61: 名前:海☆08/09(月) 11:50:29
大地と、優太君の彼女が抱き合い
キスを交わしていた。
身体が固まって動かなかった。
言葉にならない
二度目の失恋。
一度目より痛かったのは、
『自業自得』
その文字があったから、なのかもしれない。
62: 名前:海☆08/09(月) 12:00:11
ポツポツと雨が降ってきた。
『あ、雨じゃん』
『え~最悪ぅ』
ドアの方へ走ってくる。
あたしは急いで階段を駆け降りた。
『………え、桃?』
遅かった。
『……いつから?』
『答えたって無駄でしょ。
あたしが今来たって言えば言い逃れ出来たとでも思ったの?』
振りかえれない。
元々利用しようとした、あたしが悪いから。
頬に浸る涙を歯をくいしばりこらえた。
66: 名前:海☆08/09(月) 18:31:43
『……そか、悪かった』
『謝ってすむと思ったの?バカ、嘘つき』
本来自分に向けられる言葉が大地に突き刺さる。
こんな自分が、嫌だ。
『……もういい。俺はお前なんかいらない』
そう言い残し、その場からいなくなってしまった大地。
いらないって何?
もういいって何なの?
意味の分からない言葉は、
一つ一つが刺のようだった。
67: 名前:海☆08/09(月) 18:37:13
その事がきっかけで、大地とは話すらしなくなった。
数か月経って、大地は他の県に引っ越してしまった。
そうして、あたしと大地の小さな恋は終わっていった。
終わった……
なのに。
こんな形で再会するなんて、
夢にも思わなかった。
ううん、夢にも思いたくなかった。
68: 名前:海☆08/09(月) 19:16:47
そんな時
授業中、優太君からメールが届いた。
【ごめん!今から会えないか?俺、今屋上だから】
大地の事なんかで頭を使うのなんて…
時間の無駄だよ。
そうだよ、あたしには優太君がいる。
「先生……すみません頭痛いので、保健室行ってきます」
そう言い、いかにも具合の悪そうな顔色をしてみせた。
教室をでて、自分の教室が見えなくなったころ
急いで屋上に向かった。
69: 名前:海☆08/09(月) 19:41:02
カチャ…
屋上のドアを開けるときは、いつも
あの時のことを思い出してしまう。
どうしても克服できない、この傷。
「優太君……」
「お、来たか」
いつもの優しい笑顔が、
なぜか痛くて、しょうがない。
「どしたの?」
「お前、俺に言ってないことあるよな?」
優太君の笑顔が、何か寂しく冷たくなった。
言ってないこと?
あたし何かしたの?
70: 名前:海☆08/09(月) 19:47:41
「え……?あたし何かした?」
「朝の事。あの男誰だよ」
大地の事……
なんて説明すれば分かってもらえるかな……
「えとっ……」
「そんなに言えない関係なの?」
優太君の表情が、ますます曇って
全身で拒まれているような。
そんな空気が漂った。
75: 名前:海☆08/10(火) 16:03:51
「えっ待って!あたし大地と、そんな」
そう言いかけた時、
あたしの言葉を覆うように優太君は言った
「俺の事は君付けなのに、
あいつの事は呼び捨てなんだな」
優太君の言葉が、
優しく言うようで冷たい言葉。
優太君は、そう言い残し屋上を後にした。
どうして……
いつも、こう上手に伝えられないのだろう。
76: 名前:海☆08/10(火) 16:19:21
帰り道
あたしは今日も一人ぼっち。
今日も、やっぱり藍はクラスの仕事でいのこり。
優太君は……あれっきり。
メールが来ないか期待した。
けど、携帯が鳴る様子はなかった。
携帯につけている優太君からもらった、白クマを眺めた。
どうしても上手くいかない現実に目をつぶった。
「ふぅー……」
一つため息をつき
あたしは、おしていた自転車に乗ろうとした時
「もーも!」
同時にバランスを崩し、
ガシャンと音をたて自転車が倒れた。
77: 名前:海☆08/10(火) 16:51:05
知っている声が、あたしを呼んだ。
下を見ると、あたしの自転車のタイヤはクルクル回っていた。
「ったく…桃は、危なっかしいなぁ」
あたしは大きな大きな身体に包まれていた。
目を開けて期待したのは優太君の姿。
目を開けていたのは……大地の姿だった。
「やっ……離してっ」
焦りで顔を赤くする、あたしを見て
大地はクスクス笑った。
「桃ってさ~好きな男の前だと、
顔あけぇし、目ぇ潤むし……可愛いよな」
大地は、そう言ったけど
大地は、あたしの何を知っているというのだろう。
78: 名前:海☆08/10(火) 16:55:07
優太君と上手くいかない時は、いつも
大地があたしの前に現れる。
大地は一体、あたしの何を見てきたの?
今さら知ったかぶりで、
いかにも、あたしを知っているような口調で、
何がしたいと言うの?
79: 名前:海☆08/10(火) 17:09:01
「やめてっ!大地の事なんか好きじゃない!!
自惚れも、いい加減にして……」
もう、あたしと関わらないで。
もう、あたし達の恋は終わったのに。
今さら、過去の傷舐め合いたくなんかない。
「自惚れなんかじゃねぇよ。
お前は俺が……好きなんだから」
あたしを抱きしめていた大地の腕の力が強くなって、
大地の硬い胸があたしを、さっきより深く、
包んでいった。
80: 名前:海☆08/10(火) 17:24:39
「やだ、やだっ…やめて……
あたしは優太君が、ずっと…好きだもん……」
優太君に嫌われてしまうかもしれない怖さと
大地に引き込まれていく現実の怖さとが
交差しあって、
気づかぬ間に涙がボロボロでてきていた。
止めようと思えば思うほど、
涙は抵抗して、更にこぼれおちていた。
「俺以外に……好きな奴がいんの?」
あたしから、そっと身体を離し聞いた。
傷ついたように、怖い表情で。
「大地が、あたしを
いらないって言ったんでしょ…!何なの今さら!」
大地は自分の言った言葉の重みに気付いてないの?
大地は忘れてしまった?
あたしは大地の手を振り払って
自分の自転車を立て直して急いで、その場から立ち去った。
最終更新:2010年11月18日 17:00