321: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆02/17(水) 20:46:18
―――――ー
「あー!夏休み終わっちゃった……」
「あーはいはい、暑苦しいから抱きつくな!」
休み明け早々、聞きなれたハスキーボイスは沙耶だ。
そう、今日は9月1日。長かったようであっという間だった夏休みは終わってしまい、今日からまた学校が始まったのだ。
確かに今思うと、練習は多かったし合宿もあったしすごく忙しかったな。
「そーいや、もうすぐテストだよね?」
「あー……うん、あたしマジでヤバいかも。莉恵、勉強教えて!」
この学校は二学期制のため、夏休みが明けて二週間もすれば……恐怖の定期考査が始まる。私はカナダに居た時、必死で勉強もしたし、もともとそこまで勉強が苦手なわけじゃない。
「沙耶がそんなこと言うなんて珍しー。多分理系はあんまり教えられないけどね」
「いや、全然構わないっす!!」
キャラ壊れてるよこの子……。
すると、時間になり担任の由佳先生が教室へ入って来た。
「はーい、夏休みはどうしたか?休み明けで早速だけど、もうすぐ期末テストだからね、しっかり勉強してね!大学行けないわよ」
この学校は大学まで一貫なので受験はない。が、成績が足りないと容赦なく落とされる。(だからみんな必死!)クラスの雰囲気がどことなく重くなった。
「……あと、もうひとつ嬉しい話。転入生よ、二人ね」
(転入生!)
一気に教室内がざわざわと騒がしくなる。しかも、二人!?
どうでもいいけど、(私もだけど)なんで転入生はみんなこのクラスに入るんだろう……?
「さ、どうぞ!」
322: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆02/17(水) 20:52:28
がらがらーとドアが開いて、女の子と男の子が入って来た。自分が転入して来た時のこと思い出すわ、懐かしいなあ。
……ていうか、え?
「二人とも、なんかオーラすごいな……」
「てか、可愛くない?」
「いや、男のほうカッコ良くない!?」
(う、嘘!まさかまさか)
男の方に見覚えがあった。忘れられない、あのお祭りのときにひと悶着あったあの人だ。女の子は知らないけど、その子もすっごく可愛い。やばい。
こうやってみたらやっぱりすごいなぁ……。まぁ、あんまり私のタイプではない……けど。
「えーっと、佐久間蓮です。これからよろしくお願いします」
ふーん、佐久間くんっていうのか。
ふと周りを見ると、女子の目は全員ハートに。
全員面食いか!
「はいはい、次あたしっ!」
女の子の方が自ら進みでてきた。
「山内優華です!蓮と一緒に、東京まで来ましたぁ!これからよろしくお願いしま~す!」
(うっうわ……すっごいぶりっこ!)
か、可愛いんだけど、私すっごく苦手かも……。さっきの佐久間くんのときと同じく、今度は男子が見惚れている。(なんか腹立つわ)
なんとなく響の方を見ると、ぐっすり眠り込んでいた。相変わらずよく寝るな。
328: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆03/04(木) 23:01:31
「えーと、じゃあ、佐久間くんは廊下側の一番後ろの席着いてくれる?」
佐久間くんの方に先生が指示する。なんやかんやで佐久間くん私の後の席だ。一番後ろだし、一個空いてたし。
……ていうか、私お祭りのときかなり恥ずかしいところ見られたんじゃなかったっけ……!!
