銀田一 雪さんとシェンフォニー様と後、なんかの話 続き3

72: 名前:サスライ☆06/03(水) 21:50:39
 筋肉。嗚呼素晴らしきかな筋肉。
 ボク、井時晶は同人誌を読みながら何となく思った。
 人はこれを神の声とでも言うのだろうか、どうでもいいけど。
 あ、筋肉は筋肉でも引き締まったタイプで、決してレスラーみたいなムチムチがタイプって訳じゃ無いからね!ここ重要!

 と、読んでいる内に何時の間にか時間を喰ってしまったらしい。
 ここに時計は無いけどそういうのは感覚で分かるモノだ。

 …あ、時計と言えば忘れてた。時計屋さんに時計を発注したんだった。
 こないだの宴会で思った。
 ボクも皆と一緒の時間を過ごしている実感が欲しい。
 だから時計を一つ、置こうと思った。そう言えばこの部屋の始めてのインテリアになる。

 え。だったら地下室から出れば良いって?
 こういうのは形からなの!ボク的に

 とは言え、外にあまり出たくない。直射日光とか他人のギャアギャア声とか、
 何より同人誌途中だしなぁ。

 そんな事を考えてまた時間が進む。苛々して同人誌を読む。そしてまた時間が進む。
 あれ…、ボクって何気に駄目人間?

 まあ、うやむや考えても仕方がない。先ずは時計を回収しなきゃ。
 でも、外には出たくないから…

「よし、雪に頼もう!」

 あれ…、ボクって何気に駄目人間?


73: 名前:サスライ☆06/05(金) 19:24:51
 俺、シェンフォニーの目の前には雪が居る。口元をひきつらせて無理矢理笑っているが、目は笑っていなかった。
 笑っていないどころか、耐性の無いものはその目を合わせただけで450ミリリットル程のトラウマをぶっかけられそうだ。

「私のプリンを置いといて天童さんとデートですか~、

へぇ~」

 ヤバい。髪の毛から足の爪先まで、身体中の警報がフル稼働している。
 因みに宗厳は顔色を悪くして何とか刀に手をかけようとしているが、震えて上手く身体が動いていない。

 兎に角、一城の主たるもの屈してはいけない。

「いや、屈しておけよ」

 黙れ雲吉。思想を読むな。
 俺はドス黒い炎を背部に燃えたぎらせる雪に平等なる交渉を申し込む。そう、先ずは話してからだ。

「まぁ、落ち着け。宗厳に会ったのは偶然だ」

 デートの誤解を解くために先ずは偶然を主張する。宗厳は怯えたハムスターの様な顔で必死に頷いていた。

「ほぅ?で、何故に【服屋】の前に天童さんが居るので?」

 これは彼女に『流行』というのを教える為だ。鉄兵にシールというセンスはどうかと思い、流行を教えようと思った。
 先ずは彼女の軍服マントをどうにかしなければと、感じ服屋まで移動したのだ。
 しかしこれを急に言うと言い訳臭くなる。まずは聞く体勢をとらせなければ。

「待て!話せば分かる!」
「言い訳には鉄拳制裁!」

 スゲェ痛ぇ。
74: 名前:サスライ☆06/07(日) 09:09:14
 俺を殴って、
 俺は体が少し浮いて吹っ飛んで、
 雪は宗厳が手をパタパタさせながらここまでの話をダイジェストして
 納得して、
 俺に一言。

「それならそうと早く言って下さい、拳が痛いじゃないですか」
「色々突っ込み所あるけど、取り敢えず拳>俺なんだ?」

 雲吉が肩に降り立つ。このヤロウ、ちゃっかり逃げやがって。

 † † †

 服屋の中では雪は目を活き活きとさせていた。
 たまにクルクル回ったりしている。
 そして宗厳は周りをキョロキョロとするだけ。詰まりどう反応すれば良いか解らないのだ。

「やっぱり天童ちゃんには女の子っぽい服が似合いますな~」

 頬を紅潮させて、息を荒くさせながら両手でつまんで持ってくるは黒い布にフリル付きの服。
 リボン等のオプションがフリルを一層際出せる。

 人はそれを、「ゴスロリ」と呼ぶ!

