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セカンドキスはもうしない! - (2009/04/01 (水) 15:16:28) の1つ前との変更点
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~セカンドキスなんてもうしない!~
「…はじめてのちゅう、かぁ~」
私たちの放課後の帰り道、こなたからこんな爆弾発言が飛び出した。
こなたのいつもの気まぐれで帰りに買い物に付き合うことになった私は、
今は二人、駅までの道のりを缶コーヒー片手に、並んで一緒に歩いていた。
「…アンタはなにを突然言い出すのよ…」
彼女の何の脈絡もない、かつ、唐突な話の展開は、慣れているとはいえ、いつも突っ込まざるを得ない。
そして最終的にはその唐突な展開に、いつも私がひどい目に合わされているような気がしてしまう。
でも、これは運命なのだろう。
私はこいつと知り合ってしまったのだ。
誰かがこいつの生け贄となって、世間一般の常識というものを叩き込んでやらないと。
そうしなければきっと私以外の誰かが迷惑をしてしまうから。
そうなれば、友達である私まで、品位が疑われてしまう。
そう、だから私は仕方なく、こいつの隣にいてやってるのだ。
「いやさ?昨日、ネトゲしながらラジオ聞いてたら、なんだか懐かしい歌が流れてきてね。
確か、アニメの歌だった気がするんだけど、なんだか私が聞いたのと違うんだよねぇ~」
「ああ、あの歌ね。色んな人がカバーしてるから聞いたことがあるわ。
アンタが聞いたのもそのうちの一つでしょうね。
へぇ~、でも、アニメの歌だったんだ、あれ」
「そだよ、かがみは見てなかったの?、中々有名なアニメなのに」
「いや、アニメ自体見ないから」
「ふぅ~む…、かがみんオタク化計画もまだまだか…
まぁでも、調教のしがいががあるって事だよね、よしよし…」
こなたはそんなことを言いながら両手の指をわきわきと動かす。
「ちょ、まじ怖いからやめれ!」
「覚悟を決めなよ、か~がみ~ん」
「う、うるさい、寄るな!あっちいけ!!」
私はカバンをブンブン振り回す。
それを巧みに避けるこなた。
こんなところで無駄にいい運動神経を披露すな!
て、うわ、こっち来た!
そこでこなたはぴたりと止まる。
「…んで、その”はじちゅ~”なんだけどね?」
「いや、急に冷めるのもやめてくれないか。ついていけん。
てか、”はじちゅ~”ってなによ。
縮める必要あったか?」
「えぇ?いいじゃん、こっちのほうがカワイイじゃ~ん」
「ええぇ?そう?…うん、まあいいや。
でぇ? その”はじちゅ~”とやらがどうしたのよ。
話題を引っ張るからには面白いネタなんだろうな?」
「面白いかどうかはかがみ次第なんだけどさ?」
「…なによ」
なんだか妙にいやな予感。
これは逃げる準備をしておいたほうがよさそうね。
とりあえず邪魔になる缶コーヒーを飲んでおいて…
「かがみって”はじちゅ~”っていつしたの?」
「――ぶふぅ!!」
私は缶コーヒーを盛大に吹きだした!
「ちょ、汚っ!」
「ゴホッ…っ…だれの、ゥ、せいよ!」
「いやぁ、さすがかがみ。いい反応するね?」
こなたが俯いて咳き込む私をしたからニマニマと覗き込む。
うあ、こいつがこんな顔するときは、絶対ろくなこと考えてない!
「…で、どうなの?かがみ~ん。
もうしちゃった?それとも…、ねえねえ♪」
ニマニマ猫口で徐々に距離をつめてくるこなた。
あぁ、今日もまたこのパターン。
「そんなことなんでアンタなんかに話さなくちゃいけないのよ!」
「いやさ、ちょっと気になっただけなんだけどね?
私も一応乙女じゃん?
そういう話をしなくちゃいけないかなーって考えてさ?」
「そんな理由で話せるか!」
「ええ、いいじゃ~ん、減るもんじゃないんだし。
私のときのことも話してあげるからさ」
「アンタに話したら色々と減るのよ。
…てかあんた、したことあるの!?」
「…気になる?
