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催眠術」を以下のとおり復元します。
「催眠術ぅ?」 
「そ」 
突然何を言い出すかと思えば・・・ 



今は昼休み。いつものように、いつもの4人で昼食を取っていた所だ。 
「昨日、ネットをブラブラしてたら見つけてさ?すべての技法をマスターしてしまったのだよ、私は」 
意味もなくエラソーな態度でふんぞり返るこなた。はっきり言って眉唾物だ。 
「そもそも催眠術って、人を操るようなヘンテコリンな物でしょ?あんたに出来るとは思えないんだけど」 
「そんなこと無いよー。ね、みゆきさん」 
「はい、催眠術とは、トランス状態という、夢うつつに近い状態まで人の意識を後退させ、そこで 
命令をすると従ってしまう、という物を応用したものだったと記憶しています。ですが、飽くまで 
本人の意識は残っているので、信頼している人にしか術はかけられないとか」 
「さっすがゆきちゃん、物知りだねー」 
ふむ・・・みゆきに言われると説得力がある。さすが生き字引みたいな人だ。 
「でさ、今朝お父さんで試してみたんだよ。そしたらもう泣きっぱなし!涙ちょちょぎれ!」 
「・・・一体何したんだよ」 
「ん?私がお母さんに見えるよーって」 
「お前は悪魔か」 
大体、肉親の死を思い出させたりすると落ち込み具合がひどいと聞く。今頃キーボードを涙で故障させていたり、 
悪ければロープでも探してるんじゃないか、と少しばかり心配になった。 
「まあ、あらかじめ合意の上でだけどね。もちろん。お父さん、とっても喜んでたし。かなたとまた話せたみたいで 
感激だ、って」 
「・・・なら良いけどさ」 
・・・ちゃんと人のこと考えてるのね。 
急にこなたの頭をなでてやりたい衝動に駆られたが、つかさもみゆきも居る前だ。そういう訳にも行かない。第一、 
二人っきりだとしても・・・気恥ずかしくて出来そうもない。 



「じゃあ、体験してみたい人!挙手!!」 
「おいおい、私らも実験台にする気か?」 
「じゃあ、つかさ!」 
「えっ?!」 
「人募っといて指名するなよ!」 
結局つかさが実験台になることになった。 



「えへへ、何かドキドキするなー」 
期待半分、不安半分と言った表情だ。 
「嫌ならちゃんと言うのよ。もし変なことになったら大変だから」 
「大丈夫だよ、お姉ちゃん」 
「じゃあ行くよー。まず私の目を見て下さい」 
「はい、見てるよ」 
インチキ占い師のような口調である。こういう占い師は当たらなさそうだ。 
するとこなたが、おもむろに人差し指を立てた。 
「次はこの人差し指の先をジーッと見て下さい」 
「見てるよー」 
「動かしますから、目で追って下さい」 
今度は人差し指で、円を描くようにし始めた。 
「こなちゃん、目が回りそうだよ~」 
「シッ!静かに、もう喋らないで」 
こなたはいつになく真剣な表情をしている。こんなこなたも可愛いな・・・って、いつの間にか 
ときめいてる私が居る事に気づいて、こなたに対する想いを再確認させられる。今頃になって、 
何でさっき立候補しなかったんだろう、と後悔がこみ上げてきた。 
こなたは、暫くおまじないか何かの様にウンダカダーと呪文らしき物を唱えたりしていたが、やがて手も口も止まった。 



「これから私が手を叩くと、貴女は今から何か面白いことを言います。しかし貴女はそれを覚えていません、 
記憶から消してしまいます。私が指を鳴らすと、術は解けて元に戻ります。はい!」 




パン!! 