「さぁ、天童ちゃん!次はコレ!」

 な!?そんな物まで着ろと!?それに私の事は天童さんと言えと言ってるだろう!

 と、薄ピンクのワンピースを着た彼女は言いたいのだと思うが、戸惑いが「あう~あう~」とのみ言わせる。
 こちらを見て、苦笑いと眼で訴えかける。「これが流行なのか」と。
 俺は苦笑いと眼で語りかける。「い~や、雪の趣味♪」

 その時の宗厳は神も仏も無いような顔をしていた。


75: 名前:サスライ☆06/09(火) 19:20:41
 笑われる!これを種に未だかつてない陵辱を味合わされるのではないか!?

 私、天童 宗厳は今までの人生でこれ程まで予測不能にして対応不可な事態に陥った事など無かった。

 大体何だと言う!このヒラヒラした西洋物の布は!何やら「ゴスロリ」と称される服にも似たような素材が使われていた。
 装飾ならば勲章(クンショウ)や刺繍(シシュウ)等もっと分かりやすい物を取り付けるべきではないか!?

 …あ、いやまて。フリルに軍隊の威圧ある勲章や刺繍がついたらついたで、非常にバランスが取れていない。
 井時なんかにそれを見せたら「混ぜりゃいいってもんじゃないよね…」と、鼻で笑われてしまう!

 嗚呼、御免なさい御免なさい!勲章さん、決して私は貶めるつもりなど毛頭ありませんから~!

「あう~あう~…」
「天童さ~ん、着替え終わりました?」

 この服をチョイスした雪の声がカーテンの向こうから聞こえてくる。
 もう着替え終わってはいる。しかし、しかしだ…

「は、恥ずかしい…」

 うぅ…、なんか「物騒だから」と刀は没収されてしまったし、私は今、何の力も無い。だから自信が無い。

「あ~、も~、出来てるならお披露目ですよ!」
「ち、ちょっと待っ…」

 カーテンを引く音により小さな声は掻き消された。
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76: 名前:サスライ☆06/09(火) 21:45:19
 俺、シェンフォニーは当然だが外に居た。
 カーテンの近くに居続ける訳にもいかないし、婦人服のコーナーをウロウロする訳にもいかないが故にもあり、当然だ。

 しかし、紳士服のコーナーに居ないのは物騒な物、つまり宗厳から没収した刀を持っているからだ。

 宗厳の様に開き直って浮世離れした格好なら小道具もありだが、
 俺の様にスーツで、年齢不詳で、只者でないオーラが漂ってる奴が刀なんか持って店内をうろついていたら警察呼ばれるっての。

 と、言うわけで人目離れた路地裏で現在暇を玩んでいた。

 パシリ、パシリ…

 刀を回転させては掴み、掴み、繰り返す。
 刀故に、回転速度を間違えたら鞘から落ちるし、鞘からズレただけでも手が切れる可能性がある。
 だからアレだ、良い子は真似しちゃ駄目だぞ。ここで「できねーよ」とか考えた人は突っ込みの才能があるぞ、
 雪みたいに。

「なぁ、雲吉よぉ。女の着替えってこうも時間がかかるもんかねぇ」
「モノによるけどパーツの多い服とかあるし、あーだこーだ悩む時間はかかるね」

 なーんでコイツは鳥のクセにこうも人間臭いかなぁ…。マジ的確なんですけどー。


77: 名前:サスライ☆06/09(火) 22:13:59
 暇だから刀を構えてみた。居合の体勢だ。

「ん、どうしたシェンフォニー?中二病か?」
「ん、そうかも知れんね」
「止めてくれ 中二はキツい 髭男」
「アッハッハ、五七五になってるとこに殺意を覚えるね★
100グラム10円にして切り分けちゃうぞ♪」

 鼻歌調に言葉を放ち、リズムに合わせて目の前の壁に立て掛けた角材に居合を放った。
 居合に風は無い。空気を切り裂いたからだ。
 手応えもあまり無い。角材を素通りしたからだ。

