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――俺達は無敵のコンビだぜ! そうだろ相棒?

アイツが口癖の様に言っていた言葉。
確かにあの頃、自分達に勝てる奴など居ないと思い込んでいた。
事実、名の知れた傭兵とも何度もやり合い、ギリギリの修羅場だって数えるのが億劫な程潜り抜けた。
少なくとも当事の俺達にとってはその自信は驕りではなく積み上げた結果だと信じられたから。

あの時までは。

「ライ! 今回ばかりは想定外だ、頃合を見て退くぞ!」
「冗談だろ相棒? 想定外なんて何時もの事。俺等はいつだってこの程度潜り抜けて来た!」
派手な炸裂音と空気が灼ける嫌な音が響く。
咄嗟にブーストを吹かし機体を捻る、眼前の空間を青白い光が切り裂いていく。
奇妙な「鳥」を思わせるフォルムの物体が二体、機体のカメラに捉えられ忙しなく動き回る。
幾らスキャンをしても表示されるのは『unknown』という表示だけ。
つまる所該当データ無し、未知の存在。
外見はACに似ているがどこかMTの様な特徴もありハッキリしない。
ただ一つ確かな事はこいつらが俺達が排除するはずの武装勢力を既に壊滅させ、突如襲い掛かって来た事だけだ。
「解る敵なら戦い様もあるさ、だがこいつらは何かが違う。汚染地域で出くわす化物機械以上に得体が知れん」
「そんなモン戦えば解るっての! 確かにこいつら手強いが勝てない程じゃねぇ、突っ込むから援護頼むぜ!」
直後ライの灰の機体から吹き上げる炎が立ち上り、一瞬の内に遥か高度へと飛び去る。
「チッ、戦バカが!」
自身も機体のブースターを全開させ、朱い機体が真っ直ぐに「鳥」へと突撃する!
両手に構えた銃器を乱射し青白いパルス弾と真っ赤な火球が戦場を照らす。
幸い「鳥」から放たれるミサイルもレーザーも朱い機体はその如くを撃墜し、焼かれてもギリギリで致命傷を避けている。
「ったく心配性過ぎんだよ、相棒は。 愛してるぜ!」
「鳥」二匹が朱い機体に気を取られた瞬間に灰の機体が踊る、構えた銃口から絶え間なく閃光が煌き「鳥」の上空から雨の様に降り注ぐ!
ライお得意の曰く「下手な弾でも数撃ちゃ死ぬ!」戦法だ。
色々と引用は間違っているが事実、その弾の大半を弾きながらも圧倒的な弾丸量に押し潰される様に「鳥」の一匹は青い光を噴出して爆砕。
残る一匹の鳥が上を見上げた時、この戦は終わりを告げた。
「――お前達が何者かは知らんが……前方注意だ!」
朱い機影が駆ける、激しい炎の尾を引きながらそれその物が一つの弾頭の様に全体重を掛けた蹴りが「鳥」にめり込み、押し潰していく。
金属音と風を切る音が交わり、鳥の鳴き声を奏でるように未知の物体は炎の中へ還る。






戦場には静けさが戻り、聞き慣れた暢気な声がスピーカーから流れてくる。
「ほら、な? 退かなくて良かっただろ。俺の言った通り楽勝だぜ」
「何処が楽勝だ、お前の弾だって半分以上使ってるし俺だって余り余裕は無い」
事実満身相違とは言わないが此処まで追い詰められた事は久しく無かった。
「まぁいいじゃねぇか。 最近は第9領域の方でもクーデター騒ぎだのドンパチがあるって話だし売れっ子は辛いねェ」
「そうだな、この騒ぎで稼ぐだけ稼いだら無事なうちに隠居してバーでもやろうか考えてる所だ」
スピーカーから「ぶっ」と噴出す様な雑音が流れ、笑いを噛み殺した声でおどけながら
「ハハハ、お前がバーテン!? よせよせ、客が逃げるだろ。 オメー鏡見た事あんのか?」
「大きなお世話だ!」
「……ま、お前が出す酒は旨いからな、まだまだコンビは付き合って貰うが楽しみにしてるぜ」
「ツケは無しだぞ」
「金くれー払うっての! ……に、してもここの連中結構手強かった筈だがぞっとしねぇな、こりゃ」
今回の依頼はこの地域を占拠する武装勢力の排除、それなりの規模で保有戦力の中にACも2機は確認されていたが……
現場は無惨な程に破壊し尽くされていた、蟻の子一匹逃がさんとばかりの徹底的な破壊、残骸を見回しても元が何であったのか最早区別が付かない。
「その戦力を排除してかつ俺達を此処まで追い詰める、か」
一瞬過ぎった、嫌な想像を頭から追い出す。
経過はともあれここを占拠していた武装勢力は壊滅した、後は帰還して依頼主に報告するだけだ。
「さ、帰るぞ。あまり長居をしたい場所でもない。……ライ?」
相棒がじっと立ち止って動かない、もしや先程の戦闘で不調でも起こったか?
「……どうやら奴さん俺らを逃がす気は無さそうだぜ」

