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第17話:フラグ - (2008/10/05 (日) 06:00:05) の最新版との変更点

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【第17話 フラグ】 無菌室から一般病棟の個室に戻ったこなた。 何もかも1からやり直しながらみんなとワイワイ楽しそうに話している。 だが、かがみだけは一人廊下に追い出されていた。 中からそうじろうたちが一緒にエロゲの楽しみ方などをレクチャーしている声が聞こえる。 「ここをクリックするの?」 「そうだ、そうすると次の文章が出てくるんだ」 「あれ、選択肢が出て来たよ……とりあえず一番上」 「あ、それは……」 「ふむふむ……あれ、なんか、この銀色の髪の毛で黒カチューシャのヒロインに嫌われてる?……あれ、終わっちゃった?」 「フラグを潰してしまったな」 「なに?フラグって」 「フラグとはな……」 具体例を用いた非常にくわしい説明がつづく。 他の患者が聞いたらどんな顔をするだろうという内容の話し声をききながら、かがみは壁にもたれ、目を伏せてうつむく。 なんで私、ここにいるの? みんなは受け入れたのに、なんで私は嫌なの? こなた……私、そんなに怖かった? でも、こうでもしなきゃ……あんたはずっと引きこもったままで…… なんで?なんで? ……ひょっとして、昔の私もこんな感じだったの? いつも怒ってばかりで、ガミガミして、あんたが何かヲタな事をやろうとするたびにツッコミいれて…… それにくらべつかさやあんたのお父さんは、優しくて、あんたのやることを笑顔で受け入れて…… ……そういえば、つかさの方があんたに先に知り合ったのよね。 私はつかさがいなければ、あんたには会えなかった。 もしそうじゃなきゃ、おそらく一生知り合う機会がなかったはず。 私は、あんたとはたぶん、縁が一番遠い……。 クラスだって、ずっと別々だったよね。 「どうやったら正しくフラグ立てられるの?」 「色々あるけど、基本的にはヒロインとのイベントが発生すればすすんで参加すると言うことだなあ……」 「お姉ちゃん……」 扉が小さく開いて、つかさが顔をのぞかせていた。 「……なに?」 「今ならちょっとだけ、ほら、こなちゃんの顔が見れるよ。今ゲームに熱中してるし」 「……いい」 そして、あんたの人生の中で一番大きなウェイトを占めているのは、間違いなくあんたのお父さん。 生まれてからずっと、あんたのことを何でも知っている。 そして、あんたをこんな風に育ててきた。 それを私は、ここ1,2年だけ、しかも一日のうちたったの数時間、そのおこぼれをもらっているだけだった。 「おお、ヒロインが……そういえばこれって18禁……いいの?私このゲーム続けても。お父さん」 「おお、当然いいぞ。世間は許さなくてもオレが許す」 「へえ、エンディングが……あれ、涙が……」 「そうか、そうか感動したか……そう、人生だ、これが人生なんだよ、こなた!」 「うん、人生だねえ……」 今、ドアの向こうで、私が知らないこなたの過去の人生が追体験されている。 私がいなかった頃の長い長い時間。 その時間のすべてを共有したい。こなたの人生という分母の上に、私という分子の数をもっと増やしたい でも…… いま、私があんたを奪い取ったら、絶対不幸だよね。 私とあんたは、柊かがみと新しい泉こなたは、このまま会わないほうがいい。 一生出会わないほうがいい。 そして、怪獣のままでいい。 私はあんたと仲がいいつかさの双子の姉で、決して出会ってはいけない危険な怪獣です。 怒ってばかりです。優しくなんかないです。 せっかくこの世に祝福されて生まれたのに怖くて泣くのは嫌でしょ? だから、私は、もう二度とあんたに会いません。 むしろ、会っちゃってゴメンナサイと謝りたい。 私は遠く離れた場所で、絶対にそっちへいけないような場所から、あんたに見つからないように時々眺めるだけにする。 それでもし私の視線なんかを感じたら、ごめんね。もう二度と見ないから。 心の中で思い出すだけにするね。 「さようなら、こなた……」 かがみは、足音を立てないように、静かに病室の前から去ろうとした。 そのとき、白衣を着た技師や看護師たちとすれちがう。技師たちはこなたの部屋の中に入る。 「泉さん、リハビリの時間ですよ」 「えーやだ、めんどくさい……まだヒロインしか攻略してないのに」 「何を意味不明なこと言ってるんですか!