様に不審な点となる。

 その惨 ザイフリードの戦術。
 これが問題だ。何故態々、あの宇宙戦艦はオーバードウェポンを犠牲にしてでも一撃を加えようとしたのか。マルチプルパルスなんて普通なら一度撃てば終わりのはずだ。二度、三度と撃ち続けられれば破壊に行くことも納得できるが、起動時間終了まで逃げればいいだけのはず。試合を盛り上げようという意図にしても、自分はグラインドブレードを発動をする見せ場を作っていないのはらしくないだろう。一体、どういった理由があったのかが判らないが。

 その死、パトリオット・チャリオットの試合開始間もないときに見られた動きの悪さ。
 今となって思い返せば、ベテラン傭兵があの動きの悪さをするだろうか。慣れないオーバードウェポンを背負っていたとしても、あの動きは不自然だ。目の前では動きは良くなっている。普段と違い、ハンガー武器がない分、さらにキレがあるようにも思える。だとすれば、どうして動きが悪かったのか。

 ここから導き出されるのは。

 その壱、八百長による示し合わされた結果。
 一番、あり得るだろう。そもそもアリーナはそういった場所だ。だが、何故、オーバードウェポンを犠牲にしたのか。そこまでする試合だろうか。結果は、ザイフリードの勝利で終わっている。
 そう、その後、パトリオット・チャリオットの善戦もむなしく、最後にはオートキャノンの弾切れしたところを、ヘッドパーツのカメラアイをライフルで撃ち抜かれてギブアップしてしまっている。今日、最後の試合だったため、観客席もまばらになっていた。残っているのは、騒ぎ疲れて寝ている酩酊者と、ゴミを片付けているつなぎを着た清掃業者ぐらいだ。ディスプレイには今日の試合のハイライトが流れつつ、アインベルター等のOVAに関わる組織のCMが流れ出していた。

「……矢張り、何かあるな」

 そんな呟きは誰にも聞こえなかっただろう。誰しもが、繰り広げられる試合へと注目している。
 《テンペスト》の動きの悪さは、他から意図されたものであれば、十中八九はジャマーによるものか。私自身も、依頼されたアリーナ戦の中で、私が優勢となるように仕込まれた経験がある。事故に見せかける陰謀があれば、その程度の事を平然とするのがOVAアリーナだ。それでも、隠されたジャマーはマルチプルパルスの掃射によって破壊されたのだろう、だから《テンペスト》は元の動きを取り戻した。
 もしも、バタリアの主力であるパトリオット・チャリオットが殺されたなら、得をするのはバタリアを警戒しているバンガードだろう。とすれば、対立しているOVAの試合でバンガードが一枚噛んでいたことになる……だが、その後の結果は殺しきれなかった。でも、オーバードウェポンまで破壊されたOVAが、バタリアの英雄をかばう理由は何だろう。そこまで仕込んでおきながら、何をしたかったのか。
 清掃員が真横をすり抜けていく。何も無いアリーナにいつまでもいるなんて、本当に意味のないことなのだろう。それでも、私は既に、一つの疑問によって熱のない非常識の世界へと脚を踏み込んでしまっていて、なかなか次の一歩を踏み出して抜け出せないでいる。

 それにしても、祭りの後はなんて静かだろう。任務を終えた後の荒野に、一人で佇んでいるときにどことなく似た静けさだ。
 人は何故、アリーナに来るのか。見ようと思えば自宅で見ることも出来る。公園で、携帯端末を使ってみることも出来る。アリーナカフェなんてものまであり、それなりに大きなディスプレイで試合を肴にゆっくりと酒も飲める。違法賭博となっていた時代に比べれば随分とオープンになって、一般娯楽として定着してしまっていた。これほどまでに人々に受け入れられた理由は、最たる娯楽の賭博であることだけが理由ではないだろう。戦争を安全に見ることが出来る。自身の闘争本能を実際に戦う傭兵達に重ね合わせ、同様に盛り上がる人々と一体となることが出来る。同様の意志を持つ集団は一個の生命体のようなものだろうか。
 普段の憂いを解き放って消し去ってしまうために足を運ぶ場所、それがここなのだろう。だからだろうか、騒ぐためにある場所だから、こうも静寂が気になってしまうのだろうか。
 だが、私は、どうしてここにいるのか。
 同業者の腕を見るためと大義名分は立つけれど、だらだらと過ごす日々に組み込まれているだけかもしれない。

