47: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/14(水) 21:03:20
「ばっっかじゃない!誰がっ……!?」
ちゅっ
私が反論し始めると、いきなり腕を掴まれ引き寄せられ、一瞬の間に唇を奪われた。
「~~~っ!?」
突然のことに、頭が働かず唇が離れた時も私はまだ茫然としていた。
「今ちょっとドキドキした?」
「なっ……//」
柄にもなく、赤面してしまう私。
「んじゃ、俺そろそろ出るわ。あ、コレ夏休みの練習の予定表な」
一枚の紙を私に手渡し、響は部屋を出ようとした。
「……わ、私使って遊ばないでよね!!」
「顔赤いから。説得力ねーから」
(腹立つ……!!)
わ、私昨晩すっごい感謝したんですけど!何、この恩を仇で返す感じは!!(ちょっと違う)
はー、さっき若干シリアスモードだったけど。やっぱりあいつはただの変態大馬鹿野郎だ。
(そりゃあ……ちょっとは、あいつに対する見方変わったけどさ?)
最後だって。
「ほんとにちょっとドキってしたじゃん……」
思いだして、一人また顔を赤くする私。
(駄目駄目!あ、そうだ、予定表……)
さっき響に手渡された予定表に目を落とす。
「えー、何何?……合宿?」
そう、夏休み中に五日間ほど。結構長いな……。
それに、その合宿期間の日付のところに、手書きで「午後から練習試合」と書かれていた。
うちの学校だけじゃなく、色んな学校から参加するのだろう。
「えーと、場所は……お、沖縄!?」
な、なんで!?バスケで沖縄行くって初めて聞いたよ……。
けど、これは沖縄初上陸のチャンス?
「なんでもやってやろーじゃないの!
あ、けどその前に、もう少しで普通に試合あんだよね、確か」
約二週間後の日曜日だ、それがたしか。
まずはそれに向けて私も気合い入れていこう。
*
私、バスケに関する知識は皆無に等しいのでかなり設定が捏造されてしまっています><
特に、この莉恵達の通う学校は『バスケ全国1』の設定となっておりますが
実際、物語的にはバスケ<莉恵達の日常になる予定です。というか、なります←
シーズン等も、私が好き勝手に考えています……。実際にバスケに詳しい方やクラブに参加している方、本当にすみません。
ご了承下さい。m(_ _)m
48: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/14(水) 21:21:40
キーンコーンカーンコーン
「莉恵、おはよー!元気出た?」
「おはよう沙耶!
え……?えーっと、」
な、何だっけ……何かあったっけ……
(ああー!そうだ、私失恋……。すっかり忘れちゃってたよ、これって女としてどうなんだろう(汗)
だけど、あれは恋だったの?それすら今じゃよく分かんない)
「まあ、忘れるってことはあいつは莉恵の運命の人じゃなかったってことだね!
よし、莉恵、共に新しい恋を探そう!」
「はあ……」
私のその気乗りしないような反応に、沙耶が顔をしかめた。
あ、ちなみに沙耶には他校に2歳年上の彼氏が居るらしい。私も最近知った。
「何よ、この青春真っ盛りに……やる気ないわね」
「いや、ね?しばらく、部活の仕事に専念しようかと思いまして」
これも強ち嘘ではない。実際部活は忙しい、だけどやりがいがある。マネージャーだけど、部員のために何かしてあげられるのが嬉しいんだ。
まぁ、特に好きな人が出来ないからっていうのもあるけどね。
「あー、そういう時期もあるわね。
じゃあとりあえず、もうすぐ練習試合あるんでしょ?
夏休みには合宿もあるんだっけ。
それに向けて頑張ってねー」
「うん、ありがと!頑張るわ」
バスケ部員と汗水流して、一緒に青春してやろうじゃないの!!
そう気合いを自分に入れ、お茶を口に含んで喉を潤す。
「あ、そういや莉恵?」
「ん?」
「莉恵って処女?」
「ぶっ!!」
私は思わずお茶を吹き出してしまった。
「うわ、汚!やめてよ莉恵ー」
私だって!人前でお茶吹き出すなんて、人生で初めてな気がするよ!!
