アットウィキロゴ

young leaf 続き15

346: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆03/28(日) 12:07:22
「そんなことできるわけっ……!!」

「じゃーこればらまいちゃうけど」

「っ……」

最悪だ。選択肢は二つに一つしかないらしい。そんなこと絶対に認めてやらない。

「嫌。あんたみたいな男の思い通りなんかになりたくもないし」

「辛辣だなー」

ニタリと口角を上げて笑う男。

「まぁ、ちょーっとだけ可哀そうだし?俺優しいから、少しくらい待ってあげても良いかなあって思ったけど……。
お前頑固そうだから無理だな、はい考え変えたー。

あんまり乱暴なことしたくなかったんだけどなー」


だんだんと蓮が距離を縮めてくる。反射的に私も後ろに歩を進めたが、ドンという鈍い音と共に一際大きな教卓にぶつかってしまった。


「っ!!ちょっ……
痛っ……!」


その隙を逃がさず、一瞬で身体を持ち上げられて教卓に乗せられてしまった。身体はすべて乗り切らず、余った足は開けるように蓮の両手に拘束されてしまった。部活着で良かった、と思う間もなく乱暴にズボンをずり下げられる。その上ほぼ同時に下着までずり下げられてしまった。


「!!嫌っ……!!見ないでっ……」


気持ち悪いのやら怒りやらの感情もあったけど、それに勝ったのは羞恥の感情。この上ない屈辱に顔に熱が籠り、涙が溢れそうになる。

「助けてっ誰か、誰か……


響……」



零した言葉を拾ってくれる相手は居らず、虚しかった。


347: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆03/28(日) 12:33:37
「っ……!!」

手首をまとめられて持ち上げられたかと思えば、ベルトで拘束されてしまったようだ。最後の抵抗の手段さえなくなり、私には抵抗しながら相手を睨みつけることしか出来なかった。

(取れて……っ取れてよ馬鹿……!!)


「はぁ、お前本当に頑固なのな。
お前は意地でもやめねーんだな?」

「当たり前でしょっ……」

「じゃあどっちがいい?
今からあんたを犯して、これからお前の身体好きにさせてもらう代わりに勝手な噂流したりすんのはやめてやるよ。
犯されるのが嫌だってんなら、写真ばらまいたりさせてもらうけど」

(こいつ……!!さっきより最悪な選択肢じゃない)

元々この男はバスケに関係ないし、目的はきっと私なはず。巻き込むなんて許せない、けど……。

「どーした?やっぱり自分の身体の方が大事なんだろ?
したら写真はばらまけるわ、悪口は回せるわで悪循環だろーな。きっとあいつらの評判はガタ落ちだろーな」

「あんたにそこまでっ……」

「あー、俺一応これでもモデルの卵みたいなもんだから、そういうネタが好きな奴は周りにいっぱいいるぜ?」

「っ……」


涙がこぼれそうになるのを必死で堪えた。
確か、蓮はずっとはこの学校にいないって言ってた気がする。実際仕事なんかもあるし、かなり短いとも聞いた。実質私の身体がいつまでもつのか……。


「噂ってのは恐ろしーからな、ほんとに。今まで積み上げてきたもんも一気になくなるんだろな?

「……!!」


完全にキタ、今の一言で。


「絶対させない!!あいつらがどんだけ必死で毎日努力してきたかっ知らないあんたなんかに……無駄になんか、さ……いっゃ、あああ……!!!!」


熱い、私のまだ受け入れたことのないそこには大きすぎるそれが、無理やり体内に侵入してきたのを感じた。


348: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆03/28(日) 12:50:53
「痛いっ……痛、いたい……よ……ぅ、ゃ……痛っ……」

情けない事に痛いという言葉しか発することが出来ない。
痛い痛い痛い、痛すぎるよ、涙が止まらない。
ギチギチと湿ってもいなかった私の中が、悲鳴を上げている。無理やり一気に押しいれられたため、初めての証しに赤いぬるっとした液体が内腿を流れるのが分かった。


