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ありのままの彼女を受け入れた。
ありのままのわたしを受け入れてくれた。


幸せって、案外するっと身に馴染んでくるものみたいで。
不安の影はすっかり身を潜めてくれたらしい。
彼女もそう感じていてくれれば、嬉しいな。


あれからは、穏やかな日々が続いている。


あ〜ちゃんにも、ふたり揃って付き合ってることをちゃんと報告した。
うん、、なんか彼女の親に挨拶しに行く彼氏の心境ってやつがちょっぴり分かった気がしたよ。。
「やっぱり、ちょっとムカつくけん」と頬に一発ビンタをくらったのは理不尽な気もしなくはないけれど。


約束していたお花見散歩にも出かけた。
カプチーノとカフェラテを間違えて買って彼女に怒られた。
のっちにはその差がイマイチわからないんだけど、それを口にしたらまた怒られそうだからやめといた。


桜の咲く季節は終わり、そろそろ雨降りが増えてくる季節。
だけど、彼女と過ごす毎日は変わらず幸せな日々。



しいて、変わったことと言えば、、
彼女が泊まりに来た時に手を繋いで眠るのではなく、抱き合って眠るようになったことくらい。


ゆかちゃんもわたしも、お互いに触れることを恐れなくなった。
素肌で抱き合う度に、いつかは理解できなかった『とろけて消えてもいいよ』なんて気持ちが分かった気がする。
そして、恐れなくなったら、歯止めなんてものはあってないようなもので。


「ゆかちゃん、おいで?」


今日も仕事終わりにそのまま彼女が泊まりに来ている。
先にベッドに入って、布団を持ち上げて彼女を指定席に誘う。
そうすれば、いつも彼女は甘え下手な猫のように少しめんどくさそうなふりをしながらも、この指定席へするりと身を寄せてくれる。
そして腕の中に捕らえてしまえば、それで、甘えたがり猫の完成。


だけど、今日の彼女は、、


「ゆか、、今日はソファーで寝る。。」
「へ?な、なんで?」
「のっち・・・・アツいんだもん」
「・・あー、、ゆかちゃんがその気じゃないなら、別に」
「そっちの熱いじゃないっ!のっちと寝ると暑いの!」


甘え下手どころか、完全に警戒心むき出しの子猫ちゃんだ。


たしかに最近は初夏の陽気を通り越して真夏じゃん!ってくらい日差しが照りつける。
だけどそれはあくまで昼間の話で、夜や明け方はまだまだ肌寒い日も多い。
いくらのっちが汗っかきとはいえ、不自然な言い訳だ。
ましてや、ゆかちゃんの方が寒がりなんだから、今の気候で暑いなんて言うはずがない。


「だから、、今日は一人で寝りゅ・・・・」


クッションに顔を押し付けくぐもった声を出すゆかちゃんの背中は小さく丸まっている。


んん?
そう言えば、帰りの車の中から彼女の様子がおかしかったような気がする。


だけど、のっち、何かしたっけ?
ゲームのしすぎじゃ!、って楽屋であ〜ちゃんに怒られたくらいで。
今日は撮影も、取材も全部スムーズにこなせたはず。
収録でも噛まなかったしね!(のっち的には)


理由を見つけることを早々に諦めたわたしは、ベッドを抜け出た。
分からないなら、そこの子猫ちゃんに直接聞くしかないじゃないか。


依然クッションに顔を埋めたまま、横になって身を縮こめているゆかちゃんの隣に腰掛けた。
ソファーの軋む音にその丸い背中がぴくりと動く。


「ゆかちゃん、のっち何かしちゃったかな?」


彼女の髪を一掬いして、指を通す。
それは絡まることなく、するっと落ちていった。


「んーん。のっちは、、悪くないんよ」


ああ、、そういうことか。


彼女の中の不安の影は時々、ふとした瞬間に姿を現しては彼女を困惑させる。


彼女の不安が尽きない原因がわたしにあるなら、それをといてあげるのも、わたしの役目。
その役目を任されてるのが、わたしだけだと自惚れていいのなら、その心の氷でさえ、愛おしく思うんだ。



ねぇ、ゆかちゃん。
だけど、いつかはさ、全部溶かせたらいいね。






ありのままの私を受け入れてくれた。
ありのままの彼女を受け入れた。


不安の影は徐々に薄れてきている。
だんだん身に馴染んできたあったかい気持ち。
これが幸せ、っていうのかな?


