476: 名前:刹那☆05/13(木) 22:43:39
そもそも達也君はどうして私に協力したの?
透君の仇を取るため?
それともその犯人を捜すため?
いらない生物はいない?
何言ってるの?
それは全部きれいごとよ。
奈々は私の彼を取った。いらないモノ。
悠も奈々が好き、浮気をした。いらなイモノ。
お母さんもいらナイモノ。
透君もイラナイモノ。
そう、全ては必要なかった。
じゃあ私は必要とされている?
人殺しをした? 人を失わせてしまったから?
私は……?
‘‘イラナイモノ,,――――……?
そんな思いが脳裏をよぎる。
477: 名前:刹那☆05/14(金) 21:55:09
刹那、私を孤独感が覆う。
その瞬間すごく不安になった。
何で……。
何で私がこんな思いをしなくちゃいけないの?
あれもこれも……。
全て達也君のせいだ。
達也君がいなくなれば私は楽になる。
開放される。
フッと笑い、私は達也君の眠るベットへと向かう。
「あんたも所詮、イラナイモノなのよ……」
荒れる息を殺して、私は達也君の首に両手を伸ばした。
478: 名前:刹那☆05/14(金) 22:02:37
震える手で、私は達也君の首に、狙いを定めた。
何で絞めれないの。
こんなやつ絞めてやればいいのよ。
さぁやりなさい香織。
私は薄笑いを浮かべた。
こんなやつ、たったの一捻りよ。
コロッと楽に逝かせてやりなさい。
さぁ……殺れ。
目の色がキッと変わった。
覚悟を決めて指先に力を入れる。
達也君を……殺す。
「私は――」
…………。
「私はいらないものなんかじゃない。いらないものなんかじゃない。いらないものなんかじゃない」
そう無意識に唱えるように言う。
479: 名前:刹那☆05/14(金) 22:07:41
「う……」
達也君の息が荒れだした。
うっすら目をあけて、
「か、織ィ……?」
力のないその声で言われても通じないわよ。
「何し……うぁ……」
「私はいらないものなんかじゃない。いらないものなんかじゃ……」
達也君はその言葉を聞いたからだろうか。
「やめろ!」
その一言で、私は止まった。
何で?
何で止めるの……?
殺されたくなかったから……?
「お前はいらないものなんかじゃないよ」
「う……そ……」
達也君は私の両手を包んでいった。
「俺は香織が必要なんだよ」
そう真剣に私の方を向く達也君。
480: 名前:刹那☆05/14(金) 22:12:20
瞳から一滴の雫が垂れた。
「あ……何で……」
ぬぐってもぬぐっても、雫は出てくる。
収まるどころか、増すばかりだった。
あっという間に私の顔を濡らしてしまった。
達也君は私を見てニカッと笑う。
「お前も折れが必要だろ?」
まるでさっきの顔とか対照的に。
「…………」
私は達也君を睨んだ。
少し視界が歪んでいるけど。
「何だ?」
少し間抜けな声を出して、言った。
481: 名前:刹那☆05/14(金) 22:14:54
「そんな顔で睨まれても、怖かねーよッ」
そんな言葉を発した。
「…………」
それでも私は睨み続ける。
観念したのか達也君はもう一度言った。
「何なんだよ」
そう穏やかに。
「達也君に……」
「俺に?」
達也君は私の言葉の続きを待つ。
少し間をおいて言った。
「泣かされた」
482: 名前:刹那☆05/14(金) 22:18:33
「はぁッ!?」
表情が一変する。
「何で俺がお前を泣かさなきゃなんねーんだよ!」
顔を真っ赤にして言った。
「……タコ」
「ばッ……うるせー!」
それから私と達也君との言い合いが始まった。
「……バカ、アホ、ボケ、落ちこぼれ、赤点常習者」
「な……! 本当可愛げのねーやつだな!」
「可愛くないもん……」
「え……」
私はまた泣いてやった。
ちょっと達也君をいじめてみたくなっただけ。
483: 名前:刹那☆05/14(金) 22:22:56
すぐに達也君は私を慰めにはいる。
「ああ、ごめん。俺が悪かったよ。お前は可愛いって。うん本当可愛いよ」
「また泣かされた……」
私は涙声で言う。
「ああ、悪かった! 泣かせたのは俺だよ!」
「クスクス……」
「お前何笑って……」
私は顔をあげて笑顔でピースをした。
舌も出して。
「単純」
そう言い残して私はトイレへとダッシュした。
「なッ……お~ま~え~」
また達也君の体温が急上昇したみたいだった。
484: 名前:刹那☆05/14(金) 22:27:07
「騙したな~!?」
その言葉を背中に受けながら。
私はトイレで嗚咽を漏らす。
「う……ぁ……」
また達也君にこんな思いを……。
嘘泣きなんて嘘よ。
本当は泣きたかった。
でも私は泣くことを許されなかった。
小さい頃からそんな教育を受けてきた私。
「泣く」、その行動、意味も覚えなかったから。
私が泣く居場所もなかった。
次々と雫があふれ出す。
こんなの、とても達也君には見せられない。