「せっま…キツ…つーか初めてかよ、お前本当に馬鹿だなっ……く」

「うっ……ひっくっ……痛い、抜いてよっ……」


あまりの痛みに口答えすることさえ忘れて気付けばそう懇願していた。

「っ抜いたら、意味ねー、だろっ……!!」

「ッや!!嫌、動いちゃ……痛いって、ば……!!やだっやめ……!!お願いぃっ…!!」

ゆっくりと腰を動かし始める相手に合わせて身体の中心に走る激痛。繋がってるなんて考えたくもない……

一体どれだけの間そうしていたのだろうか、それを何度も繰り返されるうちに、頭が朦朧としてきた。それと同じころに、下腹部から血以外の液体がくちゅくちゅと音を鳴らし始めていた。

「っはぁ…犯されてんのに感じてんのか?っこの淫乱…」

「う……ぁ、あぁっ…は…!!」

痛みとは別の感覚が確かに頭を支配してきて、それに嫌悪感しか感じられない。それなのに身体はびくびくと反応している。嫌だ嫌だっ……こんな身体!!


「そろそろ良いなっ……!!おらっ」

「あぁぁぁ!!やっ速っ……んっんっぁう……!!嫌っはっあぁ……!!」

腰を前後に揺さぶられ、何が何だか分からない。奥へ奥へと進まれるたびに訪れる嫌悪感、そして嫌でも感じてしまう快感。自分の身体が本当に憎い。ぐちゅぐちゅと卑猥な音が頭の中で鳴り響いている。

「っや……!!も、無理、ゃ……ぁああ……!!」

身体が大きくしなってぎゅうっとそこが収縮した。それからしばらく経って、私の中から蓮自身が抜かれ、顔に生ぬるいものがかかるのを感じた。


349: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆03/28(日) 13:03:59
身体に力が入らない。ぼーっとしたままの頭でふと見上げると、どうやら蓮は私の携帯を勝手にいじって自分のアドレスと番号を登録しているらしい。


「連絡したらすぐ来いよ」

「……っ」

「あー、来なかったらあれだし。分かってるよな?」

「……いから」

「あ?」


これが、私に出来る最後の抵抗。掠れた声で必死に訴える。


「私はあんたみたいな奴が一番嫌い……!!
心まで犯されたわけじゃないんだからっ……!!」

ふっと嫌な笑いを残して蓮は、

「それも言えなくなるまでめちゃくちゃにしてやるよ」

そう捨て台詞を吐いて、教室を出て行ってしまった。




「あー……っ痛いなもう、チクショー」

痛いよ本当に、身体中。

立ちあがろうとしたけれど、腰にズキっと大きな痛みが走ってそれさえままならなかった。
四つん這いのような状態のまんま、とりあえず教室に転がっていたティッシュの箱をひっつかんで身体や顔についた液体を拭きとる。床や教卓にも至る液体が飛び散っており、吐き気を必死で押さえて全て拭きとった。

何とか下着とズボンも履く。ぬるりとした感触がして不快感極まりない。それはあまりにも現実的で、今さっきの情事をありありと物語っていた。

あぁ、本当に情けない。蓮の性格を見抜けなかった自分にも、簡単にカッとなってしまったさっきの自分にも、腹が立ってしょうがない。


「っ……ひっくっ……」


目の前がぼやける、何も見えない。せっかくさっき床拭いたのに、また濡らしちゃったよ。

本当は、一番痛いのは心臓の辺り。声を必死で押し殺して、私は辺りが真っ暗になるまでひたすら止まることを知らない涙を零していた。


353: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆03/29(月) 15:58:00
「……うっ」

ぼろぼろの状態で寮までどうにか帰り、私はまず風呂場に直行した。今は晩ご飯の時間で丁度誰もいないし良かった。とてもじゃないが今ご飯何て食べられない。
お風呂で何度も何度も身体中を必死で擦って洗う。赤くなるまで洗っても、二度と綺麗にはならない気がした。
そしてその合間に今日の出来事が頭を過り、吐き気を催す。何とか今まで手を当てて堪えてるけど……治まる気配がない。

いつまでもここにいるわけにはいかないので、浴場から出て髪を乾かし着替え、廊下に出た。


(……!やばい、吐きそう)


