【オーダーミッション】襲撃者陽動【No.060】 導入イベント「駐車場の二人」



「そんな、助けないと! 」
「ダメだ。すぐにこの街を離れる」

 駐車場の一角で、大型バイクが駐輪しており、その傍らにはまだ幼さが残る少年と大柄な男がなにやら話をしていた。親子というほど年が離れている様子もなく、かといって兄弟とも思えない。一見すると関係性がわからない二人組は、注目を浴びそうではあるのだが、周囲には彼らのほかに人影はない。日は落ちて、辺りは暗く、照明が時々ちらつきながら駐車場を照らし出しているだけだ。

「逃げるって、どこに行くんだよ!? 」
「安全な場所だ」
「安全って、僕を守るために来たんだろ!? だったらあいつを倒せよ! 」
「それは難しい」

 取り乱しながら叫ぶのは、トム・コナー。それに対して淡々と応えているのはアーノノレド・T-800だった。
 ここで彼ら二人が話している経緯は、簡単に言えば、ある事情から重要人物とされているトム・コナーをアーノノレド・T-800が護衛しているだけである。何から護衛しているかといえばT-サウザンドとよばれるAC乗りから。
 街のゲームセンターで見つけたトムをアーノノレドが保護し、執拗に追いかけてくるT-サウザンドを何とか振り切って、ひとまずはこの場所に来た。そして、トムにはトムの母もターゲットにされていることを告げた。トムの母は、精神が病んでいると診断を受けて精神病棟に拘束されている。トム自身、アーノノレドからの話を聞くまでは母をおかしくなってしまっているのだと思っていたが、本当のことを言っていたのだと合点がいく。だから、次の標的が母であると知って、いてもたってもいられないのだ。
 だが、T-サウザンドは町のガードから情報を引き出してきているようなので、いつ見つかるかもわからない。情報量の優位性から逃れるためにも、ひとまずは街を出る必要がある。

「なんで!? 」
「あちらは最新鋭機だ。こちらは旧式。装備が十分でも、まともにやりあって勝ち目は薄い」
「……それは、あんたら自体が? 」

 トムがアーノノレドの足先から頭のてっぺんまでを見直しながら言う。

「何の話だ? ACがだ。それに武器のほとんども失い、弾薬も無い。街を出て補給する必要がある」
「だったら、なおさら母さんを助けないと! 」
「どういうことだ? 」
「母さんは、病院に入る前に物資を集めて隠している。ACの武器だってある。場所は母さんしか知らないんだ」
「……」

 アーノノレドはトムを助けるためにレジスタンスに加わっているが、レジスタンスはさほど余裕があるわけではない。物資の補給をうけようにも、ジャンク品や使用期限が過ぎた弾薬を受け取れるかどうか。もともと街を出ても、補給の当てがあるわけではない。ならば、多少のリスクを冒してもトムの母を助けるべきだろうか。だが、間違いなくT-サウザンドはトムの母を抹殺(ターミネート)するために、すでに動いているだろう。

「迷っている暇があったら助けよう! ねぇ。わかるだろ! 」
「だが。俺ではT-サウザンドに対抗できない」
「だからって」
「通信機はあるか? 」
「もっていたけど落とした、いったい何? 」

 アーノノレドは何も言わずに、駐車場の隅に置かれた公衆電話を見つけると、大股で歩いていく。トムはアーノノレドの顔を伺いながら小走りでついていく。

「何? どうするの? 小銭はあるけど? 」
「こうする」

 公衆電話の前に立った、アーノノレドは鋼のように固い拳を電話に叩き込む。電話からはフィーバーしたスロットのマシンのように小銭があふれ出てくる。

「わーお」

 ヒュウと声を漏らしたトムを気にかけずにアーノノレドは小銭を入れて電話をかけだした。

『こちらOVAです。緊急の依頼でしょうか? 』
「こちらは、アーノノ……」

 トムが渋い顔をして顔を横に振る。

「いや、ボブおじさんだ。そう呼んでくれ」

 と名乗りかけた名前を言い直す。そこから短い時間ではあるが、依頼の概要を説明していく。要は、アーノノレドがトムの母を助け出すうちに、T-サウザンドの相手を傭兵に頼むわけである。依頼料は、トムの母を助け、物資を手に入れればどうにかなるだろう。どのような傭兵がくるかもわからないが、それでも時間を稼ぐだけならどうにかなるだろう。現状は何一つとして、改善されてはいない。だが、あてはできた。

「いくぞ」

 二人がバイクに乗って、駐車場から出ていった。


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最終更新:2014年01月03日 02:20