130: 名前:サスライ☆06/28(日) 14:33:37
僕の名前は大澤 太郎(オオサワ タロウ)。あ、大丈夫。今回の話ではこれ以上新キャラ出ないから。
僕は橘 文哉の幼馴染みだ。もう一人明智ってヤツがいて昔は『三バカ』とか呼ばれてたけどそれは置いておこう。
始めに言っておく、僕は巻き込まれただけだ。
いつも文哉とかのツッコミばっかしているから文哉と一組で見られたらしい。
と、言うわけで今、消しゴムで彫刻を作っていない僕まで指導室に居たりする。
新木がメイドの像を取り出した。無駄にクリオティが高く、ガチャポンで売っていても何らおかしくない。
因みに勉強も何だかんだでまぁまぁで、恐らく真面目にやったらクラスでトップになる事も容易いだろう…
しかし、頭がおかしい。
それに対して突っ込み所満載のツッコミを入れているのが文哉。
背が2メートルを超している巨人で、しかしゴツい訳では無く、スマートで運動神経もいいから女子にはウケがいい。性格を除けば。
これは後々分かるだろう。
僕はコイツ等に振り回される笑いあり涙あり(涙は特に僕だけど)の学園生活を送ってる訳だ…。
あ~、頼むから早く終わってくれ。でも、僕がそう考える時って大抵悪化するんだよね。
「すいません。雑用の銀田一ですが…」
うわ、絶対に悪化するわ、コレ。
131: 名前:サスライ☆06/30(火) 15:36:29
私がシェンフォニー様に着いて来た時、取り敢えず雑用に回された。
と、言うのも学校としては教師に見張りが付く等の面子の事情があるらしい。
言われた私にシェンフォニー様は、
肩をポンと叩き、親指を立て歯をキラリと光らせた後に、ウインクをして言ってみた。
「大丈夫、俺はシェンフォニーだぜ?♪」
「あんただから心配なんでしょ馬鹿主がー!」
私はちゃぶ台をひっくり返して見せた。それに前方から押し潰されたシェンフォニー様は一言。
「ニャ キョブキャブ…」
言っている事がよく分からない。ちゃぶ台に潰されて口が塞がっているから当然だが。
「なぁ、ここにちゃぶ台なんて無かったよな…と、言いたいらしい」
すかさず雲吉が通訳をした。
「折り畳み式でエプロンの中に入れておきました!」
「うわーぉ、便利」
私は再びちゃぶ台を折り畳み、エプロンにしまう。そこで彼は突っ込んだ。
「と ころで雪って意外と力あるのな。多分4キロはあるぞ、ちゃぶ台」
「通販の筋トレマシンで鍛えました!
提供はロックンロール宅配便です」
「やっ べ~な、筋トレマシン」
アンタが問題起こさなければ鍛える必要も無いんですがね。
取り敢えずちゃぶ台をしまう。
132: 名前:サスライ☆07/01(水) 18:22:53
と、いう経緯があって私は雑用に回された訳だ。しかし、なんとしてでもシェンフォニー様がアホをするのを阻止せねばなるまい。
まだ、授業は始まっていないがそれまでに雑用の仕事を何とかしなければ…!
と、いう計画が頭の中でグルグル回っている最中だ。
なんだ、この空気。全体から感じるのは冷ややか、もしくは生暖かい視線。
茶をいれに来ただけの私は何がおかしいのかと周りを見回す。
ここ、生徒指導室に居るのは私を含めて五人!
