オーダーミッションNo.012【輸送車両護衛】CASE2 「仕事の時間」
難易度: A 依頼主: ミグラント 作戦領域: 「イル・シャロム」郊外、廃棄区画(ABANDONED CITY) 敵対勢力: 不明 敵戦力: 不明 作戦目標: 輸送車両の領域通過 特記事項: 最大3機まで出撃可能
概要: あるエリアを通過する際の護衛を頼みたい。 そこは俺達ミグラントが「バンガード」の目を盗み、レジスタンス相手の商売に 「イル・シャロム」へ潜り込む際に通過するエリアなのだが、 最近ここを通った同業者が襲撃を受け、そのほとんどが全滅している。 唯一の生存者によれば「赤い花のエンブレムを付けた白いAC」に襲われたらしい。
おそらくバンガードの手合いだろうが、だからこそ大人しく引き下がるわけにはいかん。 俺のトレーラーに護衛として同行し、あわよくば敵を撃退してほしい。 チームを組む場合は人数分の追加報酬を健闘しよう。 こちらとしても万全を期してもらえるのは有難いからな。 |
『おいアンタ、本当に大丈夫なんだろうな?』
前を進むトレーラーからの通信。幾度目かの言葉に小さなため息が漏れた。
ACのコクピット内で面倒そうに頭をかきながら、通信に応えるべく首元のマフラーを上にあげることでボイスチェンジャーのスイッチを入れる。
『怯えるなら他の道を行けばいいだろうに』
『そういう訳にはいかねぇんだよ。こっちだって商売だ。…取引は信用一番だしな』
『なら四の五の言わないで任せておく事だ』
しばらくの無言、そしてノイズ越しの深いため息の後通信が切られた。
やはり深くは信頼されていないらしい―――傭兵、
逢魔狩は軽く鼻を鳴らしながらマフラーの位置を戻す。
輸送車両を護衛するこのミッション―――逢魔狩ことアルミは一も二も無く即座に、かつ一人で受けることにした。
アリーナ主体であるはずの逢魔狩がこのミッションを受ける事自体が依頼主には不可思議なのだろう。
その上、人数を雇って確実に商品を届けたい所に、傭兵を一人しか雇えなかったのだ。
とはいえ、アルミとしても譲るわけにはいかなかった。
バンガードの白いAC。その情報を得られるのならば―――。
思考に耽るアルミの耳へ通信が届く。
『あと少しで離脱できるぜ。わざわざ来てもらったのに無駄足で…』
離脱ポイントを示すマーカー。しかし。
「っ!?」
突然の異音にとっさに機体を動かす。
トレーラーから庇うように差し出したACの右腕、装備されたレールキャノンが閃光に貫かれ溶解する。
「ちっ…!」
咄嗟にレールキャノンをパージすると、改めて機体ごとトレーラーの遮蔽となる位置をとる。
―――居た。
廃ビルの上、ライフルの銃口にプラズマ光を燻らせた巨大な人型。
赤い百合のエンブレム。
右肩に「07」の文字。
純白のAC。
思わず笑みが漏れるが、それを隠すようにマフラーを上げる。
『い、今のはなんだ…!?』
『来たらしい…トレーラーは先に行け。ここからは俺の仕事だぜ』
猛る心を抑えながらトレーラーに退避を促す。
我に返ったらしいトレーラーが速度を上げて離脱しようとするのを確認しつつ、牽制にスナイパーライフルを発射。
トレーラーを狙っていた二脚型のACが廃ビルの上から飛び去っていく。
「逃がさないさ…!」
ブースタに点火、地を蹴った勢いを利用して跳びついたビルの壁面を蹴って上昇していく。
リコンを射出し画面をスキャンモードへと切り替えれば、一瞬で範囲外へと遠ざかるACの影。
キャノンをパージした分身軽になった機体は、即座に反対側の壁を蹴って加速。
空になった右腕に、ハンガーに下げておいたバトルライフルを装備すると、スキャンモードを解除し。
「見つけた…!」