かがみが素直に白状したら教えてあげなくもないけれど?」
ニマリと笑う顔からは何も読みとれない。こいつめ…
今日はこのネタで私をからかう気だな?
いいだろう、受けてやる。
いつも、そうやすやすからかわれて堪るか!
「別にアンタのなんか気にもしないわよ。
それに、私だってキスのひとつやふたつ。
あるに決まってるじゃない!」
と、いっても物心つく前に、お父さんとしたことがあるって話を聞いただけで、実際はそんなロマンスなんてないんだけどね。
でも、さあこれでこなたはどう出るか。
「むぅ、あるの?かがみ!
うそだぁ~、顔に書いてあるよ?」
「ホントよ、つかさに聞いてみな」
「う、うそだ、そんなの!」
お、うろたえてる。珍しい。
だけどこれはしてやったり。
いつも迷惑をかけられている分には程遠いけど、少しは溜飲が下がるというものだ。
「嘘って証拠でもあるのかぁ?
お子様のアンタとは違うのよ」
「かがみもしたって証拠なん…って、かがみ、後ろ!」
「えぇ?―きゃっ…ちょ!」
たまたま後ろ歩きで話してたのがいけなかったのか、
こなたと話すのに夢中で、周りが見えていなかったのかもしれない。
だから、私は、道にあるほんの少しの段差に気が付かなかった。
「――きゃあ!!」
それに足をとられ、後ろ向きにバランスを崩し、思い切りお尻から地面に落ちる。
一応、両手をついて受身をとったけど、痛いことには変わりない。
「大丈夫?かがみ~」
こなたが小走りで寄ってくる。
「――痛ったぁ~…お尻が…って、あ!
こ、こなた、来るな!
なんだかベタなことになりそうな気がする!
私は大丈夫だからぁ!」
「そんな、漫画やアニメじゃないんだから。
いいから手を…って、おわっ!ちょ!」
彼女は予想どうり、道の小石につまずいた。
「やっっっぱり~~~~~ぃ!!」
私は断末魔の叫び声を上げる。
「「 んむぅ!! 」」
重なる悲鳴。
でも重なったのは声だけじゃない。
まるで狙いすましたかのように、こなたの唇が、私の唇に重ねられた。
その間、ほんの5秒ほどだろう。
私は顔を少し横にずらして、唇から逃げようと試みる。
「~んはっ!はぁ…こ、こなた、とりあえずどけなさっ……んむぅ!?」
なに?なんなの?
再びこなたがキスをした。
逃げようと暴れる私を両手で押さえ込み、乱暴に唇を押し付ける。
…私は彼女の何の脈絡もない、かつ、唐突な話の展開は、
慣れている。
慣れてはいるが…
慣れてはいるのに…
こんな!
こんなぁ!!
こんなことぉ~~~!!!
彼女の柔らかな感触が、息遣いが、香りが、温もりが…
私を真っ白に塗り替える。
抵抗する力が消えうせて、暴れることをやめても、なお、こなたは私を放してはくれない。
むしろ、よしといわんばかりに、今度はやさしく、唇を弄んできた。
「んっ!…ふぅ………ぅむ!」
「ん~~~~~~~~~……っん! ぷはぁっ!
うむ、コーヒー味…って、かがみ?」
「…はぁ、…はぁ…」
白い世界が広がる中、やっと解放されたのを知る。
は、早く…何か言わなくちゃ、
いつもどおり、言わないと…
「あ、あんた…はぁ…っん……どういう…つもりよ…!」
ギリギリの理性ではこれが限界。
てか私、よくしゃべれた。
今だ腰には力が入らないというのに。
そんな様子の私に乗っかったまんまの彼女は
「あ、やりすぎちゃったかな?」的な顔をしながら徐々に私から離れていく。
私に手を差し出してくれるけど…取れるわけないじゃない、馬鹿!
「…ごめんて、かがみ。
いやさ、実は私ね?…さっきのがファーストキスだったんだよね。
だけどかがみがすぐ離そうとしたじゃん?
せっかくの”はじちゅ~”なのにもったいなくってさ~…」
「…で?」
「一生分の思い出になるようにって…つい。」
「だからってこんなの! 私だって…!」
「…だって?」
う、失言。
つい興奮して言いそうになった。
てかもう遅い。こなたが例のニマニマ顔に戻ってる!