こなたが柏手の様に手を勢い良く合わせると、つかさが目を開けて、笑顔でこう言った。 
「あははー、バルサミコ酢~」 
「ぷっ」 
思わず吹き出す私。見ればみゆきも口元を抑えており、こなたは目を細めて満足げな顔をしていた。 
パチン! 
「あ、あれ?私何て言ってた?!」 
「バ、バルサミコ酢ーって・・・」 
笑いが止まらなくて声が震える。 
「わ、私そんなこと言ってたの?!でも何でバルサミコ酢なんだろう?」 
顔を赤くして、俯いたまま考え込むつかさ。 
「たぶん、昔テレビとか漫画とかで見た面白いものだよ。記憶にあるもの以外はどうしたって呼び起こせ無いもん」 
人差し指を立ててこなたが言う。 
「あ、そうだ!料理番組で司会の人が言ってたんだ!!思い出した!」 
合点がいったのか、一転、顔を明るくするつかさ。 



「それにしても、本当にかかるのね」 
これには感心した。 
「そうだよ~。かがみんも試してみる?」 
「何て言ってかけるつもりよ。変なのだったら許さないからね」 
「大丈夫だよ、そんな変なのはかけたりしないって」 
「・・・じゃあ試してみようかしら」 
不安はあるけど、こなたがかけてくるのだ。期待の方が大きい。 
「じゃあ行くよー」 



暫くこなたの言うとおりに目を動かしたりしていると、段々と意識が遠のいていくのが解った。 
「・・・・・・」 
こなたが何か言っている・・・でも何を言っているのかは、もう解らない。 


パン!! 




突然大きな音がしたので、私の意識は現実に引き戻された。 
「・・・何をかけたって言うのよ。全然何とも無いじゃん」 
目の前に広がる光景はいつもの昼食時だし、口を開いても変な言葉は出てこない。 
(ちょっとがっかりかな・・・) 
「ちょっとがっかりかな・・・!!思ったことがそのまま口に出てる!!」 
私は慌てて口を押さえた。 
「だーいせーこー」 
「こなちゃんすごーい!」 
「本当にこういう事が出来るのですね。驚きです」 
「つかさもみゆきも喜んでないで、何とかしてよ!!考えてること筒抜けじゃない!」 
「私にしかどうにも出来ないよ?かがみん」 
「ちょっとぉ、何とかしなさいよっ!!」 
兎に角さっさとどうにかして欲しかった。 
「考えが筒抜けなんて恥ずかしいじゃない・・・」 
「んー、具体的にどう恥ずかしいんだぃ、かーがみーん」 
いたずら好きな子供のような目が、こちらを見つめている。 
だって、だって 




「だって、私がこなたの事が好きだってみんなに分かっちゃうじゃない!」 



「!!」 
私を含めた4人の驚きの反応。 
私は、本心が大きな声で出てしまった事への驚き。 
つかさとみゆきは普通に驚いていて・・・こなたは・・・ 
こなたは心底驚いた顔で、口を開けたまま固まっていた。 
私の視界がにじみ始め、やがて涙がこぼれる。 
(知られちゃった・・・) 
「知られちゃった・・・」 
次第に悲しみがこみ上げてくる。術は、こんな時も律儀に私の考えを口にさせた。 
「好きなの・・・好きなのよ・・・好きで仕方ないのよぉ・・・ぐずっ」 
「かがみ・・・」 
「ひっ、・・・そうよね・・・女の子が、ひっく、女の子のこと好きになる・・・なんて、ひっ、どうか、ううっ、してる・・・もんね、ひっく」 
なかなか呂律が回らない。 
私は机に突っ伏して泣き出した。 
「もう・・・、うう、喋れないわよぉ・・・」 
「・・・かがみ、ちょっと顔上げて・・・」 
こなたの済まなそうな声が聞こえる。 
「ひっ、こ、これ以上、何しようって言うのよ・・・」 
「いいから」 
「・・・」 
こなたに言われたとおり、顔を上げる。 
すると 




「へ?」 
その瞬間、何をされたのか、私には理解できなかった。 
次第に感覚が戻って来る。目の前に見えるこれは、こなたの顔。私の頬に触れているこれは、こなたの手。私の唇に触れているこれは、こなたの唇。私の口の中にあるこれは、こなたの舌。 








「!!!!!」 







ようやく自分が何をされているのかが分かった。 






(こなたと・・・キスしてる・・・しかもディープ・・・) 






