【オーダーミッション】反逆勢力抹殺【No.050】CASE1「勇ましき抵抗者たち」


難易度: B
依頼主: ノマド統一戦線 アルフセイン
作戦領域: BURIED FACILITY
敵対勢力: 神聖ノマド戦線
敵戦力: 敵AC×2 戦車×16 戦闘ヘリ×2 歩兵
友軍勢力: 戦車×8 装甲車×4 歩兵多数
作戦目標: 基地の防衛、敵部隊の全滅
備考:複数機出撃可能(低ランク数機でも可)
概要:
緊急の依頼だ。
我らノマド統一戦線と共にバンガードに立ち向かっていた神聖ノマド戦線が、突如として反旗を翻し、我々を攻撃している。
こちらも戦力は有しているが、度重なる損失でかなり疲弊している。狂信者どもの攻撃に長くは耐えられないだろう。
ついては君に反逆した勢力の抹殺を頼みたい。
彼らのような狂信者に構っている暇はないのだ。

依頼受諾が間に合うことを、切に願っている。それでは。



 きっとそれは、成功だったのだろう。
 目的は果たしたのだろう。
 期待に応えたのだろう。
 きっとそれは、失敗だったのだろう。
 矜恃が許さなかったのだろう。
 満足に納得できなかったのだろう。
 幾多もの戦場を駆け抜けてきて、そして駆け抜けていく間に出くわした一つの戦場でしかなかった。

 夜だった。
 冷たい空気と冷たい砂がその一帯を支配していた。
 夜は震えるほど寒く、昼は茹だるほど暑く、おおよそ人が住むのに向いた土地では無いだろう。幾多もの破壊と汚染に蹂躙された土地は、それを大自然の驚異とでも賞することが出来るかどうかは疑問の余地があるとはいえ、そのような空間では人など些細な者なのだろう。人など小さくて、いかなる意思と行動を持っていたとしても、それは全て風にかき消され、砂に埋もれていくのだろう。
 そんな砂漠で、炎と熱と光と煙が揚がっていた。
 戦闘だった。

 なんと悲しいことか。
 なんと苦しいことか。
 なんと怒れることか。
 なんと怖ろしいことか。

 戦車の砲弾が、戦車を撃ち抜いたかと思えば、別の戦車は歩兵の放った対戦車ミサイルによって撃ち抜かれた。似たようなやり取りが続き、兵器は瞬時にして鉄くずと化していく。
 ヘリが塹壕に焼夷弾を撃ち込み、火だるまになった歩兵達は、まるで踊るようにのたうち回って息絶えていく。
 ACのライフル弾が、戦車を撃ち抜いていく。撃ち抜かれた戦車は拉げた装甲に挟まれ、あるいは突き刺さり、あるいは衝撃により微塵と散る。
 ヘリが撃ち落とされたかと思えば、そのヘリは基地へと落ちていき黒煙を上げた。けが人を運び込みながら、何人かは消火に急ぐ。だが、弾薬に引火し、炎と共にガレージは吹き飛んだ。けが人もそれを運ぶ者達も一緒に吹き飛んだ。
 戦車同士がぶつかっていき、片方が横転して、砲身が砂の中へと突き刺さった。
 何も判らずに、ただ、頭上を銃弾が行き交っていき、歩兵達はうずくまるしかない。
 ライフルがヘルメットへと突き刺さり、歩兵の一人は気を失う。呼びかけに応じずに、息絶えてしまったように見えた。
 手榴弾を投げた兵士が、何人もの兵士を天へと送り出したと思えば、その手榴弾を投げた兵士は狙撃兵に頭を撃ち抜かれた。
 逃げだそうとした者は、砂に脚を取られ戦車の下敷きとなった。
 何人もの兵が、砂の上を駆けていき、突撃していく。一人一人と歩みやめ、目標にまで辿り着いた者はいない。
 間近で着弾し、辛うじて生きていた者は鼓膜が破られ、全ての音を失った。ただ、全身が爆発と戦場の振動を感じ取り、震え上がる。
 ただ、互いにぶつかり合っていき、引くことを知らない。

