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「またこんなに買って。お金大丈夫なのか?」 テーブルの上に置かれたお菓子をつまみながら、漫画を読んでいるこなたに話しかけた。 すっかり見慣れたこなたの部屋。そして色んな意味で使い慣れたベッドの上に放置された、漫画やゲームの山。 よくもこんなにたくさん買えるものだ。買い物依存症の気があるんじゃないかと、時々心配になる。 「うん、平気だよ。カードもあるし」 さらっと恐ろしいことを言うな、あんたは。 「おいおい。あんたいつか破産するわよ」 「いやいや。これでもちゃんと考えて買ってるのだよ」 今回はバイト代が上がったからついつい、とはずんだ声で言うこなたは上機嫌だ。 「そういや、ずいぶん長いわよね。もう一年以上? 正直すぐに辞めると思ってたけど」 正確に言えば、『すぐに辞めてほしかった』の間違いなのだが、言うつもりはない。カッコ悪いし。 「む、失礼な。まあ私も、ここまで続くとは思ってなかったけどさ。予想外に楽しいからね」 「ふーん」 「ただで色んなコスプレできるし、店長もよくしてくれるんだよ。バイト仲間もいい子ばかりだし」 「そうなんだ」 我ながら気のない返事だと思う。それも仕方がない、私の機嫌はどんどん下降中なのだから。 こなたが私の知らない世界で生き生きとしているのが寂しい、というのもある。 でも、テンションがエレベーターのように落ちている一番の原因は、こなたのバイト代が上がったという事実だ。 給料が上がるのは勤め期間が長いという理由もあるだろうが、たぶんそれだけじゃなくて。 「やっぱ貧乳はステータスだよね! 需要が高いとやりがいあるもん」 そう、それだけこなた目当てで来る客が多いということだ。成熟しているどころか小学生そのものな外見なのに。 日本のオタクはどうしてこうロリコン率が高いのだろうか。 ……その未成熟な体に欲情している私が言えた義理でもないけれど。そこらへんは棚上げしておくとして。 非常に面白くない。そんな苦々しい気持ちがうっかり表情にも出てしまったのか、 「ねえ、かがみん。もしかしてやきもち妬いてる?」 漫画を床に置いて私に近づきながら、先程よりも嬉々とした声で訊いてきやがった。この小悪魔め。 ああそうですよ妬いてますとも。恋人が不特定多数の男に愛想振りまいて平気でいられるわけがないでしょ。 えらく人気者らしいし、そのおかげでこの前のクリスマスもろくに二人で過ごせなかったし。 だけど『私一人だけ抜けられなくてさ。ごめんね……』ってしおらしく謝られたら、折れるしかないじゃない。 しかも迎えに行けば、パトリシアさんや長門っぽい店員とやけに仲良くしてるわ。 『コナタのサンタ服ベリーキュートでしタ!』といらない報告されるわ。 ベリーキュート? そんなの当然でしょ。こなたに似合わないで誰に似合うっていうのよ。 ああでもその姿を大勢の男どもに見られたのよねちくしょう。 つーか、何であなたたちがそんなに誇らしげなのかと。サンタ服を見れなかった私への自慢か? 自慢なのか? 大体CDジャケットの時といい顔近すぎだ、あの欧米人。こなたに抱きつくな。頬にキスするな。 こなたももっと抵抗しなさいっての。私が襲ったらしぶとく暴れるくせに。 思い出したら余計に腹が立ってきた。後半から八つ当たり気味の思考が混じっていなくもないが。 いっそずっと溜めてきたものを吐き出してやろうかと思ったが、 それと同時にこなたに酷いこともしてしまいそうなのでやめておく。 それに、今嫉妬心を認めるのはとても癪にさわった。どうして私ばかりがこんなにやきもきさせられなきゃいけないのだ。 少しはこなたも、つれなくされて焦るといい。 「やきもちって、何に?」 自分でも驚くくらい平静な声で返答できた。嘘は苦手だと思っていたが、そうでもないかもしれない。 こなたとしては、渋々認めるか、妬いているのが丸分かりの否定が返ってきてほしかったのだろう。 一瞬だけがっかりとした表情を浮かべたのを、私は見逃さなかった。 