口を抑えて壁に寄り掛かってしゃがみ込んだ。何度来ても慣れないこの感覚が憎い。しかも一人になるとフラッシュバックのように恐怖が頭の中を走ってそれを後押しする。



「……!お前、橋場か?」

「……!!」


声を出すのは辛かったので何とか顔だけ上げると、偶然にもそこにいたのは斎藤監督。どうしたんだろう、いつもこの時間にはいないのに。

「!……こっち来い」

先生は口に手を当てた私の様子を見てすぐに察してくれたのか、私の肩を抱いてすぐ近くにあった洗面所まで連れて行ってくれた。そこまで来て安心したのもあるのか、耐えきれずにそこで戻してしまった。先生がすぐに水を流してくれる。


「げほっ……ご、ごめんなさ……」

「いーから、辛いししゃべらなくていいぞ。全部出しちまえ、すっきりするから」

「……っ」

苦しくて涙が零れる。ずっと先生は背中をさすってくれていて、暫く経って漸く落ち着くことが出来た。

「お前今日具合悪かったんだな、珍しく来なかったから気にはなってたが」

「!……す、すみませ……」

「いやいや、普段からちゃんと来てる橋場を誰も責めちゃいなかったよ」

本当は何が起こっていたかなんて、言えるわけもなく複雑な心境。だからそれ以上答えることも出来なかった。
……そういえば。


「あの……山内さんもマネージャーになるって……本当ですか?」

「あー、元々あの子はずっとこの学校にいるわけじゃないからな、ほんのちょっとの期間だけだ。今はシーズンもオフだしな……。文化祭後くらいにはもういなくなるみたいだな。もう一人の転入生もその口なんだろ?」

「……」

「今のうちに少しでも普通の高校生活も味わって、部活にも顔を出してみたいんだとさ。短い期間だが貴重だから、色々また教えてやってくれ」

「そーですね……」

間違っちゃいない、純粋な考えだとは思う。だけど……なんか引っかかる。

(あの男も、山内さんも同じ期間だけで……今日部室に来たのは山内さん、教室に居た私を追ってきたのはあの男……)

まさか、という嫌な予感がする。


355: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆03/29(月) 16:19:12
(……考えすぎかな)

それ以上考えるのも嫌なので無理やり頭を振る。

「その話をするためにたまたま今来てたんだよ。山内は期間が短いから寮生活にはならんがな。
それより大丈夫か?顔青いぞ……」

「はい……本当にありがとうございました。もう大丈夫です」

本当に大丈夫かは分からないけど、これ以上心配をかけるのも悪い。

「じゃあな、明日はまた様子見て来てくれ。無理はするな」

「はい……」

監督も帰ったことだし、私も部屋に帰るか……。だけどますます胃がからっぽ、変な感じだ。かといって何か入れたらまた出してしまいそうだし……。




「!……莉恵?」

「!!」

不意に声を掛けられて後ろを振り向くと、そこにいたのは響。何となく気まずくなって下を向いてしまった。
響もお風呂から上がったばかりらしく、部活着とタオルと、黒いベルトを持っているのが目に入った。

(……!!あいつのも、あんな色だった)

「!おい、どうした」

ベルトを見た瞬間また今日の出来事を思い出し、咄嗟に洗面台に顔を近づけた。何とも表現し難い気味の悪い感覚に顔を顰める。今度はさっきみたいにはならなかった。恐らくもう大丈夫だろう……多分。
前屈みの姿勢から体を起こしたら、後ろから額に手を当てられた。

「熱は……ねぇな。お前今日体調良くなかったのか、すっげぇ顔色悪い……

……、どうした?」

自分でも訳が分からないが、体がカタカタと震える。さっき監督のときは大丈夫だったのに。

この人も、「男」なんだって思って。今ではだいぶ仲良くはなったとは思うけど、同じ男。何がどうなるか分からない。


男、男、男

両手の自由を奪われ上から見下ろされる冷たい視線

振り払えない

体に走った激痛、血

「寒いのか?」

「……っ!!」

少々乱暴に背中を引き寄せられた。その瞬間、全身にぞわっと鳥肌が立つような感覚。反射的に体を押しのけてしまった。ついでにその時に腰に走った忘れかけていた激痛。立っていられなくてその場にへたり込んでしまった。

「!おいっ……!?」

パシン!