 チン、スコン、ビュウ。

 左から鳴った音の順に
 鞘に刀を納めた音。
 角材が真っ二つに割れた音。
 そして、切り裂いた空気がめくれて今度こそ渦巻く風になる音だ。

 居合の成功。しかし俺の心にあるのは満足感では無く、むしろ空虚感だった。

「… なんなんだよ」

 下を向いて、呟く。
 今の俺は正面から見たらうつ向いている様に見えるだろう。

「なんで、失敗しねぇんだよ…」

 刃潰しをして実は鉄棒とあまり変わらない刀を抜き、そこには自分の顔が映っていた。
 無表情の白け顔が。

「俺は、何者なんだよ!
なんで戦いだけは強いんだよ!
こんなになって何をしたかったんだよ!」

 自分に対する理不尽な叫びを刀に向ける。気付けば涙が垂れていた。

「これじゃ、化け物じゃねぇか…」

 下を向きながら刀を鞘に納める。怒りを押し込める様に。


78: 名前:サスライ☆06/09(火) 22:44:13
 私は銀田一 雪。天童ちゃんを着せ替え人形にして萌える、至極普通のメイド。

「あぁ、萌えるわぁ~」
「貴様。なんなんだ、その幸せそうな顔は!
凄く対応に困る!」

 私は天童ちゃんの揉み上げをピョコピョコと動かして顔面デストロイヤー。
 つまり表情を崩しながら言った。

「良いんですよ~、木偶人形でも~★ウフフ~♪」
「うわっ、駄目だコイツ!早くなんとかしないと!」

 そうやって天童ちゃんの焦る顔にニヤケながら次はお揃いでメイド服も良いなぁとか考えていたら、

 嫌な予感がした。

「…どうした?」
「嫌な予感がします。名残惜しいですが着せ替えはまた今度にします」

 店員に服の代金を渡すと天童ちゃんの腕を引っ張って店を飛び出した。
 尚、天童ちゃんの服装はフリルのままである。

 † † †

 「勘」と「何となく」はイコールでは無い。
 過去の経験から抽象的に確信を掴むのが勘であり、
 漠然と今の気分のままに動く事が何となくである。

 つまり今回のは「勘」だった。気分は天童ちゃんの着替えに向かっていて、
 シェンフォニー様、刀、暇、路地裏。

 これ等のワードが嫌な確信を掴ませる。
 だから私は見てしまったのだ、シェンフォニー様のあまり見せない感情を。

「これじゃ、化け物じゃねぇか…」

 どうしようも無い事をどうにかしようとする『自暴自棄』である。


79: 名前:サスライ☆06/09(火) 23:22:56
 路地からシェンフォニー様を覗いていた私は、彼にどう接するモノかと思う。

 いっその事覗いていたと言うか?いや、無理をして「格好つける」だろうな。
 なら何時も通りに振る舞うか。それは彼の為にならないだろう。

 私は、私の世界から彼を失わせない。

 誓った筈だ。彼が記憶を失う前から。だから私は彼の心を削りたく無い。
 また、彼が心を削る事は私の心を削る事に直結するのだから余計にだ。

(どうするのだ?)

 天童ちゃんが小声で話しかける。私は戸惑った。状況に戸惑っている訳では無い、無力さに戸惑っているのだ。

 そんな時、天童ちゃんの姿が目に入る。
 なんと可愛らしいか。
 普段が軍服マントな分もあるが、それよりも元が可愛らしいから女の子らしい服はとても映えて見えた。

 勿論軍服マントの天童ちゃんを否定している訳では無い。むしろアリだ。
 気丈で可愛らしい。それに合っていれば何でも似合うと思うし、

 それが天童 宋厳という一個人だ。

(…簡単な、そう簡単な事です。だから安心してください)

 私は目を弓にして、天童ちゃんを撫でて路地裏に足を踏み入れた。
 薄暗さが不安にさせる、でも、その先にシェンフォニー様が居るなら怖くは無い。

 奈落の果てに堕ちるとはこの様な感覚なのだろうか、と、自問自答をしてみた。


80: 名前:サスライ☆06/09(火) 23:51:35
 そこにはシェンフォニー様が居た。1メートル程度だと言うのに、どうにも距離を感じた。

 彼は天童ちゃんの刀を杖にした状態で胡座をかいて、言う。

「なんだ。早かったんだな」

 こうして見ると何時もと違う事に気付く。
 肩は落ちているし、目に光が無いし、口調が遅い。

 総合的に、とても小さな存在に思えた。今なら私でも殺せると思える程に。

「シェンフォニー様、立って下さい」
「…ん?しゃーねぇなぁ」

 彼は面倒臭そうに刀を杖代わりにして立ち上がる。極力、力を使いたくないそれは虫に似ていた。
 虫の様に小さく、何時この世界から無くなってもおかしく無い存在。
 何時もが天真爛漫な分ギャップで酷く脆く見えるのだ。

