2: 名前:きゅん☆12/19(日) 00:21:48
「加藤先輩…」
可愛い天使が頬を染める。
「付き合ってください。」
可愛い天使が手を差し伸べる。
なんて可愛い天使なのだろう。
目の前の少女は僕を見つめている。
僕は君を幸せに出来るだろうか―――
5: 名前:きゅん☆12/19(日) 00:24:06
「穂水…。」
僕は右手を頭の後ろへ。
「僕なんかでいいの?」
自分でも赤くなっているのが分かるくらい頬が熱い。
天使―穂水は小刻みに震えている。
「せ、せ、先輩じゃないとだめなんです…。」
そういうと穂水は口を噤んでしまった。
少しの沈黙の後。
「ぼ、僕でよければ…ってか、付き合ってください。」
何を言ってんだ僕は。
緊張の糸が解れて穂水も僕も笑みが零れた。
「先輩。」
天使が笑っている。
「ん?」
天使が見つめてる。
「大好きです。」
天使が目を瞑る。
「僕もだよ。」
僕は天使の綿の様に柔らかい手を取り、
それ以上に繊細な天使の唇へ自分の唇を優しく触れさせた。
その日は手を繋いで水穂を家まで送って
ニヤニヤしながら自宅へ帰った。
ぼ、ぼ、僕に彼女が出来た!!!!
6: 名前:きゅん☆12/19(日) 00:25:07
家に帰り自分の部屋へ直行。
随時電源ONのパソコンの椅子へ。
そしてインターネットマークをクリックして、
お気に入りを開く。
「アニメ弱愛者専用チャット」
をクリックして少し待つ。
パステルピンクのトップページが開いて
鼻を鳴らしながらIDとパスを打つ。
そして観覧者数を確認してから、
「魔法少女パルリンチャット」
をクリックして
横にあるパルリンの大きな人形を膝に乗せる。
この人形は人間と同じくらいの大きさで、
胸に柔らかいボールのようなものを入れていたり、
性器の毛やクリちゃん、膣口なども細かいところまで
修飾が施されていて、
オナニーなどに使えたりする優れものなのだ!
その人形の胸を揉み解しながら、
「誰か居ませんか?」
と打つ。
するとすぐに返事が返ってきた。
「私でよければ☆」
僕は女性だということへの興奮を抑えながら
落ち着いて返事を返した。
「全然OKっす。年齢は?」
それからその女性とのチャット会話が始まった。
7: 名前:きゅん☆12/19(日) 00:25:47
「16です♪」
おお!っとか思いながら自分の年齢を打つ。
「僕は17!!!一つしただなw」
「はぃ。そーですねぇ。」
なかなか可愛い反応だな。
僕的には好きだな。
「魔パルの誰が好き?」
魔パルとは「魔法少女パルリン」の略である。
魔法少女パルリンとは深夜アニメの一つで
マイナーなアニメ好き(ヲタクとかいうやつかな?)
のなかで絶大な人気を集めている神アニメなのだ!
そのファンが集まるのがこのチャット。
みんな「うはうは」言いながら打ってるらしい(笑)
まぁ僕もその一人なのだが。
でも、女性の魔パルファンは珍しい。
パルリン友達―パル友はこのチャットの中で587人居るが、
女性はたった2人だけ。
もしこの子と友達になれたら3人になる。
友達になれたらいいな。
って考えているうちに
「ミミリンですかね?」
「パル王さん?」←パル王とは僕のHN!
「トイレですかぁ?」
「おーい」
「落ちた?」
というスレが10件ほど打たれていた。
「あ、ごめんごめん(汗)」
と打つと
「あはは、オナってた?」
と冗談混じりに返ってきた。
だから
「うん。ごめん。」
と打つと
「いやーん。いやらしーww」
と。
まだまだこんな会話が続きそうだ。
10: 名前:きゅん☆12/19(日) 00:27:55
「イった?」
「いや、まだw」
ここでは魔パル話よりエロ話が繰り広げられることが多い。
まあ、魔パルを見てる時点で相当なエロだからな。
「パル王さん、本名教えてくれませんか?」
チャットエッチを始めるためか、
本名を聞いてきた。
が、僕は外の世界(現実)では
『容姿端麗、成績優秀、それプラ穏やか』
という完璧な衣を纏っているので
パパパパッパパァン!
