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最近、泉こなたの様子がおかしい。柊かがみがそのことに気が付いたのは、冬休みも終わり、新学期が始まってそう間も無いことだった。  具体的に何がおかしいのか、その兆候は既に冬休みの間から垣間見えていたように感じる。  第一にこなたが冬休みの宿題を写しに来なかったこと、それが始まりだったと気付くべきだったのかもしれない。  本来、毎回長期休みの終わりに全く手をつけなかった宿題を何とかクリアする為に、こなたはかがみを頼ってくる。  だから冬休み最終日、こなたが何時来ても良い様に、かがみは出された宿題を科目ごとに纏め、さらに、客人をもてなす意味もかねて取って置きの紅茶とクッキーを開けて待っていた。  だが、何時まで経っても何時まで経っても、こなたからの連絡はなく、また、柊家へ訊ねてくることも無かった。  無論、かがみはこの状況を指を加えて見ていただけではなく、こちらからこなたにアプローチを取ろうと連絡をしたのだが、こなたの携帯は圏外となっており、泉家の電話は留守番電話になっていた。  この時のかがみは、こなたは出かけているか、もしくはついに自分で宿題をやる気になったのかと楽観視していたのだが、1月7日、始業式のこの日にこなたから「ゴメン、遅れるから先に行ってて」というメールが入ったことで、楽観から、疑念へと変わった。  普段のこなたなら多少遅れることがあってもそういったメールはよこさない。「いやぁ、お待たせ~」なんて言って来るのが常のことだった。  そして、極めつけは学校で擦れ違った時のことだ。「よう」とか「ヤフー」といった挨拶は交わした。だが、それだけで、こなたはかがみの顔を直視することなく、「日直だから」とボソボソ呟くと走り去っていった。  一体、こなたに何があったのか。私は、こなたに嫌われるような事をしたのだろうか。かがみには、一体、こなたの身に何が起きているのか分からなかった。 「まぁ、分からないことはみゆきに聞けばいいか」  図らずも、こなたと同じ結論に達したかがみは、やはり知識の宝庫、高良みゆきにこなたのことについて相談を持ちかけた。 「え? 泉さんの様子がおかしい、ですか?」  かがみの話を聞いたみゆきの第一声がそれだった。同じクラスにいたのにそんなことにも気が付かないとは、かがみは少しだけ腹が立ったが、それを面に出さず会話を続ける。 「うん、なんていうか、最近私避けられてるし、なんか心ここに非ずっていった感じで……えっと、まぁ、その、心配なのよ。同じクラスのみゆきなら何か知ってるんじゃないかと思って」  かがみの話を聞いたみゆきは、先日こなたに持ちかけられた相談を思い返していた。 『かがみと一緒にすると、胸がもやもやして、甘酸っぱい気持ちになる』  こなたは、そう言った。そして、みゆきは、その蓄えられた知識から状況をシミュレートし、こなたはかがみに恋心を抱いている、という結論に達した。  だが、みゆきはあえて、こなたにその答えを言う事を避けた。何故なら、みゆき自身は恋愛関係に縁遠いため、想像できても確信した答えは無い。故に、憶測で物を言うことはかえってこなたを混乱させるだろうから。  そしてもう一つ、答えが躊躇われた理由が、同性愛、ということにある。  現在、同性愛というものは世間的に認められているとは言い難い。普段はおちゃらけた様に見えるこなたも、当然、その辺りのことは知っているだろう。  故に、ここで迂闊に「それは恋でしょう」と言う事は、かえって良くない結果を招く、その結論付けたのだ。  だが、普段のやり取りから見て、みゆきの見立てではかがみも同じく、こなたに恋心を抱いていると思われる。こちらもやはり本人は気が付いていないようだが。  後、二人に必要なのは自らの感情に気が付く切欠。第3者から指摘されるのではなく、感情の意味に自分で気付き、同性愛、という壁を自らの力で崩すこと。  とは言え、今の状況では、その感情が余計なわだかまりを生んでいる。まずは自然な状態に戻すことが一番。 「そうですね、泉さんが何かを悩んでいるのは傍目からも分かっていたのですが。だけど、一体何に悩んでいるのか……そうですね、試しに泉さんを後ろから抱きしめて‘アイラヴユー’とでも囁いてみてはいかがでしょう?」 