アットウィキロゴ

young leaf 続き8

169: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆11/28(土) 18:12:46
いよいよやってきた試合時間。公私混同するなと言われて腹が立ったけど、私だって一人の人間。多少今までと違う意味で試合を見てしまい、少し緊張してしまう。あぁ、響の言ってた意味が今ならよく分かるわ。


「よろしくお願いします」


ピーッ


ジャンプボールがされて、最初にボールを取ったのは、意外(っていったら失礼だけど)相手チームだった。珍しい、うちのチームの桂は滅多にボールを取られないのに。


(!ボール奪った!)


響がすかさずボールを奪った。あの身のこなしには目を奪われるものがある。と、ゴールに向かおうとした響の前を阻んだのは、信だ。


「あ……」


ハラハラしながら様子を見る。しばらくしてボールが手に弾かれてコートの外に出て、ホイッスルが鳴った。


「危なかったな~……」

応援陣からもはぁ、と思わず漏れるため息。うん、見ていて怖かった。


「っ……いける!あー……」


ゴールに近づくも防御され、はたまたしては防がれの繰り返しがしばらく続いた。





しかし、問題となったのは初めのそこくらいだった。どんどん西南はいつもの様に調子を上げて、結果的に大差をつけて勝利!






「お疲れ様!」

試合に出たメンバーの様子を見ると、なんとなく納得していないような様子。話を聞くと、やっぱりかなり攻撃を押さえこまれていたらしい。星城は防御が上手いとも聞いた。

「くそっ……あん時絶対いけたのに」

「あー、水嶋だろ?粘り強かったな」

(信、強くなったんだね……)

喜ばしいといっては駄目だけど、この人達に言わせるほど本当に上手くなったんだ。その根性に思わず舌を巻いた。


170: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆11/28(土) 18:25:11
「く~……終わったー!」

思いっきり伸びをする。たった今、この合宿中の最後の試合が終わったのだ。今日の夜は、みんなで打ち上げを兼ねての焼き肉だ!

「そんなに肉食いてぇか?」

「う、うるさいなぁ」

そういうみんなだって嬉しそうなんだけど。長かった合宿だもん、達成感があるよね。私もそれは同じだ。

「反省会するからホテル戻るってよ」

「了解!」



あれから、ホテルに戻り監督の言葉を待つ。

「この合宿で色んなものを得ただろう?他チームとの練習試合も出来たし、色んな学校のことも知れた。交流も出来たと思う。とにかく、練習以外の面でも何か感じてほしい。
そして、これからの生活にすべてつなげていってくれよ。それが一番の願いだからな!」


「はい!」


この人は本当に話すのが上手い。人を惹き付ける力があると私は思う。
突然私の名前が出てきて、思わずびくっとした。


「橋場も、初めての大仕事だったがよく頑張ったな。良いマネージャーがいないと、合宿は成功しないんだ。お前なしでは出来なかったよ、やっぱりマネージャーは必要だな!拍手!」

……そうだ、この人すっごい熱い人なんだ。結構恥ずかしいようなセリフを堂々と言うから。顔に熱が籠る。

パチパチパチ!とみんなが盛大に拍手してくれる。

「あ……あ、ありがとうございます」

私自身も、いっぱい迷惑かけちゃったけど。少しは役に立てたのなら、とても嬉しい。

「よし!じゃあ、6時半には会場に集合なー」

「うおっしゃー!」

全員が色めき立つ。もちろんそれは私も同じ!

「じゃあ時間までに来いよー、解散!」

「はーい!」

(はは……みんな可愛い)

全員の揃った小学生のような返事に思わず笑みがこぼれた。


171: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆11/28(土) 18:32:39
今日ばかりはマネージャーの仕事はあまりなく、結構時間に余裕がある。とりあえず先にお風呂に入って汗を流し、一通り荷物を纏めた。出るのは明日の早い時間ではないけれど今の内にやっておかないと。


ガチャ


「何ー?」

ノックもせずに入ってくるのは一人しかいない。私は荷物をごそごそとあさりながら顔を上げずに返事をした。


「ちょっと着いてこい」

「え?今?……てちょっと!私荷物纏めてたんだけど」

「いーから」


腕を思いっきり引っ張られ、半強制的に部屋を出る。そんなに重要なこと、予定表に書いてあったかな?


「どこ行くの?」

「日高んとこ」



……!?