先ずは一人目、教師と思われるスーツの中年男性。驚く事も無く、これといっておかしくない。
続いて二人目、小柄な苦労人そうな少年。目が大きくて、女装が似合いそうで萌える。私を見てなんか生暖かい視線を送る。取り敢えずおかしくない。
さて、三人目、立ったら二メートルは行くであろう巨人。長い髪を後ろに纏めて活発そうな印象がある。
女性顔だが女装は似合わなそうだ。身長意外特におかしくない。私を見て、なんか考えてる。
最後の四人目、グラサンに毛皮…
私が、この学校はどこに行こうとしているのだろうと考え込んでしまう。
「…えぇと、個性的ですね?」
取り敢えず思った事を言ってみた。私の格好?勿論何時も通りメイド服でどこもおかしくない。
135: 名前:サスライ☆07/03(金) 15:09:10
俺は橘 文哉。
【悩むより行動】をモットーとし、ついこの間体育の柔道で一位になって得意気になってたら、ロデオが趣味で牛を飼っている奴から
「牛よりは弱い」
と、言われたのでソイツの自宅に忍び込み、猛牛と取っ組み合いをして牛の首をとって背負い投げを決めたら、
その時も指導室に連れ込まれた。そして先生は言った。
「少しは考えろ」
「理屈じゃ無いんですよ!」
と、胸を張って言えるくらいのアウトドア派さ。その後、何故か連れて込まれた大澤が「脳筋なだけじゃ…」と言ってた気がするがそんな事は無かった事にするZE!
俺の脳内で。
そんな俺がメイドさんの乱入により珍しく悩んでいる。
何故、メイドさん?ここはメイド喫茶にでも改築されるのだろうか。
だったら納得だ、茶をいれに来たとも言ってるし。
え?単純思考?
生物学者の娘にまで
「脳ミソの成分が筋肉で出来てるとしか考えられない!」
とまで呼ばれた俺がそんな深く考える筈無いじゃないか。お墨付きだぞ、どうだ参ったか!
と、言うわけでメイド喫茶っぽく振る舞わなくてはいけない。
取り敢えずメイドさんに指を差して…
「萌えー!」
(文哉の偏見によるメイド喫茶の客のイメージ)
138: 名前:サスライ☆07/06(月) 21:35:37
俺、新木 タオは考える。右脳は勿論脳髄から身体全体の細胞が脳細胞になった気分で。
さて、どうすればこの状況は面白くなり、ついでに事を収められるだろうか。
今、状況の中心になっているのは突然現れたメイドに見えるが、実は「萌えー!」と叫んだ文哉にある。
それにより、総ての注意が文哉に向かっているからだ。
則ち、文哉がどう動くかに状況の変化は掛かっている。
ならば俺は文哉の行動を操作すれば良い。
文哉の事だからここがメイド喫茶にでもなったと勘違いしたが故の反応だろう。
だから俺は立ち上がり、文哉に言う。
「文哉ぁ!実は黙っていた事がある!!」
「なんだタオ!」
「真の萌えキャラとは実は俺だったのサ♪」
腕を広げてツルの構え。兎に角、まずは注意を集める。
「な、なにぃ!そうだったのか!」
「…はぁ?」
ツッコミの太郎も食い付いた。これで男子生徒は全員注意を向け、また、他も注意をこちらに向けている。
つまり今、俺が状況の主導権を握っているという事だ。
「太郎、黙っていて済まなかった実は俺は…」
さて、そろそろ来るだろうか。状況を納める言葉が。
「ええぃ!ややこしくするな!この方はお手伝いの銀田一さんだ。代理教師のシェンフォニー先生の侍女でもあるからメイド服なのだ!」
先生が叫んだ。俺はビビるフリをして席に座る。
これで皆なんでメイドが学校に居るか分かるから、状況は収まりました、と。
139: 名前:サスライ☆07/08(水) 18:38:57
僕、大澤に他2名はあの後コッテリと指導室で絞られた後、フラフラな世界に変わった廊下を横に並んで歩いた。
てか、「近くに居ながら止めない方が悪い」って酷いって。止められるモノなら止めてみなよ、この危険物を。
横列真ん中の僕は右隣の文哉を見た。コイツのテンションとノリは周りを巻き込み止められない。