明らかに様子のおかしい私に、響が手を差し伸べたがその手を払いのけてしまった。同時にぼろぼろと止んだと思っていた涙がこぼれ出す。響が驚いているのが雰囲気で分かった。


356: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆03/29(月) 16:38:45
「ご、ごめ……い、今のは」

ただでさえ目が腫れていたと思うのに、酷い様だろう。それすらどうでもよくなるくらいだった。触れてほしくない、男の人の身体が怖い。涙止まらない……どうしようどうしよう、怖い、でも腰が痛くて立てない、震えも止まらない。誰か、誰か助けて

グイッ

「……!!」

震えを止めるほどの強い力で両肩を掴まれる。それに体が過剰に反応してぎゅっと目を瞑ってしまう。でも目を瞑ったらしつこく追い掛けてくるあの映像。流れる涙もそのままに私は目を開けた。
そこにいたのは、真っ直ぐで鋭い目をした響だった。思わずドクンと心臓が音を立てる。

「何があった」

「……!!」

一番聞いてほしくなかった言葉。

「答えろ、今日あれから何があった」

(……言えるわけない)

言ってしまったらどうなるか、目に見えている。あの男のことだから、きっと想像しているよりも私達を混乱させることなんて容易いだろう。
それは、確証がないことだけれど。万が一のことを考えたら、私が動けるわけないじゃない。仮にもマネージャー、みんなが練習しやすい環境にしてあげなきゃ。

「……何も」

「嘘つけ」

「嘘じゃないよ」

「それこそ嘘だろ」

「本当だから」

探るような瞳で見てくる。こんな状態での嘘が通用するなんて思えなかったけど、

「……そうかよ」

(え)

思ったよりもあっさりと響がそう零した。

「お前が意地でもそう言うなら、信じてやるよ。根性のあるマネージャーの言うことだからな」

「……っ」

「ほら、部屋まで一緒に行ってやるから、乗れ」

私に背中を向けてしゃがみ込む。どうやらおんぶしてくれるらしい。少し体が震えるが、有無を言わさず引っ張られ大人しくそれにしがみつけば、視界がいつもよりもかなり高くなった。
必死で震えを抑えるように、背中にぎゅっとしがみ付く。

(……信じてくれるのは嬉しいけど、もっと追及してほしかったよ。答えられないけど)

叫びたい。
何もかも全部全部、打ち明けてしまいたい。


(お願い、気付かないで……でも、気付いてよ馬鹿)


361: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆04/02(金) 21:46:21
「……で、ここの円周角は……」

(眠い……)

只今一時間目の数学。朝一番の数学なんて拷問に近い、全く頭が働かないや。いや、それ以前に。

(結局殆ど寝れなかった)

そう。昨日、響に部屋まで送ってもらった後、一直線にベッドに向かったんだけど……あの出来事がやっぱり頭に過って怖くて眠れなかった。夢にまで出てくるんじゃないかとか、色々考えすぎて。

今はとにかくあんまり男の人と関わりたくなかった。とはいっても、部活柄それは無理な話だ。しかも山内さんにも色々教えないといけないのに……。

一番気になるのは、少し後ろに座っているあの男の存在だった。朝教室に入った時から極力顔を見ないように、姿すら見ないようにしているけれど、授業中も視線を感じているような気がしてならないし落ち着かない。本当は、学校も休みたかった。


キーンコーンカーンコーン


(……やっと終わった)


私はとりあえず机に突っ伏する。すると、突然背中に重みを感じた。沙耶かなあと一瞬思ったけど、いつもの長い髪の感触や、ふんわりとした沙耶愛用の香水の香りがしない。


フッ

いきなり耳に生温かい空気を拭きかけられた。

「っ…ぎゃ…!!!?」

「おはよー莉恵!」

「……!!」

そこにいたのは、まさかのあの男だった。口元をにっと上げている男は、怯えた表情をした私を見逃さなかったと思う。そのままの状態で背中にぎゅっと抱きついてきた。昨日の夜の響の時みたいに、震えはしなかったものの体が強張る。


(て、ここ教室なのに……!)