筋力落ちて、立つだけで精一杯なのに」 「ま、こなた、ちょっとだけでも歩いたほうが……」 「やだ、そこにある積みゲーを全部やってから……」 「うーん、まあ、そうだな……もう1本やり終えたら、5分だけやってみるか。クリアまでに200時間かかるけど……」 そうじろうは昔はこなたに武道を教えるなどしていたが、病気になってからは完全に甘やかし状態になっていた。 「ダメです!お父さんも何を言ってるんですか!このままだと一生歩けなくなりますよ! 筋肉だけでなく骨や関節も脆くなってるのに」 「うーん、……なあ、こなた、ほんの2分、いや2秒だけ。ベッドサイドに立つだけでいいからさ」 「やーだ」 また病室のドアが小さく開いた。つかさの顔が出てくる。 「ね、お姉ちゃん。入りなよ」 腕を伸ばし、立ち去ろうとしたかがみの指先をつまんだ。 「え……で、でも……」 かがみは肩をすぼめ、俯きながら顔をそらす。 「私が、いたら……こなた泣いちゃうでしょ?」 逃げようとするかがみ。 その袖をつかさは引っ張る。 「こなちゃんを歩かせられるのはお姉ちゃんだけだよ。このままじゃ、こなちゃん一生寝たきりだよ」 「……」 病室の中。 「はっきりいって私はいま、幻想世界から宇宙の果てまで冒険してる最中だから、 健康な人よりもたくさんいろんな場所に行っていろんな人生を経験してるんだよね。 で、歩ける人ってガンダムは操縦できるの?トリステイン魔法学院へ行けたりするの?」 こなたはベッドの上でリハビリの技師をからかいつづける。 ……すっかり一人の立派なヒキコモリニートが完成していたのだ。 そもそも重度のヲタでインドア系なのに運動が得意というキャラ設定自体が不自然だったのだが ……そういう意味ではとても自然なキャラになったというべきか。 「それに私はギャルゲの中でいろんな学校に在籍できるし、海水浴にもいけるし、生徒会にも顔出してるし、 Hなこともできるし、もう一生病院にひきこもって寝ててパソコンクリックする人生でいいよね♪」 リハビリ技師を勝ち誇ったような糸目で見ながら、ゲームの続きを始める。 そのとき、病室のドアが大きく開く ドアのところに仁王立ちしているかがみ。 腰に手をあて、鋭い眼光。陽炎のようなオーラが吹き出している。 ツインテールが宙に浮いて揺らめいている。 「!!!!!!!!!!!!!!」 こなたはビクリと体が痙攣する。 かがみはゆらり、ゆらりとこなたの寝ているベッドに近づく ヒグマのような動き。 「こ、な、た……」 地獄の奥から漏れ出たようなドスのきいた声。 「や、やめて、来ないでください」こなたはガタガタふるえる。 「なにが、来ないで、くださいよ……」 かがみは圧倒されて硬直しているリハビリ技師に顔を向ける 「私がこの子を歩かせますから、お引取りください♪」 今までの仁王顔とは別人のような満面の笑顔で言う。 「は、はあ……」 リハビリ技師はロケット発射のように廊下へ飛び出す。 再びこなたの方を向く。 鬼の顔に戻るかがみ。 「さ、立つ!!!!」 「こわい、こわい、こわい」 こなたは逃げるように布団にもぐりこむ。 かがみはその布団を強引にはがす。 「ま、まあ、いいじゃないか……きょうは」 そうじろうがかがみをなだめようとする。 「ダメです!今やらなかったら、こいつは一生このままです」 かがみは団子虫のように丸まったこなたを開かせる。 そしてわきの下に肩を入れて無理矢理起立させる。 温かな感触がかがみの体に伝わる。 何日かぶりのこなたの温もりだ。 無菌室に入る日、隔離扉の前で手を繋いで以来の温もり。 「うう……痛い、痛い!」 顔をゆがませるこなた。 でも、いまは感傷にひたる暇はない、……なんとしても、歩かせないと…… **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - 全20話だそうですが早く最後まで見たいとゆう気持ちと終わってほしくない、まだまだ読みたいとゆう気持ちが交錯してます。素晴らしいです。 -- 名無しさん (2008-10-05 06:00:05) - 毎度拝見させていただいています。前にもコメかきましたが、あの時は名無しでした。 &br()心を鬼にして、こなたをリハビリさせようというその思い。 &br()かがみに!そして作者さんに脱帽です。 &br()続きがきになりますね。 -- 白樺 (2008-10-05 03:05:52)
