今日は先生とアウトレットでショッピングデート。
安くて可愛い洋服を沢山買って気分は最高。
「あ〜ちゃん、かなり買ったね」
「うん!!だってどれも可愛いから止まらなくなっちゃたんよ」
今はちょっと買い物休憩でカフェで一休み。
「ふぇぇぇん・・・」
どこからか小さい子の泣き声が聞こえた。
見ると3,4歳くらいの女の子だった。
「どうしたの?」
「パパとママがまいごになっちゃったの・・・」
自分が迷子じゃなく、親が迷子になったって・・・可愛いw
「そっか。じゃあ、お姉ちゃんと一緒にパパとママ探しに行こうか!」
「うん!!」
あたしはその子の手を引いて、先生と一緒に迷子センターへ向かった。
迷子センターに行ったら、すぐにその子の親が現れた。
「どうもありがとうございました」
「いいえ」
「おねえちゃん、ばいばい」
「バイバーイ」
あたしたちはお礼を言われてその親子と別れた。
あぁ、やっぱり小さい子って可愛いな〜。
「あ〜ちゃん、幼い兄弟っていたんだっけ?」
先生が尋ねてきた。
「ううん。妹と弟いるけど小さくないよ。何で?」
「あぁ、いやに子供の扱いが上手いなって思ったから」
「あ〜ちゃん、小さい子大好きなんよ。だからじゃないかな?」
「へー、そうなんだ。そう言えば、進路も保育士の専門学校だよね」
「うん。三日後に合否の連絡が来るの」
「あそこは受験したらほとんど受かるから大丈夫じゃけぇ」
「担任もそう言ってたけど、本当なの?」
「ほんと、ほんとw」
「のっちは、子供好き?」
「うーん・・・よくわからん」
頭をポリポリかきながら答える先生。
「あ〜ちゃんね、早く結婚して子供が欲しいんよ。子供の名前も、もう考えてるんだ。男の子だったら俊で、女の子だったらはな」
「・・・あはは。あ〜ちゃんのお母さん姿、すげー想像出来る」
「えー、そこ笑うところなん?」
「ごめんごめん。さ、もう帰ろうか・・・」
そう言いながら先生はあたしの頭をポンポンと軽く叩いた。
三日後———
「せんせー!!受かったよ!!」
あたしは嬉しくて一番最初に先生に電話した。
「・・・ちょ、あ〜ちゃん、叫ばなくてもちゃんと聞こえてるよw」
「あ・・・ごめんなさい」
「ううん。それより合格おめでとう。ほら言った通りちゃんと受かったでしょ?」
「うん!!ねぇ、先生お祝いしてよ」
「何か欲しいもんでもあるの?」
「別に物じゃなくていいんよ。先生と一緒にいたい!今週末先生んち泊まっていい?」
「いいよ・・・」
あー、学校受かってよかった。
今週末は久々に先生の家に行けるし。
嬉しい事だらけだよ。
そして楽しみにしてた週末はあっという間にやってきた。
ピンポーン。
ガチャと、扉が開く。
「いらっしゃーい」
大好きな先生が出迎えてくれた。
テーブルの上にはお寿司が置いてあった。
「祝いの席ってお寿司ってイメージしかなかったんだけど、あ〜ちゃん食べれるよね?」
「うん、ありがとう。なんか、ごめんね。気使わせちゃって・・・」
「別に気なんて使ってないけ。それに卒業祝いも兼ねてだからって、卒業式はまだしてないけどねw」
先生が出前を取ってくれたお寿司を食べ始める。
どのネタも美味しかった。先生と食べてるからよけいに美味しく感じた。
やっぱり先生と一緒にいると、何してても楽しいし、嬉しいな。
食べ終わって食後のお茶の時間。
「はぁぁぁ・・・・」
「なに?どうしたん?ため息なんてついて?」
「えー、だって卒業したら先生と、一緒の時間が短くなっちゃうのかなって思ったからさぁ・・・」
先生は頬杖をついて、ふふんって鼻で笑った。
「あっ!でも逆に卒業したら今までみたいにコソコソ会う必要がなくなるから良いのかな?ねぇ、先生?」
先生はなんだか寂しそうに笑っている。なんで?
「あ〜ちゃん・・・」
「なーに?」
「別れよ・・っか?」
は?