362: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆04/02(金) 21:59:10
「ちょっ……離して…」

「え!?莉恵と佐久間くんって……」

「ち、違「そーそ、俺ら付き合ってんだよね」」


(は?)


「だから、まぁイチャイチャしててもほっといてな?」

「や、だから違……ん!!「キャー!!!!!!嘘!!!!!!」


(えぇぇぇえ!?こ、こっちが嘘だっつの!!)


でも、目を見開いた私のすぐ前には蓮の顔のドアップ。加わり柔らかくて温い感触がリアルに伝わる。

(嫌っ……!!気持ち悪いっ)

昨日と同じ教室ということもあり、情事をありありと思い出す。やだやだやだやだ。全身に鳥肌が立った。周りの女子の悲鳴がうるさい。あんた達がこっちの身になってみなさいよ!!と思わず悪態を心の中で打った。

「っ……はぁっ……な、何すんのよいきなり!!」

咄嗟に席を立って逃げようとしたその瞬間、腰を強く掴まれた。その途端、崩れる体。


(っう!!)


まだ昨日の痛み、残ってるのに……ちらりと顔を見ると、昨日と同じ笑い方。(こいつわざとやってるんだ)(思い出させないでよ)思わず力が抜けてぞくっとする。
すると、耳元で囁かれた。


「付き合ってんだよ。まぁ、セフレに近いっちゃー近いけどなー」

(こいつ……!!)

弱みを握られている私に、言い返す余地もなく、唇を噛みしめて黙っているしかなかった。悔しい、……悔しい。
ここで本当のことを言おうなら(言えるわけもないけど)、どうなるか分かんない。
こいつにまだバスケ部のためのくだらない事を考えているのか、はてはもうそんなことはどうでもよくなって、私を性欲処理機にしか思っていないのか。

(もし仮に、どうでもよくなったとしても……も、無理。体がめちゃくちゃになっちゃうよ、どうしたら良い……?)

クラス中の興味津津の不愉快な視線を感じながらも、私には必死で泣くことを堪えることしか出来ない。このクラスにどのようなメンバーが居るのか、この時の私は忘れていた。


369: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆04/28(水) 22:25:50
「あと10秒!9,8,7……3,2,1…終了です!」


最近は筋トレに使う時間が前より多くなった。マネージャーはその間に時間を計ってさっきみたいなことをするんだけど、今日その役目を果たしているのは私ではない。


「お疲れ様で~す!はい、みんなタオル」

「おーありがと優華ちゃああん!!」

(けっ。馬鹿)

ぜーぜー言いながらにやついてる男達。(私のときは一切ないくせに)


この間無断欠席したことは、監督にも響にも体調不良……ていうことで通ってしまったみたいだから特に何も変わらず私はマネージャー。表面上は。
蓮に何か言われるんじゃないかとか、色々考えたけどこれを続けるためにこんなことになっちゃったんだし……。
やめたくはなかった。あいつの言いなりみたいになるのはごめんだ。


(……それにしても)


私、かなりきてるわ。精神的にも身体的にも。
あれからも一日は散々だった。事あるごとに蓮はひっついてくるわ周りは騒ぐわで、勉強や授業なんて手についたもんじゃない。今日はそれだけで済んだけれど、明日からまたどうなるのか……。考えるだけで気が滅入るし、なんかもう泣きそう。

どうしたらこの状態が終わるの?ずっと考えていることだけど、もしかしたらあいつがいなくなるまでこの関係は終わらないような気がしてきた。所詮都合の良い道具だもん。


「……い、おい、莉恵!」

「っ!ご、ごめん」

響が返しに来たタオルを慌てて受け取る。響やあとごく少数の何人かはこんな風に私だけを前と同じように頼ってくれてる。別に優華のところに行って欲しくないわけじゃないけど、それは何て言うか複雑な気分だ。


370: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆04/28(水) 22:38:16
今日の練習が終わりパラパラと人が帰っていく。優華も監督に呼ばれて行った。