【第17話 フラグ】 無菌室から一般病棟の個室に戻ったこなた。 何もかも1からやり直しながらみんなとワイワイ楽しそうに話している。 だが、かがみだけは一人廊下に追い出されていた。 中からそうじろうたちが一緒にエロゲの楽しみ方などをレクチャーしている声が聞こえる。 「ここをクリックするの?」 「そうだ、そうすると次の文章が出てくるんだ」 「あれ、選択肢が出て来たよ……とりあえず一番上」 「あ、それは……」 「ふむふむ……あれ、なんか、この銀色の髪の毛で黒カチューシャのヒロインに嫌われてる?……あれ、終わっちゃった?」 「フラグを潰してしまったな」 「なに?フラグって」 「フラグとはな……」 具体例を用いた非常にくわしい説明がつづく。 他の患者が聞いたらどんな顔をするだろうという内容の話し声をききながら、かがみは壁にもたれ、目を伏せてうつむく。 なんで私、ここにいるの? みんなは受け入れたのに、なんで私は嫌なの? こなた……私、そんなに怖かった? でも、こうでもしなきゃ……あんたはずっと引きこもったままで…… なんで?なんで? ……ひょっとして、昔の私もこんな感じだったの? いつも怒ってばかりで、ガミガミして、あんたが何かヲタな事をやろうとするたびにツッコミいれて…… それにくらべつかさやあんたのお父さんは、優しくて、あんたのやることを笑顔で受け入れて…… ……そういえば、つかさの方があんたに先に知り合ったのよね。 私はつかさがいなければ、あんたには会えなかった。 もしそうじゃなきゃ、おそらく一生知り合う機会がなかったはず。 私は、あんたとはたぶん、縁が一番遠い……。 クラスだって、ずっと別々だったよね。 「どうやったら正しくフラグ立てられるの?」 「色々あるけど、基本的にはヒロインとのイベントが発生すればすすんで参加すると言うことだなあ……」 「お姉ちゃん……」 扉が小さく開いて、つかさが顔をのぞかせていた。 「……なに?」 「今ならちょっとだけ、ほら、こなちゃんの顔が見れるよ。今ゲームに熱中してるし」 「……いい」 そして、あんたの人生の中で一番大きなウェイトを占めているのは、間違いなくあんたのお父さん。 生まれてからずっと、あんたのことを何でも知っている。 そして、あんたをこんな風に育ててきた。 それを私は、ここ1,2年だけ、しかも一日のうちたったの数時間、そのおこぼれをもらっているだけだった。 「おお、ヒロインが……そういえばこれって18禁……いいの?私このゲーム続けても。お父さん」 「おお、当然いいぞ。世間は許さなくてもオレが許す」 「へえ、エンディングが……あれ、涙が……」 「そうか、そうか感動したか……そう、人生だ、これが人生なんだよ、こなた!」 「うん、人生だねえ……」 今、ドアの向こうで、私が知らないこなたの過去の人生が追体験されている。 私がいなかった頃の長い長い時間。 その時間のすべてを共有したい。こなたの人生という分母の上に、私という分子の数をもっと増やしたい でも…… いま、私があんたを奪い取ったら、絶対不幸だよね。 私とあんたは、柊かがみと新しい泉こなたは、このまま会わないほうがいい。 一生出会わないほうがいい。 そして、怪獣のままでいい。 私はあんたと仲がいいつかさの双子の姉で、決して出会ってはいけない危険な怪獣です。 怒ってばかりです。優しくなんかないです。 せっかくこの世に祝福されて生まれたのに怖くて泣くのは嫌でしょ? だから、私は、もう二度とあんたに会いません。 むしろ、会っちゃってゴメンナサイと謝りたい。 私は遠く離れた場所で、絶対にそっちへいけないような場所から、あんたに見つからないように時々眺めるだけにする。 それでもし私の視線なんかを感じたら、ごめんね。もう二度と見ないから。 心の中で思い出すだけにするね。 「さようなら、こなた……」 かがみは、足音を立てないように、静かに病室の前から去ろうとした。 そのとき、白衣を着た技師や看護師たちとすれちがう。技師たちはこなたの部屋の中に入る。 「泉さん、リハビリの時間ですよ」 「えーやだ、めんどくさい……まだヒロインしか攻略してないのに」 「何を意味不明なこと言ってるんですか!筋力落ちて、立つだけで精一杯なのに」 「ま、こなた、ちょっとだけでも歩いたほうが……」 「やだ、そこにある積みゲーを全部やってから……」 「うーん、まあ、そうだな……もう1本やり終えたら、5分だけやってみるか。クリアまでに200時間かかるけど……」 そうじろうは昔はこなたに武道を教えるなどしていたが、病気になってからは完全に甘やかし状態になっていた。 「ダメです!お父さんも何を言ってるんですか!このままだと一生歩けなくなりますよ! 筋肉だけでなく骨や関節も脆くなってるのに」 「うーん、……なあ、こなた、ほんの2分、いや2秒だけ。