「だって…なんなのかな?か~がみん。
あんなこと言っといて…もしかしてかがみも…」
お願い、後生、言わないで!!
い、意識しちゃうから!
「…はじちゅ~?」
はぅ!
その台詞にココロが持っていかれる。
さっきまで白だった私は、みるみる赤一色に染められた。
「ごめ~ん、かがみんの初めてのちゅう、う・ばっ・ちゃっ・た・♪」
…こいつ全然悪いとか思ってねぇ。
「ち、違うわよ!てか、こんなのノーカンよノーカン!
ノーカウントよ!!」
「えぇ~、カウントしようよかがみ。
せっかくさっきまであんなに熱く愛し合ったんだからさぁ」
「あああ愛し合うとかいうなぁぁぁぁぁぁぁ!!
だいたいアンタが無理やりしてきたんじゃない。
女の子同士なんだし、あんなのノーカンよ!」
「え~~…、ケチ」
なにがケチだ。
近くにあった電柱につかまりながら、何とか私は起き上がる。
まだひざが笑ってるし…
それでも、こなたには頼るまいと、自分の足でしっかり立った。
「………」
「…なによ」
「んふ、なんかいいこと思いついちゃったよ♪」
いやな予感、この上なにをしでかす気ですか!?
その瞬間、こなたの身体が消えたように見えた。
そして、私の眼前にシュバッと現れる。
「んふふ、かがみ~ん…えいや!」
真正面から私の首に腕をかけると、それを前に持っていく。
まださっきの余韻が足にきている私の体勢を崩すのは容易だった。
そして…
「いっただっき、はむ♪」
「――ふむぅ!!」
またかーーーーー!!
「ん~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~…」
長い!長いから!!
「…~~~~~~~~~~~んっ!はふぅ…ゴチ!」
「んはぅ…!、はぁ、はぁ…
わ、私のセカンドキスまで…」
もう泣きたい。
しかし、まるで私のその台詞を待っていたかのように、こなたはにやりと怪しく微笑んだ。
「あれあれ~?かがみんさっきのノーカンって言ったよねぇ?
いつの間にカウントしちゃったのかなぁ?」
「 !! 」
ニマニマとにじり寄ってくるこなたの顔。
背中とうなじにまわされた腕から逃れられるすべはない。
「だ~か~ら~、これも!」
「はむぅ!」
「こ~れ~も!」
「ぁんむ…ぁん」
「こんなところも!!」
「や、こなた…!そこ違っ!!んむぅ」
こなたが私の色んなところにキスをする。
私はもう赤なの白なのか。
ぐるぐる回る思考にめまいさえ覚える。
そして、この次に来るこなたの台詞に私は完全に打ちのめされる事になった。
「すごい、すごいよ!」
なにがだ!…て、もう声さえ出ない。
「だって!
私とかがみとのキスって全部ノーカンだから…」
彼女は両手をいっぱいに広げて、満面の笑顔をうかべた。
「つまりはぜ~~んぶ、ファーストキスってことじゃん!!」
「―――――――――!!!?」
「…だから、はむ!」
再び唇を奪われる。
「…~~んは!これも”はじちゅ~”だったけど、かがみがノーカンにしちゃうから。
はい!今の瞬間、かがみはまだ未経験♪」
「な、なななななななな!!」
「んふふ、すごいでしょ?かがみん。
あ、そうだ!私のもいっそノーカンにしよう!
そうすれば二人でず~~~っと”はじちゅ~”できるよね?
よし、そうしよう!
じゃあ、さっそく、次の”はじちゅ~”を…」
「お、おま!何回やれば気がすむんだ!?
しかもこんな見通しのいい路上で!
誰か来たら、どうするんだ!」
「ええ、いいじゃん別に。
どうせノーカンなんだしさ?
二人でファーストキスを堪能しようよ~。
じゃあ、今からかがみんちに行くね?
二人きりならいいんでしょ?」
「いいわけあるかぁーーーー!!」
叫ぶと同時に反転ダッシュ!
「ああ、かがみが逃げる!
まぁってよぉ~!
一緒に”はじちゅ~”しようよ~!
そんなに照れなくてもいいからさ。
やさしくするからさーーー!」
「知るかぁーーー!!」
私は涙目で走り出した。
なにがはじちゅ~だ。
なにがずっとファーストキス、だ!
