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寒くて、今朝は少し早く目が覚めた。

うぅwさぶっ。

二度寝も気持ち良さそうだけど、なんだか勿体ない気がして、上着を羽織ってベットを出る。
カーテンを開けると、空もうっすら明るくなっていて、窓を開けてみる。

そこから、ふわっと冷たい風が入ってきて、頬と髪を撫でてきた。
冷たいけど、気持ちいぃ。

「やっぱ、朝は冷えるの〜。」

冬の高い空を見上げると、白い息に浮かんできたのはゆかちゃんとのっち。
二人ともまだ寝てるじゃろうね。特にのっちは、寝坊こきさんじゃけぇ。
ふとのっちの寝顔を思い出して、ちょっとおかしかった。

今日は大学に行って、それから仕事。

「おっはようございまーす!」
「あ〜ちゃん、おはよ。」
一番乗りかと思ったけど、ゆかちゃんはまだみたいで、珍しくのっちが先に来ていた。

「のっち、どうしたん?」
話しかけながら、のっちの向かいに座る。
「何が?」
「のっちが一番なんてぇ。」
「のっちは、やりゃー出来るんじゃって。」
「ほぉ〜、いっつも出来るともっといぃんけどね〜。」
「そりゃそうじゃけど。絶対続かんと思うもん。」

いざ!って時に助けてくれるのがのっちだもんね。


「確かに、いつもしっかりしとるのっちを想像するとなんか変じゃわ。」
「あ〜ちゃん、相変わらず厳しぃわぁ。」

ここぞって時ののっちは、ホントに頼りになって、安心していられる。
細かく話を説明しようとしてたのに、話がそれていっちゃう時とか・・・。
あたしがピンチの時に、何でか側に居てくれたり、なんか言ってくれたり。
普段は甘えてくる方が多いのにね。不思議だ。

そんなことを思いながら、外が寒かってあたしが手を擦っとっるのを見たのっち。

「あ〜ちゃん、手ぇ出して?」
「え〜、なんかイヤ。」
「なんでよぉ。変なことせんてぇ。」
「・・・じゃあ。」
少し遠慮気味に差し出した手に、のっちがポンと手を重ねてきた。

「うわ、温かぁい。」
「へへへ。ソレ持ってなよ。」
なんか嬉しそうに、渡してくれたソレはホッカイロさん。

「でものっちは?」
「あたしが持っとると眠くなっちゃうけぇ。たぶん無いほうがえぇ。」
「そりゃ〜いけん。あたしが預かっとくけ。」
「なはは。」

こういうさりげないというか、さらっとしてくれる優しさにキュンとしてしまう。
もっと素直にお礼とか言えたらえぇのにね。


「っていうかさ〜。朝めっちゃ寒かったじゃん?」
「あぁ、そぅじゃね〜。」
「そのせいで、ちょい明るくなり始めに目ぇ覚めちゃってさ。」
「あたしもそうじゃったけど、のっちどうせ二度寝したんじゃろ?」

「いゃ、ホントはそうしたかったんけどぉ、あ〜ちゃんの夢見たけぇ、あ〜ちゃんコト考えとった。」
「なぁに、言うとるんよ〜。」
「でも、結局、途中で寝ちゃったんけどね。」
少しだけ真面目な顔をしたのっち。でも、すぐいつもの表情に戻る。

たぶん、あたしが二人の事を考えてた時に、キミはあたしの事を思ってくれてたんだ。

そこへ、ゆかちゃんがドアを開けて入ってきた。
「おぉ、のっち来てたんね。」
「ゆかちゃんまでぇ〜。」
「あ、もしかしてあ〜ちゃんにも言われた?」
「うん・・・。」
ションボリ頷くのっち。

のっちの隣に座るゆかちゃん。
「たまには、そういう所も見せたもらわんとね?三人で唯一の20歳じゃけぇ。大人じゃもぉん。ね〜、のっち。」
「大人・・・ね〜。まだまだ無理っぽいわw」

話し出した二人を見て、やっぱり二人が居てくてれ良かったって思う。
どっちも大好きじゃけぇに。

でも、最近認識したのは、同じ好きじゃないってこと。

さっきみたいなのっちの言葉。
昔からよく聞いてた言葉で、『可愛い』とかそういう褒め言葉。
もちろん、褒められるのは誰だって嬉しいもんじゃ。

なんけど・・・いつからかその言葉に、嬉しさと同時に戸惑いを感じるようになったんよ。
ただ、そん時は、とにかく必死だったけぇ、そのことを深く考えることもなくて。
気にしとらんかったんけど、三人で居る時間が増えて、その分、聞く機会も増えて。

あぁ、そういう事か・・・。って自分の中に入ってきたんだ。


「それにしても、武道館は、すんっごかったね?ハンパなかった。」
「あ〜ちゃん、結局アリーナ言えんかったよね。」
のっちにふられて、二人の会話にはいっていく。
「アリーナ?ソレって何ですか?みたいな。」

