手を繋ごう! - (2009/06/25 (木) 12:44:48) の最新版との変更点
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「……(かがみの手を握りたいナー)」
朝、登校する最中。
すぐ隣でゆらりと揺れる彼女の手を、ちらちら横目で見つめながら、私はそんなことを考えていた。
だって仕方ないじゃん?
かがみの手ってさぁ、ちゃんと女性っぽいんだもん。
指は長くて細やかだしさ?
爪だって形良く整えられるし。
肌の色も白く透き通ってて……
あんな綺麗な手を見せられちゃったら、私の幼くて小さいだけの手と比べて、いったいどんな感触なんだろう。
……とか思っちゃうのが普通じゃん?
かがみの手って、温かいのカナー?
それとも冷たいのカナー?
柔らかい?
いやいや、かがみんって力あるから、
案外、意外と硬かったりしてー♪
そんなことを妄想し始めてからここ最近は、
何気ない日常の中でも、ついついかがみの事を見つめてしまう。
例えば勉っ自分の髪をくるくると弄ってたり、すぅっと手櫛を掛けたりする彼女の指。
そんな彼女の些細な動作に、どきどきしたり、見惚れちゃったり……。
うー、もう我慢できないカモ。
かがみん、手を触らせてくれないかなー。
正直に、「触らせて?」って言ったら触らせてくれるかな?
……ううん、ダメだろうなぁ。
「絶対変な事する気でしょ」って感じで警戒されるだけだもんな。
いつものノリを利用して、
「かがみん、キャーッチ!!」って感じで奪い取ってもいいんだけど、
そのあと喧嘩なんかしちゃったら元も子もないし、
ゆっくり確かめる時間なんてないだろうしな。
じゃあどうやるの?
うーん……
「――ナたー……」
うーん、うーん……
「――ちょっと、こなたぁ!」
「――ッ、は、はぃいっ!?」
突然、横から降ってきた怒声交じりのかがみの叫びに、
やましい事を考えていた私は背筋をピーンと伸ばして驚いた!
急いで視線を隣に向けると、腕組みをして眉間にしわなんて寄せてるかがみの姿。
えぇ!? 怒ってる?
もしかしてー…、考えていたこと筒抜けデスカ?
じっと睨んでくる彼女に、私は思わず視線を逸らし、
「……あの、な、なにか?」
恐る恐る尋ねてみると、かがみは、はぁ~っと一回、大きなため息をつきながら、
「なにって、やっぱり聞いてなかったのね」
と、残念そうに首を振る。
「え? 何を?」
「ずっとアンタに話しかけてたの! せっかく話題を作って話しかけてるのに、アンタ、ずーっとうわの空で、何を聞いても『うん』しか答えないからおかしいなって思ってたのよ」
「あれぇ、そうだったの?」
「そうよ!」
そう言って、憮然とした表情で、私の方を睨み続けるかがみ。
「ごめんね、かがみ」
「知らないわよ……」
「あぅ、まだ怒ってるぅ? ちょーっと考え事してただけなんだよー」
「アンタが考え事なんて珍しいわね。またどーせネトゲのこととか、限定品がどーのこーのとか、そんなことなんでしょうけどね」
私の言い訳がお気に召さなかったのか、彼女はそのまま、ぷいっと視線をそらし、
「そんなこと、ひとりの時に考えなさいよ……」
と、小さくぽそりと呟いた。
「かがみー、ホントごめんて。……で、なんの話題なの? 今度はちゃんと聞くからさー」
「……もう、いいわよ」
なおも機嫌が直らない彼女。
「かがみー、ねぇねぇー」
「……」
お、ちょっと困った顔になった。
ここまで来たら、もう一押しだネ。
「かがみぃー、おねがーい♪」
私が見せる精一杯の可愛い(?)ポーズに、かがみは逸らした顔のまま、視線だけ、ちらりとコチラに向ける。
眉をハの字に下げ、観念したかのように、本日二度目のため息をついた彼女は、
「……占い」
ギリギリ聞こえるかな?……くらいの声量で、じっと目を伏せながら呟いた。
「うらない……?」
「そう、占いの話よ。朝のニュースでやってるじゃない。血液型とか星座とか」
「へぇー、かがみ、占いに興味あったんだ」
「いや、別に興味があるわけじゃないんだけどね。ただ、何気なしに今日のニュースを見ていたらねぇ? やってるチャンネルによって全然結果が違うのよ」
「へぇ、そうなんだー。まぁ私は朝、ニュースなんて見ないからねー。そんなのやってるのも知らなかったけど」
「すこしは見ろよ。時事とかのテストで困るわよ?」
「だぁって~、朝の時間って一分一秒が貴重じゃん? 朝ご飯作ったりー、お洗濯したりー、お弁当作ったりー、アニメも見なくちゃいけないのに、そんなの見てる時間なんて無いよー」
「なんか一つ余分なものが……てか、アンタが弁当作って持ってきたことなんてあったか?」
「むぅ、酷いなぁ。あったじゃん、ほら、三年生の初めの頃とか!」
「……ゆたかちゃんがアンタの家に居候し始めた最初の頃だけな。本性バレたらとたんにやらなくなったじゃない」
「そうだっけぇ?」
「と~ぼ~け~る~なっ!」
さっきまでの不機嫌スイッチをすっかりOFFにした彼女は、今度はおしゃべりスイッチがONになったのか、途切れること無く続けて話し始めた。
よくよく考えたら、さっきまで私がかがみのことを無視してたって状態だったワケで、やっと反応が返ってきたのが嬉しいのカナー?