49: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/14(水) 21:32:33
「いきなり沙耶がそんなこというからっ……」
「お。その反応は、まだなんだねぇ~」
「……//う、うるさいなぁ」
ていうかね、最近は一般的に早すぎると思うよ?私が決して遅いんじゃない。
だって、まだ高二!!それに私、今まで一回だけ付き合ってたのは中2から中3にかけてだし。その時点でやることやってたら、恐ろしいでしょう……。
「そんなんだったら相川くんに奪われちゃってもしらないからね」
「なっ……!なんでそこで響なのよ!」
沙耶の発言に、焦って私は大声をあげてしまった。
(……!や、やば)
そう思った時にはもう遅くて。
周りはざわざわと騒ぎ始めた。(や、やめて!)
「莉恵ちゃん……。相川くんと名前で呼び合う仲だったの?」
こ、怖いです!その辺の怒った教師より全然怖いですから!!泣
「いや、これは違っ……ちょっと沙耶、こっち来て!」
私は沙耶を廊下まで引っ張り出した。
「何よ、いきなり。莉恵が大声出したのが悪い」
「何よはこっちのセリフだっての……。
なんでああなるんだか。私の初めてはね!絶対絶対絶っっっ対好きな人(恋人)って決めてるんだから!!」
「……ふーん」
ふーん、て。リアクション薄……もう良いよ。
キーンコーンカーンコーン
「あ、やば、授業始まる。
て、やっば今日数学小テストだ!!」
「まあせいぜい頑張んなさい。あっちの方もね」
「あっちって何!!そういう沙耶はどうなのよ!」
「あたし?最近なら、先々週の夜に泊まりに行った時、急に押し倒さ「ああああああもういいから!!」
さ、沙耶に聞いた私が馬鹿だった!
50: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/14(水) 21:44:30
ダンダンダン……シュッ
ピーッ
「はぁ……」
練習の様子を眺めつつ、私はため息をついた。
何というか、朝の沙耶との会話が頭から離れない。最悪だ。
ピーーーッ
集合の合図がかかり、全員が円陣を組む。そしてそこで毎回斎藤先生の言葉や連絡やらを聞く。
「えー……練習試合の相手だが、前言っていた相手と都合がつかないらしく、北星になった。心しておくように」
「はいっ」
全員が威勢のよい返事をする。こういうところも私は好きだ。
ちら、とキャプテン(響ね)の方を見ると、驚いたことに響の表情は物凄く怒っているように見えた。
どうしちゃったんだろう。
解散した後、体育館のモップ掛けを手伝いながら、私は響にそれとなく聞いてみた。
「あの、響。さっき、なんであんなに」
「あ?」
言葉を遮られ、ジロ、と睨まれた。う……そんなに睨まなくていいじゃない。
「てめぇには関係ねーよ」
「何その言い方!人が心配してあげてんのに」
「お前はせいぜい好きでもない男に初めてを奪われないように心配しておくことだな」
「へ……
き、聞いてたの!?」
「あぁ」
響がニヤニヤしながら私の顔を覗き込んだ。
「最低っ……」
「何なら俺がもらってやろうか?」
「断固拒否!」
今までなら、絶対私からわざわざ心配の言葉をかけるようなことはなかった。
これでも、この前から少~しずつ接し方を変えようと努力してるのに。私だけなのかな。
それにしても、響にバレるなんて……。
「心配すんな、俺ァ上手いから」
「うるさい!!!」
51: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/14(水) 21:55:14
がちゃがちゃ
「御馳走さまでしたー」
「え、橋場もう食わねえの?」
「少ないんだよ。ほら、おかわりしろよ」
「いやいやいや、みんなの量が尋常じゃないんだと思うけど」
さすがは天下のバスケ部の男子高校生、食べる量は半端なく多い。学校なんかでも、うどん+ラーメン用の容器に入ったどんぶりを食べたりしている。
もちろん私はそんなに食べられないから、いつもみんなより一足先に部屋に帰る。
パタン
「はー、見てる方が気持ち良いくらいにいっぱい食べるな、みんな」
部屋に帰り、携帯を開く。
【メッセージ一件】
(……)
いちいち聞かなくても分かる、お母さんからだ。
あの手紙を受け取って以来、私はお母さんに連絡を取っていなかった。
今は会いたくない。自分から連絡を取って、言いたいこと言えばいいのにね……。怖くてそれが出来ない。
なんとなく会わないように、うちの近くは通らないようにしたり。
(しばらくは、このままでいたい)
しばらくは、とか今は、とか、逃げてるっていうことは分かってる。
でも、現実から目を背けたくなるときだってあるの。
「……バスケ部って、家族みたい」
そう呟き、私はふっと笑みを零した。
駿はお調子者の弟って感じだな。斎藤先生は頼れるお父さん、響は年上のお兄ちゃん。
それなら私は、みんなのお母さんかな。
想像していると、楽しくなって嫌なことを忘れられる気がした。少し気を良くして、私はお風呂に向かおうと部屋を出た。
52: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/14(水) 22:05:19
ダンダンダンッ
「いけーっ!駿」
「西南頑張って!」
ザシュッ
駿のシュートが決まった。やった!
