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『ふぁん☆すた』 第三話」を以下のとおり復元します。
あれから三日が過ぎた。 
その間で、こなたは少し優しくなった。私を一生懸命励まそうとしてくれるのが見ていても分かった。 
こなたは人に積極的に優しくするのには慣れていないのだろう。 
照れ隠しに私をいじってくることもしばしばだ。 
そんな彼女をいじらしく感じた。 
いとおしい。 
とても。 

そんなこなたのおかげで私は安らぎを得ることができた。 
私はこなたと一緒にいれて幸せだ。 

…まあ、こんな気持ちは到底面には出せないけどね。 


『ふぁん☆すた』  第三話 


「いやあ~、すっかり春だねえ~」 

窓の前に立ってこなたが言う。 
それに応えてベッドの脚の部分に腰かけながら私は言った。 

「そうね。まあすぐに大学の入学式があるからうかうかもしてられないわね。…もちろんそれまでに退院できたらの話だけど。」 

我ながらちょっとネガティブな発言。 

「だ、大丈夫だよ。特に異常はないみたいだしあと2,3日ってところだって!」 

こいつは私が落ち込みそうになると必死に励ましてくれる。 

―近頃ちょっと内面を出し過ぎかな… 

こいつといると、弱気な自分を隠せない。甘えだとは分かっている。 

―気を遣わせすぎかな…。ちょっと気をつけなきゃ。 

それでもこいつに励まされると本当に元気になる。 
こんなに私を元気付けてくれたのはこいつが初めてだ。 

だから私はとびきりの笑顔で慣れないことを言う。 

「そ、そうね。そうよね…。…あー、なんだその…、あ、ありがとね!こなた。」 

「おやおやかがみん、顔が赤いよ~?」 

じ、自分だって赤いくせにこいつは…。 
まあこいつなりの照れ隠しだとは分かってるけど…。 

ふと私は窓の外に目をやる。 
何にも遮られていない、横長の四角形。 
そこから見える景色はさながらパノラマのようだ。 

―…? 

一瞬何か違和感を感じる。 
しかしその違和感はすぐに暖かい空気に溶け、後には春特有の気だるさとどうでもよさのみが残った。 

「春と言えば…」 

いきなりこなたが喋り出す。 

「かがみには春は来ないのかね~。」 

―こいつ、人の気も知らないで…。 

「う、うるさいわよ。あんたはどうなのよあんたは。」 

動揺を隠して聞き返す。 

―ま、まさか彼氏持ちじゃないだろうな…。でもそれなら毎日ここに来るはずないわよね。 
 いやでも… 

「私は今この状況が一番楽しいからいいのだよ!」 

―!! 
無い胸を張って自信満々にこなたが言う。このセリフは卑怯だ。何も言い返せないじゃない。 
つまり、私もこなたにとって特別、と考えていいのかしら…。私のこなたに抱いてる“特別”な感情とはまた違うかもしれないけど…。 

「今日はデレデレ日和ですなあ~。」 

ニヤニヤ顔のこなたは窓辺から離れて私のベッドに腰かけた。 

「う、うるさい!そんな妙な天気あるか!」 

「おお…ナイスツッコミ。…ふあ~あ…」 

「なによ。随分眠たそうじゃない。また徹夜でゲームか?」 

「失礼な…。私=徹ゲーですか…。といってもその通りなんだけどね。ちょっと寝させてもらおうかね。」 

そう言ってこなたはベッドに横になる。 
―スリッパまで脱いで寝る気満々じゃないの…。 
一応私のベッドだぞ。 
ああ、けど今思いっきりこのベッドに飛び込んだら気持ちいいだろうなあ…。 

刹那、また違和感。 

―いやいやいや、今飛び込んだらこなたを下敷きにしちゃうじゃないの。 
気持ちいいどころか痛いだろ。別の気持ちよさはまああるかもしれんが…。 
って何を考えてるんだ私は… 

