1: 名前:海☆08/05(木) 16:10:20
365日
あなたは誰を想いますか?
2: 名前:海☆08/05(木) 20:11:32
夏
その日は、
外でセミが、うなるほど暑い日だった。
「あー、暑ーい……」
教科書をパタパタさせながら携帯をいじっていた。
「そんなヌケた顔してたら、
好きな人に嫌われちゃうよ~?桃子~」
涼しげな笑みを浮かべ、
いつも恋愛相談に乗ってくれている藍が
あたしに近づいてきた。
「嫌われるも何も…
元々、好かれてもいないかもしんないし~!」
頬を赤く染め、
あたしは笑って見せた。
3: 名前:海☆08/06(金) 15:08:26
カーン
青空の中に白く丸いものが飛んだ。
外では、男子達が騒いでいる。
「おー!優太スゲぇ!!」
学校のグランドでは、
この暑い中、男子が野球をしていた。
「えっ!優太って言った!?」
あたしは勢いよく窓に、身をのり出した。
そして外を見た瞬間、
夏の暑さと、更に重ねて暑さがました。
4: 名前:海☆08/06(金) 15:39:21
「やりー!俺ホームランじゃね?」
そう叫ぶのは、
やっぱり…優太君だ。
そか、優太君のクラスは体育だったんだ。
「桃子さん?皆さんにバレますよ?いいんですか」
頬を染め外をポーと眺める、
あたしに藍が言った。
「そっそれは困る…!
優太くんにバレたら嫌がられちゃうよ!」
携帯を手に取り、
窓の近くで携帯を見ているフリをして
あたしは外の優太君を眺めていた。
5: 名前:海☆08/06(金) 15:59:57
優太君を知ったのは
小学校の頃。
優太君とは一度だけ同じクラスになったことがあって、
そして一度だけ、隣の席になった。
『あっ!優太君そのクマさん、可愛いねぇ』
『え…これ?』
優太君の筆箱についていた、変な顔の白いクマ。
隣だったのに全く話さなくて
無理に話題を作った時だった。
『ふっ…この変な顔のクマ?
可愛い?お前趣味悪っ……!』
『な…!趣味悪いって!!』
笑った顔は、笑わなかった彼とは対称的で驚いた。
6: 名前:海☆08/06(金) 16:14:03
その事が、きっかけで沢山話して
次第に気になっていった。
『はーお前と話してっとさぁ
とことん、あきねーわぁ』
『どんだけ爆笑すれば気が済むの!バカー』
その日も、ただ普通の話をしていた。
『あ…そいや、お前コレ可愛いって言ってたよな』
『あ、変な顔の白クマ』
優太君が、筆箱につけていた白クマを指差した。
7: 名前:海☆08/06(金) 16:24:29
『ん、お前にやるよ』
言葉を見失うほど嬉しい一言。
いつもなら素直に言えないけど、
『ありがとう…!』
この時は、本当に嬉しくて
自然と言葉がでた。
この時、悟った。
あぁ、気になるなんかじゃない。
これが恋なんだ。
そう初めて、感情を抱いた瞬間だった。
8: 名前:海☆08/06(金) 16:39:00
それから、ずっと片想い。
今あたしは高校1年生。
頭の良い優太君を追っかけて、
頭の悪いあたしは中2前半から中3にかけて猛勉強して、
この学校にはいった。
「おーい…桃子授業始るよ」
「あっもう始まるの!?もうちょっと見たかったぁ」
ギリギリまで外を見てから携帯をしまい、
席に着いた。
9: 名前:海☆08/06(金) 17:13:07
キーン コーン…
「えーこれで今日は終わりとします。はい礼!」
そう言った瞬間皆一斉に席を立った。
「桃子~!今日一緒に帰れないわっ本当ごめん!」
「えっもしかして…彼氏と帰るのかなぁ?
藍ってばいつの間に、彼氏~?」
授業が終わって、早々手を合わせて謝る藍を見て
少しからかってみた。
10: 名前:海☆08/06(金) 17:30:10
「そうそう、さっき彼氏からメールでぇ…て違うわ!
数学の時『風紀委員、放課後集まれ』って言ってたじゃんか」
藍のこういう反応が可愛いと思う。
「え?何いきなり笑ってんの?桃子、怖ーい!」
「藍ほどじゃ、ないもんねー」
こんなの日常茶飯事。
中学の頃から、いつもこんな感じだ。
HRが終わり、
藍は、あたしにもう一度手を合わせ謝ってから委員会に行った。
11: 名前:海☆08/06(金) 17:39:26
そんな藍に手を振った後、
あたしは自転車置き場に自転車を取りに行った。
「んしょっと」
重い荷物を自転車のカゴに乗せて学校をでた。
今日は本当に暑い日だなぁ。
そう思いながら、額にかいた汗を拭った。
12: 名前:海☆08/06(金) 18:00:01
サーと長い下り坂を勢いよく降りて行った。
「ん…涼しっ」
こんなに暑い日でも、
風にあたると気持ちよかった。
そんな時、
あたしの携帯が鳴ったのに気づいた。
坂を下りた所で携帯をスクバから取り出した。
「あ…」
そこで、
携帯につけている白いクマさんがないのに気がついた。
白いクマ
優太君からもらった
優太君との
ゆいつの共通点が。
15: 名前:海☆08/06(金) 19:01:42
「ない、ない、ない、ないっ!!」
止めた自転車の周りを、グルグル探した。
もちろんスクバの中も。
「どうして、ないの……?」
今にも泣き出しそうな、目を押さえて
携帯をカチャリ開けた。
そして受信ボックスを開く。
あ…
優太君からだ。
16: 名前:海☆08/06(金) 19:25:04
題:無題
―――――――――
メアドどーも
もらってから、メール一回も
出来なくてゴメンなー
じゃ、また学校で
佐野 優太.
―――――――――
17: 名前:海☆08/06(金) 19:32:36
高校入学して、すぐ聞いたんだけど…
どうしても恥ずかしくて
今まで、ずっとメール出来なかったんだよなぁ…
白いクマがなくなった携帯をギュッと握りしめ、
セミの鳴く声を静かに聞いた。
ミーン
ミーン
夏は、まだまだこれからだ。
18: 名前:海☆08/06(金) 19:50:04
家に帰ったのは学校をでてから、
時間がかなり経ってからだった。
「ただいま…」
お母さんの「おかえり」の言葉を聞く前に、
自分の部屋に直行した。
ベットに制服のまんま、寝っ転がった。
受信ボックスを開き、
何度も何度も優太君からのメールを見て
何をうとうか迷って、やっとの思いで返信した。
19: 名前:海☆08/06(金) 19:55:55
題:無題
―――――――――――
初メールありがと!
こちらこそメール出来なくてごめんね
うん、優太君また学校でね
日風 桃子.
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20: 名前:海☆08/06(金) 20:00:14
メールを返したのは、
もう夜が更けた頃だった。
その日はパジャマに着替えて、すぐに眠った。
傍に携帯を置いたまま、
ずっと鳴りやまないセミの声と、
自分の胸の鼓動を聞きながら。
23: 名前:海☆08/07(土) 10:43:33
次の日、あたしは朝早く家をでた。
嬉しさで浮かれつつも、
あの事は忘れていなかった。
「…ないっ、どこにあんの……?」
昨日の教室で外を見てた時は、あったんだけど…
自転車置き場?
でも、やっぱり教室?
そんな事考えながら、
あたしは学校の自転車置き場に来ていた。
そこでも草むらの陰から自転車置き場の裏まで、
隅々、探した。
最終更新:2010年11月18日 16:54