365日. 続き9

157: 名前:海☆08/24(火) 17:57:15





「俺は、お前の好きな奴だよ」






俺は、そう言い放った。

桃子は、ますます不思議そうにしていた。







「俺は、お前と付き合ってた」



「ちょ、ちょっと待って!」







話の途中で桃子が話を止めた。

俺は急で驚き黙っていた。







「あ、あたし記憶がないのは知ってる……

けど、あたしは、あなたの彼女じゃないですっ」





「はっ……? なんで、そんな事言いきれんだよ?」







俺が、その問いを言うと桃子は頬をピンク色に染めて強く言った。







「あたしには、西希君て言う彼氏がいるんですっ」











158: 名前:海☆08/24(火) 18:11:02






「え……西希……」





「彼が、あたしが記憶が無くなる前から付き合ってた人なの」







なんの冗談だ、記憶が無くなる前桃子と付き合ってたのは俺だろ?

どうして、どうして大地なんだよ。

桃子は照れくさそうに口元を緩めていた。







「そんな、違う桃子」






ガラ

そう言いかけた時、病室のドアが開いた。

いきなりで驚き、俺は勢いよく後ろを向いた。







「だ、大地……」




「え、佐野?」







ドアを開けたのは、俺と桃子の過去を変えた奴。

西希大地だった。

ここから、未来と過去が大きく動くことになる。











159: 名前:海☆08/25(水) 17:20:53






「……どーなってんだよ」





俺は病室からでて西希と病院の屋上に来ていた。

そして屋上についた瞬間、大地に言った言葉。







「どーなってるも……俺は桃と付き合ってる」



「なんでだよ!!!!」







俺は大地の言葉にイラついて屋上にあったゴミ箱を思いっきり蹴った。

大地は驚いたかのように、黙り込んでいた。

けど少し沈黙が続いた後、真剣な目で俺に言った。







「お前が桃を一人にしてから、ずっと桃は寂しかったんだ

それなのに……今更ノコノコ帰ってきやがってよ、そんな奴が彼氏面してんじゃねぇよっ!!!!」







大地は、そう言いながら俺の胸倉を掴んできた。

大地は何も言わなかったが目で、こう言ってるようだった。

「桃は俺もの」そう言ってるようで。







「……もう桃は俺のだ、手ぇだすんじゃねーぞ」







そう言って大地は屋上を後にした。

俺は何も言い返せず、ただ屋上に立ち尽くしていた。

状況を掴みきれない。




ただ分かるのは、俺は桃子を失った。









160: 名前:海☆08/25(水) 17:48:12






俺は桃子の病室に戻った。

桃子の病室に置いていこうと思ってた花を左手で持ち、桃子の病室に手をかけた。






「も……恥ずかしいよ」






病室から、桃子の声が聞こえた、嬉しそうな高い声で、小さく甘い声。

俺は病室のドアを、少し開けて病室の中を見た。

俺は、病室の光景に言葉を失う。







「桃……お前は俺だけのものだよ」







大地が、そんな言葉を桃子にかけて、抱きしめていた。

俺は、花を落としてしまった。

けど、拾わず走って病院からでた。





桃子の、あんな嬉しそうな顔。

桃子を笑顔にしてんのは俺じゃない。










165: 名前:海☆08/27(金) 19:36:53



――2月17日  




何気ない水曜日。

俺は病院に行くのが日課になった。

コチョウランという2月17日の花を持ち桃子の病室を開けた。






「あ、大地君っ?」







ドアを開けたとたん、桃子が笑顔を俺に向けた。

「俺は大地じゃない」そう言いたいのに小さな言葉は俺に突き刺さる。

桃子の言葉だから、衝撃を受け止められない。




俺は早歩きをして桃子の方に向かった。

そして、強く桃子の小さな肩を抱き寄せた。






「えっ! も、大地君っ……」






桃子が照れながらも俺の背中に小さな手を回したのが分かった。

嬉しい、桃子が想うのは俺じゃないけど、それでも幸せだ。

あの頃に戻ったみたいだ。

どうか戻ってほしい、俺は感情が止まらなくなって桃子をもっと強く抱きしめた。