時は流れて、今日は例の北星高校との練習試合だ。試合に出ていないメンバーや私は一緒に応援をする。
たった今、駿が2本目のシュートを決めたところ。
すごいよ、バスケの試合って!みんな体がバネのようだ。
うちの学校は、全国で一番になるくらいだから、今回の相手はそう強くないみたい。(ちょっと失礼)
ピーーーーーッ!!!
試合終了。西南の圧勝だ。
戻ってきたメンバーに、私はポカリを一人一人に渡す。
「サンキュ」
「いえいえ、お疲れ。おめでとう」
「いや……まだまだだよ」
そう言いながら汗を拭く部員達。この人達は、どれだけ自分たちが点を稼いで勝利しても決して天狗にならないところがすごいと思う。
まだまだ、まだまだと言って上を目指している。普通こういうのあんまりないんじゃないかな。
「おい、さっきの試合の反省すんぞ」
響がチームメンバーに声をかける。
(すごいな……。もう簡単な反省会するんだ)
そう思って眺めていると、一人の女の子が私に近づいてきているのが見えた。北星のマネージャーだろう。
「……西南のマネージャーさん?」
「あ、はいそうですけど」
「ねえ、キャプテンの相川響って、どうなの?」
「は?」
な、何この子。いきなり話しかけてきて、この話題?
響はやっぱり顔が広いのだろうか。
そう思っていると、その子が少しくすりと笑った。
「ごめん、急に。実は私響と中学が一緒だったの。それだけ」
「そ、そう?」
「うん、そう」
な、何?この子……。
すると、私は後ろからぐいとジャージの襟首を掴まれた。
「うがっ!な、何すんの!」
「行くぞ。もう出る時間だ」
そう言いながら私を引っ張っていこうとした響が、北星のマネージャーの顔を見たとたん顔を強張らせた。
53: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/14(水) 22:18:43
「……柏木」
「久しぶり、響」
柏木と呼ばれた女の子が、強気な笑みを零した。
よく見ると結構ケバいメイクをしている。
「何の用だ」
「何って、私北星高校のれっきとしたマネージャーなんですけど。
あぁ、それよりそこの西南のマネさん」
(私?)
「この男には気をつけなさいね。一緒にいるとめちゃくちゃにされるかもよ」
「てめぇっ……!!」
響が殺気立ったオーラを出して柏木さんに掴みかかろうとした。
や、やばい!しかも相手は女の子だ。
今言われたことの意味はまた今度考えることにして、私は響を止める。
「ひび、き……!何してんの!ここは相手の高校だよ?もうちょっと冷静になってよ!」
私は必至で響を押さえつけた。
こんなところで、騒ぎでも起こしたら。もとより名高い西南高校、しかもキャプテンの響だ。
響は尚、鋭い目つきで柏木さんを睨みつけていた。
「ほら、行くよ!!失礼しますっ」
私は響を引っ張り出すようにして体育館の外へ歩いた。その間もずっと、響は柏木さんのほうをじっと見ていた。柏木さんは笑みを絶やさない。
(あの子……何者?
それに、響も様子がおかしいよ。取り乱し方が普通じゃない)
柏木という女の、あの笑顔が脳裏に張り付いて離れない。
(……なんか怖い。危険だ)
背中にぞくっと何かが走った。それに理由などはなく、本能的に私の中の何かが感じ取ったものだった。
54: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/15(木) 20:59:31
「……ふぅ」
ぽちゃん
夜。私は一人寮のお風呂に入っていた。
バスケ部と同じ棟のこの大浴場(学校の寮だよ、金持ちすぎる)だが、この時間は私が入ることになっているため誰も入っては来ない。
(何だったんだろ、今日のあれ……)
湯船に浸かりながら、今日の出来事を思い出す。
響とあの柏木さんって子の間に、昔何かがあったことは確かだ。
元カノとか?