「あんまりぼーっとしてんな。顔出したからにはこっちも仕事が出来る前提で対応してるから。まだ体調悪いなら来んな」

「うん……ごめん、大丈夫」

一見キツイ言葉だけどなるほど的を得ている言葉だ。気をつけないと。そう思い大人しく受け止める。



「……あと」



静かに響が口を開いた。




「お前と佐久間、何?今日のあれ」

「っ!違う、あれは勝手に向こうが……付き合って何か」

「今日否定してなかっただろ」

「っ……」


それは、否定したら響やバスケ部がどうなるか分からなかったから。付き合ってるなんて一方的に言われても、所謂体の関係だけだ。それですら嫌なのに……。





「あんまり俺に気遣うなよ」


「え?」


言われた言葉の意味がよく分からず、聞き返した。


「だから……気にしてんじゃねーのかよ。今まで俺が言ったこととか、してきたこととか」


(今まで、か……)


確かにキスもしたし、ちょっと変な雰囲気になったこともある。(一方的にだけど)合宿のときは、好きになればだとか嫌いじゃないとか、そんなことも言われたっけ。だけど付き合ってもないし、

あれ、何この関係。


371: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆04/28(水) 22:51:35
確かに、その言動からしたら私たちがまるで恋人同士同然のみたいになってて……だから気にすんなって、


(……え?)

要するに、そういった出来事をさっぱり忘れてあいつと付き合えと?

「何か悪かったな。もうやめるし、気にせず仲良くやれよ」

「っ……」


今初めて気付いた。響、目合わせてくれてない。何か変だ。



「あー……俺先戻るわ。じゃあまたな」

「えっ……」

ぽんぽんと頭を軽く叩かれ、響は出て行ってしまい一人その場に残されてしまった。


何あいつ。頭おかしいでしょ、今更謝るとかわけ分かんない。
しかも、もうしないって、そんなの……



(……寂しい?嫌?)



そんな言葉が胸に湧きでてきて、自分でも驚いた。だって、だって。
今までそんな風に思ったことなかった。否、思ったけど自覚していなかっただけかもしれない。
認めたくないけど、それはまるで……


(響にあいつとの仲を応援されるなんて……絶対嫌)


目の奥から熱い涙が込み上げてきて、それは床にぽたぽたと落ちた。自分の想いが下へ下へと落ちていくみたいだ、なんて皮肉が思いつく。


こんなときに気付くなんて。遅すぎだ。



「っどうしようっ……どうしたらいいの……?」



もうあの人は行ってしまった

だけど

好き、カモシレナイ


375: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆05/09(日) 22:06:39
翌朝、早くに目が覚めた。眠りが浅かったみたいで、だけどやけに頭は冴えてしまっていたので朝練もないけど早めに学校に行くことにした。


「あー、やっぱりあんまり人いないなぁ。朝練の人ばっかり」

何気なくいつもの癖で筋トレルームをちらっと覗く。と、そこには一人こちらに背を向けてトレーニングをしている人影が。

(……て、あれ、響じゃん)

こんな朝早くから毎日来ていたのだろうか?声をかけようと思って、はたと足を止めた。昨日この場所であんなやりあいがあったばかりだし、なんていうか気まずい気がする。


(……昨日)


そう考えるだけでドクン、と胸がざわつく。今までそんな風に自覚というか意識していなかったせいかもしれないけれど、


何て言うか……やっぱりカッコイイんだ。



(、もう行こっ)



そう思い、さっさと教室へ向かおうとした時だった。突然ガシャン、と音がしたかと思えば続いてどさっという人が倒れたような音。
反射的に筋トレルームの方に体を返して中をちらっと覗いてみると、


「っ……!?」


響の下に、小さな体。器具とか響自身の身体でよく見えないけど、あの髪色や長さからそれが誰かは優位に分かる。
簡単に言えば、押し倒している男と倒された女、の様な。

(何あれ)

頭が真っ白になった。何も考えられない、考えたくもない。数秒後に両目から涙が零れおちたのを感じて初めて、ああ自分はショックを受けているのだと分かった。と同時に、それだけいつの間にか自分があの人に惹かれていたという事実に気付かされた。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2010年08月11日 11:18
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。