「ちょ、ちょっと待って、何て?」

「あ?老化現象の早いこったな、聞こえねえか」

「ち、違うし!!……ま、待ってよ」


前を大股で進んでいく響の手を引っ張り、必死で引き留める。それでも最初はずるずると引きずられたけど、全力を使って阻止したらやっと止まってくれた。

「んだよ」

「い、いいよもう……終わったことだから」

「よくねぇ」

「でも」

「今度は俺がいるから安心しろ。行くぞ」

「……」

……そんなセリフ言わせて、引き留められるわけないじゃん。気付かれないようにそっと溜息をついて、また響の後を小走りで歩き始めた。


172: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆11/28(土) 21:27:19
部屋に着くなり無言でいきなりドアを開けようとする響を、私も無言で慌てて引き留める。何だ、と咎めるような目で見られるが怯まずに引き留めていると、分かったというように雑にコンコンとドアをノックした。

隠れるように、響の後にこそこそと移動する。
心臓がドキドキ言ってる。早く、終わって。

「……はい」

ガチャ、と開いたドア。私達の顔を確認して、驚愕の表情が広がるのが見てとれた。そりゃそうだ。

「何しに来た?」

それは同時に私の疑問でもあった。

「こいつに」

響が私を顎で示した。いきなり指され、なんとなく俯く。

「謝ってもらおうとおもってな」

(……!!)

や、やっぱり来るんじゃなかった!そんなことが通じるような素直な男じゃないよ、こいつは。


「は?」

「お前、こいつに何したと思ってんだ?負けた腹いせに女襲うなんざ脳味噌腐ってんじゃねーのか」


(……、て)


黙って聞いてたら酷い言いざまだなおい!
別に、私は良かったのに。もうこのことは忘れて。謝ってくれるような人じゃないと思ったから。


「……お前みたいな人間にバスケする資格ねーよ。んじゃ」


ぐいっ


(う、うわわ)


来る時と同じように私は思いっきり引っ張られた。あまりに急な出来事に、怒っているような呆気にとられたような桐生の表情が脳裏に張り付いて離れない。


173: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆11/28(土) 21:40:26
行きと同じように、背の高い響が私の一歩半前を大股で歩く。あまり背の高くない私は半小走り状態だ。

「響……」

「あ?」

「何で、急にこんなこと」

「あのまんまで良いわけあるか?」

「あるよ」

「なんでだ」


響が前触れなしに立ち止ってこちらを振り返った。鼻からぶつかりそうになり慌てて私も立ち止まる。

「だって……。何て言うか。もう、いいし……しかもまた迷惑かけっいったぁぁぁぁ!!!」

目の前の視界が涙でじんわりと滲む。今、この人女の子に本気でデコピンしたよ!男として最低、許すまじ行為だ。

「うだうだ言ってんじゃねえよ。お前のためにもあいつのためにも放置しとくのは良くねぇ」

(うー……)

反論出来ない。ただ未だ痛む額を押さえることしかできない、情けない。

「大体、言う言葉間違ってるだろ。もっと他に言うことあんだろ?」

「……」



他に、言うこと?





あ、そうか。





「ありがとう」

「おう」

額にやっていた手を退けられる。

「ククっ……真っ赤だな」

「あ、あんたがやったの!……って、ひぃっっ!」

さっきまでじんじんと熱が籠っていた場所に、柔らかい温かい感触。違う意味で今度は顔全体に熱が籠った。






(色気の欠片もない声だな)
(う、うるさい!)
(……打ち上げ行くか)
(!……うん!!)
(単純な奴)


174: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆11/28(土) 22:05:19
「合宿お疲れさん!かんぱーい!」

「「「かんぱーい!!!」」」

監督が音頭をとった乾杯で、打ち上げはスタートした。


「ちょっとそれ私の肉だったのにー!」

「早い者勝ちだぜ」

「ちょっと何カッコつけてんのー!肉返してよ!」

「おい、どさくさに紛れて横取りすんな」

「それにしても今回は初っ端から日高に勝てたなー!」

「ほんと良かったですよー。俺橋場先輩と冷や冷やして見てましたからね」

「ほんとにそうだったよね!」


合宿中の話題は尽きない。やっぱりみんな感じていることは同じ、すごく楽しかったんだ。
あと、去年は日高に負けてたんだって。だから余計にプレッシャーがあったんじゃないだろうか。
と、まぁ始めはみんながやがやとそれぞれ楽しんでいたのだが。
途中で監督が時計を見て、立ちあがった。

「どっか行くんすか?」

誰かが聞いた。

「あぁ、他の学校の先生方との集まりがあるんだ。また途中で戻ってくる」


……集まり。
それは、きっと集まりという名の「飲み会」だろう。


「じゃあ行ってくるからなー」

「はーい」


監督が出て行った。


175: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆11/28(土) 22:17:43
「良いなぁ!俺らも酒飲みてーよ!」

