250: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/17(木) 20:21:39
瑠季さま
ありがとうございます(^^)
*
(―……あれ)
重い瞼を開けると、よく知っているけど久しぶりの天井が目に入った。そこでようやく自分が家にいるのだと分かる。
やっぱり自分のベッドが一番落ち着くや。
今何時だろうと思って時計を見てみると、
「……は?四時半!?」
落ち着け。確か私が家に着いたのは午前10時過ぎのはず。で、家に帰ってきて部屋に行くなり寝ちゃって……。
「寝すぎだ……はあ」
まぁ、久しぶりにこんなにゆっくりと休むことが出来たのだから、無理もないのかもしれない。
とりあえず部屋を出てリビングに向かった。
「……あ、起きた?」
「ん……。寝すぎた」
「疲れてたんじゃない、しょうがないわよ」
意外と普通に話せている自分、それに冷静になっている自分が不思議だ。だけどやっぱり前のように、何もかもを話すという雰囲気ではないような気がして少し居心地が悪い。
……聞かなきゃ、先に。
「お父さんは?」
251: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/17(木) 20:33:51
私が帰って来たこともあってか、もう夕飯の準備をしているお母さんの雰囲気が一瞬だけ変わるのを私は見逃さなかった。
「一緒に住んでるの?違うの?もう……離婚した?」
一度聞いてしまうと、止まらなくなってしまった。聞きたいようで聞きたくない返事を待つ。
しばらく間を置いてから、
「離婚届は出してないわ、まだ」
「……(まだ、か)」
じゃあいずれは出すつもりなんだろう。
「お父さんは帰ってきたり来なかったりって感じね……。帰ってきても遅いし」
「……そう」
「……」
「……」
「お母さん」
「……」
「何で何も言ってくれなったの?」
「……!」
「ずっと怖かったのに……怖かったけど心配したのに。
何も言ってくれないから……ずっと……!!」
声が震えて、熱いものが込み上げてくる。顔を俯けて堪えていると、突然『ピンポーン』と間の抜けたような明るいチャイムが鳴り響いた。
「はーい」
お母さんが玄関に走って行く。話を続けなくていいので気が楽になったけど、やっぱりこのままじゃダメだよね。全部話してもらいたい、話したい。
強く心にそう決めてしばらく待っていたら、再びリビングの扉が開いた。勢いよく顔を上げる。
「あのっお母さん!
…………………は?」
「……あ、どーも、昨日ぶり。お邪魔しまーす」
「な、何で!?何がどーしてあんたがここに居んの!?」
「いやあ、ちょっと訳ありでさー。お母さんにも許可もらったし、泊めてくんね?莉恵」
この気楽そうで変にハイテンションな声。
(駿、なんであんたが居んのおぉぉ!!??)
色んな事が起こりすぎて頭がとてもついていかない
256: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/23(水) 21:11:13
「あー、やべ!絶品ですよこれ!」
「やあね、褒めたって何も出ないわよー。おかわりいる?」
「いいんですか!?」
「もちろんよー!莉恵、あんたは?」
「い、いらない……」
一つ聞いてもいいですか。
「なんで駿(あんた)うちでご飯食べてるの!?」
――――――
当然のような顔をして入って来た駿に、目が点になった。
「は?駿……?何してんの……しかも何でウチ知ってんの」
「あー、アドレス帳にお前の住所も入ってたし。方向音痴じゃない事がわかった、自分が」
へえ、住所見ただけでここに来れたんだ。すごいなー、私だったら迷いそう……。
じゃなくて!
何でここに来たの!?家は!?
「あー、それがな。俺も最初は家帰ったんだけど、誰もいないわけ。で、近所の人が通りかかって聞いてみたら海外旅行に行ってしまったらしくて。
ありえねーだろ?可愛い息子残して母、父、妹はオーストラリアだぜ」
確かにちょっとひどい……かも。
「で、莉恵の家は俺んちからあんまり離れてないなーって思って。来てみたってわけだ」
はあ……。
――――――――
目の前でおかわりをする駿と嬉しそうにお皿を受け取るお母さん。(そういえばお母さん結構面食いだった気がする。駿もモテそうな顔してるし)
普通~に人の家にお邪魔して、普通にご飯食べちゃってるよこの人。
しかし、久しぶりに家に帰ってみれば家族は海外だなんて、さすが駿の家族というべきなのかどうか。
257: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/23(水) 21:21:46
ちょっと分かりにくいですが上の記事の―――に挟まれているのは駿が家に来たときの二人の会話です
*
「そういえば駿、今日はどうするの?寝泊まりとか」
家の鍵を持っていなかった駿。帰る場所がないだろう。
「あら、じゃあ泊まっていったらいいじゃないの」
「は……?」
お母さんん!?
