376: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆05/09(日) 22:18:26
「っはぁ……何よ、結局響だって満更でもなかったんじゃん……」
走って走ってあの場から逃げ出して、人気の少ない廊下に座り込む。携帯をポケットから取り出してみると、新着メール一件。
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from 佐久間 蓮
sub (無題)
学校来たら、資料室
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「驚いた、てっきり来ないかと思った。ていうか学校来るの早いんだな」
埃っぽいこの資料室に、こんな朝から来る物好きはいないだろう。おまけにものが多く全体的に中を見ることは難しい。
「別に、たまたま今日早かっただけ。何?こんな朝から呼びだして」
「分からない?分からせるつもりだけど」
いきなり腕を引かれて奥に置いてあった古いソファーのようなところに座らされた。奴の手が私の顎を掴む。
(っキス、される)
……響のキス、忘れたくない。ふとそう思って顔を背けようとしたけれど、男の力には叶わず一瞬で唇を奪われてしまった。
「っ……ん、は」
息つく間がないくらいに執拗に舌を差し込まれて、頭が朦朧とする。大体まだこんな朝なのに、なに盛ってんだかこの男は。
だけど次第にそんなことを考える思考がなくなってきた。
「んぅっ……!」
ようやく離された頃、口の端から受け入れきれなかった液体がつーっと垂れた。
もう、戻れない
377: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆05/09(日) 22:27:54
「いやに積極的だな。何、はまっちゃったわけ?」
動きづらくて、自らブレザーを脱いだ私に蓮が目を丸くした。
「……違う。もうなんかどうでもよくなった」
「愛しの王子様はもう良いわけ?」
あいつが王子様だなんて、笑ってしまう。
言うならばあいつはドSの王子様だ。
「あいつには……山内さんいるじゃん……」
泣きだしそうな声で私が言った途端、蓮の体重が重くのしかかった。
*
「ぁっ……も、無理だって、ば……!!」
「無理、じゃねーだろがっ……!」
「あっ……あ、や、んぅ……っ」
達した蓮がはぁはぁと息を切らしながら体に被さってきた。中途半端に制服は脱がされ、所々相手と触れる肌と汗の感触が気持ち悪い。
気付けばそろそろ教室に行かなければいけない時間になっていた。
朦朧とした頭で制服をかき集めた。が、教室に行く気分にはさらさらなれなかった。
「……保健室、行ってくる」
振り向きもせずそう言って私は教室と反対側に体を向けた。
何してるんだろう、自分。
382: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆05/24(月) 23:17:48
「失礼しまーす……」
「どうしました?」
「お腹が痛くて……」
「そう。今ならベッド全部空いてるから休みなさい」
適当な理由をつけてベッドを一つ貸してもらった。保健室を使うのなんて何年ぶりだろう。とにかく体がだるくて痛くて、一番奥のベッドに到着するなり私はそこにダイブした。気が付いたら意識は飛んでいた。
「……い、おい」
「……ん」
ぼんやりとした頭のまま目を開けると、聞きなれた声がした。
「なんでいんの……?響」
「あー、生徒会室行ったついでに寄った。保険医の先生が帰ったみたいだったから、鍵預かった」
ああ、生徒会長だもんね。そんなことまで任されるか、普通?
とにかく少しでも期待した自分が恥ずかしい。心配してくれてるんじゃないかって。
昨日、あんなことを言われたばっかりなのに。
「へー……って、今……嘘、昼休み?」
やばい、私寝すぎだ。
どうして……と思った時、朝の記憶がよみがえった。
と同時に、響と山内さんの朝の風景も。
「……付き合ってるの?山内さんと」
聞かずにはいられなくて口を開いてしまった。
「は?」
「いや、だって今日の朝、「あー、いたいた。いつまで寝てんだよ、そんなに激しかったか?」
「っ……!!!」
今一番来てほしくない人が来てしまった。
394: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆06/27(日) 12:31:20
(なんで、来んのよ……!!)