怒った風な話し方なのに、顔はあんなに楽しそうに笑ってるし。
本題そっちのけで話す彼女に、いつもの調子で合わせる私。
このまま、脱線していっても構わないんだけど、
占い……かぁ。
でも、かがみが話題として持ってきた、その単語だけが引っかかる。
なんか思いつきそーだなー……。
占い……占い……。
そこだけ繰り返し考えて、
あ、そうだ。
ふふー、いいこと思いついたよー♪
私はニンマリ微笑んだ。
「ねぇ、かがみん」
かがみの話題が一瞬切れた所を見計らって、私は即座にそう呼びかける。
「うっ……何よ?」
「――って、なんでそんなに逃げるかなぁ?」
私の顔を見るや否や、彼女はすっと引くように30cmばかりの空間を、私との間に作りだす。
「いや、今までの経験上、アンタがそんな笑顔を見せるときって、ろくなことを考えてない事多いから」
「むー、酷いよー、友達をもっと信用しないと!」
「その友達に、何べんも裏切られたことがあるから、こうやって逃げてるんでしょ?」
「イヤだなー、裏切ったことなんてないよー。私はいつでもかがみのことを考えてるヨ?」
「どーだか。……で? なんなのよ?」
「ふふー。文句言いながらもちゃんと聞いてくれるんだ♪」
「ぅ、うっさいっ! さっさと言え!」
少しだけ照れたような顔を隠すようにして、再びぷいって感じでそっぽを向く彼女。
そんな彼女らしい可愛い反応に、いつもの如く弄り倒したくてうずうずしてしまったココロを何とか私は自重させ、さっき思いついた作戦を実行する。
「ねぇ、かがみ? 私ね、実は占いが出来るんだー」
モチロン嘘だけどネ?
「……嘘」
いきなりばれた!?
……かがみは時々鋭いから、こんな時、私のポーカーフェイスは役に立つ。
じゃないと絶対ばれちゃうモン。
心の中の動揺を内に閉じこめて、何でもないって顔で私は続ける。
「ホントだよー? ほら、桜稜祭の時にやったじゃん。ウチの出し物って占いだったし」
「アンタあの時、『占いなんてテキトーだよぉ』なんて言ってなかったか?」
「――うっ。かがみんよく覚えてるねぇ……じゃなかった。いやいや、かがみん。ああ言いながらも真面目にやったんだよ。せっかくの出し物だしね? みんな一生懸命やってたしー」
「どうだかねー」
「信じるものは救われるよ?」
「私は占いなんて非科学的なもの、信じないの」
「神社の娘として、それどーよ……」
「う、うるさい。ウチのことは関係ないじゃない。……アンタがやる占いなんて、どうせろくなものじゃないでしょうし」
「いやいや、至って普通だよー。じゃあ、今からやってあげるから、はい、かがみん……」
そこで一旦言葉を切り、かがみに向かって手を差し出してから、
「……何?」
「手相占いだヨー♪」
疑問符を頭の上に大きく浮かべている彼女に対して、私は嬉しそうな様子でそう言った。
「手、相……?」
「そう、手相占い! メジャーでしょ? ほらほらかがみー、はい、手を出して」
「えぇ? なんか普通過ぎて逆に怪し……」
「ほらほらー、早く早くーっ!」
「もー、分かったわよ、ほら。……変なことしたら許さないから」
「もー、どんだけ信用無いんだよ、私……」
私の普段の行動からして、警戒するのは仕方ないと思うけどね。
それでも今日のかがみはツン過ぎだヨ。
さっき無視っちゃったの実はまだ怒ってるのかなー。
まったくこの寂しんぼめ……。
まぁしかし、これで策はなったヨ!