「!!」 
ショックと恥ずかしさは後から来た。慌てて顔を離す。 
「こ、ここ教室よ!!」 
「だってさ・・・かがみ。私、かがみの気持ち知っちゃったもん・・・」 
(だからって・・・でも・・・) 
そこで私は術が解けているのに気が付いた。 
「あ、あれ?考えてることが口に登らない・・・」 
「先ほどの術の解除条件は『かがみさんの唇に泉さんが触れること』でしたので」 
少々困った顔をしたみゆきが解説してくれた。 
「・・・ホントは、『かがみん、シーッ』って唇に人差し指当てて『はい、解けました』ってやるつもりだったんだけどね・・・・・・・・・」 
こなたは何やらゴニョゴニョと言葉を続けているが、声が小さすぎて聞き取れない。私もショックの余韻が大きくて、こなたの言葉に意識が向かなかった。 



呆然とする私を、つかさが私のクラスまで送ってくれた。 
「だ、大丈夫だよ、お姉ちゃん。たぶん見てる人居なかったから・・・」 
「・・・うん」 
「おーっす、柊ぃー。お、柊妹も一緒か。どうしたん?」 
「柊ちゃん・・・何だか元気無さそうだけど、どうしたの?」 
クラスの友人二人が、一人は野次馬根性丸出しで、一人は心配そうに聞いてくる。 
「あ、あの・・・」 
その辺りはつかさが適当にごまかしてくれた。事情の欠片を察してくれた峰岸が、日下部を引き離してくれた。 
「じゃあ、放課後来るから・・・」 
そう残してつかさはクラスに戻っていった。 




その後の授業なんて頭に入るはずもなく、とても長い時間が過ぎていった。永遠とも思える時間。 
その間、思い起こされるのはこなたの事だけ。 
突然のキス。 
こなたの唇・・・柔らかかったなぁ・・・ 
そこで疑問が湧いてくる。何故こなたは私にかけられた術を解くためにキスをしたのか。しかもディープ。 
術を解くだけなら、当初の予定通り、ちょんと私の唇に触れるだけで良いのだ。 
何故・・・・・・ 


ようやく最後の授業の終了のチャイムが鳴った。しかし、私はまだ動けなかった。 
頭がボーっとする。今口を開けば、第一声は「こなた」だろう。つかさが迎えに来てくれなければ、 
いつまでもそのままだったかも知れない。 




その日の帰り道は、つかさと二人だった。 
私は何も言わない。つかさも何も言わなかった。 




家に帰っても頭の中はこなた色一色。何とか服を着替えると、そのままベッドへ倒れ込んで、 
しばらくそのままで居た。 
(明日も、こなた来るかなぁ・・・) 
そう思っていると、携帯が着信音を奏で始めた。メールの着信音。みゆきからのメール。 
開くとこう書かれていた。 
『泉さんは今日のことを大変気にしていらっしゃる様です。もう一度よく泉さんとお話されてみては?』 
「こなたっ!!」 
気が付くと、力の限りこなたの名前を叫んでいた。 
「お姉ちゃん、どうしたのっ?!」 
慌ててつかさが飛び込んでくる。 
「な、何でもないわよ・・・何でも・・・」 
「そ、そう・・・」 
お互いの間に気まずい雰囲気が流れる。 



「あ、あのね、お姉ちゃん・・・」 
切り出したのはつかさの方だった。 
「私はね、女の子が女の子のこと好きになっても、別におかしくないと思うよ」 
「つかさ・・・」 
「だからね、・・・勇気出してこなちゃんと、もう一回、真剣に話してみたら良いと思うの。 
お姉ちゃんの為にも、こなちゃんの為にも・・・」 
「・・・」 
パタン、と軽いドアの音と共に、つかさは部屋を出ていった。 
「・・・」 
そっと唇をなでてみる。ショックが大きく、あのときの感覚はあまり覚えていない。 
唯一覚えているのは、あの柔らかさ。 
「・・・」 
もう一度、さっきみゆきから来たメールを読み返す。 
私はこなたの携帯の番号を呼び出し、通話ボタンを押した。 



プルルルル・・・プルルルル・・・ 




呼び出し音の度に、心臓の鼓動が激しさの度合いを増して行く。そのせいで頭に血が巡ってきたのか、 
まともに物を考えられるようになってきた。 




プルルルル・・・プルルルル・・・ 




何故ずっと頭が真っ白だったのか。もっと早くこなたと話すべきでは無かったのか。 
ショックが大きかったから、頭が真っ白だったのだ。 
では何故、ショックだったのか。 




不本意な強制告白。しかも意中の相手は目の前に。おまけに同性に対する、多少なりともやましい恋。 




それから、突然のキス。公衆の面前で。 




果たしてそれらはショックと呼べるのか。 
(ううん、こなたのキスだったんだもの。あのときこなたを引き離した私がどうかしてたのよ???人の目を気にするなんて???) 




