41: 名前:海☆08/08(日) 15:23:59
学校が終わり、
今日も一人で自転車。
藍は積極的で、クラスのあらゆる仕事を任されていた。
自転車の鍵を鞄から取り出しだそうとした時、
あたしの携帯がタイミングよくなった。
この着信音は……
優太君からだ。
携帯をカチャリと開けた。
【今自転車置き場だろ。ちょい、そこで待ってて】
さっきまで、授業でゆるんでいた頬を
一気にひきしめた。
42: 名前:海☆08/08(日) 15:50:11
「よお」
Sっ気たっぷりな笑みで、こっちに手を振る優太君。
それを返すように笑顔で手を振り返した。
そして、あたしの顔を覗き込むようにして
「帰ろっか」
そう言い、あたしが持っていた自転車に優太君は乗り
笑って言った。
「借りる。ほらっ乗れよ」
優太君は、あたしの手を引っ張り自転車に乗せた。
大きな優太君の背中に心臓をバクバクさせながらも、
その大きな背中に、あたしは手をまわした。
43: 名前:海☆08/08(日) 16:01:22
サーと下るいつもの坂道。
一人なら寂しく涼しく感じる、この道も
優太君と二人だと、温かく感じた。
優太君を抱きしめていた、あたしの腕を
よりいっそう強く優太君を抱きしめた。
こうすることを、どれだけ夢みたか。
全身に感じる優太君の温もりが、
現実なんだなって感じていた。
そうして、家までの道をたどった。
44: 名前:海☆08/08(日) 16:10:07
「あっあたしの家ここだから、もういいよ」
幸せを堪能しすぎ、家を通り越そうとした時
あたしは止めた。
「あ、そか」
優太君もこいでいたペダルを止めて、
自転車を、あたしの家の前で止めた。
「優太君ありがと!また明日ね」
最後まで、優太君に可愛く写りたいから
思いっきりの笑顔で手を振った。
そしてから、あたしが後ろへ振り返った時、
「待って」
優太君の手が、
あたしの腕を強く引っ張った。
45: 名前:海☆08/08(日) 16:51:23
驚いた、あたしは優太君の方を振り返ると
いきなり優太君の大きな手が、
あたしの目に覆いかぶさった。
そして、声をだそうとした瞬間
優太君は、あたしにキスを落とした。
唇が触れたか触れてないかの境目てくらい、
小さく柔らかい。
目を隠されていて、
本当にキスかどうかなんてわからないけど
確かに、あたしの口元に優太君の吐息がかかっていた。
46: 名前:海☆08/08(日) 17:01:04
「……っ」
ガチャンッ
あたしが支えていた自転車を手から離してしまい
自転車は倒れてしまった。
自転車が倒れたと同時に、優太君はあたしから離れた。
「じゃな、また明日」
暗くて周りは、あまりよく見えないけど
蛍光灯に照らされた優太君の顔は、真っ赤だった。
そのまま優太君は走って帰ってしまった。
あたしは驚きとファートキスでの喜びで
腰が抜けてしまった。
47: 名前:海☆08/08(日) 17:51:43
あたしは、ご飯を食べた後
そのまま真っ直ぐ部屋に行った。
そして優太君にメールをしようと携帯を開いた。
――新着メール1件あります
受信ボックスを開くと、
知らない見たことのないアドレス。
【久しぶり】
そう一言書かれていた。
久しぶり?
間違えたのかな、と受け止め
そのメールを返さず
あたしは寝てしまった。
48: 名前:海☆08/08(日) 18:09:04
次の日、
いつも通りの道を
いつも通りの時間で自転車をこいでいた。
けど、
何か今日は、空が曇っている。
同じようで何か違う、今日の木曜日。
「藍~おはよ」
「あっ桃子きたっ!」
いつものように挨拶をかわした、あたしに
焦った表情で藍が近づいてきた。
「え、どしたの?」
焦っている藍に冷静に聞き返した。
49: 名前:海☆08/08(日) 18:18:19
「桃子の彼氏だって言ってる、イケメンがいんだけどっ!」
「嫌だなぁ、藍ったら…あたし話したじゃん。優…」
ふっと笑いながら優太君との事を、
もう一度話そうとすると
「違う!今日引っ越してきた転校生が!!」
え、転校生?
50: 名前:海☆08/08(日) 18:24:50
「桃……久しぶりだな」
後ろから、いきなり抱きしめられた。
あたしは知らない声で名前を呼ばれ、
知らない腕で抱きしめられ、
勢いよく、後ろを向いた。
「昨日メールしたじゃん……
お前の事だから、寝てたりしてた?」
知らない声。
知らない腕。
だけど、
知っている、面影のある瞳と顔があった。
「大地…………」
54: 名前:海☆08/09(月) 11:06:00
「俺がいなくて寂しかったろ」
そう言い、あたしの頬に手を合わせた。
その瞬間に
『俺は、お前なんかいらない』
あの時の記憶が、
よみがえる。
「やめてっ!!」
あたしは、思い切り胸を押した。
「あんたの事なんて……知らない!」
そう言い、
あたしは勢いよく廊下を走り自分の教室へ駆け込んだ。
55: 名前:海☆08/09(月) 11:15:41
授業中、
ずっと考えていた。
本当は、あたしは大地の事知らなくなんかない。
あたしは過去に、
大地と同じ中学だった。
56: 名前:海☆08/09(月) 11:21:52
中学の時も
ずっと、あたしは優太君だった。
けど、
優太君は一度だけ告白されて彼女を作ったことがあった。
何のまいぶれもなく。突然。
優太君が好きだから、精一杯背伸びして
背中を押してあげようて思ってたから。
何度も、この恋は辞めようと思った。
57: 名前:海☆08/09(月) 11:25:42
あきらめようと思うほど、
優太君を目で追ってしまう。
そんな、自分が嫌で
放課後の教室で泣いた時があった。
そんな時に、
『桃、好きだよ』
大地は、あたしを好きと言ってくれた。
58: 名前:海☆08/09(月) 11:30:13
どうしても、じわじわくる
この痛みを忘れたくて逃げたくて
あたしは大地を利用した。
『ふぇ…大地……』
ぎゅっと大地を抱きしめた。
『俺は、ずっとお前だ』 ……
あたしは、どうしようもなく
どこか……すがる場所が欲しかった。
59: 名前:海☆08/09(月) 11:38:20
だけど月日が経つごとに、
『俺は、ずっとお前』
あの言葉が優太君しか見えてない、あたしには苦痛だった。
優太君に大切な人が出来てからより、もっと。
だから、あたしは大地と好きでもないのに付き合うのを
辞めようと思った。
【いつも通り屋上で】
そうメールをうち送信した。
その日も、今日みたいな曇りの日だった。
60: 名前:海☆08/09(月) 11:45:53
あたしは、いつもより早く屋上に行った。
屋上のドアに手をかけようとした時、
『ねぇ~しよ?』
いつもなら大地とあたししかいない屋上から、
女の人の声がした。
『しゃーねぇなあ』
それに続き、大地の声がもれた。
ドクンと高鳴る鼓動。
あたしは音をたてず、ゆっくりドアを開けた。
そして、
あたしの目に映った。
あの光景。
最終更新:2010年11月18日 16:58