先生、今なんて言った?
別れようって言ったの?
突然、何言ってんの?
「え・・・?な、何?今日はエイプリルフールじゃないよ?しかもそんな冗談笑えないよぉ」
あたしはわざとおどけた感じで言い返した。
「・・・冗談じゃないよ」
先生はいつになく真面目な顔つき。
「なんでぇ・・・。急に、意味わからんよ・・・。あ〜ちゃんの事嫌いになったん?」
「違うよ。好きだから・・・別れよう」
「は?なに?なんで、急にそんなこと言うの?」
「急じゃないんだ・・・。前から、あ〜ちゃんが卒業したら別れるって決めてたんだ」
は?
意味わかんないんですけど・・・。
好きだから別れるって理解出来ないんですけど・・・
最初から、先生は期間限定で付き合ってたの!?
「なんで、別れるって決めてて、付き合おうとしたの?あ〜ちゃんの事、遊びで付き合ってたの?」
あたしは先生の訳わからない告白に思考がついていけなかった。
「遊びな訳ないじゃん。遊びで付き合ってたら、合鍵なんて渡さんよ」
「じゃあ、なんで?あ〜ちゃん嫌だよ。悪い所は直すから・・・先生と別れたくないよ!」
「先生の一番の願いは、あ〜ちゃんが幸せになってくれる事なんだ。だから別れを選んだの」
益々、先生の言ってる事が訳わからなくなってきた。
なんで、あたしの幸せを願ってるなら、別れなきゃいけないの?
先生と別れたら、幸せの真逆の不幸のどん底になっちゃうんだよ?
「意味わからんよ・・・。先生もあ〜ちゃんも好き同士なのに、別れなきゃいけないの?好きなら一緒にしていいじゃん!
なんで自分から好きな人を手放さなくちゃならんの?」
「うちらは好きだけじゃ、一緒にいれない場合もあるんだよ・・・。世間の目があるけ」
「世間なんて関係ないよ!本人たちが好きなら一緒にいていいじゃん!!」
「あ〜ちゃんはまだ若いから、そういう考えでいいけど。このままずっとこの関係を続けてったらきっと後悔すると思うんだ」
「そんな先のことなんて考えなくていいよ。”今”が大事、、で、しょ・・・・」
あたしはとうとう泣き出してしまった。
先生はいつもみたいにあたしの濡れた頬を拭ってくれる。
「先生といても、絶対、後悔しないよ・・・だから、別れるなんて言わないで。もうワガママも言わないから・・・」
「今まで、あ〜ちゃんの沢山のワガママを全部きいてあげたけど、さすがに”結婚”と”子供”は叶えてあげられないんだよね・・・」
あ・・・。
もしかして、この前のデートの時あたしが軽率に結婚と子供の話をしちゃったから?
だからなの?
「先生・・・あ〜ちゃんが子供の話したから、別れようって言ったの?」
先生は何も言わず、ハノ字眉になっただけ。
「ごめんなさい!!そんなつもりで言ったんじゃないの。あ〜ちゃんは、結婚も子供もいらないよ。先生のそばにいたい!」
「・・・嬉しいけど。ダメなんだよ。あ〜ちゃん、わかって・・・」
「わかんないよ!!てか、そんなん、わかりたくないよ!!」
「あ〜ちゃん・・・」
あたしの頭を撫でようとする先生の手を払いのけて、テーブルに伏せてあたしは大声で泣いた。
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「あ・・れ?」
いつの間にかベッドの上にいる。
もしかして、泣き疲れて寝ちゃって先生がベットに運んでくれたとか?
はー・・・これじゃ、小さい子供と一緒だよ・・・。
こんな子供じみてるから、先生に別れようって言われちゃうんだよね・・・。
リビングに戻ると、先生は電源が付いてないテレビをボーっと眺めている。
その後ろ姿は哀しそうだった。
先生はあたしのために別れようって言った。
この別れはきっと先生なりの優しさ。
そう、”今”の優しさじゃなくて、”先”の優しさ。
先生はあたしの事を大好きって言ってくれた。
あたしは自分の気持ちしか考えてなかった。
先生だって、好きな人に別れを伝えるのは辛いはず。
あたしのワガママのせいで、先生はさらに辛くなって困ってる。
もう先生を困らせるのは止めよう。
あたしだって別れるなら、笑顔で別れたい。
先生の楽しい思い出になりたい。
でも、最後に・・・最後だからもう一度ワガママきいてくれる?