「え、い、いいんですか?」
「どうぞどうぞ、お布団ならあるから!じゃあ着替えも用意しないとね」
「あ、服は持ってきてるんで大丈夫です」
(やばい、また私置いていかれてる!)
「ちょっと!お、お母さん本気!?」
「何言ってんの。家に帰れないのよ、今から泊まるところ探すのも大変でしょ、泊まってもらえば何の問題もないじゃないの」
(問題大ありなんですけど……)
私が頭を抱えてうんうん言っているうちに、駿はお母さんに頭を下げてお礼を言ったりしていて泊まる気満々だ。これ以上反論出来るわけがない、確かに今から外に出て寝泊まり出来る場所を探すことはかなり難しいと思う。
仕方ない……。
「莉恵、布団もう一枚出しといてねー」
「(なんで私が……)分かった」
あれ、本来私が家に帰ってしたかったことがどんどん出来なくなってきている。
「あ、ついでに風呂も沸かして」←駿
(こいつちゃっかりしやがって……!)
なんかもう何もかも滅茶苦茶だ。
258: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/23(水) 21:28:36
あれから何かとばたばたして、やっとお風呂に入って私は部屋に戻って来た。ベッドにごろんと横になる。
「はあー……疲れた」
ガチャッ
「莉恵ー布団ないんですけど」
「え?……あ、忘れてた!!」
あの後もお母さんや駿に色々と使われて、すっかり駿の分の布団を敷くのを忘れていた私。
部屋の押し入れにある布団から一式とりだして、隣の部屋に運ぼうとするが……。
「あー、いい」
私の手から布団を横取りする駿。持ってくれるんだ、と一瞬感動した。するとそのまま床にポスっと布団を敷く駿。
「……え?あの、ここ私の部屋ね。駿が寝るのは階段側のあの部屋って言わなかったっけ」
「ああ。ここで寝るから」
……はいぃぃぃぃぃ!?
「いやいや、私もこの部屋で寝る……」
「嫌。だって退屈だし、一人で寝るとか」
「な、何それ……ふ、普通に無理でしょ」
どこまでも我が儘なこの男。響もだけど、なんでこんなに自己中人間が私の周りには多いの!?
こんな年頃の男女が同じ部屋で寝るなんてちょっとねぇ……。
261: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/24(木) 19:33:43
「あ、今やばいこと考えただろ。うーわ、莉恵やらしーの」
「ばっ……ち、違うから!!」
何で分かるのよ、もう!←
それにしてもあの男(響)と関わるようになって以来、そういうことに対して敏感になった気がする。どうなんだ、これは。
「あ、今は響のこと考えてただろ」
「え……何で分かるの!?……って、あ」
「認めたよなー今自分で。
顔に全部出てるし」
ということは、駿には私の行動パターンが全部お見通しってこと?怖すぎる。
「ど、どんな顔してた?」
「そーだなあ」
にやりと笑って駿は答えた。
「エッチしてるときみたいな顔」
「っ……//!?」
あまりの回答に何と突っ込むべきかも分からない。とりあえず、これだけは言える。
「……変態。馬鹿(私のエッチしてるときの顔なんて知らないくせにぃ!!!)」
「あーはいはい。で、今からその変態で馬鹿な俺と莉恵は寝るわけなんですよ」
……はい?
なんだか話がおかしな方向に転がり出している気がする。
262: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/24(木) 19:43:50
見ると駿は勝手に私のベッドの中に潜りだした。
「ちょ、ちょっと!!何してんの!!」
「来いよ」
にやっと笑いながらベッドの半分を開けて、ぽんぽんと手でそこを示す駿に一瞬思わずドキっとする。
て、違う!!何ドキドキしてるんだ私は!!
「だーかーら!駿はあっちの部屋!ほら、布団運ぶから……って、ひゃあっ」
なぜか腕をぐいっと引っ張られ、ベッドの上に誘い込まれた。バランスを崩して倒れ込むと、ぎゅうっと駿に抱きしめられた。
……抱きしめ!?
「しゅ……ちょ、駄目だって……!」
バタバタとそこで暴れるが、いとも簡単に抑えられてしまう。
おかしいってこの人ぉぉ!!
「こういうとき、女は絶対「駄目だって!」て言うんだよなー。けど結局抵抗するそぶりを見せつつ、最後までされるがままになるのも女なんだよなあ」
「なにその変な定理!?
