304: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆02/06(土) 10:19:42
―――
「……やばい!!さすがあたしの手にかかれば!!超似合ってる、めっちゃ可愛いよ!!」
「うんうん、いいじゃん。ね、あたしのお姉ちゃんすごいでしょ?莉恵、夜の蝶みたいだよ」
「……えっと、」
夜の蝶って、所謂あの職業のことですか?
―――
お祭り当日3時、約束通り私は沙耶の家にお邪魔していた。沙耶には大学2回生のお姉さんが居て、私は彼女に浴衣を貸してもらうことになっていたんだけど……。
髪形までやる!て張り切って言ってくれたお姉さんだから、私も沙耶もその言葉に甘えた。
「こ、これ、私……?」
鏡に映る自分の顔を見て唖然。髪の毛は丁寧に巻かれてサイドにアップされ、夏らしいさわやかな簪まで。おまけにメイクまで(いつの間にか)されていたもんだから、
「完璧!!よし、じゃあ行ってきなさい!!」
「よっしゃ!!行くぞ莉恵!!ありがとおねーちゃん!!」
「あ、ありがとうございました!!」
なんやかんやで家を出ればそろそろ良い時間だ。周りにも浴衣を着た子供から大人までちらほら。
「沙耶、ほんとに良かったの?こんなにしてもらって」
「ぜーんぜん!……あ、ちょっと待って」
沙耶の携帯が鳴った。
「もしもし?……ん、平気。じゃあ昨日の通りでね」
ピッ
短っ
誰と電話したんだろう?
特に気に留めず私は歩き続けた。
305: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆02/06(土) 10:26:17
「よし着いた!莉恵、こっち」
「へ?屋台とかあんのはこっち……て、えぇ!?」
沙耶に手を引っ張られて行って見れば、
「ごめん、待ったー!?」
「……?え、マジ?お前並河?」
「失礼ね、女はいくらでも変身出来るんだから!!それより相川くんは?」
「あー、もう来るぜ……っと」
え、何?何かのドッキリですか?確かに見渡すとうちの部員がいっぱいいるし、しかもなんかこの状況からすると駿と、あと――……
「悪ぃ、寝坊した」
「寝坊って響……昼寝かよ」
(なぜに相川様がここに!?)←
パニック。
私は背の高い沙耶の後ろに隠れていたもんだから、まだ誰も気付いていないらしい。
ひ、響私服だ……みんな私服だけど。案外というかやっぱりというか、センスいいんだ。
(て何を私は!?)
これだから駄目なんだって!!
まず合宿の最後の夜(思い出すだけで恥ずかしいわ!!)からおかしくなったでしょ?でもってこの間、理由が理由であれ……成り行き上(?)響に抱きついちゃってたし。
顔合わせずらいんだってば!!
「おい、莉恵は?」
「は?いるじゃんここに」
ぐい、と私は前に押し出された。
306: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆02/06(土) 10:34:00
駿の疑問に沙耶が答え、私が押し出された瞬間、ばちっと響と目が合った。
「……ど、どーも」
「……誰?」
え
「ちょっと、誰って酷くない!?毎日毎日ムサい男の中でせっせと働いている私に向かってっ……」
「ば、馬鹿、そんなんじゃねーよ!」
珍しく焦った様子の響。(リアルショット。写メりたい。そんなことしたら殺されるけど)
「……別人みたいだな」
よく見ようとしたのか、響が私の顎をくいっと指で挟んで持ち上げる。
(~~!?恥ずかしいんだけど)
「相川、そのままちゅーしろよ!!」
「あ?」
(はっ今周りのこと忘れてた!!)
慌てて沙耶を探すが、
「……莉恵。行ってきなさい!!」
「は?」
「あたしはちゃーんと何もかも上手くいくようにみんなと一緒に居るから!!」
「え?」
「莉恵、襲われそうになったら人気のない場所に行けよ。そこなら声出してもそう聞こえな「えぇええ!?」
ちょっと、これは妙なことになってる……?