「は、はぁ!?そんなの、一体誰がやるって言うのよ!」  突然の提案に戸惑うかがみ、だが、対照的にみゆきは余裕の表情で、 「かがみさん以上の適任がいるとは思えませんが?」  そう、述べた。かがみは顔をこれ以上赤く出来ないほど染めながら、 「そ、そんな事,出来るわけないでしょ……」 「では、私がやりましょうか」  その時のかがみの表情は自分では分からなかった、が、みゆきには見えていたようで、クスクスと笑いながら、 「冗談ですよ。私がそんな事をすれば余計に泉さんを混乱させるでしょうから」  どこぞの超能力者のように、前髪を指で爪弾きながら微笑んだ。  結局、どうしたらいいか、という結論は出ずに、休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴った。  かがみとみゆきはそれぞれの教室に向かって走りながらそれぞれに頭の中で先程の話を整理している。と、ポツリとみゆきが呟いた。 「そういえば、先程泉さんの机の中に、手紙が入っていたんですよ。お昼休みに体育館の裏で会いたい、という内容のね」 「!!! それ、ホント?」 「ええ、大マジです。一体誰が呼び出したのか、興味があるので見に行ってみようと思うのですが、かがみさんはいかがです?」  しばしの逡巡の後、かがみは頷いた。  さて、お昼休み。いつもならこなた、かがみ、つかさ、みゆきで食卓を囲むのだが、今日に限っては「私は用事があるんだよね~」と席を外したこなた。  そして、こなたの動向を見極める為に密かに後を尾けるかがみ、みゆきが同じく席を外した為、残されたつかさは隣のクラスで峰岸あやのと昼食を共にすることになった。  あやのといつも一緒にいる日下部みさおの姿は無い。 「あれ、日下部さんはどうしたの?」  つかさの問いに、あやのは少し笑うと、 「恋のキューピッド」とだけ答えた。  場面が変わって体育館の裏。冬のこの時期ただ立っているのは辛いのだが、こなたはそれすらも感じていないようで、ただ、ぼんやりとしていた。  それを物陰から眺めるかがみとみゆき。こちらも、緊張からか寒さは全く感じない。 「一体、こなたを呼び出した奴は誰なのかしら……」  かがみがそう呟いた時、人影が体育館の横を通り過ぎ、こなたの目の前に立った。 「――――っ!」  声にならない悲鳴を上げるかがみ。現れたのは中学からの腐れ縁、こなたとはまた別の意味での親友、日下部みさおだった。 「よっ、ちびっこ子、お待たせ」  気楽に手を挙げて挨拶をするみさお。ある程度気が合うこなたも同じように返礼し、みさおの方に近づく。 「あの手紙、みさきちだったんだ……」  僅かに声を震わせながら、尋ねるこなた。対照的にみさおは明朗快活な口調で、 「うん。どうしても直接言いたいことがあってな」  こなたに直接言いたいこと、かがみの中で、この先のシチュエーションが予想される。そして、かがみの心を読んだようにみゆきが、 「なんだか、告白シーンみたいですね」  そう、囁いた。  ビクッとしたかがみは、あらん限りの常識を持って反論する。 「そ、そんな、だっ、だって女の子同士よ?ありえるわけ無いじゃない!」  それすらも予期していたようにみゆきは、 「一概にそうとは言えませんよ?同性婚を認めている国もありますし。何より、男女間の生殖行為に囚われない分、同性愛は純粋に愛情で推し量ることが出来ますから」  かがみは、反論する言葉が見つからなかった。日下部が、こなたを……?そう思うと、とても不愉快な気持ちが腹の底から這い上がってくる。 「あ、あのさ、ちびっ子……」 「な、何、みさきち?」 「実は私……」  日下部の次の言葉が怖い、もし、愛の告白だったら、こなたは、受け入れてしまうのだろうか?  そこまで考えた瞬間、かがみは無意識に物陰を飛び出し、二人の下へ走り出す。  日下部の言葉が言い終わる前に、こなたが、それを受け入れる前に。こなたは、私の……。  だが、二人までの距離があと少し、という所で、無情にもみさおが言葉の続きを繋いだ。 「あのゲーム、貸して欲しいんだよっ!」  ……は? 「ちびっ子が話してるのを聞いてるとやりたくなってくるんだよなぁ。な、この通り、頼むゼ、ちびっ子」  唖然とするこなた、呆然とするかがみ、微笑むみゆき、ニカッと笑うみさお。