166: 名前:海☆08/27(金) 20:04:30





「強く抱きしめすぎだよっ」





桃子が照れている可愛い声で俺の背中を優しく叩いた。

その声に俺は、はっとした。






「え、ごめんっ」




「へ……?」







俺はまた、はっとした。

声を出してしまった、俺だと言うことがバレてしまった。

桃子は口をポカンと開けながら、驚いていた。







「え……その声っ佐野く」




「言わないで」







俺は桃子が言おうとした言葉を、桃子の口に手をかぶせ止めた。

俺の手のひらには桃子の吐息がかかっていた。

それだけのこと、けど心臓はバクバクだった。










167: 名前:海☆08/28(土) 11:19:17





「悪い、騙したかったわけじゃないんだ」




俺は桃子の口から、そっと手を離した。
そして離した手を桃子の頭にのっけてポンポンと軽く叩いた。





「佐野君て、どうして毎日お見舞いに来てくれるの? ね、どうして? どうして、そんなに、あたしに構うの?」





桃子は俺の服を少し引っ張った。
そして桃子は、とても困ったように下を向いた。





「俺は、桃子が好きだ
だから俺は桃子に会いに来る」





桃子の頬がピンク色に変わった。
そして下を向いていた顔が、さっきよりも深く下を向いた。


俺は、そんな桃子を抱きしめた。困ってる桃子をお構いなしに。





「佐野くっ……」



「これ……桃子にお見舞いの花」





手に持っていた花を桃子に手渡した。
そして桃子から身体を離して病室を後にした。



「あなたを愛します」
そんな願いがこもった2月17日の花。










170: 名前:海☆08/29(日) 12:15:00





――3月13日





病室の中では桃子の母さんと父さんが話をしていた。
俺は病室の前で足を止めた。





「もう……桃子の身体は限界だそうだ」



「限界って……? この子まだ、16歳なのよ?」





どうして、と泣きじゃくる桃子の母さんの声。
桃子の身体は限界? その言葉は「死」を意味する。


どうか、どうか桃子を連れて行かないで。
それなら俺を連れて行けよ。
だから、どうか桃子俺を置いていかないでくれ。



そう思っていると桃子の母さんと父さんが病室から出てきた。
病室を出ていく桃子の母さんと父さんに頭を下げてから、
俺は病室に入った。





「桃子……」



「今の……聞いてた?」





背中を向けていた桃子が、体を俺の方に向けた。
切ない笑顔が俺に向けられた。





「ん……ごめん」



「謝らないでよ、本当のことなんだし」





桃子はヘラっと笑ってみせた、それを見て俺は思った。
今、一番辛いのは桃子の母さんでも父さんでも俺でもない。




桃子自身だ。









173: 名前:海☆08/30(月) 16:59:24



「ね、佐野君」



「……何?」





可愛い高い桃子の声に、俺は低い無愛想な声で返答する。
そんな俺に桃子は笑顔で言った。





「外に行きたい、連れてって!」






無邪気で幼い笑顔が俺に向いた。
昔も今も変わらない桃子の笑った顔。


俺は照れ笑いしつつも、真剣に言った。






「前に先生に、外出許可はだせないって言われてたろ」



「先生が、今日だけいいって言ってたもん」






お願い、と手をあわせて言った。
そんな桃子に俺は負けて、桃子を車椅子に乗せて病室を出た。





―― 




「あ~風が気持ちいいっ」





桃子は、腕を思いっきり伸ばして言った。
周りには花が沢山あるのに桃子に見せてやれないのが少し悔しかった。





「なー、空曇ってんじゃん 病室戻ろうぜ」



「もうちょっといいじゃん!」





そう言い俺の言葉を無視して、また腕を伸ばして風を満喫していた。
俺が、もう一度桃子の身体を気遣い病室へ戻ろうと言いかけた時に、頬に冷たいものがあたった。











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最終更新:2010年11月18日 05:49
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