(違うだろうな)
全然そんな雰囲気じゃなかったし。仮にそうだったとしても、何も無しにあそこまで険悪なムードにはならないだろう。
「はーあ……逆上せるしそろそろ出ようかなあ」
気付いたら随分長い時間浸かっているようだ。そろそろ出ようかな。
ざぶっ
私が湯船から立ち上がった時、
ガラガラガラっ
「……え」
私以外は入ってこないはずの、浴室のドアが開いた。
55: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/15(木) 21:17:12
そこに立っていたのは響だった。
……て、何私冷静に状況描写しちゃってんの?
見ての通り、私はバスタオル一枚しか身に纏っていない姿。響こそ、隠すべきところは隠してるけど……じょ、上半身裸だから!何で!?
「何で入ってくんのよぉおぉ!!この時間私専用なんだけど!!忘れたの!?」
必死でバスタオルを押さえながら私が叫ぶと、響は何も気にしていない様子で私の横を素通りし、ぼちゃん、と浴槽に浸かった。
ノ、ノーリアクションって逆にキツイんだけど!?
私が慌てて風呂場から出ようとドアの方に体を向けると、響の手ががしっと私の……腰を引き寄せた。
(!どこ触って……)
「ひゃっ!?」
つる、と床に足を滑らせて後ろに転びそうになったところを、そのまま響に抱きとめられる。
そして私はなぜか今、再び浴槽の中に居る。
「何すんのよ……何でこの時間に居るの」
「あぁ、やっぱこの時間で合ってたんだよな、良かった良かった」
「良くないっ!!……!?」
突然、響が私を引き寄せ自分の膝の上に座らせるような体制になった。
後ろからお腹の辺りにぎゅーっと腕を巻きつかれ、身動きが出来ない状態。
なななな何ですかこの少女漫画に出てくるいちゃいちゃしてるカップルみたいな体制は!←
「ど、どうしたの!?」
「……」
「響……?」
黙って私をぎゅっと抱きしめる響は、何だか何時もと雰囲気が違っていて。
小さな男の子が、お母さんに甘えるようにぎゅっと抱きつくような、それに少し似ていた。
「……どうしたの?」
何時もとあまりにも違うため、状況を忘れてさっきよりも柔らかい口調で、問いかけてみた。
56: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/15(木) 21:41:07
少し緊張して、響の返事を待つ。
「莉恵」
「なに?」
「……」
「……」
「……」
「あの。何でしょうか」
「……やっぱりいい」
えぇ!?これだけ期待させて待たせといて、それですか。
あんたはみのも●たか!?
「それにしても」
続けて響が不意に口を開いた。
「お前、本っっっ当に変な女だな」
「はあ」
あまりに響がきっぱりと、(しかも結構真面目な声音で)言うから私は反論する気力もなくし、そう返した。
黙っていると、響は好き勝手に話し始める。
「俺の知ってる女と違う。
自分が可愛いが為に嘘を並べ立てて、ちょっと良いと思った奴の前で簡単に股開くような」
「……あの。もしかして、私がそんな女だと思ってたの?失礼なんだけど、それ」
少しむっとして、私が言い返すと響がふっと笑ったのが気配で分かった。
「違いねぇな。
……だから、余計に欲しくなる」
「……!」
突然、響の手が私の体に張り付いたタオルの上から体を撫で始めた。
すぐ後ろにある響の顔を見るなり、私はぞっとした。
(怖 い)
笑ってる。だけど、これは笑顔じゃない。狂気じみた目だった。
いつもの響じゃない……。
元々目つきが悪い響だけど、そういうレベルの話じゃない。
自分を見失った、野獣のような。
「……ひび、き?」
57: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/15(木) 21:54:48
今、私の背後で私を見るその人は何時もとは違った。
まるで、別人のように冷たい目をしていて。
(……っ!やだっ)
大きな手が太ももの内側を撫で始める。その手付きは、乱暴で全く感情が感じられなかった。
愛の無い行為。
そう言い表すのが一番相応しいのかもしれない。
「や、やめて……」
震える声でそう頼む私の声も、今の彼には届いていないようだった。
「!やっ!!!」
後ろから、響が私の両足を大きく開かせた。自然とタオルはまくりあがり、湯船の中で下半身が露わになる。
そして、こともあろうに大きな手が私の秘部を二本の指でがっと開かせた。
「っ……」
お湯の熱さを体の内側までが感じ取り、体がおかしくなってしまいそうだ。
(嫌、嫌、嫌――!!)
