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「ターゲットが潜伏しているのは右から2番目の建物です」
 ヘリコプターから降り立った私達3人はナージャの指差す建物に向かい歩を進める、枯れ草だらけの空き地を抜けアスファルトがひび割れた道路を渡ると、目の前には今日の戦場。
 長年の間手入れをまったくされていない建物はあちこち錆び付いて人知れず朽ち果てようとしている、蔦が絡み付いた茶色く錆びた看板が10年以上この場所が本来の目的で使われたことがないと言う事実を物語っていた。こんな所に訪れるのは、暇をもて余した若者かその手のマニアくらいのものだろう。
 「こんなボロっちい建物さっさと壊しちゃえば良いのにさ、何でいつまでもほったらかしにしとくかなぁ」
 「大人の事情ってやつよ」
 ローラがそんな事を言いたくなる気持ちも分からなくはない。
 工場内に足を踏み入れるなり私は能力者(ヴァンパイア)特有の気配——肉体から溢れ出た超常のエネルギーと言うべきか——を感じた、それは微弱ではあるが辿ることは出来た。
 「……こっちね」
 2階への階段を探し出すのにそう時間は掛からなかった。階段を登り最上段に足を置いたその時、足首にチクリと痛みが走る、見るとそこには一匹の紅い蛇が噛み付いていた、それを回し蹴りで壁に叩き付ける、すると蛇は色水が入った水風船みたいに破裂した。ローラはすぐさまズボンのポケットからナックルダスター取り出して強く握り締め身構える。
 「————来るっ! ローラ!!」
 廊下の先から紅い川となって押し寄せる紅蛇の大群、しかしローラは不敵に笑って。
 「【行かないで影の英雄、愛しき人よ、貴女無しでは生きて行けない。】 【故に愛の鎖を持ちて光と影を繋ぎ留めよう、貴女と私は連理の枝。】
【——zweit】(ツヴァイト)
【陰陽双極、我ら蒼穹を舞う比翼たれ】(センター・オブ・ジ・アース)」

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最終更新:2017年04月25日 04:29