あれからは、穏やかな日々が続いてる。


あ〜ちゃんに、のっちと付き合ってることを報告した。
なぜかのっちは緊張しまくりで、顔を真っ赤にしながら肝心な言葉を全部噛み通した。
さすがのあ〜ちゃんも呆れ顔だったけど、のっちには聞こえないよう私だけに「ゆかちゃん、良かったね」と天使のように微笑んでくれた。


約束していたお花見散歩にも出かけた。
カプチーノを頼んだのに、のっちはカフェラテを買って帰ってきた。
カプチーノって言ったじゃん、って少し拗ねてみたら「どこが違うの?」って顔して首をかしげながら眉が八の字になってたっけ。


苦手な春は終わりを告げたけど、今度は湿気と紫外線が嫌になる季節。
だけど、彼女と過ごす毎日は変わらず穏やかな日々。



だけどね、今でも、たまに、、
本当に、たまに、、
私が貴女のそばにいていいのかな?って思っちゃう時もあるんだ。


今日だってそう。


現場のスタッフさんのひとりが彼女にあからさまな好意を持っていた。


ただ、それだけのこと。
そう、それだけ、のこと。


周りの人はもちろん、他人からの自分への好意的な感情に鈍感な彼女すらも気づくほどのあからさまな態度。
その積極性に困惑したのは私の方だ。


彼女を信じていないわけじゃない。
少しチヤホヤされたくらいで、彼女の気持ちが揺らがないことくらい知っている。


だけど、ねぇ、、
本当に私で、いいの?
私なんかで、いいの?


彼女にはいつだって誰かの視線が注がれていて。
彼女に熱い視線を送る人の中には、私なんかよりももっと彼女に相応しい人がいるんじゃないか、って思ってしまうんだ。


そんなの絶対、嫌なのに。
耐えられるはずがないのに。


そんなことを考える自分が嫌になって。
そんなことを考えてるなんて彼女に気づかれたくなくて。


彼女の部屋まで来たというのに、真っ直ぐに彼女を見れない私。
視界をクッションで遮って、ソファーで身体を丸めている私は思い通りに行かないことにダダを捏ねる子供と一緒だ。


隣に座る彼女の戸惑いが伝わってくる。
こんな行動、、彼女を困らせるだけなのに。


「ゆかちゃん、のっち何かしちゃったかな?」


ほら、いつだって彼女の手はこんなにも優しく髪を撫でてくれる。


「んーん。のっちは、、悪くないんよ」


勝手に不安になって、、
勝手に拗ねて、、
のっちを困らせる。


悪いのは、ゆかなんよ。。




「だぁーっ・・・もうっ」


急に焦れたような声を上げたのっちに無理矢理身体を起こされる。
そして、慌てる間もなくすぐに後ろから抱きしめられた。


ゆかのお腹に回った、のっちの手。
のっちの膝の内側にある、ゆかの膝。


なんで、同じ女の子同士なのに、こうも彼女は私をすっぽり包んでくれるんだろう。


幼い子をあやすように、のっちが私を抱きしめたまま身体を揺らし始めた。


「ゆかちゃんが元気ないと、のっちは心配なんよ」


ゆらゆらゆら
背中に感じるあったかい体温。


「無理に強がらんでよ」


ゆらゆらゆら
耳元で聞こえるやさしい声。


「のっち、アホだからさ、気づいてあげられんこともいっぱいあるかもしれんけど、」


ゆらゆらゆら
髪を撫でてくれるあったかくて、やさしい手。


「ゆかちゃんのことなら、全部受け入れたいから」


ゆらゆら、
あ、止まった。


「のっちには、ゆかちゃんしかおらんけぇね」


ちゅ
ほっぺたにあったかい感触。


あったかい彼女のやさしさに、
いつの間にか、私の不安もとけてなくなった。


彼女が私の心の氷をとかしてくれる度に、
またひとつ、彼女への気持ちが大きくなって。
またひとつ、自分に素直になれる気がする。


「・・・寝る。。」


お腹に回されたのっちの手を包み込むように重ねた。
その手をギュッと握り返してくれたのっちが、耳元で少し意地悪げに囁いた。


「ここで?」
「・・・ベッドで」
「一緒に?」
「・・・ん」


同じベッドに入って、ひとつの布団をかけて。
彼女の長い腕が私を包んでくれる。
背中に手を回してぎゅっと抱きついたら、彼女と私の距離はゼロ。
ここは私だけの特等席。


重たい前髪を掻き上げて、おでこにそっとキスをくれた。
だけど、それだけじゃ物足りなくて。
引き寄せられるように、私から唇を重ねた。
そのまま彼女の首に腕を回せば、生ぬるい舌が差し込まれる。


ゆっくり上昇してくふたりの熱に、今は思うままに甘えてしまおう。


だって、彼女が私をそう仕込んだんだから。


ねぇ、のっち?
ゆかを甘えたがりにした責任、ちゃんと取ってよね?



fin.









最終更新:2009年06月17日 11:55