ひ、人の初めてを…
よりによってあんなところでだなんて…
そしてなにが一番腹が立つかって…
何で「うれしいかも」とか思ってんのよ、わたし~~~!!
違う、ダメだ、こんなの絶対ノーカンだ。
ああでもノーカンにしちゃうと、はじちゅーとかいって、私が認めるまでキスしてきそうだし、かといってファーストキスと認めてしまうと、
「あれ?かがみんカウントしちゃうんだ。私とのちゅう、認めちゃうんだ♪」
…とか言って、さらに弄り回されるだろう。
…それだけは絶対にダメだ。
ここで認めてしまったら、私からこなたを意識してますって言っているようなものだ。
そんなの認められるわけ、ないじゃない!
散々振り回されてはいるけれど、私にだって意地はある。
それは子供のころからの夢。
本当にホントに大好きな人からの
「 愛してる 」
…って、その一言。
それからじゃなきゃ、ファーストキスなんて始まらない。
私はちらりと後ろを確認する。
私の視線に気付いたのか、こなたが幸せそうに笑う。
いったい何がうれしいんだか…私は、はぁ、とひとつため息。
こんな様子じゃ、いったいいつになるかわからない。
だけど私は待とうと思う。
大丈夫…時間はある。
だってこれは運命なのだから。
私がこいつと知り合ってしまったのだって、そう運命。
誰かがこいつの生け贄となって、世間一般の常識というものを叩き込んであげていないと…だからずっとそばにいる。
そう、だから私は仕方なくって建前で、こなたの隣にいてやろう。
でも、あんまり待たされるのはいやだからね?
だからちゃんと言いなさいよね?バカこなた。
私からなんて、絶対に言ってあげないんだから!
再び、後ろを振り返り、小さな少女に笑顔を向けた。
きっと言ってくれると信じてる。
私の大好きな少女にむけて。
ファーストだってセカンドだって、ぜ~んぶアンタで予約済みなんだから、ね♪
~セカンドキスなんてもうしない?~ END
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~セカンドキスなんてもうしない!~
「…はじめてのちゅう、かぁ~」
私たちの放課後の帰り道、こなたからこんな爆弾発言が飛び出した。
こなたのいつもの気まぐれで帰りに買い物に付き合うことになった私は、
今は二人、駅までの道のりを缶コーヒー片手に、並んで一緒に歩いていた。
「…アンタはなにを突然言い出すのよ…」
彼女の何の脈絡もない、かつ、唐突な話の展開は、慣れているとはいえ、いつも突っ込まざるを得ない。
そして最終的にはその唐突な展開に、いつも私がひどい目に合わされているような気がしてしまう。
でも、これは運命なのだろう。
私はこいつと知り合ってしまったのだ。
誰かがこいつの生け贄となって、世間一般の常識というものを叩き込んでやらないと。
そうしなければきっと私以外の誰かが迷惑をしてしまうから。
そうなれば、友達である私まで、品位が疑われてしまう。
そう、だから私は仕方なく、こいつの隣にいてやってるのだ。
「いやさ?昨日、ネトゲしながらラジオ聞いてたら、なんだか懐かしい歌が流れてきてね。
確か、アニメの歌だった気がするんだけど、なんだか私が聞いたのと違うんだよねぇ~」
「ああ、あの歌ね。色んな人がカバーしてるから聞いたことがあるわ。
アンタが聞いたのもそのうちの一つでしょうね。
へぇ~、でも、アニメの歌だったんだ、あれ」
「そだよ、かがみは見てなかったの?、中々有名なアニメなのに」
「いや、アニメ自体見ないから」
「ふぅ~む…、かがみんオタク化計画もまだまだか…
まぁでも、調教のしがいががあるって事だよね、よしよし…」
こなたはそんなことを言いながら両手の指をわきわきと動かす。
「ちょ、まじ怖いからやめれ!」
「覚悟を決めなよ、か~がみ~ん」
「う、うるさい、寄るな!あっちいけ!!」
私はカバンをブンブン振り回す。
それを巧みに避けるこなた。
こんなところで無駄にいい運動神経を披露すな!
て、うわ、こっち来た!