「ひゅーひゅー熱いね~!!」
(誰だ月並みの野次飛ばしたやつ)
「チッ。煩せー」
「うひゃっ!?」
響のぐいっと腕を掴まれ、そのまま連れて行かれた。
「えーえー!?沙耶……!?」
後ろを振り向くと、すでに姿は見えず。
(こ、この裏切り者ー!!)
310: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆02/09(火) 22:39:08
「あー!!……また切れた」
「……まだ一個も取ってねーじゃねぇか」
「……」
どうやら駿達に計られたようで、何故か自分は今莉恵と行動を共にしている。お節介なやつらだ。
初めは渋っていたようなこいつも、わたあめ→たこせんと行くうちに機嫌が直った。単純なやつ、やっぱり馬鹿だな。
今は、ヨーヨー釣りに夢中になっている。絶対ヨーヨー後で邪魔になるだろ、とは口に出さず後ろから眺めているだけ。
(……)
普段は下ろしているか下の方で結うことの多い黒髪が、今は高い位置で纏められていて白い首筋が露わになっている。
いつしか自分の視線はそいつのそこばかりを目で追っていた。
(……変態か、俺は)
「取れない!無理!!」
「あーもう貸してみろ」
「へ?」
どうやら莉恵が狙っているのは赤い水風船のようだ。
「……」
つーか、最近こいつの言動は良く分からない。さんざん人のことを避けたと思いきや、いきなり抱きついてきたりもするし。何でこんなに振り回されてるんだ、俺は。
「ほらよ」
「おー!すごーい!」
(いや、一個くらいは取れよせめて)
311: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆02/09(火) 22:46:45
どうやら私はヨーヨー釣りが昔から苦手らしい。いや、本当に。取れてもせいぜい一個。なぜだか分からなかった。久しぶりにやったからいけると思ったんだけど……。
それにしても、この人はヨーヨー釣りまで才能があるのか?
「あ、ありがと!」
「……おー」
響がふっと頬を緩めて笑った。彼にしては珍しく柔らかい笑顔。
(あ……)
まただ。今、胸がちょっとぎゅってなった。
最近こういうことが多い。しかもこの人に対して、私の中で確実に何かが壊れつつある気がする。
「顔赤いんですけどー」
「へ?……ち、違う!!酔ってんの!!」
「ほー、そうか」
「え」
ぐいっと屋台の脇にある細い路地に腕を掴まれて引っ張り込まれた。
ななな何しようとしてんですかこの人は!
「ちょっ……!」
そこで、今日最初に会った時のように顎をくいっと掴まれ視線を無理やり合わせさせられる。
「……やっぱり別人みたいだな」
「……ん」
唇に柔らかいものが押しあてられる。
本当は迫ってくる顔に気付いていたから避ける余裕はあったとか、条件反射で目を瞑って受け入れてしまったというのは自分でも驚くべき事実。
312: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆02/09(火) 22:55:17
「っ……!」
僅かな隙間から生ぬるいものを捩じ込んでくる。何度されてもこの感覚には慣れない。逃げるように動く私のそれを追いかけまわし、あっけなく捕まってしまう。
「ふ……ぁ」
唇が解放され、はあはあと息を整える。そんな私の頬に優しくキスを一つ落とす。
「莉恵……」
「っ……」
甘く身体をぞくりと震わせる少し掠れたその声。逃げられない、そんな思いまでが脳内を支配していく。
彼の手が浴衣の合わせ目から素早く滑り込んできたとき、感じた冷気に私の頭ははっと覚醒した。
(……ここ、外!!やばい!!!!)