四者四様を持って、時が止まる。 「よぉ、柊!」  最初に復帰したのはみさお。次いで、こなたがかがみに気が付く。 「あれ?かがみ、どったの?」 「え?あ、いや……」  そのやり取りを見ていたみゆきが、聖母が如く微笑んだまま、口を開いた。 「かがみさんは、泉さんが誰に呼び出されたのか気になって、ここまで後を尾けてたんですよ」  その言葉に、かがみの顔は爆発し、こなたはにやぁ、と口元を緩めた。 「んふふ~?かがみんは私のことが気になったってこと?」 「ち、違うわよ!た、ただ私たちとのお昼より優先する用事がなんだったのか、知りたかっただけ。べ、別に深い意味は無いわよ」  かがみの言い方は、典型的なツンデレ。あまりの可愛さに、思わずこなたはかがみに抱きついた。 「ツンデレかがみん、萌え~!!」 「や、やめろ、引っ付くなって!もう、こなたぁっ!!」  そんなじゃれあいをしている二人を目の端に捉えながら、みゆきはみさおに礼を言った。 「ありがとうございます、無茶なお願いだったにも拘らず、了承していただいて」 「んあ?いいって、いいって。これぐらいお安いご用さ」  そう言って手を振るみさお。  みゆきが先程、かがみに言った「こなたが呼び出されている」という話は、実は嘘だった。  この話にかがみがどう答えるか、それによって二人の関係を後押しするかどうか判断しようとみゆきは考えたのだ。  そして、みゆきの問いにかがみは首肯した。故に、嘘を真にする為に、あやのとみさおに協力を仰ぎ、本当にこなたを呼び出した。  じゃれあいを続けるこなたとかがみ。とりあえず、こなたとかがみのわだかまりは解消されたようだ。 (ファーストステージ終了、ですかね。お二人には自分の気持ちに気付いていただきませんと、壁は高くて厚い。次は……)  騒がしくなった体育館裏で、みゆきは一人、冷静に次の一手を考えていた。 **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3)
最近、泉こなたの様子がおかしい。柊かがみがそのことに気が付いたのは、冬休みも終わり、新学期が始まってそう間も無いことだった。  具体的に何がおかしいのか、その兆候は既に冬休みの間から垣間見えていたように感じる。  第一にこなたが冬休みの宿題を写しに来なかったこと、それが始まりだったと気付くべきだったのかもしれない。  本来、毎回長期休みの終わりに全く手をつけなかった宿題を何とかクリアする為に、こなたはかがみを頼ってくる。  だから冬休み最終日、こなたが何時来ても良い様に、かがみは出された宿題を科目ごとに纏め、さらに、客人をもてなす意味もかねて取って置きの紅茶とクッキーを開けて待っていた。  だが、何時まで経っても何時まで経っても、こなたからの連絡はなく、また、柊家へ訊ねてくることも無かった。  無論、かがみはこの状況を指を加えて見ていただけではなく、こちらからこなたにアプローチを取ろうと連絡をしたのだが、こなたの携帯は圏外となっており、泉家の電話は留守番電話になっていた。  この時のかがみは、こなたは出かけているか、もしくはついに自分で宿題をやる気になったのかと楽観視していたのだが、1月7日、始業式のこの日にこなたから「ゴメン、遅れるから先に行ってて」というメールが入ったことで、楽観から、疑念へと変わった。  普段のこなたなら多少遅れることがあってもそういったメールはよこさない。「いやぁ、お待たせ~」なんて言って来るのが常のことだった。  そして、極めつけは学校で擦れ違った時のことだ。「よう」とか「ヤフー」といった挨拶は交わした。だが、それだけで、こなたはかがみの顔を直視することなく、「日直だから」とボソボソ呟くと走り去っていった。  一体、こなたに何があったのか。私は、こなたに嫌われるような事をしたのだろうか。かがみには、一体、こなたの身に何が起きているのか分からなかった。 「まぁ、分からないことはみゆきに聞けばいいか」  図らずも、こなたと同じ結論に達したかがみは、やはり知識の宝庫、高良みゆきにこなたのことについて相談を持ちかけた。 「え? 泉さんの様子がおかしい、ですか?」  かがみの話を聞いたみゆきの第一声がそれだった。同じクラスにいたのにそんなことにも気が付かないとは、かがみは少しだけ腹が立ったが、それを面に出さず会話を続ける。 