「どーも、生徒会長さん。あんまり女の子と二人っきりになるとまずいんじゃねーの?優華と付き合ってんじゃないのかよ」
「あ?……ちげーよ。あいつ朝から晩まで付きまとってくるだけだ」
(……)
淡々とそう答える響に、寂しさが募った。勝手に、私が側にいて当たり前みたいな錯覚に陥っていたけど。とんだ勘違いも良いとこだ。
「……それより、俺の方こそ邪魔だな。悪ぃ」
「ちょっ待……響っ、!」
この場を立ち去ろうとした響を見て、何とか誤解を解こうばっとベッドから飛び出た。しかし急に立ちあがりすぎて、ふらふらしてしまった。所謂たちくらみだ。
「莉「大丈夫か?」
一瞬響の声がしたような気がしたけど、咄嗟に腕を引いて支えたのは蓮だった。強く抱きしめられて、同時に耳元で聞こえた甘い囁き声。
「急に立ち上がるからだろ、危なねーな」
「……やっ」
この人の前でこんなことしないで。
構わず髪を撫でてくる男に嫌悪感が増え続ける。
「……今日のホームルームで文化祭のこと決めるみてーだから、それには顔出した方が良いんじゃねーの。じゃあな」
それだけ言って部屋を出て行こうとする響に、私は力を振り絞って顔だけ振り返った。声を出さずに口だけ動かす。
『 』
伝わったのかどうか。表情を変えないまま響は行ってしまった。
395: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆06/27(日) 12:56:26
「莉恵!あんた今日学校来てないんじゃなかったの?」
「朝から体調悪かったから、ずっと保健室で寝てたの」
そう言うとみんなに呆れられた。そりゃあ六時間目のホームルームまでずっと寝てたなんて、呆れるしかないか。
響の言ってた通り、ホームルームでは文化祭のことを決めるらしい。
(文化祭、か……)
以前監督が言っていた事を思い出す。
【文化祭が終わるころには、帰るだろうから】
……このまま何もなしで終わるのだろうか?
「……い、おい。莉恵」
「えっ?何、え、響?」
さっきの(昼休み)後に顔合わせるなんて気まずすぎるじゃないか。結局部活のときには顔合わせるけど……。
「ぼーっとしすぎなんだよ。ウェイターとウェイトレス係はこの辺で決めるんだと」
「ウェイター……?」
はあ、とため息をつかれた。
「喫茶店やるって決まっただろが。役割決めのときも聞いてなかったのか?」
「ご、ごめ……」
なんてこった。ぼーっとしすぎて人の話聞いてないなんて、私らしくもない。
そういや教室でこの人と話せるなんて珍しいなあと思ったのは、蓮と優華が違うグループに居たからだ。あぁ、なんて平和。
……それにしても、
「響が接待なんて絶対無理そう」
「……黙れよ」
あぁ、こんな会話が出来るだけでも十分幸せなのに。
お客さんの相手をしている様子を想像して、ついくすくす笑うと響が目を見張った。
「お前……久しぶりに笑ったな」
「っ!……そう?」
一応笑ってたはずなんだけど。笑えてなかったかな……。
「ばればれの作り笑いなんかしてんじゃねぇよ」
「え」
「あと……まだ隠してることあるだろ」
「!」
キーンコーンカーンコーン
大きなチャイムの音と同時に聞こえた言葉。チャイムで聞こえなかったふりをして、みんなが席を移動して騒ぎだしたのに混じるように、私も荷物の整理を始めた。一応平静を装っているつもりだけど、動悸は激しかった。
……やっぱりこの人に隠し事なんて高度な技、私は持ち合わせちゃいない。
399: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆06/27(日) 22:15:06
プリンさま
お待たせしました^^ありがとうございますっ!
ムがない!さま
いえいえお気持ちが嬉しいですよ!ありがとうございます。
愛さま
はじめまして。一気だなんて時間がかかったでしょう!ありがとうございます><*
*
「っんぅ!は、ぁ……」
部活に行こうとした直前、誰もいなくなった教室で勢いよく壁に押し付けられて唇を奪われた。
「一日何回盛ったら気が済むのよっ……んっ」
チクリと胸元に痛みが走った。痕をつけられるなんて最悪だ。
「今日のHRで仲良さそうに話してたろ。
お前何で自分が今こうなったか分かってんの?」
「……っ」
結局痕をつけるだけつけて蓮は教室を出て行った。
(本当に、これ以上関われない)
昼休みのあれは、響に通じたのだろうか。
表向きには相談出来ない。せめて何か感じ取ってくれたら……。
「お疲れ様です~!はい、飲み物」
「ありがとなー優華ちゃん」
何となく最近、優華がいる部活にいることが後ろめたい。私の方が最初からいるんだから堂々としていたらいいのに。自信が持てない。
その時頭をぺいっと叩かれた。
「いった……駿?」
「おいおい、最近どーしちゃったのよ?疲れてんじゃねーか」
「あー……まぁね」
「無理すんなよー。あと俺は前みたいなお前の方が良いわ、あれが本来のバスケ部らしいっていうか!」
(駿……)
屈託のない駿の笑顔に涙が零れそうだった。
400: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆06/27(日) 22:24:06
寮まで帰り、さっさとお風呂から上がり部屋まで戻る途中で私は悩んでいた。
(ケリ、つけなきゃ。せめて文化祭が終わるまでは)
でもどうした良いの?