今度は左隣のタオを見る。コイツの無駄に手の込んだ知略は考えて嫌になる。
と、言うことで僕らは「三バカ」と呼ばれ廊下を歩く。僕らを見た周りからの声がする。
「あ、三バカだ」
「また指導室か」
「飽きないね~。見てて面白いけど」
「デオキシリボ・カクさん!」
等と、周りからの声は痛い。しかし、僕はコイツ等とつるむのを止めようとはしない。
それはタオが実は金持ちで喫茶店;ジョージでクレープをよく奢ってくれるからとか、
厄介事は大抵文哉を突っ込ませれば解決するとかとかチープな理由では無い。
そもそも!タオには【クレープ・屈辱の味】とか訳の解らないもの押し付けられたし、
文哉は厄介事は解決したが、もっとでかい厄介事を作ったりした。
「アッ ハッハ♪怒られちったな~」
「正に波乱万丈だな!」
「いや、波乱万丈は違くない!?」
文哉が思いっきり笑う、タオが笑う。僕は突っ込む。
気付けばさっきまでの事なんてどうでもいい気分になっていた。
140: 名前:サスライ☆07/09(木) 15:39:25
「クックック…」
タオは笑っていた。僕の隣で、とてもキモく。
「止めてくれ、とてもキモいよ。その笑い」
「ん、太郎。五七五とは風流だな♪」
「違うから!偶々だから」
そして文哉は考える。「俺も五七五をやろう」と口から爆弾を漏らし、爆発させる。
「磯野くん…」
そこで、と言うよりいきなり詰まる。てか、「磯野くん」言いたかっただけじゃないか!てか、磯野くんって誰!?
僕は彼をじとっと見てた。「続きは?」と目で訴える為に。
そういうのにだけ敏感な文哉は文章を作り出す。
「磯野くん
嗚呼磯野くん
磯野くん」
「訳分かんないよ!?」
僕は眼球が飛び出す様な勢いで突っ込みを放つ。そこにやっぱりタオが続けてきた。
「磯野くん
今だ必殺
磯野蹴り」
「磯野蹴りって何!?磯野くんは何者なの!?
てか、突っ込所がありすぎて突っ込めない!
突っ込みが足りない!」
そこで指導室で会ったメイドさんを思い出す。そういえば彼女も突っ込みタイプっぽかった。
なんだろ、苦労人オーラが出てる辺りとか特に。
141: 名前:サスライ☆07/12(日) 12:36:01
心配。そして不安だ!
シェンフォニー様が一時間も見ず知らずの他人に学問を教える!?
それが成功したとしたなら奇跡でなかったなら何なんだ!
きっと生徒にチョーク投げ乱舞とか一時間フル自習とか、シーチキンとかきっとそんなのに違いない。
いや、シーチキンは無いか。
兎に角、生徒に害が及ぼされないのが安心出来ない。故に不安だ。そして生徒が心配だ。
決してシェンフォニー様を心配している訳では…
あれ?
じゃあなんで私は見ず知らずの他人を心配しているのだろう。
今回は臨時でしかなくて、それ以後会う事も無い筈なのに…
世間体?そんなもの私の周りの方が酷い。仙人ロリータとか引きこもり腐女子とか鉄兵とか。
あ、後は丈治さんとか居たっけ。
いや、更に奥、奥…
過去の更に過去。
私の、過去。
私が【王室に拾われる】前の事。路地裏の世界。弱い奴は剥がれて強い奴が生きる弱肉強食の平等たる世界。
気付く。私は心配してたんだと。今のシェンフォニー様は英雄でも皇帝でも無い。只の人間だ。
そんな人間が教師と生徒と言う、大して格差の無い世界に放り込まれるのが、心配だったんだ。
生徒にシェンフォニー様は酷い事をされないかと。
その時だ、何か声がした。陽気で、しかし裏のある声色が。
「あ、さっきのメイドさんじゃないの~♪」
142: 名前:サスライ☆07/15(水) 11:58:12
私を見つけた人は新木 タオ君というらしい。
彼は私に色々話してくれた。
自分達が次の時間シェンフォニー様の受け持つクラスの生徒である事、自分達が3バカと呼ばれている事、自分達が3バカと呼ばれる様になった経緯、3バカで誰が一番強いのか…って!?