騙しちゃってゴメンネかがみー。
でももう我慢できないんだ。
さぁてと、思う存分かがみの手を弄りましょうか。
私の欲望の慰み者になってくれたまえー!
怪しく手の指をにぎにぎと動かした私は、恥かしそうに差し出された彼女の手を両手で包むようにして握る。
――ふにっ
「……(おー、これが……)」
――ふにふに……
「……(これがかがみの手の感触)」
「ぅん……っ」
――ふにふにふに……
「……(柔らかい……それになんだか……)」
「……ちょ、こなたぁ」
――ふにふにふにふにふにふにふに……
「……(温かい……)」
「こら、こなたっ! いつまでかかるのよー」
――ふにふにふに?
「ふぇ? あ、ごめんごめん」
「占いはどうした、占いは!いつまで私の手を握ってんのよ!」
あ、そっか。占いって言っちゃったから、占わないといけないんだよね。
どうしよう。とりあえずテキトーに結果を言って……。
そこで私の思考はぴたりと停滞する。
でも……占いが終わったら……かがみの手を離さなくちゃいけなんだね。
かがみの手の感触を堪能して、それで満足なはずだったのに……。
なんでだろう、私……かがみの手を、離したくないんだ。
こんなことを考えるのはおかしいかな?
このままずっとは、ダメ、なのかな……?
「こ~な~たっ!」
ハッとして顔を上げると、すぐ近くにかがみの瞳が、私の顔を映してる。
「あー、えーと…」
あせって次の言葉を捜したけど、頭の中が真っ白になっていて、上手く言葉に出来ないんだ。
視線を落とすと、つながれた二人の手が映りこんで……。
――胸がずきりと小さく痛んだ。
なにか。
なにか……。
「――じゃあ恋愛運……」
とっさに出た言葉は、自分でも意外だった。
「へぇ、そんなのも分かるんだ」
かがみは、「へぇー」ともう一度、関心するかのように声をあげると、私が言う次の台詞を、期待しながら待っていた。
「そうだよ! 今日のかがみの恋愛運は……」
じっと視線を落としたまま、私はそこで言葉を切った。
「?」
かがみが私の顔を窺い覗き込むのが手に映る影の動きで想像できた。
私……。
私は……っ!
パッと顔を大きくあげる。映りこむ彼女の瞳を真っ直ぐ見返して、いつもと同じ、笑顔を作る。
「あー、これはダメだねー、恋愛運最悪だって!」
さも残念そうに私が言う。
「えぇ!?なんでそうなるのよ!」
かがみは私が言ったいきなりの占いの結果に、顔をしかめて抗議をする。
「だって占いだもん。かがみは今日、恋は実らない。何をやっても上手くいかないし、途中で財布なんかもおとしちゃうよー」
「なによそれ、アンタの占いなんか絶対信じないから」
今日、何度目かになるかがみの視線を逸らす動作。
私はそんな彼女の視線を追うように体を動かして、
「ふふーん、でもね、かがみ。占いは最後まで聞かないとー。かがみは運勢最悪だけどね?」
悪戯っぽい笑みを浮かべ、
「……仲のいい友達と、一緒に手を繋いでいたら……」
彼女の両手をしっかりと握り、
「……大吉だよ?」
と、かがみの視線に私のを合わせた。
「――なっ…!」
とたんに真っ赤になる彼女のしかめ顔。
私の顔もちょっと熱っぽいかなぁ。
「だからー、この手は放さないほうがいいんだよー、かがみぃ!」
「なんだそれ、うっさい、離せ!」
「ダメだよー運勢最悪だよ?」
「アンタの占いなんて、信 じ な い !」
「やー、手、放しちゃ、やー」
「何で上目遣いで、幼児退行ぉ!?」
「ふふーん、かがみを落とすには私の持つフルスペックを使うしかないんだよ」
「なんでアンタに落とされなくちゃなんないよ、もう! 訳分かんない。い い か ら 放 せ !」
そんな抵抗を繰り返す彼女。
そんなにイヤイヤされたら流石に傷つくよ?