発見した白いACをロック。バトルライフルを発射し、回避行動を取らせた所へスナイパーライフルを撃ちこむ。
しかし空中で器用に姿勢制御をした白いACは、脚部のシールドでライフルの弾をはじくと、レーザーライフルで反撃をしてきた。
しばらくの銃撃戦が、廃墟となった町を舞台に行われる。
スナイパーライフルとバトルライフルの二丁持ちをする唐花に対し、敵ACはレーザーライフルでの反撃を行ってくる。
見たところ、左手に持っているのはショットガン――近接戦闘では脅威だが、機動性はなんとか互角である以上、こちらの間合いを取らせてもらえば問題はない。
―――白い死神ったってなんのことはない、このままのペースでいければ――
と、ふいに白いACが再び背を向けた。
―――誘ってる? トレーラーから引き剥がそうってのか、あるいは自分の間合いに持ち込もうっていうのか。
「とはいえ…」
離脱寸前のトレーラーも無視していく訳にはいかない。
逢魔狩はスキャンモードに切り替えた唐花を反転させると、トレーラーの後を追うように壁を蹴って進む。
しばらく進んだ先、離脱するためのトンネルへ入ろうとしているトレーラーが見えた。
同時に、モニターの端をかすめるように動いた白い影。
「見えてる…!」
バトルライフルを向けた先、白いACもまたこちらへ銃口を向け。
「…っ!? さっきの機体と違う!?」
同じ中量二脚型だが、使われているパーツが違う、白いAC―――肩に刻まれたナンバーは「09」。
一瞬の動揺に相手の肩より発射されたロケットが直撃する。
「っ、二機居たってか…!!」
振動はきたが、破損は大したことはない、構わずにハイブーストを吹かすと距離を詰めて脚を振りかぶる。
が、重量級とは思えない俊敏な動作で距離を離すと、再びビルの影へと隠れる白いAC。
リコンを撃ちこむ暇もない――舌打ちをこぼしながら後を追えば、その先には「07」のACが再び現れる。
しかも、構えられたショットガンのおまけ付きだ。
装甲の薄い唐花で至近距離から喰らってしまえば一溜りもない。
「畜生…!」
強引に二度のハイブーストを吹かせば、ジェネレータが悲鳴を上げる。
ギリギリのところで避けたショットガンが、しかし左腕のスナイパーライフルをもぎ取っていった。
「やって、くれるじゃねぇか…!」
相手と同じように自らもビルを遮蔽とし、一度間合いをとり直すと、バトルライフルを持ち直す。
と、こちらの死角から乗り越えてきたか、ビルの真上から「09」のACが射撃。
弾幕を避けながらの反撃は宙をきり、狙いを付け直す暇もなく入れ替わるように「07」のACが接近してくる。
迎撃に放ったバトルライフルは「07」を覆う『何か』を貫くものの、威力を失い装甲に弾かれた。
「なん、ってこったい…!」
ショットガンとレーザーライフルの衝撃に揺さぶられながら後退する。
装甲の大半を失いながらなんとか遮蔽を取ると、左右と真上にリコンを撒き、スキャンモードにして一度状況を確認する。
一瞬リコンに引っかかったACの反応はすぐさま離れていった。
依頼を思い出し確認して見ればトレーラーは既にトンネルの奥へ消えている。
これで、ミッションとしては成功だ――自分が無事に戻れれば、だが。
トリガーだけになったスナイパーライフルを投げ捨てると、逢魔狩はマフラーをさげ大きく息をつく。
―――冗談、じゃすまされねぇってのぁこの事ですなぁ。
マフラーをといたせいか、思考がついいつもの口調に戻る。
白いAC――「バンガードの白い死神」が二機だ。
無論、あちらもトレーラーを逃した以上任務失敗になるはず、となれば、せめてもの手柄にこちらを落とそうと考えているのだろう。
なにか、活路を見出さなければならない。
周囲の警戒は怠らないまま、ここまで記録されている戦闘データを確認し――。