「殆ど私事じゃないですか!?」
「小説的に重要な部分だけどなんか大切な事を言うとでも思ったか、フハハハハ!」
「フハハハハ!」
「ノリだからって文哉まで笑うなよ!」
この太郎君も大分苦労しているんだろうなぁ。何か親近感を覚えるよ。
って、あれ。
大切な事を言うとでも…って、言ったよ?
「その、貴方達が次、シェンフォニー様の受け持つクラスの生徒で?」
「うん。雪さんの主の初授業だね♪あ、主だってのは臨時教師だからわかったんだ。
んで、初授業なのは主…、確かシェンフォニーさんだっけ?彼の受け持つ教科が今日は初めて行われるからわかった」
「…!」
このタオっていう子、凄い記憶力と処理力だ。全クラスの時間割と担当を覚えて、処理している。
時代が時代なら麒麟児など呼ばれていただろう。
この子なら太郎君というストッパーがいるし、信用出来るかも知れない。
きっと成績優秀なんだろう。
そう思った時、彼が微かにニヤリと微笑んだ。気がした。
143: 名前:サスライ☆07/16(木) 14:38:13
今、臨時教師のシェンフォニー先生が生徒の名前を確認してる。
さて、僕の名前は大澤 太郎。初期設定では漢字が『大沢』だったけど鉛筆で書いていく内にいつの間にか『大澤』になっていた。
しかも下の名前は面倒臭いからって「もう太郎でい~や」ってなった裏話があったりする。
そんな設定段階で苦労している僕は、ツッコミキャラになる運命らしく、タオに始めて会った時にこう言われた。
「普通過ぎて逆にすげー名前だな」
アンタにだけは言われたくない!なんだよ、『道(タオ)』って、モロに輪帝国貴族の名前じゃねーか!そっちの方がよっぽどスゲーよ。
…と、ツッコミを入れようとしたら文哉が空気読まずに「いや~、そうなんだよ~」と、台詞を被せてきて、「いや、被せるなよ!」
と、ツッコミを入れてしまった。まあ、そんなツッコミ裏話があるわけだ。
さて、所変わって現在教室。僕は文哉並の長身の臨時教師、シェンフォニー先生からこんな事を言われる。
「い や~、しっかし太郎って普通過ぎて逆に凄い名前だねぇ♪」
あれ、デジャビュ?