もー、こーなったら……。
「かがみー」
「なによっ!」
彼女の手を深く握り、少し俯いて……。
「ずっと、放さないでね?」
顔をゆっくりと上げながら、瞳うるうる、上目遣い、真剣なまなざし、のコンボ発動っ!
「うっ!」
「かがみー……」
「あ、ああ、もう、分かったわよ、好きにしなさい!あんたから手を離したら、私の運勢が悪くなっちゃうんでしょ!だから……」
彼女は、きゅっと初めて私の手を握り返した。
「しかたなく、なんだからね……」
「かがみぃー♪」
&ref(http://www13.atwiki.jp/oyatu1/?cmd=upload&act=open&page=%E6%89%8B%E3%82%92%E7%B9%8B%E3%81%94%E3%81%86%EF%BC%81&file=img20090623005022_2.jpg)
☆ ★ ☆ ★ ☆
私達は再び、学校への道を歩き始めた。
かがみは顔を真っ赤にしてそっぽを向いたまま、私に視線を合わせない。
でもね? しっかりと私の手だけは握ってくれてるんだ。
私は右手を、かがみは左手を。
お互いにお互いの手を差し出して。
「ふふー」
終始ニコニコしている私に、
「なによ、もう」
と、そんな彼女のささやかな抵抗が飛んでくる。
「あったかい♪」
「バカか……」
「か~がみん♪」
「んー?」
「放さないからね?」
「……バカ」
「これで恋愛運急上昇だね、かがみ」
「ふふ、こんな状態でどうやるんだー?」
かがみは可笑しそうに笑うと、私の方へと視線を移す。
私はそんな彼女の質問に真剣に「うーん」と唸って見せる。
「……それはね?」
「うん?」
私に生まれたくすぐったいようなこのキモチ。
まだ、分からない事がいっぱいだから。
だから、私はにっこり笑う。
繋がれた手の体温が、優しく溶けて同じになって……。
今はただ、この感触だけを確かめながら、
「……まだ、秘密……だよ?」
私は、彼女にそう言った。
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- こなたが良い! &br()あと挿絵萌えた -- 俺 (2009-06-25 12:44:48)
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「……(かがみの手を握りたいナー)」
朝、登校する最中。
すぐ隣でゆらりと揺れる彼女の手を、ちらちら横目で見つめながら、私はそんなことを考えていた。
だって仕方ないじゃん?
かがみの手ってさぁ、ちゃんと女性っぽいんだもん。
指は長くて細やかだしさ?
爪だって形良く整えられるし。
肌の色も白く透き通ってて……
あんな綺麗な手を見せられちゃったら、私の幼くて小さいだけの手と比べて、いったいどんな感触なんだろう。
……とか思っちゃうのが普通じゃん?
かがみの手って、温かいのカナー?
それとも冷たいのカナー?
柔らかい?
いやいや、かがみんって力あるから、
案外、意外と硬かったりしてー♪
そんなことを妄想し始めてからここ最近は、
何気ない日常の中でも、ついついかがみの事を見つめてしまう。
例えば勉っ自分の髪をくるくると弄ってたり、すぅっと手櫛を掛けたりする彼女の指。
そんな彼女の些細な動作に、どきどきしたり、見惚れちゃったり……。
うー、もう我慢できないカモ。
かがみん、手を触らせてくれないかなー。
正直に、「触らせて?」って言ったら触らせてくれるかな?
……ううん、ダメだろうなぁ。
「絶対変な事する気でしょ」って感じで警戒されるだけだもんな。
いつものノリを利用して、
「かがみん、キャーッチ!!」って感じで奪い取ってもいいんだけど、
そのあと喧嘩なんかしちゃったら元も子もないし、
ゆっくり確かめる時間なんてないだろうしな。
じゃあどうやるの?
うーん……
「――ナたー……」
うーん、うーん……
「――ちょっと、こなたぁ!」
「――ッ、は、はぃいっ!?」
突然、横から降ってきた怒声交じりのかがみの叫びに、
やましい事を考えていた私は背筋をピーンと伸ばして驚いた!
急いで視線を隣に向けると、腕組みをして眉間にしわなんて寄せてるかがみの姿。
えぇ!? 怒ってる?
もしかしてー…、考えていたこと筒抜けデスカ?