バレるのが、嫌……。
485: 名前:刹那☆05/14(金) 22:30:28
本当、バカ……。
私が達也君に泣かされるなんて。
必要と思われているなんて。
予想外……。
そうよ、私は必要な人間よ。
私はぐしぐしと顔を服の裾で拭う。
鏡を見て、頬をパンパンと数回叩いた。
「しっかりしろ私」
鏡の自分を指差して言った。
「お前は、お前だろ」
うん。これでいいわ。
今までは達也君のせいで気持ちが沈んでいただけ。
486: 名前:刹那☆05/14(金) 22:34:45
私は私よ。
自分らしくいればいい。
たったそれだけよ。
今まで私は何をしていたんだろう。
無駄な時間を過ごしてしまったわ。
私はもう一度部屋へダッシュ。
そこには達也君が普通に座っていた。
「達也君、準備はいい!? 出かけるわよ!?」
「あ……」
「何よ、文句ある?」
そこにいたのはいつもの私。
「あ、いや。おま……短時間で切り替え早すぎじゃね?」
487: 名前:刹那☆05/14(金) 22:37:55
「別に、いつも通りよ」
達也君はしばらく私を眺めた。
「達也君と一緒にしないでくれる?」
「ああ、その毒舌っぷりはいつもの香織だ」
「は?」
「でも……」
達也君は続けた。
「香織が元気になって良かった」
と……。
その言葉にまた涙腺にくる。
「さ、さぁ早く!」
私はそれを隠すため180度体を回転させた。
489: 名前:刹那☆05/22(土) 22:06:20
「おいッ香織! 出かけるっていってもどこへ行くんだよ!」
そう隣で喚いているのはお馴染みの達也君。
「お母さ~ん? 出かけてくるね~」
私は母に言い残し、玄関を出た。
「香織、質問に答えていない」
ぷくーと達也君の頬は膨れ上がってフグみたいになる。
「……出かける? どこへ?」
「お前が言ったんだろッ」
「……ただの口実よ」
静かに言って、私は足を進める。
どこかへ。目的地の定まってないまま。
「口実?」
「母を油断させるためよ」
490: 名前:刹那☆05/22(土) 22:12:20
「……ふぅん」
口実、口実……といいながら達也君は考え事をしているみたいだった。
「で? どこ行こっか?」
「俺ッッ!?」
「どこでもいいわ。暇つぶしの……なるべく時間がかかるやつ」
また考え込む達也君。
「俺は駅前のゲーセ……」
「分かった。公園でいろいろ話し合いましょう」
達也君が言い切る前に私は言う。
「俺の話はどうなっ……」
「さ、行きましょう」
達也君の右手を掴み、そのまま公園に向かって前進。
「あの……俺そんなことされなくても、歩けるんですが」
491: 名前:刹那☆05/22(土) 22:19:03
私はその言葉に反論する。
「だって達也君って行動の一つ一つが遅いんだもん。こうでもしなきゃ、私がいらついてくるの」
「そうか!」
さぁ、今夜のことを話し合いましょう。
私たちは公園のベンチに座って、語る。
「お前さぁ」
達也君は口を開いた。
「本当に殺すのか? 自分の……母親。お前はその母親から生まれたんだろ?」
「母親ってうるさいものよ。勉強しろ。お風呂入りなさい。ご飯食べなさい……。本当何でも命令口調」
黙って聞いている達也君。
「上から目線。私だって……みんなはもう大人よ」
「俺は、母親が大好きだったよ」
いきなり話し出した達也君に私は驚く。
「ちょっと厳しいけど、優しい母親だった」
大好き……? 優しい……?
492: 名前:刹那☆05/22(土) 22:25:54
どうしてそんなことが言える?
何の根拠があってそんなこと言える?
私はそんな感情持たなかった。
でも最後の達也君の言葉が気になる。
「だった……?」
過去形になっていることを。
「俺の母親は、俺が7歳の時に亡くなったんだ。急性……なんとかの病気で」
達也君にそんな過去が?
「すんげえ悲しくてさ。何でいなくなっちゃったのって。泣いた、多分体中の水分がなくなるほど泣いた」
続ける。
「お母さん、悲しそうだった。病気で亡くなったならまだいいよ。でも愛する子供に殺されるってどうなんだよ」
うるさい。
493: 名前:刹那☆05/22(土) 22:31:42
「お母さん、悲しむと思う」
「悲しまない。悲しませない」
だって私は愛されてもなかった。
私をぶったりした。
ずっと前には人殺しの犯人と疑った。
本当に愛しているならそんなことが言えるの?
冗談にしてはキツすぎると思うわ。
どうして……。
フッと鼻で笑う。
「私は、それでも消す。……消すわ」
黒い笑みを浮かべて。
「香織は後悔しないのか? いなくなるんだぞ? 俺みたいになるんだぞ?」
「後悔はしないわ。でも――」
「でも何だよ」
一呼吸おいて言った。
「達也君みたいにはなりたくないわね」
「な、おま! どういう意味だ~!」
最終更新:2010年08月10日 00:58