野外プレイですかそうなんですか!?←
こんなところ、いつ人に見つかるか分からないし、それ以前に私自身もかなりアブナイ気がする。
「だっ……だぁぁ!!ストップストップ!!」
「あ?」
うっわ、ものっそい機嫌悪くなった、今の一瞬で。
「こんなとこで何考えてんのよ!!」
「お前も結構ノリノリだったくせに、言えたもんじゃねぇな」
「んなっ……
!」
私は後ろ向きに数歩進んだため、その拍子に誰かにぶつかってしまった。
(ほ、ほら、人来たじゃん!!あ、危なかった)
313: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆02/09(火) 23:03:42
「あ……すみません!!」
「いや、大丈夫、こっちもぼーっとしてたから」
普通に考えたら後ろ向きに歩いていた非常識な私が悪いのに、何て優しい人なんだろう。怖い人じゃなくて本当に良かった、まあいざとなったら響がいるけど。(おい)
そう思いふっと顔を上げると、
「…………」
「?どうかした?」
「(うっそ)」
言葉を失って、後ろにまだ響がいることも忘れて思わずぽかんとしてしまった。
この人、すっごくカッコ良い。一目惚れとかするタイプではないけど、本当に。芸能人?みたいな。なんか普通とは違うオーラも放ってるし。(あ、でもその点では響も同じかもしれない。負けないくらい顔整ってるし)
「あのー、」
「!は、はい」
やばい、初対面なのにガン見しすぎた……。ごめんなさい。
「それ、直した方がいいんじゃない?」
「え?」
すっと指さされたところまで目線を下していくと、なんともまあ露わになって肌蹴た胸元。(ご丁寧に谷間まで見えているではないか)
「きゃあああ!!!!!すすすすいませんごめんなさいさようなら!!」
慌てて胸元を抑えてしゃがみ込む。絶対さっきのあれのせいだ……!ああもう泣きたい、こんなカッコ良い人にこんなところ見られるなんて一生の不覚かも。
316: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆02/11(木) 09:22:08
「あと、ほら」
「え……」
まだ何かあるの……?
すると、その人はすっとしゃがみこんだ私の背後に回り込んで、髪に触れた。
(!!??)
いきなり触れられて思わずびっくとした。どうやら、軽く乱れた髪を整え、簪を挿しなおしてくれているようだ。
「はい、直った」
「(慣れてますね……)な、なんか……ありがとうございます、わざわざ」
「いーよ。可愛いから放っとけなかっただけだし」
(はい?)
「じゃーね、あと、えーっと彼氏さん?女の子襲うなら家帰ってからにしないとね」
背を向けたままひらひらと手を振って、その人は行ってしまった。
(なななな何だったの今の人!?
しかも彼氏さん?そんな人私にはいない、
けど今そう思われそうな人と言えば……!!)
背後から恐ろしい殺気を感じて、思わず寒気。
317: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆02/11(木) 09:35:11
「……ひっ」
いきなり、ゆっくりと首筋に指を這わされて小さく声が出る。
「なんだァ?俺を差し置いて、ナンパされて有頂天か、莉恵ちゃんよぉ?」
「(誰この人、こんなの響じゃないし!!)ナンパなんかされてないしっ……大体響があんなことするから」
「ちょっとカッコ良いからって、顔赤らめて見惚れてよぉ」
「(黒い!!声が黒いよ!!涙)ごごごめんなさっ……いっ!?」
そのまま首筋にチクリとした痛み。絶対噛まれた。しかもその上に唇を這わせ続けている。(しかも何で私が謝らないといけない?)
「さ、さっきの人も言ってたじゃん!!女の子襲うなら家帰ってから……って……」
「ほぉ……じゃあ帰ったら、たっぷりな?」
言ってからしまった、と思ってもまさに後の祭りだ。こんな風に言ったら襲ってくださいと言っているのと変わらない。楽しそうな笑みを浮かべたこの人を見て心底後悔した。
騒がしい祭りの雰囲気の中、特異なオーラを放つ美男美女。周りの人々がちらちらと視線を送るのにも慣れているようで、気にも留めていないらしい。
「蓮、なんでそんなに楽しそうなの~?」
「いや、ちょっと面白いモノ見つけたから」
「え、何何!?教えてよぉっ」
「……んー、また会えたらねー」
「おいこら逃げんな莉恵!!」
「駿ナイス!!いつか恩返す!!」
帰宅後、響が部屋で駿達に質問攻めを受けてくれたおかげで莉恵は助かったのだとか。
最終更新:2010年08月11日 00:12