暖色の灯りに包まれた室内には、コンソールが幾つも置かれ、そして男達の怒号が飛び交っていた。
「シクロ・クラーフト本社前強襲部隊、苦戦中です。Aランク相当の傭兵部隊が防衛に当たっており――」
「ハブ施設強襲部隊は撤退中。ACを含む伏兵によって甚大な被害が出ています」
クソったれ、と小さな声で、指揮所の中央辺りに佇む短髪の男が呟く。
「後詰を次々投入しろ、戦力はこちらの方が上だ。必ず押し切れる」
オペレーター達はちらりとお互いの視線を交わした後で、先程指揮官が述べた通りの命令を伝達し始めていた。
その様子を見つめながらに、フン、と指揮官は鼻息を一つ吐く。
先程までの姿勢を崩さず、あくまで堂々とした面持ちのまま、彼は戦況を確認することに徹しようとした。
クスクスクス、と、その彼の耳元に響く声があった。
実に不快そうに表情を歪めながらに、彼は背後へと視線を遣る。そして、そこに立っている白衣を着た長髪の女の姿を認め、彼は目元を細めた。
「黙っていてくれ、貴方の出る幕は無い」
白衣の女性は軽く視線を上げ、そして、不敵に口元を歪めてみせる。
しかし指揮官の男は動じた様子もなく視線を正面のモニターへと戻した。そして、輸送ハブ施設にて戦闘中の部隊がリアルタイムで出力している映像が浮かび上がっているのを確認し、先程と同じように身じろぎ一つせず、瞬き一つしないでいた。
「アラ」
そして、背後の呟きに、再度男は視線を戻した。
「何だ、グレース・ケイル」
「あの黄イロの機タイ」
感情の起伏のない口調で発せられる言葉に、男は煩わしさを隠そうともしない表情を浮かべる。「――一体何の話をしているんだ」
そして、その表情を無視しながら、長髪の女性はニヤリとした笑みを浮かべた。
「この作戦、我々が思ってイる以上ニ重要な作戦になるカモ」
男は先程女性に対して向けたのと同じように、目を細めて不快感を露わにした。ややあって、女性が片手を軽く上げると、そのもとに一人のグレーの軍服を着た女性士官が素早く駆け寄り、傍らにそっと寄り添うことになる。さらに、グレースの耳打ちを二、三聞くと、大きな反応もなく彼女から離れ、そのまま指揮所の出口へと足を向け、駆け去っていった。
グレースはその女性士官が退室するのを見届けることもなく、依然口元に微笑を浮かべながらに、何事かを考えている。
その隣に立つ指揮官の男が、舌打ちを一つする。それでも、彼女は全く表情を崩そうとはしなかった。
最終更新:2015年02月17日 01:37