(もうさっき顔見られたかもしれないけど)彼が横を通るとき、私は下を向いておいた。
「山内さんは、窓際の方ね……あーやだ、相川くんこんな時間から寝てるわ。ほら、起きて!」
くすくすと教室内に笑いが広がり視線が集まって、響はやっと顔を上げた。
ちょうどその側を通り過ぎようとした山内さんは響の方を見る。
……が、次の瞬間
「・・・・・・・・・・・・!?」
ずるっ
響が、目を見開いて頬杖を着いた肘を滑らせた。
「嘘~!響~!?」
「…………優華?」
茫然と響が呟く。え?響?でもって……優華?何、二人は知り合いなわけ……?そんな声が教室のあちこちで上がる。無論私も驚いてるわけで……。
「響この学校だったんだ~!超びっくりした!」
な、何なんだ一体……。
329: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆03/04(木) 23:09:02
「え~、佐久間くんと山内さんってモデル……!?」
「事務所!?え、すごーい!!」
「おい響、お前山内さんとどういう関係!?」
「……ガキん時近所だった」
「も~、あの時響も一緒に事務所に連れて行こうと思ったのに、響ったらバスケ一筋なんだもん!」
休み時間。教室はこれまでにないくらい騒がしく、盛り上がっていた。まああんな美男美女が揃いに揃ってたらね……。
しかも、響まで事務所に入れられかけたのか。そりゃあ顔も整ってるし分かるけどさ。
(私にとって)問題なのはそれより……
「優華、響と同じ学校で同じクラスなんで嬉しい~!!夢見たい!!」
ぎゅっと山内さんが響の腕にしがみつく。
え、ちょっと、堂々とイチャイチャして
「離れろ」
一方響はうざったそうに彼女を引き剥がした。
「あ、待ってよ~!!どこ行くの?」
テテテ、と響を追いかけていく山内さん。
もう、周りの女子の目は鬼のごとし……ですよ?←
もちろん佐久間くんだってまあかっこいいけど、響は元々すごく人気だし。だけど山内さんが綺麗すぎて、何も言えないんだろうなあ……。
可愛いし、甘え上手だし。
(はあ……なんか疲れるわ)
331: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆03/10(水) 13:53:28
ayaさま
あげありがとうございます!
*
幸いすぐに一時間目の始まりを告げるベルが鳴り、全員が自分の席に着いた。まだみんな興奮している様子。って、さっきから私が冷めすぎなだけかも?
「起立、礼ー」
今日は一時間目から数学だ。
「あの、先生」
後ろで佐久間くんが手をすっと挙げる。
「俺、数学の教科書だけまだ届いてないんです。あ、ちなみに山内も」
「おーそうか。じゃあ二人とも隣に見せてもらってくれ。……ああ、後藤は休みみたいだから……橋場、お前後藤の席行って」
「へっ?あぁ……分かりました」
ちょっと、何で今日に限って後藤休みなわけ!?←
しかも新学期早々に。席を移動するときの周りの視線が痛い。痛すぎる。
「ありがと、橋場さん」
「う、ううん、全然」
「えーじゃあ、今日はP112から……」
授業が始まったけど私はそれどころじゃない。だって何だか、き、緊張するし!!教科書のページを捲る手までが震えているような気がしてならない。
「あのさ」
「え?」
「橋場さんってお祭りのとき会った子だよね?違ったらごめん」
「っ!!!……は、はあ、まあ」
「やっぱり」
(ばれちゃったし!!てかそりゃいつかばれるけども!!よく向こうも一々私の顔覚えてたな)
「莉恵って呼んでい?俺も蓮でいいし」
「え?は……はあ。蓮、くん?」
「いや、呼び捨てでいいし。よろしく、莉恵」
「は、はあ……」
なんていうか
もちろん良い人、なんだけど、ちょっと苦手かもしれないこの人。
332: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆03/10(水) 14:04:20
それからは特に話すこともなく、あと授業も5分で終わるというときに再び話しかけられた。
「何か部活入ってる?」
「え?あぁ、うん、バスケのマネしてるよ」
「へぇーっ。てことは、優華のあの知り合いがキャプテンの?」
「う、うん。よく知ってるね」
確か山内さんも蓮も同じ事務所で、結構前から仲が良いらしい。恋人ってわけでもなさそうな雰囲気なんだけど。
「優華がさっき言ってたし。
……あれ?もしかして、あれ彼氏だったっけ?」
「(えぇええ!?)
ち、違う!!確かにまぁお祭りのとき一緒にいたけど……」
「あー、それで思いだした!あの時の莉恵エロかった」
「は!?」
まさかこの人思い出さなくても良い過去を思い出してしまっているような気が。うわー、最悪!!ていうか私がお祭りなんて言うからじゃん、墓穴掘った。
顔を赤くして悶えていると、(何じゃそりゃ)膝に置いている左手をすっと掴まれた。そしてその手はそのまま彼の口元へと持って行かれ、、
「…………へ?」
手の甲に柔らかい感触が。
キーンコーンカーンコーン
(あ、授業終わった。
……て、え、今何が起きた?)