そこでこなたはぴたりと止まる。
「…んで、その”はじちゅ~”なんだけどね?」
「いや、急に冷めるのもやめてくれないか。ついていけん。
てか、”はじちゅ~”ってなによ。
縮める必要あったか?」
「えぇ?いいじゃん、こっちのほうがカワイイじゃ~ん」
「ええぇ?そう?…うん、まあいいや。
でぇ? その”はじちゅ~”とやらがどうしたのよ。
話題を引っ張るからには面白いネタなんだろうな?」
「面白いかどうかはかがみ次第なんだけどさ?」
「…なによ」
なんだか妙にいやな予感。
これは逃げる準備をしておいたほうがよさそうね。
とりあえず邪魔になる缶コーヒーを飲んでおいて…
「かがみって”はじちゅ~”っていつしたの?」
「――ぶふぅ!!」
私は缶コーヒーを盛大に吹きだした!
「ちょ、汚っ!」
「ゴホッ…っ…だれの、ゥ、せいよ!」
「いやぁ、さすがかがみ。いい反応するね?」
こなたが俯いて咳き込む私をしたからニマニマと覗き込む。
うあ、こいつがこんな顔するときは、絶対ろくなこと考えてない!
「…で、どうなの?かがみ~ん。
もうしちゃった?それとも…、ねえねえ♪」
ニマニマ猫口で徐々に距離をつめてくるこなた。
あぁ、今日もまたこのパターン。
「そんなことなんでアンタなんかに話さなくちゃいけないのよ!」
「いやさ、ちょっと気になっただけなんだけどね?
私も一応乙女じゃん?
そういう話をしなくちゃいけないかなーって考えてさ?」
「そんな理由で話せるか!」
「ええ、いいじゃ~ん、減るもんじゃないんだし。
私のときのことも話してあげるからさ」
「アンタに話したら色々と減るのよ。
…てかあんた、したことあるの!?」
「…気になる?
かがみが素直に白状したら教えてあげなくもないけれど?」
ニマリと笑う顔からは何も読みとれない。こいつめ…
今日はこのネタで私をからかう気だな?
いいだろう、受けてやる。
いつも、そうやすやすからかわれて堪るか!
「別にアンタのなんか気にもしないわよ。
それに、私だってキスのひとつやふたつ。
あるに決まってるじゃない!」
と、いっても物心つく前に、お父さんとしたことがあるって話を聞いただけで、実際はそんなロマンスなんてないんだけどね。
でも、さあこれでこなたはどう出るか。
「むぅ、あるの?かがみ!
うそだぁ~、顔に書いてあるよ?」
「ホントよ、つかさに聞いてみな」
「う、うそだ、そんなの!」
お、うろたえてる。珍しい。
だけどこれはしてやったり。
いつも迷惑をかけられている分には程遠いけど、少しは溜飲が下がるというものだ。
「嘘って証拠でもあるのかぁ?
お子様のアンタとは違うのよ」
「かがみもしたって証拠なん…って、かがみ、後ろ!」
「えぇ?―きゃっ…ちょ!」
たまたま後ろ歩きで話してたのがいけなかったのか、
こなたと話すのに夢中で、周りが見えていなかったのかもしれない。
だから、私は、道にあるほんの少しの段差に気が付かなかった。
「――きゃあ!!」
それに足をとられ、後ろ向きにバランスを崩し、思い切りお尻から地面に落ちる。
一応、両手をついて受身をとったけど、痛いことには変わりない。
「大丈夫?かがみ~」
こなたが小走りで寄ってくる。
「――痛ったぁ~…お尻が…って、あ!
こ、こなた、来るな!
なんだかベタなことになりそうな気がする!
私は大丈夫だからぁ!」
「そんな、漫画やアニメじゃないんだから。
いいから手を…って、おわっ!ちょ!」
彼女は予想どうり、道の小石につまずいた。
「やっっっぱり~~~~~ぃ!!」
私は断末魔の叫び声を上げる。
「「 んむぅ!! 」」
重なる悲鳴。
でも重なったのは声だけじゃない。
まるで狙いすましたかのように、こなたの唇が、私の唇に重ねられた。
その間、ほんの5秒ほどだろう。
私は顔を少し横にずらして、唇から逃げようと試みる。
「~んはっ!はぁ…こ、こなた、とりあえずどけなさっ……んむぅ!?」
なに?なんなの?