 それでも彼を信じる。これから私が行う行動により砕けないと信じ切る虚勢。
 私は覚悟をした。鼓舞の為に「うわあああ!」と叫びたい、しかし我慢する。

「雪、一体どうし…!?」

 彼は戸惑った。どう反応すれば良いか解らないというよりは相手が私故の戸惑いに目を見開く。

 包容

 それが私のとった行動。只、ひたすらに強く抱き締める。
 そして耳元で言った。彼が誇り高いという一個人であるという事を。

「シェンフォニー様は変わりません。
だから、屈しないで下さい。自分自身に」

 更に小さな声でそっと、ワガママを付け足す。

「共 に生きましょう。死ぬまで、一緒ですから…」


81: 名前:サスライ☆06/10(水) 18:10:55 H
「流派・宗厳輪拳が奥義、
 ゴンザレスハリケーン!」

 俺の意識が正しければ、フリルを纏う宗厳が突然懐にタックル調に潜りこみ、
 同時に雪が離れ、宗厳が俺を抱き締め、
 回転しながら垂直に跳躍。現在位置は空中で、視界は渦巻き続ける。

「なあ、雲吉」
「あ?」

 渦巻く世界で視界にちらほらと見える白い影に向かって話しかける。

「実はコイツ、刀…いんなくね?」
「お前限定だよ。多分」

 拳を手のひらに打ち付けて納得を表したかったが遠心力がそれを認めてくれなかった。
 ああ、青空は綺麗だな。

「なぁ、雲吉…」

 しかし返事は無い。見ればこちらに路地の地面がが迫って来ていて、青空は見えなくなっていた。
 いや、落ちてるのか…
 回転していないのは遠心力を衝撃に生かす為なんだろうな。

 まぁ、あれだよ。
 俺は腕を、迫る地面に掲げた。元気玉みたいな体勢だなぁ

 衝撃。腕に衝撃が走ると同時に砂ぼこりが舞う。
 この砂ぼこりが全部コショウだったら大惨事だな。

「よし宗厳!
取り敢えず、いきなりストロングスタイルな必殺技をかけてきた訳を聞こう!」

 俺は倒立のまま話しかけた。

「わ、笑われると思ったからにゃ…」

 うわーお、舌を噛んだよ。なんか良いなぁ。
 俺は倒立のまま暢気だった。


82: 名前:サスライ☆06/10(水) 18:34:34
 薄暗い、と、言うよりは落ち着いた雰囲気。それは明かりが在るが故の安心感からの表現か。
 喫茶店;「ジョージ」。今日は集団だから、私こと銀田一 雪と愉快な仲間達はカウンター前の席では無くてテーブルを使わせて貰っていた。

 シェンフォニー様がキザったらしくコーヒーカップを揺らめかしながら言う。

「俺は現在、両手に華な状態だが思ったんだ!」
「ほう、華とは嬉しいですがどんな?」
「は、華!?わ、私を褒めても何も…!」

 私は何時も通りに淡々と返して、「シェンフォニー様菌」に免疫が無い天童ちゃんはモジモジしていた。

「この小説には巨乳がいないと!」
「… うわぁ」
「…うわぁ」

 取り敢えず苦笑いで目潰しを一人指一本、してみた。彼は目をおさえて「目がぁ!目がぁ~!」と叫びつつ上半身を暴れさせる。

「ハイハイ、バカはいいですから」
「いや、ちょ、マジ痛いんだって…」
「バカはいいですから!」
「ちぇっ」

 口を尖らせて顔を覆う手を開く。そこには平然とした彼が居た。
 恐らく目潰しの直前に、超反応で後ろに身を引き眼球へのダメージを殺し感触のみをこちらに残したのだろう。

「オチが無ぇな」

 言うな!雲吉!