「あ〜ちゃん辞書には、無かったんもんね?」
「そんで、書き足しもされなかったと。」
「そうそうww」


たくさんの人のおかげで、Perfumeとしての願いがいくつも叶ってきて、本当に嬉しいんよ。

だから、後回しにしてきた気持ちも幾つかあったかもしれない。

その中で、一番大事な気持ちも・・・。

Perfumeとしての『あ〜ちゃん』と西脇綾香としての『あ〜ちゃん』
どっちの願いも大切じゃけど、優先するのはPerfumeのことなんよ。
だって、あたしたち三人にとって、一番に考えるのはやっぱりPerfumeのことだから。

「あたし、ちょっとトイレ行ってくるわ。」
そう言ってのっちが部屋を出ると、少し間をおいて

「ねぇ、あ〜ちゃん。まだ言っとらんの?」
「何を?」
「のっちにさ。」
「あぁ、うん。言っとらん。なんか、今さらな感じがしちゃって。」
「今の関係を崩したくないん?」


ゆかちゃんに、ついポロッと気持ちを溢しちょうて、だからゆかちゃんは知っとる。

「う〜〜ん。今でも十分仲良いし、この気持ちを言って逆に意識されて微妙になるのもイヤじゃし。」
もっと側に居たいて思うこともあるんも確かじゃけど。

「のっちならそんな事ないてぇ。悪いようにはならんはずじゃって。」
「そりゃ、そうかもしれんけれども。」
「だって考えてみんさいなぁ、だてに人生の半分近く一緒にいる訳じゃないんよ?どんな事があっても崩れたりせんよ。」
それもそうじゃ。三人の中には、根拠なんていらない絶対的な信頼があるから。

「な?そうじゃろ?」
自信たっぷりに、ニコニコとしているゆかちゃん。
「・・・う、ん〜。」
解っとるけど、やっぱりこういうのは不安にもなるじゃろ?
「ま、他人がどうこう言って、決まるもんでもないけぇ、後は何も言わん。」

あたし達の距離は相変わらず、すぐ隣で同じ方向へ進む平行線みたいなもんで・・・。
それは、ちょっとしたきっかけで寄り添えるくらいの、近いようで遠い距離。

そこへのっちが戻ってきて、ちょうどスタッフさんから声もかかって、三人で部屋を出た。

撮影が終わって、家に着くと。

——あ〜ちゃん、何かあった?撮影中ボーっとしとった。

珍しく、のっちからのメール。
撮影中、ゆかちゃんとの話を考えとって、反応が遅くなってしもたから、そんことじゃな。

——のっちから没収したホッカイロさんで、温かくなってちょっと眠かったんよ。

ちょっと誤魔化してしまう。そうすると、納得しないのっちも深くは追求してこんから。


——・・・なら、えぇんけど。じゃあ、今日は温こうしてぇ、はよ寝るんよ?

——言われんでも、そうする。けど、わざわざメールありがと。

普段してこんのっちがくれたんは、きっとあたしを心配してくれたから。
それだけで、嬉しいよ。

——あ〜ちゃんは、大好きな太陽じゃけぇ。何かあったら、いつでも飛んで行くけぇ。

『大好き』という言葉に反応してしまう。
こういう所は、ホントにストレートに表現してくる。そういう所は羨ましく思うな。
ほんの少しでも、あたしもそう言えたら何かが変わるのかなぁ?

——うん。ありがとぅ。お休み〜。


のっちとのメールが終わって、言われたとおりお風呂で暖まって、ほくほくしながらベットに潜り込む。
目を閉じると浮かんで来たのは、キミの顔。今はゲームでもしとる?
それとも、あたしみたいに誰かを思っとる?それがあたしなら幸せじゃけど・・・。

今日は、なんか良い夢が見られそう・・・。

翌朝は、とても気分良く目が覚めて、朝から心がピョンピョン跳ねてるみたいな感じ。
良く覚えとらんけど、良い夢を見た気がする。

仕事への足取りも軽くて、過ぎていく風にのせて自然と鼻歌を歌っちゃうくらい。
今日は一番乗りだ。


最後に来たのはのっち。来た早々大きな欠伸をひとつ。
「のっち夜更かしでもしたん?」
「んぁ?なんかね〜。考え事しとったら時間経っちゃってさぁ。」
へにゃっと机にへばり付くのっち。大丈夫かな?

今日は簡単な打ち合わせだけで、すぐ終わった。
その間ものっちは眠そうで・・・。でも、きっちり受け答えはしとったけど、少し心配で帰り際にのっちを呼び止めた。

考え事ってあたしとのメールの後でしょ?あたしが関係する?それは自意識過剰?
「のっち、昨日あれから考え事してたん?」
「ん?ん〜、まぁ、そんな感じ。」
「悩み事?」
「悩みってほどじゃないんけど・・・。」
「けど?」

言おうかどうか悩んで、あたしと視線を合わせる。
「あ〜ちゃんコト考えてた。」
過剰・・・じゃなかったらしぃ。

「あたし、何かした?」
「いゃ、そうじゃないんけど、どうしたらもっと色々話してくれるんかなって。
ほら、あ〜ちゃんてさ、しゃべるのも好きじゃけど、自分の中でアレコレ考え込んじゃう方じゃろ?
じゃけぇ、あたしも話を引き出すのが上手かったら良いのになって思って。
昨日も、あ〜ちゃん誤魔化したじゃろ?」
少し苦笑いののっち。