「響!!」
大声で彼に呼び掛けても、答えてくれない。
絶対におかしい。いくらなんでも、こんなの、無理やり……
そのとき、ある言葉が私の頭を過った。
『この男には気をつけなさいね。
一緒に居ると、
め ち ゃ く ち ゃ に さ れ る か も よ』
「…あ…!!」
響の指が、秘部全体を弄り始める。
その力の強さに、私は顔を顰めた。
駄目、このままじゃ!
――――パシン!
58: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/15(木) 22:09:04
(あ……)
はあはあと、息を切りながら自分の掌を見つめる。
自分でも、何をしたのかが分かるのに多少時間がかかった。
「!……莉恵、」
響の目に、光が戻った気がした。
少なくとも、さっきとは違う……雰囲気が元に戻った。
「…ぁ……」
上手く声が出せなかった。私の体に染みついているのは、「恐怖」という感情だけだった。
響が次に何か言うのが耐えられず、私はバシャっと湯船から勢いよく出て、そのままの勢いでお風呂から飛び出した。
ドンッ
(……!痛っ)
焦ってドアに肩を打ちつけてしまうが、構わず外に出る。外に出ずにはいられなかった。
ガラガラガラ、ピシャン!
浴槽のドアを開け、更衣室にへなへなと座り込む。
しばらく茫然としていたが、何分経っただろう、私はようやくふらふらと髪を乾かし、服を着てその場から離れた。
心臓がドキドキ鳴って止まない。
(……嫌)
部屋に逃げるように入り、がちゃっと鍵をかけベッドに倒れこむ。もう深夜だ。
いつも、響は自室に行く際この部屋の前を通るので、足音がする。それさえも聞きたくなかった。
(信じられない……)
冗談で初めてを奪ってやろうかだとか、俺は上手いとかふざけたことを何度も聞かされてきたけれど。本当に彼はそんな非情な人間だったのだろうか。
あのバスケ部を引っ張る、信頼の厚いリーダーの彼が。
私の内面を短い期間に見抜いていた、彼が。
さっき響を引っ叩いた右手の掌を見つめる。
(……信じたくない。違う、違う。あれは何?夢じゃないの?)
それから二時間もの後、ようやく私はうとうとしてきた。
部屋の前を通る足音は、ついに聞こえることはなかった。
59: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/15(木) 22:31:43
バコン!!
「……ちっ」
苛立ちから物に当たることしか出来ない。つくづく餓鬼だと自分でも思う。
大きな木にもたれかかり、空を眺める。天気が悪いようで、星はひとつも見当たらない。
(……)
今日再会してしまった女を思い出すと吐き気がする。
体全体が拒絶していた。存在そのものを。
(たかだか女一人に振り回されて、俺は)
ぐしゃぐしゃと髪を乱暴に触り、悪態をつく。
ずっと思い出すことをしなかった男の顔が、久しぶりに頭の中に浮かんできた。
(……シン)
「情けねえ……」
すると、次に一人の女の顔が浮かんできた。初めは笑顔だった。しかし、しだいに笑顔ではなく、おびえたような顔で自分を見つめるようになっていく。
そいつが人を信じることを密かに怯えていることを知っている俺は、余計に自分自身に腹を立てていた。裏切られた、という言葉をそのまんま表情に表していた彼女の顔を思い出すのは酷だった。
自分でも、ここまで一人の女に執着するのは意外だったが。
やはり変な女だ。
「……柏木」
忌々しいその名を口に出す。それだけで、体全体が怒りで熱を持った。
「……今度は俺が、お前を殺してやる番か?」
その呟きは、誰の耳に届くこともなく、闇の中に溶け込んで消えた。
*
初めての響視点でした
なんというか、シリアスモードになっちゃってます
うーん、話を上手く展開するのが難しい。展開が急すぎるような気もする……
そういえば、この話読んでくれてる人いるの?←
最終更新:2010年08月10日 14:45