プルルルル・・・プルルルル・・・ 



(今度こそ・・・私の本心から「こなたが好き」って言うんだ!) 



プルルルル・・・プルルルル・・・ 



呼び出し音の度、緊張は高まって行く。心臓は早鐘の様に打ち、今にも口から飛び出すのではないかという程だ。 
が、いつまで経っても電話に出る気配がない。 
(何でよ・・・私と話さないつもりなの?) 
にじみ始めた視界の中、私は終話ボタンを押した。 
今度は泉家の番号を呼び出し。再び響く呼び出し音。 



プルルルル・・・プルルルガチャッ 



「はい、泉です」 
電話口に出たのは、この間から泉家の居候になっている、ゆたかちゃんだった。 
「あ、あのっ柊です、こなた居ますか?」 
早口になってしまった。緊張は隠せそうもない。 
「こなたお姉ちゃんですか?今出かけちゃってますけど・・・」 
「そ、そう・・・ごめんなさい、どうもありがとうございます」 
「いいえ、こちらこそ」 
「あ、じゃあこれで」 
「はい、さようなら」 



プッ、ツーツーツーツー・・・ 



途端に大きなため息と、涙がこみ上げてきた。 
「・・・私のこと避けてるのかな・・・あのキスで全部おしまいのつもりだったのかな・・・」 
嗚咽をかみ殺せなくなり、喉から声が漏れる。 
「うぅっ、こなたぁ、こなたぁ・・・うう、うわぁぁん」 
枕に顔を埋め、つかさに鳴き声を聞かれないようにする。そのせいで私には、周りの音が聞こえていなかった。 

こんこん 



控えめなノックの音がすることに気づいたのは、涙が枯れかけてきた頃だった。 
「おねぇちゃーん?お姉ちゃん?」 
「・・・開いてるわよ・・・」 



ガチャ 



ドアを少しだけ開けたつかさが、心配そうな目をしていた。 
「・・・何?ご飯出来たの?」 
「ううん、お客さん」 
「悪いけど帰って貰って・・・とても人に会えるような状態じゃないし・・・」 
「それでも会って貰いたいお客さんなんだけど・・・」 



キイィィ・・・ 



少し油が切れてきた様な音を立てて、部屋のドアが開く。誰だろう、私がこんな状態でもつかさが「会わせたい」という客人とは。 
「かがみ・・・」 
「!!!!!」 
心臓が跳ね上がる。息が止まる。思考が止まる。 
私のすべてが止まってしまったのではないかと思った。 
枯れかけていた涙が、再び溢れ始める。 
「・・・こ・・・こなた・・・」 
「かがみ・・・ゴメンね。私・・・」 
これ以上、こなたは先を続けなかった。否、私が続けさせなかった。 
とっさに駆け寄った私が、こなたの唇を私の唇で塞いだ。 




「ふっ・・・むぅ・・・ふぁぁ・・・んっ・・・」 
時々、水音が部屋に響いた。 
どれくらいの間こうしていただろうか。ゆっくりと顔を離す。つかさはいつの間にか、ドアを閉めて出て行ってくれていた。 
こなたには、まだ聞きたいことがある。 
「どうして電話に出なかったのよ!」 
「い、いや、携帯は制服のポケットに入れっぱなしで・・・」 
「どうして・・・あの時私にキスしたのよ!催眠術解くだけなら普通に触れば良かったじゃない!」 
「・・・それは・・・」 
こなたが俯いて口を噤む。 
「何よ!言えないの!?」 
私は声を荒げた。こなたに隠し事をされるのが嫌だったから。 
「・・・それは・・・」 
「さっさと言いなさいよ!!」 
こなたの肩が震え始める。 
そこでハッとなった。 