「そうだそうだ!監督ばっかりずるいぜ!」

途端にがやがやと騒ぎだす駿をはじめとする部員達。私は慌てて、

「ちょ、駄目でしょ!未成年だから!」

これがもっともな意見ってもんだ。

「分かってるけどよー。ああ、決まりさえなければ」

駿が言う「決まり」とは、合宿をするにあたってのいくつかの定められたルールのようなもの。その中に、【部員達の手の届くところに絶対に煙草や酒を置かない】というものがあって。(どうでも良いけど手の届くところっていう表現が幼稚っぽい)
いくらスポーツマン精神だとか、強いプレイだとかなんとか言ってもみんな健全な高校生だ。

「いやいや、決まり無くても飲んだら捕まっちゃうからね?」

「はいはい。あー、莉恵お前好きな奴とか彼氏居んの?そいつとヤった?」

「好きな人?えーっと……って、はぁ!?」

この人今、ものっすごい自然な流れですごいこと聞いたよね!?

「な、ないない!ないから!」

「いや、剥きになるところが怪しいな」

「だな」

「いねーのか、つまんねぇ」

「だな」

「おもんねぇ」

上と同じような繰り返しがどのくらい為されたことか。
この人達、酒入ってないよね?酔ってる様にしか見えないんですが、この興奮ぶり。
すると突然駿が大声を張り上げた。


「おい、莉恵なら今のうちだぞ!」

「何それ失礼な!」


どっと笑いが怒った。も~!
すると、ナイスタイミングというか監督が顔を赤くして帰って来た。ばればれですよ、監督。みんながじとーっとした目で見ていることにも気付いていないらしい。

「もうお開きの時間だ。明日はゆっくり寝ていいからな」

「はい」

「じゃあ遅くならないうちに解散しろよ」


私も立ちあがった。夕方お風呂に入ったけど、騒いだし焼き肉の匂いが染みついちゃってるし。もう一回入ってこよっと。


176: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆11/28(土) 22:29:22
「何か機嫌悪くない?あ、もしかしてあれ?」

「んだよ」

「莉恵フリー宣言的な」

「……風呂行く」

「おいおい……笑」




「はぁ、もう終わったのかぁ……」

長かったようであっという間だった。合宿中の出来事を思い返しながらぼーっとする。決して良い思い出ばかりでもないんだけど、終わりよければすべて良しっていうから。

(やばい、逆上せそう。出よ)

ドライヤーで髪を乾かし寝巻に着替えて、女湯を出る。部屋の近くのラウンジを通った時、そこに居たのは。

「莉恵」

「え?あれ、信」

ここは殆ど西南高校の生徒しか使っていない一帯なんだけど。

「ごめんな、いきなり。どうしても一回話したかったからさ」

「久しぶりだもんねー」

ははっと軽く笑い、信がいる窓辺に寄りかかり外の様子を見る。やっぱり真っ暗で何も見えないや。
しばしの沈黙が続いた後、信が口を開いた。

「何て言ったらいいか分かんねぇから、直球で言って良いか?」

「え?うん、どしたの?」

もうちょっと明るかったら良いんだけどなー。
外を向いて信に背中を見せたまま、そう返した。





「好きだ」





え?と何かを問う間も振り返る間も与えられず、感じたのは背後から温かい何かにぎゅっと包まれた感覚。


181: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆11/29(日) 21:06:51
「……え」

急すぎる展開に状況がいまいち把握出来ず、少し顔を横に向けると、すぐ後ろに信の顔が。
そこでようやく今、この人に抱きしめられているのだと理解することが出来た。
ドキン、と
驚き混じりで心臓が大きく跳ねる。

「し、信……」

「……あったけぇ。風呂上がりだから?」

「……!!」

ますます密接してくる信。早鐘のような心臓の音が伝わってくるほど。だけど、そんな私の心臓も、とてつもなく早くて熱い。


そのとき、ふと誰かが騒いでいる声がした。大方部員達が、最後の夜なのだ、部屋の中で遊んでいるのだろう。


「こ、こんなとこ……誰か来ちゃうよ」

「気にすんな」

「け、けど」

反論しようとした私の言葉を遮って、信が言葉を続ける。

「今更だけど。無理か?
俺、やっぱり莉恵のこと好きだわ。
お前に振られて、お前がカナダに行っちまった後もずっと頭から離れなくなった」

「そ、そんな……私、あの時」

「びっくりしたぜ、こんなとこで会ったから」

私は突き放したんだよ、勝手に。
傷つけたのに、最低な彼女だったのに。まだこんな私を想っていてくれるなんて。
その不甲斐なさやら申し訳なさやらが募り、何だか泣きそうになってくる。






……けど。






「ご……ごめん。ごめんね」

本当にごめん。
どうして私は人を悲しませる言葉しか吐けないんだろう。自分を呪いたくなった。

信は黙っている。

「ほん、とに……信のこと嫌いなんかじゃなかったよ。私が勝手な自分の考えで、あの時」

後から捨てられるのが怖かった。そんなこと、優しいこの人に言えるわけがない。

「分かってたぜ、何となく」

「え?」



今、なんて?