再びこなたがキスをした。
逃げようと暴れる私を両手で押さえ込み、乱暴に唇を押し付ける。
…私は彼女の何の脈絡もない、かつ、唐突な話の展開は、
慣れている。
慣れてはいるが…
慣れてはいるのに…
こんな!
こんなぁ!!
こんなことぉ~~~!!!
彼女の柔らかな感触が、息遣いが、香りが、温もりが…
私を真っ白に塗り替える。
抵抗する力が消えうせて、暴れることをやめても、なお、こなたは私を放してはくれない。
むしろ、よしといわんばかりに、今度はやさしく、唇を弄んできた。
「んっ!…ふぅ………ぅむ!」
「ん~~~~~~~~~……っん! ぷはぁっ!
うむ、コーヒー味…って、かがみ?」
「…はぁ、…はぁ…」
白い世界が広がる中、やっと解放されたのを知る。
は、早く…何か言わなくちゃ、
いつもどおり、言わないと…
「あ、あんた…はぁ…っん……どういう…つもりよ…!」
ギリギリの理性ではこれが限界。
てか私、よくしゃべれた。
今だ腰には力が入らないというのに。
そんな様子の私に乗っかったまんまの彼女は
「あ、やりすぎちゃったかな?」的な顔をしながら徐々に私から離れていく。
私に手を差し出してくれるけど…取れるわけないじゃない、馬鹿!
「…ごめんて、かがみ。
いやさ、実は私ね?…さっきのがファーストキスだったんだよね。
だけどかがみがすぐ離そうとしたじゃん?
せっかくの”はじちゅ~”なのにもったいなくってさ~…」
「…で?」
「一生分の思い出になるようにって…つい。」
「だからってこんなの! 私だって…!」
「…だって?」
う、失言。
つい興奮して言いそうになった。
てかもう遅い。こなたが例のニマニマ顔に戻ってる!
「だって…なんなのかな?か~がみん。
あんなこと言っといて…もしかしてかがみも…」
お願い、後生、言わないで!!
い、意識しちゃうから!
「…はじちゅ~?」
はぅ!
その台詞にココロが持っていかれる。
さっきまで白だった私は、みるみる赤一色に染められた。
「ごめ~ん、かがみんの初めてのちゅう、う・ばっ・ちゃっ・た・♪」
…こいつ全然悪いとか思ってねぇ。
「ち、違うわよ!てか、こんなのノーカンよノーカン!
ノーカウントよ!!」
「えぇ~、カウントしようよかがみ。
せっかくさっきまであんなに熱く愛し合ったんだからさぁ」
「あああ愛し合うとかいうなぁぁぁぁぁぁぁ!!
だいたいアンタが無理やりしてきたんじゃない。
女の子同士なんだし、あんなのノーカンよ!」
「え~~…、ケチ」
なにがケチだ。
近くにあった電柱につかまりながら、何とか私は起き上がる。
まだひざが笑ってるし…
それでも、こなたには頼るまいと、自分の足でしっかり立った。
「………」
「…なによ」
「んふ、なんかいいこと思いついちゃったよ♪」
いやな予感、この上なにをしでかす気ですか!?
その瞬間、こなたの身体が消えたように見えた。
そして、私の眼前にシュバッと現れる。
「んふふ、かがみ~ん…えいや!」
真正面から私の首に腕をかけると、それを前に持っていく。
まださっきの余韻が足にきている私の体勢を崩すのは容易だった。
そして…
「いっただっき、はむ♪」
「――ふむぅ!!」
またかーーーーー!!
「ん~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~…」
長い!長いから!!
「…~~~~~~~~~~~んっ!はふぅ…ゴチ!」
「んはぅ…!、はぁ、はぁ…
わ、私のセカンドキスまで…」
もう泣きたい。
しかし、まるで私のその台詞を待っていたかのように、こなたはにやりと怪しく微笑んだ。
「あれあれ~?かがみんさっきのノーカンって言ったよねぇ?