「またまたー、とぼけちゃって。私がお客さんにモテるの、面白くないんでしょ?」 どうしても私に『妬いた』と言わせたいらしい。普段なら腹が立つニマニマ笑いが、こなたの必死さの現われに見えた。 その反応に少しだけ溜飲が下がる。私だけが夢中じゃないんだと。だけど、もうちょっと意地悪してやることにした。 いつもやきもちを妬かせられる仕返しだ。 「ああ、そりゃ少しはね。でもそれが仕事なんだし。いちいち妬いてたら身が持たないわよ」 今の私は詐欺師になれると思う。 「嘘だっ! 絶対さっき妬いてたよっ」 「もうちょっと古いぞ、それ。で、その根拠は?」 「だって、私がバイトの話してるとき、おざなりな返事だったし、眉間にしわ寄ってたし」 しつこく食い下がっているが、こなたの口調にだんだん自信がなくなってきたのが分かった。猫口になる余裕もないらしい。 あともう一息といったところか。 「あー、ごめん。ちょっと考え事してたのよ」 「考え事?」 「あんたのバイトに向ける持続性と熱意を、どうやったら勉強の方にも向けてくれるのかって」 にやりと笑って止めの一言を放ってやると、こなたは完全に沈黙した。 憎たらしい子悪魔からすっかりしょげた小動物になっている。心なしか萎れたアホ毛がかわいらしい。 私はすっかり機嫌が直っていた。こなたが私の言動に一喜一憂してくれるのが、嬉しくてしょうがない。 「そもそもやきもち妬く必要なんかないでしょ」 その言葉に、こなたの大きな瞳が潤みだす。 もうだめだ。頬がゆるむのを抑えきれない。 「だって」 手を握って、形の良い頭を撫でながらキスをした。やわらかい。髪も手も。そして唇も。 こなたの顔が見る見るうちに赤くなった。普段は眠たそうな目が見開かれて、花緑青の瞳がきらきらと輝いている。 「こなたがこんなふうになるのは、私にだけだから」 「あ……」 キスしただけでこなたがこんなに恥らうなんて、誰も知らないのだろう。私以外は。 どれだけ他人に愛想を振りまこうが、他の子と仲良くしようが、こなたの恋人は私なのだから。 『やきもちを妬く必要はない』と理性では分かっているのだ。先程こなたに言ったように。 だけど私のこなたへの感情は貪欲で、薄っぺらな自制心なんかすぐに呑み込まれてしまう。 それでも、嫉妬を顕にしてこなたにぶつけないあたり上出来だと思いたい。 「それとも……他の人にされても、こんなに赤くなるの?」 こうやって意地悪するぐらいなら、許容範囲だろうし。 「まさかっ」 心外だと言いたげに即答された。その後すぐに俯いてしまったけれど。長い髪から覗く耳も赤い。 抱きしめると、私の背中に手を回してくれた。それだけでも理性が切れそうだったのに、小さな声で「それに」と呟いて。 「かがみとしか、したくないもん」 堪らず羞恥に染まった耳を軽く噛んでやると、こなたは私しか知らない甘い声で鳴いた。 **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - あーなんか… &br()もうダメだ -- 名無しさん (2010-09-05 21:02:12) - やべぇ、このこなた無茶苦茶可愛いいww -- 名無し (2010-05-09 08:42:57) - 今なら萌え死ねる -- 名無しさん (2010-05-07 21:26:53) - 最後のこなたの一言にやられた…← -- 名無しさん (2010-03-31 13:40:05) - なんでしおらしい、もしくはか弱い感じのこなたは可愛いんだろうかw だからかがこな大好きなんだよww -- 名無しさん (2008-08-08 17:43:52) - ↓無垢な名前じゃないw -- 名無しさん (2008-08-04 23:57:44) - いいですね〜。こういうの好きですよ -- 無垢無垢 (2008-08-04 07:56:34)
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