――「鳥」が鳴いている――

けたたましく警告音がコクピットに響き渡る
上空を見れば先程の「鳥」より一回り、いや二回りはでかい機影が此方を見下ろす様に上空に佇んでいる。
「さしづめ親鳥ってトコか?」
「下らない冗談言ってる場合か。 やれるか?」
掛け合いの中で既に機体も自分達も戦闘モードに切り替わっている。
「オーライ、俺達は無敵のコンビだぜ。そうだろ相棒?」
「当然だ、だが余力は少ない。 今度こそ頃合を見て退くぞ!」
「親鳥」がその翼を広げる。
「了解。 背中は任せたぜ」
「お互い様だ」
二対の機体も炎の翼を広げる、それが会戦の合図。






「クソッ! あの図体でなんて機動だ!」
「オイオイ、俺とどっこい以上とか悪い冗談だぜ!!」
圧倒的だった、火力も速度も此方とは比較にならない。
上空を旋回していた「親鳥」が急降下し、その翼が灰と朱の間を駆け抜ける!
直後鳴り響くアラーム音。
「親鳥」の翼は朱い機体が身を隠した廃墟の残骸ごとバターの様にその左腕を切り飛ばしたのだ。
「相棒!? 無事か!」
通信が届いてる辺りまだシステム面には損傷は受けなかった様だ。
「なんとかな……いいか、俺を置いて今すぐ逃げろ。お前の機体なら何とか逃げ切れる筈だ」
ガンッという叩きつける様な音と共に怒声が返ってくる。
「このデカブツが寝言ほざいてんじゃねぇ! 俺がテメェを残して逃げるわきゃねぇだろが!」
……本当につくづくこいつは傭兵に向かないと何度も思ったが今回は最大級だ。
自分も熱くなるのを必死に抑えながら静かに言葉を続ける。
「……いいから聞け 俺達がコンビを組んだ時の約束は覚えてるな?」
命の削り合いをしている最中だ、間なんて無かった筈だがその時だけは何十秒、何分にも感じた
そして返ってくる返事。
「…どちらか一方がヤバくなってどうしようも無くなったら片方はとっとと逃げる、だ」
「お前でもちゃんと覚えていて安心したぞ、そういう訳だ。 俺等はお互いの約束を違えないって誓ったろ、頼む」
「……了解」
「いいか、今から俺が突っ込む、それに合わせてお前は今直ぐ全力で逃げろ」
「……わーったよ。今だから言うが俺はお前のそのなんでも背負い込むトコが大嫌いだったぜ。…あばよ」
「奇遇だな、俺もお前のその考え無しの単細胞にはウンザリしてた所だ。…じゃあな、生きろよ」
灰の機体から一層激しい炎が立ち上り、遥か上空へ飛び去る。
遠ざかる相棒を確認すると同時に朱の機体から再度炎の翼が顕れ「親鳥」にただ真っ直ぐに直進する。
青白い光が視界を灼き、その朱く彩られた機体を穿っても尚も進む!
「地獄への道連れは無理だろうがお前の翼一つ……貰うぞ!!!」
残った右手でショットガンを乱射しながら機体そのものを直撃させ、暴発させる!
「親鳥」が再び鳴き、機体の爆発と共に中から地面へと放り出される。
しこたま背中を叩きつけ、みっとも無く咳き込んで立ち上がる。
……血で目が良く見えない、まだ生きてる様だがこれまでか。
自嘲気味に笑い顔を上げ、親鳥を見上げる。
親鳥の手には貫かれた自機の残骸…――それと――!
血で視界が塞がれていても解る、あの見慣れた灰色、相棒が自分の性に合わないと嫌がっていた地味な色。
……どうして
「どうして戻って来やがった!!」
「親鳥」に組み付いた灰色の機体「フリークス・Fs」俺達コンビの剣。
もう機体を失い意識も混濁し相棒が最期に何と言ったのかも解らない。
ただ、聞こえた気がした。
『わりーな、相棒……約束破っちまった』
直後、灰色の機体が大爆発し、その閃光が視界を灼き、意識は途切れた。
再び意識が目覚めた時は其処には「親鳥」も「フリークス・Fs」も無く
コンビの盾だった筈の「フリークス・Ms」の残骸だけが無残に転がっていた。


――無敵の傭兵コンビ「ザ・フリークス」はこの日死んだ――


投稿者:アール
最終更新:2012年04月26日 14:07