「あ、照れてる?
じゃ、教科書ありがとな」
(……はぁぁぁぁ!!??)
334: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆03/10(水) 23:06:43
ひなさま
あげありがとうございます^^
*
「終わったー……」
一先ず一日の授業が全て終了した。あれ以来、何もなかった、けど。後ろに蓮(ほんとに良いのかなあ、呼び捨てで)が居るということ自体落ち着かない。
「莉恵ー!今日からテストまで部活ないよね?放課後勉強しよー、てか教えて!」
「珍しいー。分かった、じゃあ図書室行く?」
「んー、分かった」
そして、SHRが終わり放課後、図書室。
数学のプリントを前に、沙耶が口を開いた。
「ねー、今日どうだった?なんかしゃべった?佐久間くんと」
「あー……」
沙耶はお祭りの一件も知ってるから、何でも話せる。(というか強制的に吐かされたというか)
「んー、なんか。ちょっとしゃべって。んで、手……ての甲に……き、キスされた、んだけど」
沙耶があんぐり口を開けてシャーペンをぽろっと落とした。
「は……?何してんのあんたら授業中に。それにしても」
それにしても何?と聞こうとした時、横から足音が。見るとそこに居たのは山内さんだ。
「勉強中にごめんね~?ちょっとだけ良い~?」
(うわ、出た)
一瞬沙耶が固まる。私も多分顔引きつってるかも。
「えっとー……莉恵ちゃん、だよね?」
(い、いきなり!しかも沙耶はスルーですか)
「うっ……うん」
「で、バスケ部のマネージャーなんでしょ?それってすごいことらしいね~!」
「は……はあ」
(こ、このテンション着いていけない。誰かー!!)
「響もキャプテンだし……ね」
(・・・あれ)
何か今、すこーし(いや、かなり)この子の表情が変わった気がした。
もしかして、いやもしかしなくても、朝から様子を見ていると山内さんって……
335: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆03/10(水) 23:14:13
するとまたころっと山内さんの表情が変わる。(さすがモデル。か、可愛い)
「ねぇ、莉恵ちゃんって響と付き合ってるの?」
「へ?い、いや違うけど!!それにしても何でみんなそう言うの?」
「だってー、蓮が前二人で居るとこ見たって言ってたしぃー。」
あぁ、あの祭りのときね……。
「ま、いっか。じゃあ勉強頑張ってね~っ」
そのまま山内さんは教室を出て行ってしまった。え、何だったんだ今のは……。
沙耶がくるくるペンを回しながら言う。
「んー、あのかわいこちゃん、残念ながら黒ね」
「くっ……!?何で!?」
「いや、勘よ勘。気ぃつけなさいよ、莉恵!」
「はあ……。ほ、ほら勉強するよ」
「はいはーい」
その直後
ガチャン
「おっじゃましま~す。えーと、響はー?」
「またお前か……勝手に生徒会室入って来るんじゃねぇ」
「ねー、響ってさぁ、あの莉恵ちゃん?と付き合ってんの~?」
「関係ねーだろ。付き合ってねーし。じゃあ俺やることあるから」
バタン
「もう……冷たいんだから。
むうっと膨れる優華。
(それにしてもあの女……)
えーっと、橋場だっけ?何であんな平凡な子が当然のような顔して響の身近でマネージャーなんかしてるの?可愛くもないくせに、馬鹿みたい。
ピッピッピ
「あーもしもし?あのねー聞いてよぉ、響がさぁ……」
ちゃっちゃと消しちゃおうっと。
響のそばに居ても良いのは優華だけ。
337: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆03/17(水) 13:34:48
天歌さま
女は怖いですよね。そして沙耶は基本莉恵より一枚上手です(笑)
コメントありがとうございます^^
*
あれから時間(とき)はあっという間に流れ、今日から期末テストだ。特にあの転入生と絡むこともなく、平凡な日常が過ぎていった。
今、クラブないしね。なんていうか、すごい楽だ。
―生物 莉恵の場合―
あー……あのハゲめ、やっぱり授業でやったこともないような難しい問題出しやがって。意地でも解いてやる。
とりあえず暗記項目から埋めていくことにした。
(暗記以外っていっても、遺伝だけだし。なんとかなるかも)
私は文系選択者だから、生物。響は理系だから化学を受けている。
ちなみに私は化学に関してはからっきしだ。
―数学 沙耶の場合―
問題数多いなあオイ。こんなのどこから手をつけりゃいいのやら……。
(ん?)
