323: 名前:刹那☆01/13(水) 20:38:30
「手伝うって……」
「悪戯なら任せろッ! 俺は小さい頃、悪戯王とたたえられたんだ!」
達哉が天狗の鼻になる。
「あのねぇ、あんたの考えてる悪戯って……」
そんな軽いことじゃないから。
私は夜空の月をみあげた。
雲がそれを覆うようにかくす。
「床に糸を張ったり、ドアを引いたらクラッカーが鳴ったり……」
本当、何を言ってもだめね。
達哉と話している間に、橋を渡っていた。
下を見ると、川がおだやかな川が流れている。
324: 名前:刹那☆01/13(水) 20:47:12
「人の話きいてる?」
私は川にキラキラ光るものを見つけた。
多分、魚だろう。
「ん~? 他にも悪戯は……」
達哉はいつまでとぼけるワケ?
ついに、堪忍袋の緒が切れる。
「話を聞けって……」
そう呟く。
地面の、まぁ大きいとはいえない石をつかみ……
「言ってんだろ!」
325: 名前:刹那☆01/13(水) 20:53:53
石を魚めがけて投げつけた。
バンッ! と音をたてて、水があがった。
石は見事に魚に命中し、赤い液対を流して下の方へ流れていく。
弓道部なめるんじゃないわよ。
「かお……り?」
達哉は口をポカーンとあけて唖然としている。
私達の間を、風が何度も通り抜けた。
あぁ……何かむかつく。
私の拳が震えていた。
壊してやりたい……何もかもこの自分の手で。
ギュッと拳を握り締める。
326: 名前:刹那☆01/13(水) 21:01:12
私は道路のわき道に何かを見つけた。
血が流れている狸の死体を。
多分ひかれたのね。
そんなの……ひかれるあんたが悪いのよ。
ああ、もうホントむかつく!!
私は狸の方に向かってつかつかと、足を進める。
「おい、香織! どこ行くんだよ~!」
後ろから達哉がチョコチョコとついてきた。
ウザいわね、全く……。
ナイフを出して狸を切り裂いていく。
何度も何度も。
その度に返り血がとんできた。
でもそんなの関係なしに狸のいたる所を痛めつけた。
329: 名前:刹那☆01/14(木) 21:16:10
ナイフと力いっぱい振り下ろし、首を切り落とす。
目はくりぬき、口は裂けるほどに切った。
手足も切って、バラバラにした。
「香織……?」
私は残った狸の胴体を腹から切ってやった。
広がる血。
腸をとりだし、それも切り刻む。
ヌルヌルしてる……気持ち悪い。
そう思っても止められない。
「香織!!」
「何よ! それ以上近づいたら刺すわよ!」
息を弾ませ、ナイフの切っ先を達哉に向けた。
330: 名前:刹那☆01/14(木) 21:27:29
達哉SIDE☆
「!?」
俺は両手を挙げて、動きを止めた。
香織にナイフを向けられる恐怖よりも、どうしてナイフを向けられたか考える方が勝っていた。
何したんだ? 俺……。
いつもの香織じゃない。
何なんだよ……。
いきなり怒鳴られるし、ナイフは向けてくるし、服に血は着けてるし。
「香織、お前……お、おかしくないか?」
「はぁッ!? おかしくなんてないわよ! いたって正常よ!」
香織がまた怒鳴る。
なるべく怒らせないように、遠慮して言ったつもりなのに……。
「いいわ。教えてあげる」
その時、香織が何か思いついたように言った。
教える……?
勉強をか……?
334: 名前:刹那☆01/15(金) 21:12:57
香織SIDE☆
私はハッと我に返った。
教えてあげるって……何てこと言っちゃったのよ……。
改めてことの重大さに気付く。
でも……誰かに聞いて欲しかった。
私を、親という鎖から開放させて欲しかった。
少しでも気持ちを軽くしたかった。
「私ね。親を殺したいの」
言ってしまった。
達哉は「はぁ?」と、一言発しただけ。
「この虫は食事に入れて、ヘビは枕の下に忍ばせる」
「……?」
分かってないような、分かってるような顔。
「あのね? 簡潔に言うと、私を引っ叩いたお返しをするわけ。うんとすごい仕返しをね」
私はもうナイフを狸に思い切りさした。
「こうやってね」
335: 名前:刹那☆01/15(金) 21:18:16
達哉SIDE☆
正直、驚いた。
驚かないハズがない。
だって……あの香織が人殺し?
しかも自分の産みを親を?
「じ…冗談だろ?」
でも返ってきた答えは、予想外だった。
「私は本気よ」
静かにそう答えた。
香織の瞳の中は、俺をしっかりと捕らえている。
闇の中に、わずかな光だけを灯した瞳。
俺はその瞳に、吸い込まれそうになって……。
だから、あんなことを言ってしまったんだ。
336: 名前:刹那☆01/15(金) 21:23:50
「お、俺で良ければ手伝う……」
間違ってる。
間違ってるって分かってるけど……!
それが香織のためになるなら。
俺は……香織を怒らせてばっかりだから……。
少しでも、力になりたいと思ってしまった。
これでいいんだ、って必死に自分に言い聞かせた。
「本当に……?」
香織が疑っている。
「出来ることは何でもするから」
俺はただ、その言葉しか出てこなかった。
「やった! 本当は寂しかったの! あの親に一人じゃ無理だと思ってたから」
そう言った香織の顔に笑みが広がる。
俺は不覚にも、その笑顔にホッとしたんだ。
347: 名前:刹那☆01/21(木) 22:09:43
香織SIDE☆
何で達也君は、あんなことを言ったんだろう……。
私が恐くなっちゃったとか?
でも、あの恐いもの知らずで、バカな達也君でしょ?
まあ、そんなことはどうでもいい。
これでー人、仲間が増えた。
少しでも、力になってくれることに変わりはない。
これから…どうしようかしら?
早くあいつを苦しめたい。
あいつの悲痛に滲む顔が見たい。
「マッテイロ。オマエヲモウスグ、キエル」
350: 名前:刹那☆01/23(土) 19:52:31
「んで、香織は家、帰んなくていいのか?」
達也が心配そうに声をかけてくれる。
「もうこんな時間だしな」
公園の時計を指して言った。
見ると12時を超えている。
「私はあんな家に帰りたくない」
静かにそう言うと、黙って頷いてくれた。
「…………」
「…………」
私と達也の間に、しばらくの沈黙が流れる。
でも、家に帰らないとしたら……私はこれからどうしよう。
……とりあえず蛇でも捕まえとこうかしら?
351: 名前:刹那☆01/23(土) 20:12:09
「おはよう!」
急に達也が叫んだ。
おはよう……?
「な…何……?」
「12時超えたから今日なんだよ!」
「はい?」
何だか意味不明なことを喋り出す達也。
「いいか? 1日は24日で成り立ってるんだよ」
1日は24日?
多分、24時間って言いたかったと思うんだけど……。
「だから、おはようなんだよ!」
あんたの頭は一体どうなってるの……?
でも、鼻高々に話す達也の気分を壊すといけないから、言うのはやめておく。
最終更新:2010年08月10日 00:44