「いや~、そうなんスよ~♪」
取り敢えず、別れ際に雪さんから貰ったハリセンを取り出し、文哉とシェンフォニー先生の頭を叩いてみた。バチュンと良い音がする。
「シェ ンフォニー先生の方がよっぽど凄いですからね!?そして文哉わざとやってない!?そして…」
出席番号一番、新木 タオを見て、
「な んでタオはスルー!?」
取り敢えずあの時言えなかった事は言えた。僕は心の中でガッツポーズをとる。
144: 名前:サスライ☆07/18(土) 19:44:09
俺、タオが廊下で雪に渡されたのはハリセンだった。こんなモノをどうするのかと聞けばシェンフォニーを叩く為にわざわざ持ってきたらしい。
大袈裟かと思って聞いてみたらシェンフォニーと雪の生活を吐き出す。いや~、人間ってテンション高いと冷静な判断が出来ないものだねぇ。
お陰で愉快な話が聞けた。しかし、気を許し過ぎだねぇ、『破天荒な主人』とだけ伝えれば良いのに余計にプライベートまで話しちゃって…。
ま、次に合ったらいじるためにこのネタは取っとくか。
で、文哉が「ツッコミなら太郎が持つべきだな」と、言ってハリセンは太郎に押し付けられる事になったのだが、
まさかいきなり使うとはね。この海のリハクにも見抜けなかった(このネタを知ってる人が居たら末恐ろしい)。
さて。俺が名前でスルーなのは似たような名前のシェンフォニーにとっては珍しくない名前だからだろうが、それを言うと詰まらない。かつ、雪の為にシェンフォニーの身分を保つには…
「太郎、決まっている!それはカリスマさ♪
先生や俺の珍しい名前の持つ溢れるカリスマがボケをねじ伏せてるのさ」
「え、えぇ~」
「おー、嬉しい事言ってくれるねぇ。じゃ、授業に入るよー」
雪から話を聞いていた太郎は反発出来ない。これだから人生って楽しいな。
145: 名前:サスライ☆07/19(日) 10:05:09
私は期待していたのかも知れない。期待に胸踊らせていたのかも知れない。
シェンフォニー様のボケに。
それは私にとって彼の代名詞であり、彼ある所にボケありと言っても過言で無い。
それをツッコミと言う形で止める。そこに私の安定がある。
解らない、さっきはシェンフォニー様を心配している筈なのに今度は自分の心の心配だ。
シェンフォニー様はボケるべきだ、しかし生徒にナメられない高貴な存在であってほしい…。
何という我が儘か。
「…えぇと銀田一さん?何、ドアの鍵穴から教室覗き見してんの?」
「うぃあぇうぉぁ!」
後ろからの突然の声に母音を全て使った悲鳴を上げてしまった。あ、この人指導室に居た先生さんか。
「い、いや、主人のハヤーのオシェやとちぢまっちまうこってんじゃないスか」
「… つまり、主人の初授業は心配だと?」
「当たんりでんス!」
「先ずは落ち着いてお国言葉を直しましょう。それと、貴女が思うより貴女の主人は優秀ですよ?見てみなさい」
「エッ?」と声を上げるのと同時に鍵穴を覗いた。すると程よい冗談を加えながら授業をしているシェンフォニー様が居た。
「…と、ゆ~訳でサボテンなんかの代謝にはC3回路とC4回路が使われていて~、ハイそこ、寝ると指導室行きだよ~?♪」
ポカンとしている私に彼は一言。
「なんで見てないのに私に中の状況が解るかって?教師の勘ですよ!」
教師の勘パねぇ!
150: 名前:サスライ☆08/04(火) 12:52:56
シェンフォニー様はその後の授業もキチンと授業をこなす。ぶっちゃけ下手な授業よりもずっと面白くて役に立つ。
音律の良い声が聴く者を彼の世界に誘い込み、程よいジョークが緊張を緩め、濃密な内容が実用性を上げる。
私はスラム時代、『博士』の実験を手伝う事で賃金を得ていた事があり、適応力を活かした実戦で知識を得た。
故に生徒を羨ましくも思う。
私が鍵穴から覗いているとまた後ろから声がした。
「やあ。あれ、余り驚かないね。俺の予想では母音全てを込めた悲鳴を上げると思ったけど」
後ろには毛皮のコートにサングラスという珍妙な生物。こんな生物一人しか居ない。てか、一人居れば十分だ。
「タオ君。授業はどうしたのですか?」
「さぼっちゃったんだZE☆」