83: 名前:サスライ☆06/10(水) 18:55:26
 つまり天童ちゃんの話をまとめるとこうだ。

 シェンフォニー様にこの姿を見られる→からかわれる→シェンフォニー様を殴る

「ならば、からかわれる前に殺ってしまえと?」
「……」

 彼女はピストン運動よろしく、首を必死にうなずき続かせる。
 その表情はぎこちなく、目は丸く、耳まで真っ赤にして、理解してくれと必死だった。

「な らしょうがないですね♪」
「……♪」

 私に許され、彼女は表情を崩して純粋な笑顔を見せた。
 やべぇ、萌える。後光が差してるよ…
 重要だからもう一度言うが、萌える!

「イヤイヤイヤ!」
「どうしました?」
「俺、アレを喰らっていたら大惨事だから!
具体的には潰れたトマトだから!」

 そこで私は肩を落として微笑み一つ。そして指差す。

「貴 方の能力ならアレ位余裕でしょう?安心して見れますよ」

 そこで私は【二回目】となる彼の本気で驚く顔を見た。面食らったとでも言った方が正しいのかも知れないが。
 彼は、物凄く小さな声で言った。丸聞こえだが。

(そういう力の使い道もあるか…)

 目を弓にして微笑む彼に私は彼の二つの言葉に対しての返答をした。

「だから安心して殴られて下さいね♪」


87: 名前:サスライ☆06/11(木) 10:29:10
「ハイハイ。宗厳はクレープ、雪ちゃんはプリンだったか」

 (久し振りの出番の)丈治さんが、まだ温かいクレープとカラメルをかけたばかりのプリンをそれぞれの手に持って来た。
 そして流れる様に机に出される。

「んで、請求書はと…」

 (最近空気と化していた)丈治さんはそう言うと請求書の薄い紙をシェンフォニー様の胸ポケットに突っ込んだ。

「あれ、何で俺に突き付けるかな~」
「はて、俺は『お代はシェンフォニー持ち』と宗厳から聞いてるんだがなぁ」

 シェンフォニー様は天童ちゃんに視線を移す。クレープに気を取られていて、シェンフォニー様に気付くのに30秒程かかった。

「忘れたのか、私は自給自足だぞ?
持ち合わせ等一文も無いわ!」

 胸を張り、豪快に、男らしく、彼女はホームレス発言をした。
 そして目を伏せながら私を見てくる。私は笑顔で答えた。

「両手に華で男が代金を払うのはフラグですよね♪」
「……華?」
「いっぺん死にます?」

 彼は鼻で笑い、私も花の乙女の笑顔で対応した。

「だって雪って男らしいじゃん」
「ほう、どの辺りが?」
「主に年齢に対して胸部が…ぐわー!」

 私は彼のスネを思いっきり蹴った。花の乙女の笑顔で。
『花の乙女はねぇよ』
 だから思想に割り込むな!


88: 名前:サスライ☆06/12(金) 17:29:44
 シェンフォニーと雪はいつも見てて楽しいと思う。
 私はクレープをかじりつつ、頬を緩ませてドタバタ喜劇を見ていた。

 私の頬が緩んでるのは二人はクレープを食べてるからだとでも思っているのだろう。
 しかし、理由を問われたら、違うと答えると思う。 
 本人達に自覚があるかは知らないが仲むつまじい二人が仲むつまじい行為をしているのは微笑ましいし、見ると優しい気分にもなれる。

「あ、シェンフォニー様!プリンを横取りしないで下さい!」
「あ~、暴れるなら外でね」

 丈治、居たんだ…。影が薄くて解り辛いよ。
 影が薄いものばかり食べてるからそうなるんだよ地味キャラめ。

「しかたありませんね。シェンフォニー様!後でアイアンクローです」
「ほう、やってみろ…
このシェンフォニーに対して!!」

 私は益々頬を緩ませる。しかし、同時に沸き起こる感情もあった。
 下腹のあたりから胃にかけて捻るように込み上げてくる嫌な感触を巻き起こす感情。

 嫉妬。

 羨ましかった。大切な人が近くに居るという事が。
 何で私じゃいけないの?と、疑問をなげかけたくなる位に。

 取り敢えずウサをはらすためにクレープを口に入れる。頬が緩む。

 やっぱクレープが美味しいから優しい気分になっているだけかも知れない。

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最終更新:2010年05月08日 17:43
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