じっと睨んでくる彼女に、私は思わず視線を逸らし、
「……あの、な、なにか?」
恐る恐る尋ねてみると、かがみは、はぁ~っと一回、大きなため息をつきながら、
「なにって、やっぱり聞いてなかったのね」
と、残念そうに首を振る。
「え? 何を?」
「ずっとアンタに話しかけてたの! せっかく話題を作って話しかけてるのに、アンタ、ずーっとうわの空で、何を聞いても『うん』しか答えないからおかしいなって思ってたのよ」
「あれぇ、そうだったの?」
「そうよ!」
そう言って、憮然とした表情で、私の方を睨み続けるかがみ。
「ごめんね、かがみ」
「知らないわよ……」
「あぅ、まだ怒ってるぅ? ちょーっと考え事してただけなんだよー」
「アンタが考え事なんて珍しいわね。またどーせネトゲのこととか、限定品がどーのこーのとか、そんなことなんでしょうけどね」
私の言い訳がお気に召さなかったのか、彼女はそのまま、ぷいっと視線をそらし、
「そんなこと、ひとりの時に考えなさいよ……」
と、小さくぽそりと呟いた。
「かがみー、ホントごめんて。……で、なんの話題なの? 今度はちゃんと聞くからさー」
「……もう、いいわよ」
なおも機嫌が直らない彼女。
「かがみー、ねぇねぇー」
「……」
お、ちょっと困った顔になった。
ここまで来たら、もう一押しだネ。
「かがみぃー、おねがーい♪」
私が見せる精一杯の可愛い(?)ポーズに、かがみは逸らした顔のまま、視線だけ、ちらりとコチラに向ける。
眉をハの字に下げ、観念したかのように、本日二度目のため息をついた彼女は、
「……占い」
ギリギリ聞こえるかな?……くらいの声量で、じっと目を伏せながら呟いた。
「うらない……?」
「そう、占いの話よ。朝のニュースでやってるじゃない。血液型とか星座とか」
「へぇー、かがみ、占いに興味あったんだ」
「いや、別に興味があるわけじゃないんだけどね。ただ、何気なしに今日のニュースを見ていたらねぇ? やってるチャンネルによって全然結果が違うのよ」
「へぇ、そうなんだー。まぁ私は朝、ニュースなんて見ないからねー。そんなのやってるのも知らなかったけど」
「すこしは見ろよ。時事とかのテストで困るわよ?」
「だぁって~、朝の時間って一分一秒が貴重じゃん? 朝ご飯作ったりー、お洗濯したりー、お弁当作ったりー、アニメも見なくちゃいけないのに、そんなの見てる時間なんて無いよー」
「なんか一つ余分なものが……てか、アンタが弁当作って持ってきたことなんてあったか?」
「むぅ、酷いなぁ。あったじゃん、ほら、三年生の初めの頃とか!」
「……ゆたかちゃんがアンタの家に居候し始めた最初の頃だけな。本性バレたらとたんにやらなくなったじゃない」
「そうだっけぇ?」
「と~ぼ~け~る~なっ!」
さっきまでの不機嫌スイッチをすっかりOFFにした彼女は、今度はおしゃべりスイッチがONになったのか、途切れること無く続けて話し始めた。
よくよく考えたら、さっきまで私がかがみのことを無視してたって状態だったワケで、やっと反応が返ってきたのが嬉しいのカナー?
怒った風な話し方なのに、顔はあんなに楽しそうに笑ってるし。
本題そっちのけで話す彼女に、いつもの調子で合わせる私。
このまま、脱線していっても構わないんだけど、
占い……かぁ。
でも、かがみが話題として持ってきた、その単語だけが引っかかる。
なんか思いつきそーだなー……。
占い……占い……。
そこだけ繰り返し考えて、
あ、そうだ。
ふふー、いいこと思いついたよー♪
私はニンマリ微笑んだ。
「ねぇ、かがみん」
かがみの話題が一瞬切れた所を見計らって、私は即座にそう呼びかける。
「うっ……何よ?」
「――って、なんでそんなに逃げるかなぁ?」
私の顔を見るや否や、彼女はすっと引くように30cmばかりの空間を、私との間に作りだす。
「いや、今までの経験上、アンタがそんな笑顔を見せるときって、ろくなことを考えてない事多いから」
「むー、酷いよー、友達をもっと信用しないと!」
「その友達に、何べんも裏切られたことがあるから、こうやって逃げてるんでしょ?」
「イヤだなー、裏切ったことなんてないよー。私はいつでもかがみのことを考えてるヨ?」
「どーだか。……で? なんなのよ?」
「ふふー。文句言いながらもちゃんと聞いてくれるんだ♪」
「ぅ、うっさいっ! さっさと言え!」
少しだけ照れたような顔を隠すようにして、再びぷいって感じでそっぽを向く彼女。
そんな彼女らしい可愛い反応に、いつもの如く弄り倒したくてうずうずしてしまったココロを何とか私は自重させ、さっき思いついた作戦を実行する。
「ねぇ、かがみ? 私ね、実は占いが出来るんだー」
モチロン嘘だけどネ?