やっぱのっち分かってたんか・・・、それなら。
「のっちは、いつも聞いてくれるじゃろ?」
「話してくれればだもん。それだけじゃなくて、欲張りかもしれんけど・・・。
あ〜ちゃんがココに溜め込んじゃう弱い部分全部・・じゃなくても、話して欲しいんよ・・・。
あ〜ちゃんにとっての、そういう人になりたいんよ。」
向き合って話していた、あたしの胸の辺りを指差してそう言うのっち。

『好き』・・・て言葉じゃないけど、のっちの想いが痛いくらい伝わってきた。

だんだん、辛そうな顔になっていく。ポンポンとのっちの頭を撫でて
「そんな顔せんでよぉ。」
それ以上、そんな顔させとぅなくて、あくまでも笑顔で話すあたし。
でも、そうさせてるのはきっとあたしで・・・。どうしたらえぇの?

「あはw、ごめん。なんかしめっぽくなっちゃった。」
髪をわしゃわしゃっと掻いて、笑顔に戻るのっち。

もしかしたら、のっちもあたしと同じで戸惑っとるのかもしれん。
その気持ちを、どうしたら良いのか分からんくて、距離を保っているんだとしたら・・・。

「ねぇ、のっち・・・。」
「なん?」

「あたしね?」
あたしも、のっちにどんな事でも聞いてもらえる、そういう距離にいたい。

だから、のっちに伝えたいことがあるんよ。
後回しにした、二つに分かれた自分をくっ付けるための、あ〜ちゃんの願い。

「のっちのコト・・・。」

大好き・・・。


そう言おうとした所で、後ろからゆかちゃんの呼ぶ声が聞こえてきた。
後ろを振り返ると、駆け寄って来るゆかちゃん。
「あれ。のっちもおったん?」
「ゆかちゃん、ひどぉい。居ると悪いみたいな・・・。」
しゅん・・とするのっち。
「ごめん。遠くて見えんかったよw」

「ゆかちゃん、聞きたいこと聞けた?」
聞きたいことあるって、もうちょっと居るぅ言うとったっけ。
「うん!ばっちりじゃよ。あ、そういえば、二人話の途中?」

「え?ぁあ、う〜ん。」
その、途中の内容を思い出すと、しどろもどろしてしまう。
その様子を見て
「もしかして〜、ゆかお邪魔しちゃった?」

まぁ〜、ちょっと?
「そうじゃぁ、ゆかちゃん。今、良い雰囲気じゃったのにぃ。」
冗談ぽく言うのっちに、
「そぉんなんじゃないてぇ。」
思わず、否定しちょうたけど、
「ホンマに?」

ニヤニヤ顔のゆかちゃんには、お見通しのようです・・・。

「あ。折角だしゆかちゃんも一緒に帰ろ?」
ゆかちゃんを誘うのっち。
「でも、お邪魔じゃろ?」
「ゆかちゃんが、お邪魔なわけないじゃろ〜。ねぇ、あ〜ちゃん?」

あたしの話はえぇの?
ジーっとのっちを見てみるけど、なんの事かさっぱりなようで・・・。


えーい!もう、えぇわぁ!のっちのあほぅ!
「あったりまえじゃ!ゆかちゃん行こ!」
ゆかちゃんと腕を組んで勢い良く歩き出す。

「あ、あ〜ちゃん?何で怒っとるん??」
置いてけぼりののっちが、後ろから慌てて聞いてくるけど知らん。

「あ〜ちゃん、ごめんね?タイミング悪ぅて。」
申し訳なさそうなゆかちゃん。
「別にえぇんよ。・・・また今度にするけぇ。」
「くふぅ。なら良かったぁ。」

ゆかちゃんは、あたしがのっちに伝えるのが嬉しいみたいで笑ってくれる。

「ねぇねぇ、あ〜ちゃんてばぁ〜。」
何で置いていかれるか分からないのっちは、情けない声であたしのコートをちょんと摘んでくる。
こういうのっちは可愛いくって、つい許しちゃう。
「ゆかちゃん、ちょっと、止まるね。」
そう言って、止まり、のっちの方を見る。

「もう、怒っとらんけぇ・・・。ホイ・・・。」
手のひらを差し出すと、首を傾けるのっち。
「そんな所、摘んどらんとこっちにしんさいや。」
そう言うと、ぱぁっと笑顔になって「うん!」て手を繋いできた。

さっきみたいな、のっちの顔は見たくないけぇ。
遠回りしちゃったかもしれんけど、本当の気持ち、のっちに素直にちゃんと伝えよぅ。

そして、三人で歩き出すあたし達。
Perfumeとしての最高を目指して・・・。

信じていこう。
あたし達には、ゆかちゃんが言ってたように、何があっても揺るがんモノがあるんじゃけぇ・・・。


<願い>Fin






最終更新:2008年11月24日 05:35