お、お願いだから……だ、駄目だって」
「んー、どうしようか」
「はぅっ……!?」
今度は後ろから私を抱きかかえたまま、背中やらお腹やら撫でまわし始めた。……手付きがエロい。
駿ってチャラそうでセクハラしそうなキャラだったけど、実際されたことなかった(むしろしてるのは響だけ)、けどこんなキャラだったなんて聞いてない!!!
266: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/26(土) 21:26:49
おかしいおかしいおかしい。何で何で何で!?どうしてこんなことになっちゃってるのぉ!?
「駿っ……んっやめっ……」
「まーま、いいじゃん、俺とお前の仲だろ」
「そんな仲になった覚えなんてなっ……ひゃ!?」
駿(悪魔)の手が……服の上から、む、胸に……
「あれ、ノーブラ?あーそっか、もう寝るもんな」
「も、手ー退けて、よっ……!っん」
「やっぱお前着やせするタイプだよなあ、あー柔らか」
(も、揉んでるよこの人!!涙)
「んゃっ……ぁんっ」
とても自分のものとは思えないほど恥ずかしい声が出て、顔が熱くなる。身体をもぞもぞ動かすけど、動かしたら逆に駿の手が胸を刺激してしまう。
「やらしー声ー」
ニヤニヤしながら耳元で言ってくる。
「……んの……」
「?」
「変態がぁぁぁぁ!!」
「うごっ!?」
唯一自由だった足を、思いっきり振り上げてみると、その足は……その、何というか、男の人の一番大事なところに直撃していた。
267: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/26(土) 21:31:31 HOST:121-82-190-164.eonet.ne.jp
「いったぁぁぁぁぁ!!おいお前、手加減しろよな……」
何とか腕から解放された私は、次に駿をベッドの上から思いっきり押して容赦なく転がり落とす。
「あだっ!!てめー……」
「もう懲りたでしょ!!ほら、出ていく!!早く!!」
「あーはいはい、分かった!分かったから、また蹴ろうとするその足やめろ!!」
最初は痛みのあまりもがいていた駿がようやく起き上がり、のそのそと布団を持ち出した。……はあ、やっとか。
「とんだじゃじゃ馬だな」
「うっさいわ!あんたが変なことするからでしょ!」
「はいはい……チっ」
文句を言いながらやっと部屋を出て言った。(ていうか今、どさくさに紛れて最後に舌打ちしたよね)
はー、これだから男は。
ため息をつきつつやっと落ち着いて私はベッドにごろんと横になった。
「あーちくちょー、あそこまで本気で蹴ることねーだろ……ていうか男にしかわかんねー痛みなんだけどな。
……にしても、あいつ……」
275: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆01/04(月) 22:11:21
――翌朝
「……起きて」
「ぐー……」
「朝ごはん出来てるんですけど。人の家でそんなによく寛ぐなーこの男。さっさと起きやがれ!!」
「グフォっ……!!」
思いっきり脇腹辺りを足で蹴ってやると、妙な声を上げて駿が目を覚ました。手のかかる男だ。ついでにテーブルクロスだけを華麗に引っ張る様に、駿がしがみ付いている布団を巻き上げる。
「うおっ……寝かせろよなー今日くらい。ていうか昨日からお前俺の扱い酷くね?若干キャラ変わってね?」
「うっさいわぁぁぁ!!もう9時過ぎだから!!お母さんわざわざあんたのために滅多に作らないような日本の朝食っぽいもん作ったんだよ!!早よ起きんかい!!!!」
「ななな殴るな蹴るな!!!!明らかキャラ変わってるよねお前ぇぇぇ!?」
いや、至って普通の反応だ。大体何でこの男が居候してんのよ。(まだ言う)
とりあえず駿が着替えるとかぼそぼそ言いだしたので、私も部屋を出た。
276: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆01/04(月) 22:18:50
「あー、まじうまい」
大盛りご飯を既にお代わりしつつある駿を見て、よく朝からこんなに食べるなあと感じる。私、朝は食べられないんだよなあ……。
「ん、母さんは?」
「駿が来たもんだから至る部屋の片づけしてるみたい。別にそんなにたくさんの部屋必要ないと思うんだけど」
「あー、気がきくな。きっとあれだ、俺と莉恵がにゃんにゃん出来るように整理整頓しないとあれなんだろ」
「今すぐ殺してやろうか」
「いや、だからね?お前キャラ変わってるよこれ。大丈夫か」
「あんたのせいだっつーの」
自分でも軽く自覚するほど、私は駿の前にいると口が悪くなるらしい。新しい発見である。
「そういや、莉恵お前さー、昨日俺のことすっげー拒否ったよなー」
「いや、当たり前で…「あいつにはそんなことないのになー」
「へ?」
突然口を挟んできた駿がにやにやしている。
「……何にやにやしてんの?」
「俺知ってるんだってばー。合宿の、最後の夜さ、お前響の部屋でさー……な?」
(……嘘)
何で知ってんのそんなこと!?響が言ったのか?そうなのか!?