―――ちょいと待った。
敵は二機のはずだ。
ならば、何故。
「……同時にしかけてくりゃこっちなんぞあっという間に…」
思考にふけった瞬間、リコンが反応を示す。
「っと…!」
ACをジャンプさせ、今まで遮蔽にしていたビルを踵で蹴るようにして登っていく。
真下に見えるのは、「07」のAC。
こちらを視認したのか、レーザーライフルをこちらへ向けている。
「確かめるには―――」
銃口が光る。
「――もってこいってやつだ!」
放たれた閃光を右手から投げつけたバトルライフルを盾にしてかわすと、最後の武器、実体ブレードを左腕に装備する。
振り下ろすブレードを避けると、再び「07」のACはビルの遮蔽を取ろうとする。
が、装備をパージしブレードのみとした唐花の速度は先程よりも上がっている。
ビルの角を曲がった「07」が姿を消し、即座に飛び込む唐花。
目の前に現れるのは、「09」のAC、両手のライフルとレーザーライフルを唐花へと向け。
「それがどうしたってね…!」
構わず踏み込んでブレードを振り切った。
唐花の攻撃が意外だったか、反応の遅れたACは腕でブレードを受け止めようとする。
ガキン、と金属のぶつかる音。
「――分は悪くない!」
白いACの腕に浅く食い込んだブレード。
衝撃を受けた位置から装甲が波打ったかのように見えると、ACの見た目が変化していく。
「賭けはこちらの勝ち。タネは割れたようだ…カメレオン嬢ちゃん」
色は変わらないまま、しかしパーツの細部が変化をおこし、最後に「09」から「07」へ肩のマーキングが変化した。
本来「07」であるはずのACが「09」のACに化けていた、ということか。
「どういう仕掛けかはしらないし…知ったこっちゃないがね!」
このまま機体を両断せんと操縦桿を押し込む。
食い込んだブレードは、しかし中量級にしては想定以上に硬い装甲に阻まれ動かない。
軽く舌打ちをし、だが迷わずグライドブーストを起動。
唐花の背部、ブースタから爆発的な光が吹き出す。
膠着状態にあった二機のACは絡みあったまま、いくつものビルを貫通していく。
「挨拶がわり、ってとこだ…あえて言っときましょうか。…覚えときなってね!」
強引に振りぬいたブレードでACの左腕を断ち切ると、最後に一撃、蹴りを入れて崩壊するビルの中へ「07」のACを叩きこむ。
抵抗しようとブースタを吹いたACは、静止したものの頭上からの瓦礫の落下に巻き込まれる。
―――あれしきでぶっ壊れるたぁ思っちゃいねぇが。
しかし確認をする余裕はない、無茶をしたこちらの機体も既にボロボロだ。
崩壊するビルに背を向けると、グライドブーストを再び起動。
早急に領域外へと離脱した。
「あーあ……なぁんてざまでしょうねぇ」
敵の反応がなくなってからもしばらく警戒をし、ようやく一息ついて唐花より降りる。
見あげればそこにはボロボロになった相棒の姿があった。
相手は片腕小破に対し、こちらは全兵装ロストの上装甲は8割方おじゃん。
トレーラーは逃がし切ったのでミッションとしてはコンプリートだが、どう考えても報酬は修理費用でぶっ飛んでいくだろう。
「こりゃ全面改装かねぇ…号も改めるとしようか」
アルミは「惨式」と書かれたコクピットの張り紙を剥がすと、外に向かって放る。
紙が空に浮き、風にさらわれそうになった瞬間、一閃。
腰に携えていた刀を振るえば、紙は瞬く間も与えず紙吹雪となり大地に散っていく。
「…これで奴らに目をつけられた、知ってもらえた、と思えば…安い授業料だ。………いずれ、追いつくさ…」
鈍く光る刀身を見つめたままの小さな呟きは、唐花の通信ログにすら残らなかった。
最終更新:2013年11月20日 00:31