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虚像」を以下のとおり復元します。
『何で謝るの?』 

…頭の中にそんな言葉が聞こえた気がした。 
得に意味もない雑念だと考え、かがみに電話しようと携帯に手を伸ばした時、ふと机の上の鏡に映った自分を見て…悪寒がした。 
変な表現だけど、何か、見てはいけないものを見たような…。 

だって、鏡の中の私………気持ち悪い程に笑ってるんだよ? 
口角は見たことない程釣り上がっていて、人と言うより化け物に近い感じで。 

なんで?私は一つも笑ってなんかないのに……… 

『それは私が真の泉こなただからだよ』 
「へ…!?」 

さっきと同じような雑念…いや、違う。これは声だ。じゃあさっきのも………一体誰の声? 
この部屋には私一人しかいない。 
もこの耳と脳には、誰かの声がはっきりと届いた。 
部屋全体を見渡す。 

「だ、誰さ一体!」 

部屋に人がいないと分かっていながらも、問わずにはいられなかった。 
返ってくるハズのない返事は、私の問いの数十秒後に返って来た。 

『私は…こなただよ?』 
「こなたは私だよ!ふざけるのも大概にしてっ」 
『やれやれ、喧嘩の鬱憤を人にぶつけるとはね…見苦しいね』 
「うるさいな!」 
『かがみと喧嘩して、後悔してる?』 
「放っといてよ!」 
『相手にしてもらえなくて、色んな人に嫉妬してるんでしょ?』 
「そんなの違う!」 
『付き合ってるんだからさ、自分だけのモノにすればいいじゃん?』 
「そ、そんな迷惑な…」 

言葉を続けようにも、急に起こった目眩と酷い頭痛で声にならなかった。 
足がよろけて倒れそうになるのを、机に手をつくことでどうにか免れる。 
揺れる視線の先には鏡。映っている自分は苦痛どころか快感を感じているような笑顔だった。 
そこで…意識は途切れた。 

『お疲れ様。これでやっと、本当の泉こなたになれるね…』 


―――。 


寝覚めの気分は最高だった。何か歯止めが取れて、今なら本当の自分を出せる気がする。 

かがみを私だけのモノに…それだけが、私の望み。 

「ふふふ、待っててね…かがみ」 

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