「……嘘」
いきなりばれた!?
……かがみは時々鋭いから、こんな時、私のポーカーフェイスは役に立つ。
じゃないと絶対ばれちゃうモン。
心の中の動揺を内に閉じこめて、何でもないって顔で私は続ける。
「ホントだよー? ほら、桜稜祭の時にやったじゃん。ウチの出し物って占いだったし」
「アンタあの時、『占いなんてテキトーだよぉ』なんて言ってなかったか?」
「――うっ。かがみんよく覚えてるねぇ……じゃなかった。いやいや、かがみん。ああ言いながらも真面目にやったんだよ。せっかくの出し物だしね? みんな一生懸命やってたしー」
「どうだかねー」
「信じるものは救われるよ?」
「私は占いなんて非科学的なもの、信じないの」
「神社の娘として、それどーよ……」
「う、うるさい。ウチのことは関係ないじゃない。……アンタがやる占いなんて、どうせろくなものじゃないでしょうし」
「いやいや、至って普通だよー。じゃあ、今からやってあげるから、はい、かがみん……」
そこで一旦言葉を切り、かがみに向かって手を差し出してから、
「……何?」
「手相占いだヨー♪」
疑問符を頭の上に大きく浮かべている彼女に対して、私は嬉しそうな様子でそう言った。
「手、相……?」
「そう、手相占い! メジャーでしょ? ほらほらかがみー、はい、手を出して」
「えぇ? なんか普通過ぎて逆に怪し……」
「ほらほらー、早く早くーっ!」
「もー、分かったわよ、ほら。……変なことしたら許さないから」
「もー、どんだけ信用無いんだよ、私……」
私の普段の行動からして、警戒するのは仕方ないと思うけどね。
それでも今日のかがみはツン過ぎだヨ。
さっき無視っちゃったの実はまだ怒ってるのかなー。
まったくこの寂しんぼめ……。
まぁしかし、これで策はなったヨ!
騙しちゃってゴメンネかがみー。
でももう我慢できないんだ。
さぁてと、思う存分かがみの手を弄りましょうか。
私の欲望の慰み者になってくれたまえー!
怪しく手の指をにぎにぎと動かした私は、恥かしそうに差し出された彼女の手を両手で包むようにして握る。
――ふにっ
「……(おー、これが……)」
――ふにふに……
「……(これがかがみの手の感触)」
「ぅん……っ」
――ふにふにふに……
「……(柔らかい……それになんだか……)」
「……ちょ、こなたぁ」
――ふにふにふにふにふにふにふに……
「……(温かい……)」
「こら、こなたっ! いつまでかかるのよー」
――ふにふにふに?
「ふぇ? あ、ごめんごめん」
「占いはどうした、占いは!いつまで私の手を握ってんのよ!」
あ、そっか。占いって言っちゃったから、占わないといけないんだよね。
どうしよう。とりあえずテキトーに結果を言って……。
そこで私の思考はぴたりと停滞する。
でも……占いが終わったら……かがみの手を離さなくちゃいけなんだね。
かがみの手の感触を堪能して、それで満足なはずだったのに……。
なんでだろう、私……かがみの手を、離したくないんだ。
こんなことを考えるのはおかしいかな?
このままずっとは、ダメ、なのかな……?
「こ~な~たっ!」
ハッとして顔を上げると、すぐ近くにかがみの瞳が、私の顔を映してる。
「あー、えーと…」
あせって次の言葉を捜したけど、頭の中が真っ白になっていて、上手く言葉に出来ないんだ。
視線を落とすと、つながれた二人の手が映りこんで……。
――胸がずきりと小さく痛んだ。
なにか。
なにか……。
「――じゃあ恋愛運……」
とっさに出た言葉は、自分でも意外だった。
「へぇ、そんなのも分かるんだ」
かがみは、「へぇー」ともう一度、関心するかのように声をあげると、私が言う次の台詞を、期待しながら待っていた。
「そうだよ! 今日のかがみの恋愛運は……」
じっと視線を落としたまま、私はそこで言葉を切った。
「?」
かがみが私の顔を窺い覗き込むのが手に映る影の動きで想像できた。
私……。
私は……っ!