偽名~。
大抵の人はこのチャットの中では
本名といわれれば嘘を附き、
偽名を名乗るのだ。
「章太。」
草太の草冠を変えて、
「章」にして、
章太。
こんな感じで名乗っておいた。
「そっちは?」
鳳香というHNの女性に尋ねると驚く返信が。
「風香!」
穂水?穂水風香か!?
僕の脳裏にはそれしか掠らなかった。
「へぇ。可愛い名前だなぁ。」
敢えてこう返す。
「ありがとうございます((はぁと」
でも、あの風香ちゃんがこんな所にくる筈がない!
……でも。
この僕も外の自分とは違うこの顔。
有り得るかも知れない。
明日。
行ってみよう。
穂水の家に。
その日は『友達認証』を送りあって、
画面を閉じた。
11: 名前:きゅん☆12/19(日) 00:28:36
「ふわぁ。」
ベッドの下にはパルリンの人形が。
時計、時計、時計………。
―――8時59分
……今日は、土曜日で合ってるよな。
記憶が確かでない。
僕は……。
携帯を開くと新着が一件。
名前は「風香ちゃん」。
ああ。
僕は彼女が出来たんだっけ?
自覚が………。
もしかしてデェトだったんじゃなかったっけ。
とりあえずめーるを開く。
----------
おはようございます!
えっと、今日って
10時からで
合ってますよね?
すごく楽しみですね♪
じゃ、あとで。。。
----------
じゃ、じゅうじ?
や、やばい。
いそげっっっ!
とりあえず、
そこらへんにある服をチョイスして
財布の中を確認してから
家を出た。
12: 名前:きゅん☆12/19(日) 00:29:12
「ふぅ。」
待ち合わせ場所には穂水はまだ来ていなかった。
上がっている呼吸を整え、
少し紳士的に振舞おうかと悩む。
でも、彼女ならそうやって固めなくてもな。
とか考えていると、
ふわふわした見るままの天使が現れた。
「すいません。まちましたぁ?」
薄い桃色のワンピースを装った穂水が掛けてきた。
本当にふわふわという表現があっている。
もうまさに天使に見えてきた。
「だいじょーぶ。ほんとにいまきたとこ。」
生憎これが本当なのだ。
「じゃ、いこーか。」
13: 名前:きゅん☆12/19(日) 00:29:43
「せ、先輩…すっごいお洒落ですねぇ。」
赤面しながら言う穂水は緊張を丸出しだ。
「そうかなぁ?」
僕の格好は。
ストライプの半袖のワイシャツに
銀ピンを着けていて、
下は深い青のジーパンを履いており、
脹脛の所で折っている。
サンダルは茶色い皮のビーサン。
イメージ的にはラフな感じを求めたのだが、
どちらかというと清楚系になってしまった。
しかし、そう言う穂水も穂水である。
ワンピースを一着纏っているだけだが、
それが似合っていてすごく可愛い。
ポシェットはアイボリーに近い毛糸で
修飾が施されていて、
雰囲気にはピッタリだ。
靴は茶色の柔らかいパンプスを履いていて
これもまたグーだ。
髪もふわふわしていて
これといった欠点はない。
本当に天使みたいだなぁ
こんな子が
魔法少女パルリンを
プレイしているのか……!?