 さて、静寂に包まれて、もう一度考えてみようか。
 疑問点は多いが、そこから推論ばかりを導き出していた。だから、逆に、当てにならない推論を全て排除しよう。
 会場が変わったことは、時々あることだから、無視しよう。
 特殊ルールは、これも時々はあることだから、無視しよう。
 あったことだけ、事実だけをもう一度だけ絞り出すならば、グラインドブレードを使用せずに盾にして破壊したこと。それはもう、修復不可能としか思えないほど破壊された。 今、ディスプレイからは閃光があふれ出し、収まったときには、ボロボロに破壊されたグラインドブレードが確認できる。何度目か見たハイライトのシーンだ。
 マルチプルパルスの直撃にさらされたのだから、壊れない方がおかしい。起動しないまま試合を終わらせるならいいだろう。起動しないまま破壊されたことが問題だ。ザイフリードに貸し出された代物をああもあっさりと破壊してしまって良いのか。金に物を言わせてもなかなか手に入らないほどの貴重な兵装を破壊されて良いのか。

 逆に、破壊されても良かったから盾にしたのだとすれば。

 つまり、グラインドブレードが見た目だけはそっくりの偽物だと一つだけ仮定しよう。
 それならば、破壊されても良いはず。どうしてそんな物を使って、戦ったのかは置いておこう。考えるには材料がなさ過ぎる。
 では、偽物をどうやって入手したのか。どこぞの怪しげなミグラントでも使ったのか、それともハッタリ用に作られた物を手に入れたのか。ただ、入手したなら痕跡という物が残っているかもしれない。
 ここで、ふと、一人の人物の姿が頭に浮かぶ。
 今日のゲストである某ミグラント。
 何でも屋のフランク。
 彼であれば、そう、第九領域に名を轟かせる成功者である彼ならば。
 今日の試合に関わっているのではないだろうか?
 オーバードウェポンの偽物を用意することも可能ではないだろうか。
 この試合は、そうこの試合は、もしかすると偽物を破壊することが目的ではないだろうか?
 忌むべき超過兵装とまで言われるオーバードウェポンであるが、それを狙う連中にも心当たりがある。S.T.C.C.だ。もしも、外部からの乱入によってオーバードウェポンを破壊される事態を避けるために、自作自演による破壊を行い、警戒を解くためだとしたら。
 一理は通るだろうか? 本当にフランク・モールが関わったのかも判らず、誰が仕込み、誰の意図によって引き起こされたのかはわからないけど。
 パトリオット・チャリオットを亡き者にしたかった? バンガード。
 オーバードウェポンを狙う? S.T.C.C。
 他勢力の警戒から目をそらしたい? OVA。
 その全てを把握し、利用したのは、一体、誰なのか。
 全てが推論で湧き出してきた疑念に過ぎず、全てが偶然かもしれない。こんな偶然なんて、あるはずがないけど。
 ビールが空になったカップを眺めているだけでは、答えはわからない。なら、自ら動いて、真実を掴むしかないだろう。一々、疑問符がつくならば、一つ一つ取り去っていくだけだ。
 私は、立ち上がった。いつものスラムに戻れば、昼間からお酒を飲んでいることに皮肉を言われながらも、自堕落に過ごす日々が待っているだろう。
 アリーナの出口で、ふと思い出して、大金を払って手に入れた紙切れを取り出した。少しだけシワになっているが、さらに力一杯に握りつぶす。ザイフリードが勝ってしまった今となっては、本当に役に立たない紙くずだ。八百長をするにしても、BランクがSランクに勝ぐらいのドラマティックな展開にどうしてしてくれなかったのだろう。小さくため息をついて、紙片をゴミ箱に突っ込んだ。
 外へと出たときには、私は、逢魔狩ではなくただのアルミ・オガへと戻っていた。
 負けた腹いせに、だらだらとふて寝してしまおう。
 あれ?
 昨日も、ずっと寝ていたかな?
 えっと、一昨日も?
 その前は……その前も?
 あれ?
 最後に仕事したの、いつだっけ?


fin.

投稿者:ug
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最終更新:2013年11月18日 22:34