ペトリ一眼レフの機構

斜め押しシャッターボタン

ペトリカメラの一眼レフの多くは、ボディ前面に配置された斜めに押すシャッターボタンが採用されている。
東独製のプラクチナ/コンタックスSの影響や、押しやすさからの採用とされることが多いが、写真サロン1961年6月号のペトリV2に対する柳澤明氏へのインタビュー記事によると、機構上、上面への配置が難しかったから、との理由であることが判明した。

※ 斜め押しシャッターボタンの考察についてはこちらにも記事があります。


カムシャフト駆動の構造

ペトリカメラの一眼レフの多くは、ボディ底部にある一軸のカムシャフトの駆動により動作を行っている。

他社のカメラには見られないペトリ独創のメカニズムである。

巻き上げを行うとカムシャフトが回転し、ねじりバネに力が蓄えられる。

シャッターボタンを押すとバネが解放され、カムシャフトが巻き上げ時と逆回りに回転し、レンズ絞り込み、ミラー昇降、シャッターの開閉などの一連の動作を行う。

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シャフト駆動の開発

ペトリ最初の35mm一眼レフカメラであるペトリペンタの発表時の写真工業1959年7月号の記事(筆者は柳澤明氏)では、L型レバーを用いたミラー駆動の構造となっており、シャフト駆動ではない。
この構造については
特許公報番号
昭36-9835一眼レフレックスカメラに於ける反射鏡迅速復帰装置
昭36-12928一眼レフレックスカメラに於ける反射鏡迅速復帰装置
で確認できる。

特許公報番号 昭36-9835 の構造図
また、このL型レバーを用いた自動絞りの実用新案も昭和34年6月2日に出願されており、別の構造で開発が進んでいたことがわかる。
昭38-20564一眼レフカメラに於ける自動絞り駆動装置

ペトリの一眼レフの市販モデルは最初からシャフト駆動と考えられていたが、ペトリスレへの報告から、ペトリペンタの初期ロットと思われるシリアルナンバー886599がこの構造を持っていることが確認された。


シャフト構造については、昭和34年10月2日に出願された実用新案
特許公報番号
昭37-19038一眼レフレックスカメラの反射鏡回動装置
で確認できる。

特許公報番号 昭37-19038 の構造図

ペトリペンタ(シリアルナンバー901335)のシャフト。ダイカストのシャシーにL型レバーの痕跡が確認できる。
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ペトリフレックスV3のシャフト駆動機構

シャフト駆動からレバー式への変更

ペトリペンタ以降の機種ではシャフト構造を継承し、新規の開発機種であるフレックス7、FTEEでも踏襲された。
1971年3月に発売されたFTIIで最初からレバー式の機構に変更されたと考えられていたが、これもペトリスレへの報告から、発売後、途中からの設計変更であることが確認された。
レバー式への変更理由はペトリカメラ元技術者へのインタビューにより、低温特性の改善のためだったことが判明した。

FTII(シリアルナンバー727428)のシャフト。

FTII(シリアルナンバー761853)のシャフト機構廃止後のレバー式ミラー駆動と絞込み機構

この変更以降の新規開発機種であるFA-1、MF-1ではカムシャフト式は用いられていない。


直列ドラム配置の横走りフォーカルプレン式シャッター

フレックス7を嚆矢とする、いわゆるフレックス系のペトリ一眼レフ(フレックス7、FT、FTⅡ、FA-1、FT1000等)のシャッターは、通常の横走りフォーカルプレン式シャッターに見られるような巻取りドラムが縦方向に2列に並ぶ、いわゆる「コの字型」のドラム配置ではなく、横方向に並ぶ、「直列ドラム配置」を採用しており、これもまた、おそらくペトリの他に例をみない機構と思われる。
直列ドラム配置は、高速でのシャッター速度を安定させることや組立の簡略化を狙ったもので、幕速が非常に速いのが特徴である。元技術者の話によれば、低温にも強いというメリットを生んでいる。もっとも、横幅を必要とする分、ボディが大柄になるのを避けられないという欠点もある。コンパクト化を追求したMF-1では、コの字型ドラム配置を採用している。

ペトリFTの幕テンション調整部の配置。直列ドラム配置のため、フィルムの走行方向と平行に並んでいる。

ペトリV6Ⅱの幕テンション調整部の配置。コの字型配置であることがわかる。

MF-1の底部。コの字型配置である。


以下は、各社の主な横走りフォーカルプレン式の幕速を比較したものである。特記したもの以外はいずれも、アサヒカメラ「ニューフェイス診断室」での測定値を転記したものである。ペトリFTの幕速が1/1000を搭載したカメラの中ではトップクラスであることがわかる。
機種名 幕速(単位:ミリセカンド) 備考
ペトリFT 10.7 カメラGET Vol34(アサヒカメラ1967年10月号の孫引き)
ミノルタX-1 8.94(先幕) 8.86(後幕) 1/2000搭載
ニコンF2フォトミック 9.35(先幕) 9.37(後幕) 1/2000搭載
ライカフレックス 10.0 1/2000搭載
ライカM2 12
キヤノンF-1 13.0(先幕) 13.1(後幕) 1/2000搭載
フジカST801 13.2(先幕) 13.1(後幕) 1/2000搭載
オリンパスOM-1 13.7(先幕後幕共)
ペンタックスSP 14
ニコンF 14.5 公称値


シャッターを切ると目盛が進むフィルムカウンター

ペトリペンタ系の一眼レフの一部(ペトリペンタ、ペトリペンタVシリーズ、ペトリV6、V6Ⅱ)に搭載されたフィルムカウンターは、ミラーが降りる際に作動するアームによりカウンター円盤を連動させるという独特の機構を持っており、シャッターを切ると目盛が進むようになっている。このため、撮影中はカウンター目盛が進むのを確認できないが、空シャッターを切るときに観察すると、ミラーの降下と同時に目盛が一駒進む様子を見ることができる。普通のカメラのフィルムカウンターが、いわばこれから写すのは何枚目のフィルムかを表示するのに対し、このカウンターは何枚までフィルムを使ったかを表示することになる。


ペトリV6Ⅱのフィルムカウンター部。○で囲んだ部品がミラー下降に連動して動くアーム。これが右の部品を矢印方向に押すことでカウンター目盛が進む仕組み。
最終更新:2017年01月15日 20:39