14: 名前:きゅん☆12/19(日) 00:30:22
「あ、ここ。」
少しばかり歩くと見慣れた建物が現れた。
「すっげー美味しいんだよ。」
イタリア料理のお店。
「た、高そうですよ…」
穂水は目を丸くするが、
「そんなことないよ。ファミレスに近い感じのお店。」
ニコッと笑って穂水の笑顔を招く。
「じゃ、はいろっか。」
さっと穂水の手を取り、
店の入り口へ。
「あ、そーちゃん!」
なーんて声も軽く交わして、
一番奥の席へ歩く。
穂水は僕の手をぎゅっと握り締め、
俯いている。
穂水の反応はなかなか可愛い。
すぐ真っ赤んなって、
すぐ俯く。
そんな穂水を見ていると
自然と笑みが零れて
和む。
席に着くと、穂水がおどおどしだした。
「だいじょーぶ。」
心から微笑める。
「は、はぃ。」
「何にする?」
僕は慣れた手つきでメニューを開く。
中央に定食や単品メニュー。
左側にはドリンクとデザートが記されていて、
反対側は季節のお勧めメニューがズラリ。
「ん~。」
穂水が迷っているようだったから
「僕はカレーにするよ。」
と口角を上げる。
すると穂水は
「じゃ、あたしもそれで…。」
と笑みを返す。
「じゃ、呼ぶね…」
チャイムが鳴り、定員がきて、
「季節のカレー二つ。」
といい、メニューを閉じた。
15: 名前:きゅん☆12/19(日) 00:32:08
「穂水…。」
定員が水を持ってきた後。
「風香ってよんでいい?」
敢えて親近感を掴もうとする。
「っう、えぇと……あのぉ…その……」
どぎまぎしながら最後に可愛い一言。
「すんごい。うれしーです…。」
ほんと、和む。
「じゃ、僕のことは草太ね。」
意地悪く微笑むと予想通りの反応。
「っえ!?せ、先輩?」
可愛いなぁ。
「うん。緊張が取れたらでいいよ。」
ほんと、抱きしめたくなる感じ。
「っはい!!」
満面の笑みで頷いてくれた。
「季節のカレーでーす。」
カレー皿を二つ持った自分の叔母が登場。
「ぅわぁぁ。」
風香は嬉しそうに笑う。
「なぁに?彼女?」
叔母は悪魔の笑みを浮かべて、
僕につんつんしてくる。
「はい。そーでーす!」
態と偉そ振ると、叔母は何度か頷いた。
「じゃ、葉子に連絡しておきまーす。」
「っえ!?ちょっと…それは!!」
葉子とは自分の母親である。
僕が一人暮らしを始めた頃から連絡を全く取っていない。
「花子さーん!!!!」
もう、花子さんはくるくる回りながら
厨房に入ってしまっていた。
「はぁ。」
顔を上げると風香が微笑んでいた。
「楽しそうだね。」
その言葉もまた、
僕を笑顔にしてくれる言葉。
「いやいや。うるさいだけだよ。」
二人で笑いあいながら
色々なことを話し始めた。
16: 名前:きゅん☆12/19(日) 00:32:44
「風香。」
一瞬びくっとして目が合う。
「可愛いな。」
自然とそんなことを言っていた。
「二人っきりだったらすでに襲ってるよ。」
風香はまた赤面する。
そして、僕は一番気になっていることを
尋ねた。
「どうして、僕なんかを好きに?」
答えはもう分かってる。
どうせ「顔がかっこいいから」とかだろ。
今まで付き合ってきた女は
いつもそうだった。
顔しか見てくれない。
趣味も打ち明けられない。
彼女と呼べるのかさえ分からなかった。
でも、風香は違っていてくれた。
「ちょっと長くなるんですけどいいですか?」
僕は黙って頷いた。
17: 名前:きゅん☆12/19(日) 00:33:11
~風香side~
桜満開の日。
藤堂高校の入学式が行われた。
「背、のびたぁ?」
「制服に合ってるよ!」
親友の莉子と真由は同じ高校を受験して、
三人とも受かった。
合格発表の日にはみんなで
笑いながら泣いて
食事に行った。
「風香~。クラスはなれたね。」
真由が抱きついてくる。
「会いに行くから大丈夫!」
クラスが離れたら壁が出来てしまうのも知ってるけど
そう言ってないと真由が可哀そう。
「二組の方は名前順に二列に並んで着いてきて下さい。」
案内してる先輩はすごく適当で説明とかよく分からなくて
みんなダルイ空気を醸し出していた。
「敦也。もっとちゃんとしてあげろよ。
みんな困ってんじゃん。」
保健室の前で一人の先輩が現れた。
あたしと同じ事考えてる……。
そんな些細なことが無性に嬉しくて一人でにやついていた。
「ここは保健室。四時間目までしか先生は居ないから
お昼休みからはここで性行為をしてもいいぞー。」
周りの男子は爆笑。
さっきまで案内していた男子も
「そんなんでいいのかよ。」
と吹き出した。
「ちゃんと説明してるだろ。」
ズッキューーーーーン!!!!