パッと顔を大きくあげる。映りこむ彼女の瞳を真っ直ぐ見返して、いつもと同じ、笑顔を作る。
「あー、これはダメだねー、恋愛運最悪だって!」
さも残念そうに私が言う。
「えぇ!?なんでそうなるのよ!」
かがみは私が言ったいきなりの占いの結果に、顔をしかめて抗議をする。
「だって占いだもん。かがみは今日、恋は実らない。何をやっても上手くいかないし、途中で財布なんかもおとしちゃうよー」
「なによそれ、アンタの占いなんか絶対信じないから」
今日、何度目かになるかがみの視線を逸らす動作。
私はそんな彼女の視線を追うように体を動かして、
「ふふーん、でもね、かがみ。占いは最後まで聞かないとー。かがみは運勢最悪だけどね?」
悪戯っぽい笑みを浮かべ、
「……仲のいい友達と、一緒に手を繋いでいたら……」
彼女の両手をしっかりと握り、
「……大吉だよ?」
と、かがみの視線に私のを合わせた。
「――なっ…!」
とたんに真っ赤になる彼女のしかめ顔。
私の顔もちょっと熱っぽいかなぁ。
「だからー、この手は放さないほうがいいんだよー、かがみぃ!」
「なんだそれ、うっさい、離せ!」
「ダメだよー運勢最悪だよ?」
「アンタの占いなんて、信 じ な い !」
「やー、手、放しちゃ、やー」
「何で上目遣いで、幼児退行ぉ!?」
「ふふーん、かがみを落とすには私の持つフルスペックを使うしかないんだよ」
「なんでアンタに落とされなくちゃなんないよ、もう! 訳分かんない。い い か ら 放 せ !」
そんな抵抗を繰り返す彼女。
そんなにイヤイヤされたら流石に傷つくよ?
もー、こーなったら……。
「かがみー」
「なによっ!」
彼女の手を深く握り、少し俯いて……。
「ずっと、放さないでね?」
顔をゆっくりと上げながら、瞳うるうる、上目遣い、真剣なまなざし、のコンボ発動っ!
「うっ!」
「かがみー……」
「あ、ああ、もう、分かったわよ、好きにしなさい!あんたから手を離したら、私の運勢が悪くなっちゃうんでしょ!だから……」
彼女は、きゅっと初めて私の手を握り返した。
「しかたなく、なんだからね……」
「かがみぃー♪」
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☆ ★ ☆ ★ ☆
私達は再び、学校への道を歩き始めた。
かがみは顔を真っ赤にしてそっぽを向いたまま、私に視線を合わせない。
でもね? しっかりと私の手だけは握ってくれてるんだ。
私は右手を、かがみは左手を。
お互いにお互いの手を差し出して。
「ふふー」
終始ニコニコしている私に、
「なによ、もう」
と、そんな彼女のささやかな抵抗が飛んでくる。
「あったかい♪」
「バカか……」
「か~がみん♪」
「んー?」
「放さないからね?」
「……バカ」
「これで恋愛運急上昇だね、かがみ」
「ふふ、こんな状態でどうやるんだー?」
かがみは可笑しそうに笑うと、私の方へと視線を移す。
私はそんな彼女の質問に真剣に「うーん」と唸って見せる。
「……それはね?」
「うん?」
私に生まれたくすぐったいようなこのキモチ。
まだ、分からない事がいっぱいだから。
だから、私はにっこり笑う。
繋がれた手の体温が、優しく溶けて同じになって……。
今はただ、この感触だけを確かめながら、
「……まだ、秘密……だよ?」
私は、彼女にそう言った。
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#comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3)
- 甘い!!めがっさ甘い!!超GJ!! -- 名無しさん (2012-09-19 13:20:17)
- 萌えたあああ!//// &br() -- 名無しさん (2010-09-21 18:57:44)
- 幼児退行こなたんktkr( ´ ▽ ` )ノ -- 名無しさん (2010-09-16 16:56:51)
- こなたが良い! &br()あと挿絵萌えた -- 俺 (2009-06-25 12:44:48)
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