こなたを泣かせてしまった・・・私の一番望まないものなのに 




「ご、ゴメン・・・わ、私・・・どうしてもこなたに隠し事とかされたくなくて・・・」 
こなたを抱き寄せる。小さい肩が震えている。 
「ゴメンね・・・ゴメンね・・・本当はこなたの涙なんか見たくないのに・・・ううっ」 
「違うんだよ、かがみぃ・・・違うの・・・」 
こなたが顔を上げる。 



「私もね、かがみの事大好きなの」 





そこにあったのは、涙まみれの満面の笑み。 
その顔を見たとき、私はどうしようもなくなって。 




きつくこなたを抱きしめて、ただただこなたの名前を呼び続けた。 


「こなたぁ・・・うぐっ・・・こなたぁ!」 
「心配しなくてもかがみん、私はここにいるよ?」 
「うわあぁぁん!こなたぁ!!」 
「っちょ、ちょっとかがみ、・・・苦しい・・・」 
「あ、ご、ごめん・・・」 
こなたの苦しげな声にようやく気づき、力を緩めた。しかし絡めている腕は解かない。 
「あ、あのさ、いつか・・・ら?」 
「知り合って少ししてから・・・」 
「・・・何で?」 
「とっても良さそうな人で・・・みんなに気配りが出来る人で・・・でも、とっても寂しがりな人だから・・・私が何とかしてあげたいなって思って・・・それから次第に・・・」 
こなたの顔が次第に俯いて行く。 
「そっか・・・有り難う、こなた」 
「へ?」 
こなたがゆっくりと顔を上げる。 
私はこなたへの感謝の言葉を、ゆっくりと、出来る限りの笑顔で紡いだ。 
「理由話してくれて、また私に会いに来てくれて。それから、私を好きになってくれて」 
「かがみ・・・」 
「でもっ、私に無理矢理告白させたことは許さないわよ!」 
「・・・ごめんなさい・・・」 
こなたがシュンとなる。 
そんなこなたがまた愛おしくて。 
「じゃあ・・・責任・・・取ってよね?」 
「・・・うん、分かった。取るよ」 
その台詞を聞いて、再び唇を押し当てる。 
こなたの味を出来る限り味わうように、こなたの口の中で舌を蹂躙させる。 
「うむぅっ、んんっ」 
少々甘い。今日の昼に食べたチョココロネの味だろうか。 
「ふぁっ、うむんぅ・・・」 
どちらからともなく、お互いの舌を絡める。 
今はそうしているだけで幸せで。 
私は、そのとき、自分が世界で一番幸せな女の子だと思った。 



どれ位の間、そうしていただろうか。窓越しに見える空は、すっかり闇に染まっていた。 
「・・・もう8時だよ」 
「・・・そだね」 
「あ、あのさ・・・こなた。今日は泊まっていったら?」 
「え、良いの?」 
「お姉ちゃん達は私がどうにかして説き伏せるわよ。今日からお父さんとお母さん、旅行行っちゃってるし」 
「じゃあ私はお父さんに電話してくるよ。電話貸して?」 
「オッケー」 
さっきまでのモヤモヤは綺麗さっぱり、跡形もなく姿を消していた。 



その日の夜、かがみの自室から、二人の押し殺したような喘ぎ声が漏れていたのは言うまでもない。 



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- 全く、イチャイチャしおって  -- 名無しさん  (2010-04-20 15:04:06)
- かがみがねぇ  -- 柊まつり  (2010-01-22 17:44:49)
- その喘ぎ声は、いのりさんとまつりさんとつかさに、ドアごしにバッチリ聞かれているわけか。  -- 名無しさん  (2009-12-05 22:38:40)
- つかさ出来る子! &br()良い話でしたw  --    (2009-03-19 12:01:35)
- つかさGJwww  -- 0210  (2009-03-13 19:24:37)
- 良いです。  -- 名無しさん  (2008-05-27 21:00:18)
- GJ! &br()  -- ゆん  (2008-04-14 16:59:13)

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