「うん、なんていうか、最近私避けられてるし、なんか心ここに非ずっていった感じで……えっと、まぁ、その、心配なのよ。同じクラスのみゆきなら何か知ってるんじゃないかと思って」  かがみの話を聞いたみゆきは、先日こなたに持ちかけられた相談を思い返していた。 『かがみと一緒にすると、胸がもやもやして、甘酸っぱい気持ちになる』  こなたは、そう言った。そして、みゆきは、その蓄えられた知識から状況をシミュレートし、こなたはかがみに恋心を抱いている、という結論に達した。  だが、みゆきはあえて、こなたにその答えを言う事を避けた。何故なら、みゆき自身は恋愛関係に縁遠いため、想像できても確信した答えは無い。故に、憶測で物を言うことはかえってこなたを混乱させるだろうから。  そしてもう一つ、答えが躊躇われた理由が、同性愛、ということにある。  現在、同性愛というものは世間的に認められているとは言い難い。普段はおちゃらけた様に見えるこなたも、当然、その辺りのことは知っているだろう。  故に、ここで迂闊に「それは恋でしょう」と言う事は、かえって良くない結果を招く、その結論付けたのだ。  だが、普段のやり取りから見て、みゆきの見立てではかがみも同じく、こなたに恋心を抱いていると思われる。こちらもやはり本人は気が付いていないようだが。  後、二人に必要なのは自らの感情に気が付く切欠。第3者から指摘されるのではなく、感情の意味に自分で気付き、同性愛、という壁を自らの力で崩すこと。  とは言え、今の状況では、その感情が余計なわだかまりを生んでいる。まずは自然な状態に戻すことが一番。 「そうですね、泉さんが何かを悩んでいるのは傍目からも分かっていたのですが。だけど、一体何に悩んでいるのか……そうですね、試しに泉さんを後ろから抱きしめて‘アイラヴユー’とでも囁いてみてはいかがでしょう?」 「は、はぁ!?そんなの、一体誰がやるって言うのよ!」  突然の提案に戸惑うかがみ、だが、対照的にみゆきは余裕の表情で、 「かがみさん以上の適任がいるとは思えませんが?」  そう、述べた。かがみは顔をこれ以上赤く出来ないほど染めながら、 「そ、そんな事,出来るわけないでしょ……」 「では、私がやりましょうか」  その時のかがみの表情は自分では分からなかった、が、みゆきには見えていたようで、クスクスと笑いながら、 「冗談ですよ。私がそんな事をすれば余計に泉さんを混乱させるでしょうから」  どこぞの超能力者のように、前髪を指で爪弾きながら微笑んだ。  結局、どうしたらいいか、という結論は出ずに、休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴った。  かがみとみゆきはそれぞれの教室に向かって走りながらそれぞれに頭の中で先程の話を整理している。と、ポツリとみゆきが呟いた。 「そういえば、先程泉さんの机の中に、手紙が入っていたんですよ。お昼休みに体育館の裏で会いたい、という内容のね」 「!!! それ、ホント?」 「ええ、大マジです。一体誰が呼び出したのか、興味があるので見に行ってみようと思うのですが、かがみさんはいかがです?」  しばしの逡巡の後、かがみは頷いた。  さて、お昼休み。いつもならこなた、かがみ、つかさ、みゆきで食卓を囲むのだが、今日に限っては「私は用事があるんだよね~」と席を外したこなた。  そして、こなたの動向を見極める為に密かに後を尾けるかがみ、みゆきが同じく席を外した為、残されたつかさは隣のクラスで峰岸あやのと昼食を共にすることになった。  あやのといつも一緒にいる日下部みさおの姿は無い。 「あれ、日下部さんはどうしたの?」  つかさの問いに、あやのは少し笑うと、 「恋のキューピッド」とだけ答えた。  場面が変わって体育館の裏。冬のこの時期ただ立っているのは辛いのだが、こなたはそれすらも感じていないようで、ただ、ぼんやりとしていた。  それを物陰から眺めるかがみとみゆき。こちらも、緊張からか寒さは全く感じない。 「一体、こなたを呼び出した奴は誰なのかしら……」  かがみがそう呟いた時、人影が体育館の横を通り過ぎ、こなたの目の前に立った。 「――――っ!」  声にならない悲鳴を上げるかがみ。