 自身を信じて戦う者。
 上官を信じて戦う者。
 信念を信じて戦う者。
 信仰を持って戦う者。
 生きるために戦う者。
 逃れるように戦う者。
 震えながらも戦う者。
 怯えながらも戦う者。
 狂いながらも戦う者。

 散っていく。散っていく。散っていく。全て散っていく。皆が散っていく。

 戦。戦。戦。
 戦が起きている。

 炎。炎。炎。
 燃え上がっている。

 死。死。死。
 散っていく。

 あまりの激しさに、それに比べれば些末な者達が散っていく。
 遙か昔に死んだ大地はその全てを受け入れていく。
 流れた血は砂に染みこんでいく。
 焼け焦げた肉は砂に埋もれていく。
 果たして、魂は冷たい空へと昇っていっただろうか。

 異端者の襲撃があった。
 それを神聖ノマド戦線が迎え撃った。
 どちらもバンガードに対立する立場にあり、かつては共闘、そして今は決別しての戦。
 暴力による解決を行う立場同士、行き着く先は暴力しかなかったのだろう。だが、彼らに暴力以外に何の手段があっただろうか。
 彼方此方で上がっていく黒煙と絶叫は爆風でかき乱されていく。
 ただ、ひたすらに、命と弾薬と兵器が消耗されていく。
 ひたすらに消耗されていく。
 潰えていく。
 誰が覚えているかも判らない。
 誰が語り継ぐかも判らない。
 終われば、ただの良くある出来事となる。
 終われば。
 終わってしまえば。
 全てが終わり、そこで何も無くなる。
 ただ、生きるために戦っているというのに、果たしてこのような些末な者達の小さな抵抗は、戦っていると言えただろうか。
 効果など無に近い抵抗だったのだろうか。
 だが、きっとは、それは、生き残った者達に勇敢であったと伝えられるのだろう。彼らは死んで、初めて勇敢になったのだろう。

 ひたすらに激しい戦場は、次々と動く者が居なくなる。
 異端者達のACが二機いた。どちらも現れた時点で損傷が目立ち、一機は、脚部の関節に破損を受けたのか、バランス悪く歩き、一機は、順調に、その存在感を示すように悠然と歩く。歩兵達からの機関銃やライフル弾は何一つとして効果があるようには思えない。
 だが、一筋の線が悠然と歩くACを貫いた。閃光と大きな爆発が、あたりを照らし出す。
 最後に一歩だけ大きく歩み、燃え上がったまま崩れ落ちた。
 もう一機のACが線が向かってきた方向を見れば、その瞬間に同じように飛んでくる。真正面故に線ではなく、それはパイロットから見れば点として目に映った。脚を壊したACに避ける余裕などなく、真正面から受けた。ヘッドパーツが吹き飛んで、コックピットがむき出しになった。さらに追い打ちとばかりに、一筋の閃光がコックピットを貫き、乗り手は閃光の中にさらされ、影すらも失った。
 何が起きたのか判らず、場は静かになった。
 だが、残った兵士達は片方が怒号と歓声を上げ、片方は背後から銃弾を受けながら逃げていく。
 襲撃を受けた側が生き残った。あまりにも大きな被害に、生き残っただけで、それは勝利と言えるかどうか疑わしいが、生きたことに対する喜びを叫び出す。
 その一方、そこから離れた場所に一機の青いACがいた。スナイパーキャノンの砲身が折りたたまれ、四つの脚の後ろ二つから岩石へと撃ち込まれていたパイルが引き抜かれる。
 全ての悪夢が嘘のような結末。
 全てがひっくり返された結末。
 それでも、間に合ったのかどうかも判らないような曖昧な作戦成功に、ただ、パイロットの女は不満そうにアルトの声で何かを呟いた。


fin.

投稿者:ug
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最終更新:2013年12月22日 19:03