自分で自分にツッコミをいれる。 
こんな器用な芸当ができるのなら私は一人でいても退屈しないのかもしれない。 


その時… 

コンコンコン… 

扉がノックされる。 

「はーい、どうぞー!」 

ガチャリ。 

入ってきたのは、つかさだった。 

「おはよ~お姉ちゃん。」 

「よ。つかさ。」 

「調子はどう?変なところはない?」 

「大丈夫よ。もとから傷はなかったんだし。」 

「そっか。よかった~。……記憶のほうは?」 

「ああ、そっちも多分大丈夫よ。心配いらないわ。」 

―こなたが傍にいてくれるから。 

私の口調から本当に大丈夫そうだということを感じ取ったのだろう。 

「そうなんだ!ホントによかったよ~!」 

まったく、この子は…。顔と感情が直結してるのか、心底ほっとしたような表情で笑った。 

「ふふ、心配かけたわね。」 

そうだ。つかさにはまだこなたを紹介してなかった。 
ベッドに寝転がって寝息を立てているこいつはすでに風景に埋没していて、危うく忘れるところだった。 

「ちょうどいい機会だから紹介しとくわ。こいつ、泉こなた。…こら、起きろ。」 

「え、えっと、お姉ちゃん?」 

つかさは訳が分からない、という風に戸惑っている。 
当たり前だ。紹介された相手はスースーと気持ちよさそうに寝ているのだ。…私のベッドの上で。 

「ほら、起きろって。お~い。」 

「むにゃ~…かがみぃ…」 

な、寝言で私の名前を!? 

「…お、お姉ちゃん?」 

つかさはさらに混乱している。 
私は私でものすごく恥ずかしい。 

「だから起きろって!」 

「ん~…?かがみどったの?」 

「はあ、やっと起きたか。」 

これでやっと話が進む、と思った矢先、つかさが妙に取り乱して言った。 

「あ、あの、私トイレ行ってくるね!」 

ガチャン! 

そして部屋から逃げるように出て行った。 

「「?」」 

「どしたのかな?」 

「さあ…。」 

「妹さんてシャイなの?」 

「いや、そういう問題でもない気が…。」 

こなたには見えなかったのかもしれない。しかし私ははっきりと見ていた。 
出ていく直前のつかさの表情には、戸惑いと混乱。 

ここまではまだ分かる。 

姉のベッドで寝ていた女の子が寝言で名前を呼んだのだ。 
もし私がつかさの立場だったとしても戸惑い、混乱するに決まっている。 

だが、彼女はもうひとつ、不可解な表情を浮かべていた…―― 



部屋を出て私―柊つかさです―は走り出す。 
心に、戸惑い、混乱、そして…恐怖―お姉ちゃんが遠くへいってしまう恐怖―を抱いて。 
目的地はトイレなんかじゃない。 
お医者さんの、お姉ちゃんの主治医さんの部屋だ。 
さっきのお姉ちゃんの言動を思い出す。 

『ちょうどいい機会だから紹介しとくわ。』 

お姉ちゃんがいう。 

『こいつ、』 

嬉しそうな顔でお姉ちゃんは指をさす。 

『泉こなた。』 

何もない、虚空に向かって。 

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- 久し振りに来てみたら自分の作品にいくらかコメントがあったので。 &br()実は続きはあるっちゃあるんですが… &br()もう書く気力が無くなってしまいましてね…。 &br()すみません。 &br()ただひとつ、僕の頭のなかではこのあとかがみと本当のこなたは幸せに暮らしていますよ。 &br()  -- 12-926  (2009-11-10 22:40:03)
- かがみが少しかわいそうでした… &br()けどこれも一つの愛かと。 &br()楽しませていただきありがとうございました。  -- 名無しさん  (2009-01-16 00:53:50)
- シリアスな終わり方なのかな…? &br()続きあるのなら大いに期待しております!ww  -- 名無しさん  (2009-01-07 04:10:48)
- ↓のコメントをした者ですが・・・ &br()もしかしてこの作品ってまだ続くんでしょうか? &br()もしそうだとしたら凄く失礼な発言をしてしまったなあと思いまして・・・(勝手に続き予想したり、このあと救済があるかもしれないのに勝手に鬱と決めつけたり) &br()すみませんでした! &br() &br()もしこれで完結なんだとしたら、このコメントはシカトでおkですw &br() &br()お騒がせして申し訳ありませんでした &br() &br()最後にあえてもう一度。 &br()作者さん、GJ!  -- 名無しさん  (2008-12-16 01:08:24)
- なんか最後の最後で超シリアスだ・・・ &br()自分はなんとか耐えられたし、こういう作品は良いと思うけど、この後の展開を予想すると凄い鬱展開になりそうなので、冒頭に注意書きとか必要かもしれない・・・ &br()医者に泉こなたの存在が無いことを告げられたかがみが発狂したり・・・ &br()ダメだ、考えただけで寒気がする &br()でもやっぱり注意書きは大袈裟かなあ &br()すみません、言いたいことがまとまってなくて &br()でも作品自体は凄く楽しませてもらいました! &br()GJです  -- 名無しさん  (2008-12-16 00:58:46)
- こなた死んでるのか…  -- 名無しさん  (2008-08-14 01:54:20)

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