ベッドサイドに立つだけでいいからさ」 「やーだ」 また病室のドアが小さく開いた。つかさの顔が出てくる。 「ね、お姉ちゃん。入りなよ」 腕を伸ばし、立ち去ろうとしたかがみの指先をつまんだ。 「え……で、でも……」 かがみは肩をすぼめ、俯きながら顔をそらす。 「私が、いたら……こなた泣いちゃうでしょ?」 逃げようとするかがみ。 その袖をつかさは引っ張る。 「こなちゃんを歩かせられるのはお姉ちゃんだけだよ。このままじゃ、こなちゃん一生寝たきりだよ」 「……」 病室の中。 「はっきりいって私はいま、幻想世界から宇宙の果てまで冒険してる最中だから、 健康な人よりもたくさんいろんな場所に行っていろんな人生を経験してるんだよね。 で、歩ける人ってガンダムは操縦できるの?トリステイン魔法学院へ行けたりするの?」 こなたはベッドの上でリハビリの技師をからかいつづける。 ……すっかり一人の立派なヒキコモリニートが完成していたのだ。 そもそも重度のヲタでインドア系なのに運動が得意というキャラ設定自体が不自然だったのだが ……そういう意味ではとても自然なキャラになったというべきか。 「それに私はギャルゲの中でいろんな学校に在籍できるし、海水浴にもいけるし、生徒会にも顔出してるし、 Hなこともできるし、もう一生病院にひきこもって寝ててパソコンクリックする人生でいいよね♪」 リハビリ技師を勝ち誇ったような糸目で見ながら、ゲームの続きを始める。 そのとき、病室のドアが大きく開く ドアのところに仁王立ちしているかがみ。 腰に手をあて、鋭い眼光。陽炎のようなオーラが吹き出している。 ツインテールが宙に浮いて揺らめいている。 「!!!!!!!!!!!!!!」 こなたはビクリと体が痙攣する。 かがみはゆらり、ゆらりとこなたの寝ているベッドに近づく ヒグマのような動き。 「こ、な、た……」 地獄の奥から漏れ出たようなドスのきいた声。 「や、やめて、来ないでください」こなたはガタガタふるえる。 「なにが、来ないで、くださいよ……」 かがみは圧倒されて硬直しているリハビリ技師に顔を向ける 「私がこの子を歩かせますから、お引取りください♪」 今までの仁王顔とは別人のような満面の笑顔で言う。 「は、はあ……」 リハビリ技師はロケット発射のように廊下へ飛び出す。 再びこなたの方を向く。 鬼の顔に戻るかがみ。 「さ、立つ!!!!」 「こわい、こわい、こわい」 こなたは逃げるように布団にもぐりこむ。 かがみはその布団を強引にはがす。 「ま、まあ、いいじゃないか……きょうは」 そうじろうがかがみをなだめようとする。 「ダメです!今やらなかったら、こいつは一生このままです」 かがみは団子虫のように丸まったこなたを開かせる。 そしてわきの下に肩を入れて無理矢理起立させる。 温かな感触がかがみの体に伝わる。 何日かぶりのこなたの温もりだ。 無菌室に入る日、隔離扉の前で手を繋いで以来の温もり。 「うう……痛い、痛い!」 顔をゆがませるこなた。 でも、いまは感傷にひたる暇はない、……なんとしても、歩かせないと…… -[[第18話:イケメンの恋人>http://www13.atwiki.jp/oyatu1/pages/801.html]]へ続く **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - かがみの健気さに毎度?心を打たれます(>_<) -- チハヤ (2008-10-07 16:23:30) - 頑張れかがみん!! &br()負けるなかがみん!! &br()こなたはかがみを待っている!!(T^T) &br()作者殿、ラストまで期待しています -- にゃあ (2008-10-07 07:32:24) - つ、続きが気になります!! &br()作者さん頑張ってください~~~!!!! -- 名無しさん (2008-10-07 01:49:45) - 全20話だそうですが早く最後まで見たいとゆう気持ちと終わってほしくない、まだまだ読みたいとゆう気持ちが交錯してます。素晴らしいです。 -- 名無しさん (2008-10-05 06:00:05) - 毎度拝見させていただいています。前にもコメかきましたが、あの時は名無しでした。 &br()心を鬼にして、こなたをリハビリさせようというその思い。 &br()かがみに!そして作者さんに脱帽です。 &br()続きがきになりますね。 -- 白樺 (2008-10-05 03:05:52)

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