「うわ、顔赤いし。当たりかよ。そりゃー朝からあいつの部屋にいたとこで、何もないとは思わなかったけどまさか本当にそうだとは思わなかった」
「え……」
嵌められた。最悪。
277: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆01/04(月) 22:26:21
顔面蒼白状態の私をそっちのけで、駿は勝手に話を進めている。
「一晩中あいつの部屋に居たってことは、結局お前が逃げなかったんだろ~?俺のことは全身全霊で拒否ったくせに。やっぱりお前らデキてんの?」
「デキ……!?違う!断じて違うからね!!」
「あー説得力ねーな」
「うるさい!!」
本当に本当に最悪だ。この男には、響と少し別の意味で隠し事が出来そうにない。
大体私、駿とこんな話をしにわざわざ家に帰って来たんじゃないんだけど……。
「……駿の家族ってどんな感じ?」
「……また急に話変えたな。別に普通だけど。仲良いし。あんまり家帰ってないけどな」
「……そう」
きっと、幸せな家庭なんだろうな。本人からしたら、うざったるかったりかったるかったりするんだろうけどそういう普通の家庭がどんなに羨ましいか。子と両親で普通に話せて、普通に喧嘩して。
「莉恵お前……大丈夫?」
「あ……うん。ごめん、ぼーっとしてた」
やっぱり今夜辺りに話してみるか。お母さんと。
唇を噛みしめて考えていると、
「まぁ何かよく知らねーけど、あんまり全部抱え込むなよ」
(まったく、この人といい……)
みんな一緒だ。私の周りの人達は、言葉に出さなくとも私が欲しい言葉を簡単に与えてくれる。普段何も考えてなさそうな人だって、みんなみんなそう。
幸せだな、私も。
もう少し素直になれたら伝えよう、「ありがとう」と。
281: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆01/14(木) 20:59:10
――夜。
晩御飯を食べ終えてから、私は駿を部屋に追いやった。(ちょっとだけ二人にさせて欲しいって真面目に頼んだら、あっさり聞いてくれた)
今お母さんは、ちょうど皿洗いを終えた所だ。今しかない。そう思って心を決めたとき、
「莉恵、今学校楽しい?」
不意にそう聞かれて少し戸惑ったが、
「え?……うん、楽しいよ。友達だっていっぱい出来たし、何より部活も楽しいしね」
「そう。良かった……。
…………っ」
「え……?えぇ!?ちょっと!?」
まさかとは思うけど……お母さん泣いてる?
「どうしたの……?」
「ごめんねっ……莉恵。お母さんは弱いし駄目だから、あんたは頑張ってるのにお母さんはこんなに……そのせいで、傷つけてきて」
「……っ!」
282: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆01/14(木) 21:07:06
「こんな母親だから、周りみたいに幸せな家族に出来なかった。お父さんとお母さん、もっとしっかりしてたら良かったのにね」
「……」
「本当に、悪かったって思ってるわ。今更謝るなんて最低だけど……お母さんもお父さんもね、全部リセットしたいの。新たに自分達の道を見つけた方がお互いにも良いって話をしたのよ」
「……!」
ついに聞いてしまった、その言葉。分かっていたこととはいえ、心が痛い。堪え切れなくて、涙が零れた。
そのとき、突然玄関の扉が開き廊下からどたどたという足音が聞こえた。
ガチャン!
「っ……莉恵!」
「え……お、お父さん!?」
「どうしたの、今日は帰らないんじゃ……」
そこに立っていたのは、正真正銘私の父親で。いつも仕事で家を出ていたから、会ったのは本当に久しぶりだ。
「莉恵の寮に、電話かけて……帰ってきてるって言ったから、会いに……時間はあまりないから、泊まれないが……」
私に会いに帰ってきてくれたんだ。今までそんなことなかったのに。
「おかえり、おとーさん」
「ただいま」
笑顔でそう返してくれた瞬間だけは、小さい頃に過ごした家族を思い出させてくれた。
最終更新:2010年08月11日 00:05