現れたのは中学からの腐れ縁、こなたとはまた別の意味での親友、日下部みさおだった。 「よっ、ちびっこ子、お待たせ」  気楽に手を挙げて挨拶をするみさお。ある程度気が合うこなたも同じように返礼し、みさおの方に近づく。 「あの手紙、みさきちだったんだ……」  僅かに声を震わせながら、尋ねるこなた。対照的にみさおは明朗快活な口調で、 「うん。どうしても直接言いたいことがあってな」  こなたに直接言いたいこと、かがみの中で、この先のシチュエーションが予想される。そして、かがみの心を読んだようにみゆきが、 「なんだか、告白シーンみたいですね」  そう、囁いた。  ビクッとしたかがみは、あらん限りの常識を持って反論する。 「そ、そんな、だっ、だって女の子同士よ?ありえるわけ無いじゃない!」  それすらも予期していたようにみゆきは、 「一概にそうとは言えませんよ?同性婚を認めている国もありますし。何より、男女間の生殖行為に囚われない分、同性愛は純粋に愛情で推し量ることが出来ますから」  かがみは、反論する言葉が見つからなかった。日下部が、こなたを……?そう思うと、とても不愉快な気持ちが腹の底から這い上がってくる。 「あ、あのさ、ちびっ子……」 「な、何、みさきち?」 「実は私……」  日下部の次の言葉が怖い、もし、愛の告白だったら、こなたは、受け入れてしまうのだろうか?  そこまで考えた瞬間、かがみは無意識に物陰を飛び出し、二人の下へ走り出す。  日下部の言葉が言い終わる前に、こなたが、それを受け入れる前に。こなたは、私の……。  だが、二人までの距離があと少し、という所で、無情にもみさおが言葉の続きを繋いだ。 「あのゲーム、貸して欲しいんだよっ!」  ……は? 「ちびっ子が話してるのを聞いてるとやりたくなってくるんだよなぁ。な、この通り、頼むゼ、ちびっ子」  唖然とするこなた、呆然とするかがみ、微笑むみゆき、ニカッと笑うみさお。四者四様を持って、時が止まる。 「よぉ、柊!」  最初に復帰したのはみさお。次いで、こなたがかがみに気が付く。 「あれ?かがみ、どったの?」 「え?あ、いや……」  そのやり取りを見ていたみゆきが、聖母が如く微笑んだまま、口を開いた。 「かがみさんは、泉さんが誰に呼び出されたのか気になって、ここまで後を尾けてたんですよ」  その言葉に、かがみの顔は爆発し、こなたはにやぁ、と口元を緩めた。 「んふふ~?かがみんは私のことが気になったってこと?」 「ち、違うわよ!た、ただ私たちとのお昼より優先する用事がなんだったのか、知りたかっただけ。べ、別に深い意味は無いわよ」  かがみの言い方は、典型的なツンデレ。あまりの可愛さに、思わずこなたはかがみに抱きついた。 「ツンデレかがみん、萌え~!!」 「や、やめろ、引っ付くなって!もう、こなたぁっ!!」  そんなじゃれあいをしている二人を目の端に捉えながら、みゆきはみさおに礼を言った。 「ありがとうございます、無茶なお願いだったにも拘らず、了承していただいて」 「んあ?いいって、いいって。これぐらいお安いご用さ」  そう言って手を振るみさお。  みゆきが先程、かがみに言った「こなたが呼び出されている」という話は、実は嘘だった。  この話にかがみがどう答えるか、それによって二人の関係を後押しするかどうか判断しようとみゆきは考えたのだ。  そして、みゆきの問いにかがみは首肯した。故に、嘘を真にする為に、あやのとみさおに協力を仰ぎ、本当にこなたを呼び出した。  じゃれあいを続けるこなたとかがみ。とりあえず、こなたとかがみのわだかまりは解消されたようだ。 (ファーストステージ終了、ですかね。お二人には自分の気持ちに気付いていただきませんと、壁は高くて厚い。次は……)  騒がしくなった体育館裏で、みゆきは一人、冷静に次の一手を考えていた。 -[[1月10日>http://www13.atwiki.jp/oyatu1/pages/143.html]]へ続く **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - 策士だなwww -- 名無しさん (2009-04-27 01:13:50)

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