あたしは隣に座って先生の腕に、猫の様に摺り寄って抱きついた。
「あっ、起きた?」
「うん・・・。今何時?」
「えーと、
23:30」
「先生・・・いいよ。別れよう」
一瞬驚いた顔になった先生だけど、次の瞬間には優しく笑ってくれた。
「そのかわり、朝まであ〜ちゃんのワガママきいてくれる?」
「いいよ・・・。なに?」
「一生分の愛をちょうだい」
あたしは先生の首に腕を回し、初めて自分からキスをした。
キスをしながら先生はベッドへ連れてってくれる。
額に、キス。
瞼に、キス。
頬に、キス。
鼻に、キス。
唇に、キス。
首に、キス。
鎖骨に、キス。
胸に、キス。
先生は、身体中に一生分のキスをくれる。
「先生、下の名前呼んで・・・」
「綾香・・・」
「名前呼んで・・・ずっと呼んで・・・」
「綾香、綾香、あやか・・・・」
先生は耳に残るように一生分のあたしの名前を呼んでくれる。
「先生、好き・・・愛して・・・一生分、今愛して・・・」
「・・・うん、好き・・・愛してる」
先生の体温をずっと感じてたかった。
先生の愛をずっと感じてたかった。
このままずっとこんな幸せな時間が続けばいいなって思った。
このまま時間が止まればいいなって思った。
そんなコトは絶対出来ないのに、心からそう願った。
先生は一生分の愛を、あたしの身体に刻み込んでくれた。
朝が来た。
あたしは着替えて、先生の部屋に置いてあった私物を片付け始めた。
「なにしてんの?」
先生が眠い目を擦りながら尋ねてきた。
「あ・・・置きっぱなしにしてる私物持ち帰ろうと思って・・・」
「そっか・・・」
本当は引き止めて欲しかったから、わざと先生の目の前で片付けしたんだけど・・・。
「この紙袋使っていいよ」
って、先生は全然望んでいない言葉を言った。
「じゃ、行くね・・・」
「朝ごはんくらい食べて行きなよ・・・って、言っても食パンくらいしかないけど」
この言葉にちょっと期待してしまった。
もしかして、先生なりに引き止めてくれてるの?って。
でも本当に朝ごはんを食べただけだった。
『やっぱり、一緒にいよう』とか『別れるの止めよう』とか言ってくれるかなって、少しでも期待したあたしがバカだったね。
「じゃ、今度は本当に行くね」
「うん・・・」
あたしは玄関に行って靴を履く。
「あ〜ちゃん!」
「なに・・・?」
あたしは先生の次に発する言葉に最後の望みを託した。
「部屋の鍵・・・返して」
最後の望みは一瞬にして消え去った。
あたしは鞄から合鍵を取り出して、先生に渡した。
さあこれで本当に最後。
笑って「さよなら」言わなきゃ。
泣いちゃダメ。絶対に泣いちゃダメ。泣いたら、楽しい思い出にならなくなちゃう。
「じゃあね。先生」
「うん。気を付けて」
「さよなら」
「・・・さよなら」
最後に見せた先生の顔はやっぱりハノ字眉だった。
あたしは玄関の扉を開けた。
もう絶対に入る事はない部屋を出る。
ちゃんと笑顔で言えたかな?
あたしは駅に向かう。
ここでもしつこく期待しちゃう。
もしかしたら、先生が走って追いかけてくれるんじゃないかって・・・。
そんなこと絶対にないのに・・・。
だって、やっぱりまだ先生の思い出なるのは早すぎるから。
でも今先生に手を伸ばしても遅すぎて、
もう届かないんだ。
目の前がぼやけてきた。
堪えていた涙が今やっと瞳から零れ落ちた。
先生がくれた”先”の優しさがわかる日がいつか、ちゃんと来るのかな?
その日が来るまで、先生がくれた『一生分の愛』を抱きしめて待ってみるね。
あたしはその”先”に向かって歩き出した。
— Fin —
最終更新:2009年03月30日 21:24