この問題、莉恵がこないだ教えてくれたのに似てる……?いや、もしやまんまじゃね!?これチャンスじゃね!?よし、これから解くか。
―化学 響の場合―
解答終了(試験開始より20分)
あー、最近真剣にあの女ウゼー。マジウゼー、昔に増してウゼー。消えろ。
―国語 蓮の場合―
百人一首出るとか聞いてないけど。まぁ、こないだ来たばっかりなのにテストっていうことがおかしいだろ。自作で歌でも作るか。
……それにしても、昨日のアレ、本気か?本気なら、まぁそれはそれで楽しそうだな。
―日本史 優華―
もー、また響ちらってあの女の方見た!つまんないのー。
まぁ、あの女がどうなるかは……。
(お楽しみってね?響)
それぞれのテストへの向き合い方でした(笑)
338: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆03/17(水) 13:54:37
「あー、終わった終わった!終わったよ莉恵ぇぇ!!あたし昇天しそうだからねこれ!!」
「はいはい、昇っちゃダメだからね、それ。んじゃ私部活行くねー」
「はーいよ。じゃーね」
時間はまだ少し早かったけど、着替えを取りに行ったりするために教室を出る。更衣室で着替えてから部室に入る。
「失礼しまー……って、響」
そこに一人壁に凭れかかって座っていたのは響一人だった。何やらげんなりした様子で頭を抱えている。(珍しい)
「ど、どうしたの?」
「…………マジウゼェ。優華」
うっわー、出た。とりあえず苦笑いを浮かべる。何と言ったら良いのやら。
「おい、莉恵」
「はい?」
「(コイツは……)あのなぁ。
……まぁ、何でもいーわ」
「え、ちょ……ちょっと!?」
いつのまに立ちあがったのやら、響の手が私の腰に回っていて、頭をもう片方の手で押さえられていた。所謂抱きしめられている体勢、なんだけれど。
唇に、柔らかいそれを押し当てられた。
「んっ……!」
瞳を閉じる暇がなく、ただただドアップの響の顔を見つめていた。それにしても睫毛は長いし肌が綺麗……
「! っ!!~~っ」
口内に熱いものが入ってきて、ねっとりと舐められる。かと思えば、腰に回っていた手が怪しく動いて……
思わずぞくっとして腰からへたり込みそうになった。それを許さないというように、しっかりと支えられる。
ようやく唇が離れ、ツーっと銀色の線が二人を繋いだ。
「いっいいいいいきなり何すんのよ!!」
「どもりすぎだろ。なんか腹立つんだよ、お前も最近」
「え」
私何かしたっけこの人の気に障るようなこと!?全くもって身に覚えがないんですが……?
「佐久間……お前」
「……へ?れ、蓮?」
「!」
突然口を開いた響に対して、その人が何か?という意味で返した私の返答に、響が大きく目を見開いた。
え、何?何だってのよもう。
そのとき、突然誰かが部室のドアをノックした。
「!」
咄嗟に私は響から距離を置く。(なんか舌打ちが聞こえたけど気にしない)
ガチャッ
「やっと見つけた~!もう、探したんだからね、響!」
言うなり、響に飛びつくその可愛らしい女の子。間近でそれを目にして、急激に私の中の何かが冷えていくのを感じた。
343: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆03/28(日) 11:22:14
心臓がドクンドクンと、嫌に音を立てている。何、この感じ。嫌な予感がする。
「んなとこまでテメーは……何しに来たんだよ」
「ちょっと、冷たくな~い?優華、せっかくバスケ部のマネージャーになったのにぃ」
(は?)
え、今何て言ったのこの子?マネージャーは私なんですけど。しかも、監督はそれを知って……?
「んだそれ、急すぎるだろ。監督は知ってんのか」
響も同感だったようで。あくまで冷静に言葉を紡いでいるように見えた。
「ん、もう了解はとってるから~!確かめてみてもいーよ?
