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リーゼロッテ(物語)

 リエージュ大陸の広い地域で知られている伝承。
 また、その主人公。現在に至るまで広く用いられている人名でもある。

 「侵略された祖国の独立回復に尽力した女性」という設定を基本とし、地域や作者によって差異がある。
 大陸の歴史上の大国の中に該当するものが見付からず、また織り込まれている政治的な思想の内容から、大陸の外で生まれたか、あるいは魔法王国以前の史実が基となっているのではないかという説もある。

 以下に一例として、黒旗作戦の時期にゼーラントで興行されていた舞台の概要を挙げる。

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 昔々、ある国にリーゼルという少女がいました。
 彼女は劇が好きでした。演じることも好きでした。いつか、役者になって舞台に上がることを夢見ていました。

 ところが彼女の生まれた国は戦に負け、隣の国に支配されることになってしまいました。
 戦争で国は荒れ、人々は劇を楽しむゆとりなどなくしてしまいました。また、占領軍は、征服された国の人々が人を集めて、話をしたり何かを見せたりすることを許しませんでした。リーゼルが夢見ていた役者という仕事は無くなってしまったのです。
 下働きをしていた劇団も無くなったので、生きていくために仕事を探さなければなりません。同じ劇団で脚本家見習いだった兄は体が弱く、彼女は兄も食べさせなければなりませんでした。悔しい気持ちをこらえて、お金も物も持っている占領軍に仕事を貰いに行きました。

 リーゼルは宣伝の仕事を与えられました。
 友達や、友達の友達を、たくさん殺した敵国の兵士達。その横でニッコリ笑い「占領軍は怖くない」「今までよりいい国にしてくれる」「みんな占領軍に協力しよう」と、役者を目指していた彼女は言うことができました。

 誰よりも上手に仕事をするリーゼルに、占領軍は新しい仕事を与えます。
 その頃、絶対に敵国に従いたくないという人々があちこちに残って戦いを続けており、人は死に続け、土地は荒れ続けていました。
 占領軍は、征服された側の人々を雇って軍を作り、抵抗を続ける人達と戦わせようと考えました。また、勝ち目の無い戦いが続くよりも早く平和を――と考える人々も少なくありませんでした。
 「ベルテルツ」(牢屋番)と呼ばれるその部隊の旗印として、占領軍の言う通りに振る舞うように命じられたリーゼルは、「リーゼロッテ」という名を与えられました。
 同じ国の人同士で戦わなくてはならないことにリーゼルは迷い、兄に相談しました。兄は彼女に「リーゼロッテ」になるように勧め、但し自分も連れて行くようにと言いました。

 聡明な兄の言う通りにリーゼルが「リーゼロッテ」を演じると、ベルテルツは、無為な抵抗を続けていた人々を説得して多くの命を救うことができました。敵国の軍よりもずっと公正に、そして温かく、敗れたり降服してきた人々を扱うことができました。
 「今は無駄な血を流さず、一つになろう」「そして、いつか占領軍と対等に話し合える国となるために、やり直そう」
 「名将リーゼロッテ」の下には多くの人が集まり、ベルテルツは人々の尊敬を集める部隊になっていきました。

 しかし占領軍は、そんなベルテルツが、やがて反乱の中心になるのではないかと疑うようになりました。
 リーゼロッテらは罠にはめられ、戦に乗じて悪事を働く者達を討伐している最中、「その者達と通じていた裏切り者」として占領軍の大軍に囲まれました。
 討伐するはずの相手もろともベルテルツは滅ぼされ、リーゼルは戦場で兄を失い、自身も捕らえられて処刑されることになりました。

 「人々を騙し、戦に乗じて悪事を働いていた罪人」とされたリーゼロッテ。本当は罪人でも英雄でもない役者見習いの少女は、自らの命運を呪い、涙しました。
 ベルテルツの矢を折り槍を折った占領軍。しかし、リーゼロッテを信じる一人一人の心まで折ることはできませんでした。自分を信じる人々が処刑場に詰めかける姿を見たリーゼルは、もう一度、舞台に立つことを決意します。
 「いつか、戦のために人が夢を諦めることのないような、平和な国を作ってくれると信じています」と、笑顔と共にそう言い遺し、彼女はリーゼロッテとして処刑台に散りました。

 その大舞台は人々の心を動かしました。
 リーゼロッテの願いを継ごうとする人々が集まり、ベルテルツは甦ります。占領軍の道具としての牢屋番ではなく。リーゼロッテのような者をもう二度と牢に向かわせないように、その身をもって扉の前を塞ぐために。
 長い長い間、人々はリーゼロッテを心の支えにして闘い抜きました。

 やがて、リーゼロッテが罪人と信じる者は誰もいなくなった頃。
 占領軍を統べる王は思うようになりました。「自分達が占領しているよりも、彼等自身に任せて豊かにさせ、貿易の相手とした方が得なのではないか」
 ついに、占領軍は帰って行きました。

 自分達の国を取り戻した人々は、自由に語り・歌えるようになりました。
 そして、リーゼロッテのことを物語として語り継いでゆくことにしました。
 だから今も、そしていつまでも、リーゼルは舞台に立ち続けるのです。

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最終更新:2011年08月27日 16:06
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