いつの間にカウントしちゃったのかなぁ?」
「 !! 」
ニマニマとにじり寄ってくるこなたの顔。
背中とうなじにまわされた腕から逃れられるすべはない。
「だ~か~ら~、これも!」
「はむぅ!」
「こ~れ~も!」
「ぁんむ…ぁん」
「こんなところも!!」
「や、こなた…!そこ違っ!!んむぅ」
こなたが私の色んなところにキスをする。
私はもう赤なの白なのか。
ぐるぐる回る思考にめまいさえ覚える。
そして、この次に来るこなたの台詞に私は完全に打ちのめされる事になった。
「すごい、すごいよ!」
なにがだ!…て、もう声さえ出ない。
「だって!
私とかがみとのキスって全部ノーカンだから…」
彼女は両手をいっぱいに広げて、満面の笑顔をうかべた。
「つまりはぜ~~んぶ、ファーストキスってことじゃん!!」
「―――――――――!!!?」
「…だから、はむ!」
再び唇を奪われる。
「…~~んは!これも”はじちゅ~”だったけど、かがみがノーカンにしちゃうから。
はい!今の瞬間、かがみはまだ未経験♪」
「な、なななななななな!!」
「んふふ、すごいでしょ?かがみん。
あ、そうだ!私のもいっそノーカンにしよう!
そうすれば二人でず~~~っと”はじちゅ~”できるよね?
よし、そうしよう!
じゃあ、さっそく、次の”はじちゅ~”を…」
「お、おま!何回やれば気がすむんだ!?
しかもこんな見通しのいい路上で!
誰か来たら、どうするんだ!」
「ええ、いいじゃん別に。
どうせノーカンなんだしさ?
二人でファーストキスを堪能しようよ~。
じゃあ、今からかがみんちに行くね?
二人きりならいいんでしょ?」
「いいわけあるかぁーーーー!!」
叫ぶと同時に反転ダッシュ!
「ああ、かがみが逃げる!
まぁってよぉ~!
一緒に”はじちゅ~”しようよ~!
そんなに照れなくてもいいからさ。
やさしくするからさーーー!」
「知るかぁーーー!!」
私は涙目で走り出した。
なにがはじちゅ~だ。
なにがずっとファーストキス、だ!
ひ、人の初めてを…
よりによってあんなところでだなんて…
そしてなにが一番腹が立つかって…
何で「うれしいかも」とか思ってんのよ、わたし~~~!!
違う、ダメだ、こんなの絶対ノーカンだ。
ああでもノーカンにしちゃうと、はじちゅーとかいって、私が認めるまでキスしてきそうだし、かといってファーストキスと認めてしまうと、
「あれ?かがみんカウントしちゃうんだ。私とのちゅう、認めちゃうんだ♪」
…とか言って、さらに弄り回されるだろう。
…それだけは絶対にダメだ。
ここで認めてしまったら、私からこなたを意識してますって言っているようなものだ。
そんなの認められるわけ、ないじゃない!
散々振り回されてはいるけれど、私にだって意地はある。
それは子供のころからの夢。
本当にホントに大好きな人からの
「 愛してる 」
…って、その一言。
それからじゃなきゃ、ファーストキスなんて始まらない。
私はちらりと後ろを確認する。
私の視線に気付いたのか、こなたが幸せそうに笑う。
いったい何がうれしいんだか…私は、はぁ、とひとつため息。
こんな様子じゃ、いったいいつになるかわからない。
だけど私は待とうと思う。
大丈夫…時間はある。
だってこれは運命なのだから。
私がこいつと知り合ってしまったのだって、そう運命。
誰かがこいつの生け贄となって、世間一般の常識というものを叩き込んであげていないと…だからずっとそばにいる。
そう、だから私は仕方なくって建前で、こなたの隣にいてやろう。
でも、あんまり待たされるのはいやだからね?
だからちゃんと言いなさいよね?バカこなた。
私からなんて、絶対に言ってあげないんだから!
再び、後ろを振り返り、小さな少女に笑顔を向けた。
きっと言ってくれると信じてる。
私の大好きな少女にむけて。
ファーストだってセカンドだって、ぜ~んぶアンタで予約済みなんだから、ね♪
~セカンドキスなんてもうしない?~ END
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- これはねぇ、衝撃的でした。素晴らしいです。GJ!! -- 名無しさん (2009-04-01 15:16:28)
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