あ、だから莉恵ちゃん……よろしくね!……って、あれ」
「!おい、待てもう部活始まるっ……」
バン!!
理屈とかじゃなくて、それ以上その場にいるのが嫌になった。それだけなの、私の身勝手な我が儘だ。理性が追いつかず、足が部屋の外に向かっていた。
ドクンドクン
怒りなのか何なのか分からない感情がずっと心の中で渦巻いている。
行くあても特に決めていなかったけど、がむしゃらに走りながら自分の心臓を必死で沈めようとした。
(嫌だよ、こんなの……何これ)
344: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆03/28(日) 11:38:22
ガラガラ!
気付けば自分の足は、今はガランとしている慣れ親しんだ自分の教室へと向かっていた。意味もなく自分の席に着き、机の突っ伏する。ちらっと壁にかかっている時計を見て時刻を確認し、はっとした。
(やばいな……これ。無断欠席じゃん)
普段ほとんど休むことがないだけに、あまり気にしていなかったが無断欠席なんてバスケ部にとって以ての外。部員であろうがマネージャーであろうが皆に迷惑をかけることは同じである。決して大げさではなく、踏み入れてはいけないことの一つなのだ。
……なのに、
(馬鹿みたい……行きたくない。最悪だ)
今まで自分が居たあの場所、役割。それが汚されるような気がした。私ってば身勝手で最悪なマネージャー。向いてないのかも、今更だけど。
本当に、これからどうしたらいいのか分かんないよ……。
まさに絶望、先の見えないトンネル状態。ここまで思い悩んだのはいつ以来か分からない、しかも自分が悪いわけでもない。
「莉恵?」
ふと名前を呼ばれた。吸い込まれるようにそちらを見る。
「佐久間く……」
「蓮」
「れ、蓮。どうしたの?こんな時間に」
「そういう莉恵こそ今にも泣きそうな顔してるけど」
「え……」
思わず黙りこんでしまった私に、もう一声。
「嫉妬でもした?優華に」
パコン、と蓮が携帯を開けて私に画面を見せてくる。そこにあったものは、
「……嘘」
「ほーんとだもんね。こんなに仲良かったら、そりゃあ嫉妬もするだろーね?」
頭がついていかない
345: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆03/28(日) 11:52:17
普段と全然違う冷ややかな目に表情。
誰よこの人……こんな人とよろしくやった覚えない。まさかこんな人格だったとは。
「相川君のキスはいつもこんなに濃厚なんですかー?」
「うっうるさ……」
「しかも莉恵だって満更でもなさそーだし?付き合ってねーんだろ?」
さっきとは違う意味で心臓が騒いでいる。
何時の間に?何の為に?それが一番怖い。全然気付かなかった。
「あんまり嫌じゃないんだろー、こーゆーの」
「っ……あんたには関係ないでしょ」
思わず突いて出た言葉に蓮が顔を顰めたのが分かった。そして次に言われたセリフには耳を疑った。
「こーゆーの、世間に広めたらどうなると思う?」
「……は?」
「たかだか高校生同士のちょっとやらしーキスの写メ、普通ならね。けどこの全国に知れ渡ってる学校のクラブ、そういうのって嫌でも目立つんだよなー。
知ってるか?電車でのちょっとした言動とかでも、学校名が入った鞄やらジャージやらですぐ苦情ってくるもんだって。
インターネットなんかでばらまいたら、一瞬だろーな」
「なっ……」
蓮に言われた言葉はよく分かっているつもりだ。電車に乗っているだけでも、クラブジャージ何かを着てたらそれだけで看板を背負っているもの。ちょっと何かあればすぐに苦情の電話が来るから、部員はかなり気を遣っている。全国レベルっていうのはそういうことだ。
その部員とマネージャーの、あんなものが広まったらそりゃあただごとじゃすまないだろう。何せ顔がすっかり綺麗に写ってしまっているし、あの体勢。あまり良いとは言えない目を向けられることは確実だろう。
(……何で)
「なんでこんなことするの……?」
「いや、ちょっと頼まれて」
「何よそれ……」
「止めるんなら、こっちもしないであげていーけど」
(!?やめるって……まさか、)
「バスケ部やめるってんなら、こっちも考えてあげるけどねー」
最終更新:2010年08月11日 00:16