「ほんとにあれが本心だったのかなーって、よく考えてた。何かおかしかったし?あの時。そりゃあ海外に行くってなって、環境も変わるし」

「……」

「けど、もう莉恵の彼氏では居られねーんだろ?」


(まさか、そんな風に思ってたなんて)


言わなきゃ。言うべきことを。でないと、せっかくの信の行為が無駄になってしまう。


182: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆11/29(日) 21:16:01
喉の奥から、本心を絞り出す。


「信とは、友達で居たい」


(言った……言えた)


信は一瞬黙ったけど、


「……分かった」


そう言ってくれた。
あぁ、本当に私は何てことしてたんだろう。それさえ償うことが出来なくて、心が痛い。


「お前がもし相川と会ってなかったら、少しは変わってたか?」

「え?」

いきなりそう言われ、思わず体が揺れた。なんでここで響が出てくるんだろう。信はそれを見逃さなかったのか、その目で私の瞳を掴んで離さない。

「好きか?あいつのこと」

(え―――)

いやいや、私はあんな変態で俺様で自己中なあいつのことなんか大嫌いで。初めて見たのはナニをしている真っ最中。さんざん人を馬鹿にしてばっかりで、けどたまに優しくて、私のことを理解していて。危ない時に助けに来てくれたりもして、居たら安心する……

(……あれ?あれ?私、あいつのこと嫌いって、思ってなかったっけ)

確か、西南高校に転入してきたばかりのとき、あんなやつなんか嫌いだとか文句ばっかり言っていた気がする。(文句は今でも言ってる気がするけど)
自分の気持ちの変化に自分でも気付いていなくて、愕然とする。

「……分かんないな」

それが正直な気持ちだった。


183: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆11/29(日) 21:38:34
「……そーか。ありがとな」

信が笑った。その笑顔にズキンと胸が疼く。

(そ、そんな泣きそうな顔して笑わないでよ、優しすぎるんだよ。馬鹿)

「じゃあ、俺帰るわ。ごめんな」

「う……ううん!わ、私こそ……」

何も謝ることなんてないのに。本当に大馬鹿野郎だ。
ひらひらと手を振って去っていく信の背中に、

「し……信!」

「ん?」

「あ……ありがとう」

「……おう」

にっと笑い返してくれる。今度こそ、信は行ってしまった。



(良かった、最後に伝えられて)



そのまま私はすぐそこにあったソファーに座った。ふう、と大きく息を吸い込んで天井を仰ぐ。不意に涙が滲んできた。



(ごめん……傷つけてばっかりでごめんね、本当に)



静かに涙が頬を流れた。と、そのとき。がやがやと誰かが歩いてくる声がした。あの馬鹿でかい声は、駿だ。

「~~だよな」

「うわ、マジで?」

(ど、どうしよう)

泣いている場面に出くわすなんて絶対に避けたい。……けど、

(広すぎだっつのこの廊下!!)

隠れる場所を探す間もなく、5~6人の集団がやって来た。ど、どうしよう。とりあえず顔をごしごしと拭いて、下を向いた。

「ん?橋場、何してんのこんなとこで」

「えーっと……ちょっと逆上せたから涼みにきました!!」

(きましたって……相手は同い年だぞ、私。しかもなんでわざわざこの廊下に!?あぁ、もうちょっとましな言いわけしたら良かった)

「わざわざここで?あ、一晩中遊ぶか?笑」

「け、結構です!!」

「心配すんな、誰もお前何か相手にしねぇよ」

「そうそう」

「し、失礼な!!」



バタンッ



「うっせーんだよてめーら!!騒ぐんなら部屋の中にしやがれ……って、なんで莉恵がここにいんだよ」

「ひ、響……」

気付かないうちに大声を上げてしまっていたらしい。謝ろうとぱっと周りを見渡すと、何時の間に逃げてしまったのやら駿たちはさっさと消えてきた。

(あいつら……!!)





「……で、」




響の手が私の顎をくいっと掴んだ。




「何で、お前は泣いてんだ」

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2010年08月10日 15:00
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。