あの男の言いなりになるみたいで悔しいけど、これから事あるごとにあんなことされるなんて耐えられない。
ここのみんなのためにも、自分のためにも響とは距離を置くのが一番だと思う。
厄介なのは、私の気持ちだ。
(気付きたくなかった……好きだなんて)
この感情に気付いてしまってからというものの、ダメージが2倍というか。例えば優華を見るだけで、気落ちしてしまう。メンタルが持たない……。
(私だって……好きなのに。離れたくない)
はた、と足を止めるとそこはいつもと違う廊下だったことに気付く。何してんだろう、と思い振り返るとそこにいたのは、まさに今私の中心にいた人。
「……よぉ。面貸せや」
まるでどこぞのチンピラみたいな言い方をして、腕を引かれる。明らかに、怒ってる。最近寮でも顔を合わせることがなかったから、機会をずっと待っていたのかもしれない。私自信様子がおかしかったと思うから。
このままこの腕に引かれて、全部全部吐きだしたい。話したい。……でも、
「ごめん、無理」
出来る限り自然な笑顔を作って言った。
401: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆06/27(日) 22:35:30
「……っ」
私が拒否の返答をしたにも関わらず、ぐいぐいと腕を引っ張られ辿り着いたのは響の部屋だった。
「ちょっと……!話聞いてるの!?」
この部屋にはもう来たくない。忘れられなくなるから。
「響だって、言ったじゃん……今までしたようなこと忘れろって。それに山内さんと付き合ってるんでしょ?こないだの朝見ちゃったもん、筋トレルームで会ってたところ。私だって……っ」
ここまで一息に言った後、言葉が続かなくなった。自分の続けようとした言葉はとても口に出せるようなものじゃなかったからだ。
(私だって、好きだから……)
「だ、だから!お互いもうやめようよ、こういうの……」
たまらずそこで私は俯いた。
「……それが全部か」
「……?」
「建前はそれで終わりか。で、本音は?」
(……!!)
「だから、今のが本音でっ……「信じられっかよ!」
いきなり大声をあげられて思わずびくっと肩を揺らしてしまった。
「何だよお前は……あいつと付き合ってるとか言う割には作り笑いばっかりだ。おまけにずっと様子もおかしい、少しはこっちの身にもなれ」
「別に、おかしくなんかっ」
「あと、こないだの朝のも全部あいつが付き纏ってるだけだ。勘違いすんな」
「本当に……?」
思わず今の状況を忘れて聞いてしまった。
「あぁ……」
良かった、だなんて思って少し安心してしまう。しばらく沈黙が続いた。その間に部屋の光景や匂いなんかを感じて、何とも言えない気持ちになってくる。
……戻りたい。言ってしまいたいっ…!だけどそれじゃあ私は……
402: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆06/27(日) 22:53:11
その後も沈黙が続いて、一体どうしたのかと響を見た。ずっと私の一点を見つめているようだ。少し様子が変……?
「ひび、き……?」
「……彼氏がいるんだから別に俺の事情に首突っ込む必要ねーだろ」
そう言った響の瞳はびっくりするくらい冷酷で、背筋が少し寒くなる。さっきとは訳が違うその様子にどうして、と問う間もなくいきなりがっと胸倉を掴まれた。
「っ!?な、何……」
「人の心配する必要もねーだろ。こんな分かりやすいところに、こんなもんつけて」
「!!ちょ、ゃ……!!」
ばっと胸元を手で覆うが後の祭り。突然ベッドに投げるように押し倒されて、服を脱がされていく。
(何!?どーしてこんなことにっ……)
抵抗する力さえ入らず下着姿になったところで、目からついに堪えられなくなった涙が出る。そして同時に響が動きを止めた。
「……んだよ、これ」
余程予想外だったのか、掠れた声。その目の先に映っていたのは、私の身体のあちこちに散らばる赤い華と、痣だろう。
あぁそういえばずーっと前に、私がこう言っていたことをこの人は知っていた気がする。
【初めては絶対好きな人って決めてるんだから!!】
最悪だ。一番見られてくないものを見られてしまった。
……だけど、だけど。もう私にはこれしか残っていない。この人から離れるなら……これだ。
「そういうことだからっ……もう、近付かないで」
声が震えないようにするので精一杯だった。必死で平静を装い、茫然としている響を押しのけて散らばった衣服を身に付けた。
「……莉恵」
「っ……!」
もう呼ばないで。
思いを振り切るように、ドアを開けて私は飛び出した。
走っている間に、部屋の中から怒鳴り声が追いかけてきた。
「今日の昼の最後のあれはなんだったんだよ!!!全部嘘か!?」
(あぁ、やっぱり伝わってたんだ)
ごめんね。だけどもう戻れないみたいだ。
最終更新:2010年08月11日 11:21