え、笑顔が……格好いい。
し、しかもしかっりしてるのにジョークが通じる…!
その一瞬であたしは先輩に恋に落ちた。
「でもさぁ。一目惚れっぽくない?」
次の日、昼休みでその気持ちを全部
真由と莉子に伝えた。
「あたしは、外見で判断したくないんだけど…」
一目惚れって言ったら顔で判断してるように見えるし。
「でも好きになっちゃったんでしょう?」
最後の一言は黒い長い髪を下ろしている莉子である。
「じゃ、別にいいよね。」
そして大人っぽい真由。
そして先輩への片思いが始まった。
18: 名前:きゅん☆12/19(日) 00:33:37
「体育祭の役員を決める。」
待ちに待ったこの日!!!!!
体育委員長の先輩が挨拶に回ってくるのだ!
「じゃ、とりあえず体育委員は決まりで、
…ほか。立候補は?」
少しの沈黙の間に莉子と目で合図をして、
「「はい!あたしたちやります!!」」
っと叫んだ……っと同時に先輩が戸を開けた。
そして私たちを見て一言。
「今年は良い子達ばかりで楽しい体育祭になりそうだ。」
微笑む先輩はやっぱり愛しくて
大好きだった。
「じゃ、4人決まったから、
体育役員の加藤君に注意事項などを言ってもらう。」
先生は先輩に「よろしく」っといって教室から出て行った。
「えっと、僕は前期体育委員長を勤めさせてもらう
加藤 草太といいます。」
へぇ。
加藤先輩かぁ。
「まず、プログラムを順に言います……」
そして、先輩はみんなの眼を見ながら一通り、
説明を終えた。
19: 名前:きゅん☆12/19(日) 00:34:38
「じゃ、役員の子達は放課後教室に残っててね。」
といい、先輩は教室を後にした。
「やっぱいいじゃん!ってか性格もよさそうじゃん!」
次の休み時間、いつもの三人でまた先輩のことを。
「しっかりしててそのうえ面白い…」
「そして容姿端麗、成績優秀、それプラ穏やかっていう。」
「何それ!?どこの情報よ?」
ぎゃーぎゃーいってるとチャイムがなる直前になっていた。
「じゃ、じゃーね!真由!!」
莉子に手を引っ張られながら教室へ飛び込む。
――ドンッ
飛び込んだ拍子に、
あたしは誰かにぶつかってしまった。
「ご、ごめん…」
しかし顔を上げると愛しい目上の人が。
「…なさい!!!」
急に頬が熱くなって、
足が縺れてしまった。
そう。
目の前に居るのは愛しくて大好きな加藤先輩。
「大丈夫?」
「っあ!」
倒れてしまいそうになった瞬間、
先輩が莉子が離したばかりの左手を掴んだ。
そして、あっという間に
しっかりとした先輩の胸に引き寄せられる。
「すいません…。」
慌てて退く。
すると先輩の骨っぽい手が
あたしの頭の上に伸びてきた。
「廊下は静かに歩きましょう。じゃね。」
そういい、先輩はあたしの肩を
2度叩いて、行ってしまった。
席に着くとチャイムが鳴った。
周りの女子に冷やかされて
大声で怒鳴ったので
社会の先生に怒られてしまった。
でも、すごく幸せな気分だった。
最終更新:2011年01月07日 13:46