私は問答無用でヘッドバットを叩き込む。ミシリと鈍い音がした。
「痛いじゃないか。だZE☆」
「ええい!だZEやめい!てか、さぼっちゃ駄目でしょー!」
「気に入っちゃったんだZE☆」
なんか疲れたからこれ以上は言及しない事にする。なんだろう、シェンフォニー様と同じ臭いがする…
「まぁ、雪さん。俺が来たのはこうする事でしか二人で話す機会が無いからだ」
特に、この何考えているか解らない部分とか。
151: 名前:サスライ☆08/04(火) 16:26:44
「で、何してるの?」
タオ君は腕を組みながら肩の力を抜いて話す。
「いや、シェンフォニー様が悪さをしないかと見張って…」
「はい。ウソー!」
急に指を差してきた。なんか失礼だなと思ったりする。
しかし、図星ではあった。
「それだったらさっき俺達のクラス覗いて保証済みでしょ♪」
「う゛っ…」
ギクリとする。てか、バレてたんかい。
だから私は自分の考えを述べた。
「じ、 実はシェンフォニー様が生徒に虐められ…」
「はい、それもウソー!」
「…え?」
私は身が固まった。しかし、これは自分の意見を否定された硬直ではない。
「シェンフォニー教諭。彼を見たとき、ピンと来たね♪
『この人は俺と同じだ』って」
「え、 まぁ、破天荒ですが…」
彼はハハハと笑って見せた。否定の笑いを見せた。そしてサングラスに手を掛ける。
何故だろうか、サングラスと手の距離が近付く度に硬直は激しくなる。心拍数が上がる。
脳内でもう一人の私が逃げろと言う。脳内でもう一人の私が私の意見を否定する。
雪。気付いている筈だ、この感情は私がシェンフォニー様に抱いている感情と同じだ。
「彼は、俺と同じ。
威圧感を無理矢理抑え込んでいる」
それは、恐怖。彼は金色の瞳をした、肉食獣の眼差しをしていた。
私は、怖いから更に固まった。
152: 名前:サスライ☆08/06(木) 19:04:46
シェンフォニー様は、自分を嫌いに思っていた。
シェンフォニー様は、私の居た国で一番強かった。否、世界で一番強かったと思う。
だから尊敬されていて、孤独であった。
「…いいえ。シェンフォニー様は、そんな人じゃありません」
私は当時のシェンフォニー様に良く似ている眼をしている彼に言ってみせた。
人殺しの眼をしている彼に言って見せた。
どういう経緯で彼がこの様な眼であるかは気になる。
しかし、そんな事を聞いたらどうされるか解ったもので無い。
だから本能的に生きる事に適した発言をした。
「歯向かう」発言を。
「ほっほ~、無理をしなさんなよ。怖いんだろぅ?
彼の力が何時、自分に来るか」
口調は飄々としているが決して笑っていない眼で語る。
そして、当たっている。
シェンフォニー様の記憶が戻った時、己の獣性に呑み込まれ、私に危害が及ぶのが怖かった。
でも、それは過去形だ!
私は誓ったんだ。シェンフォニー様を失わせないと。だから、言う。
「いいえ。来させません。
彼はそう簡単に変わらない。私がそう信じるから、そうなのです!」
暴論だ。だが、何故だか心のどこかで確信があった。
そしてタオ君は眼を弓にする。気づけば威圧感は去っていた。
同時に、シェンフォニー様への不安も何処かに行っていた。
153 名前:サスライ☆08/08(土) 17:18:45
俺、新木 タオが雪さんに聞くに至った経緯には次の様な事がある。
始めてシェンフォニー教諭を見た時だ。『コイツはヤバい』と感じた。元々上流階級の家柄、ヤバい人間には良く会うが、アレは別格だ。
なんと言うか、ヤバい人間が変装してもヤバさが抜けないのに似ている。
そこであの雪さんとの会合である。主が心配だからで本当にアソコまで心配するか?
いや、あれは自らも心配している。
そこから至った答えが、『恐怖』という感情。
彼女はシェンフォニー教諭の何かを恐れている。
気付くと俺は教室を飛び出していた。
聞きたい。彼女は恐怖で縛り付けられているのか、信頼を結んでいるが何故か恐怖を感じているか。
だって他人事じゃないから。俺自身が恐怖を帯びざるを得ない環境で育った人間だから。
「羨 ましいなぁ…シェンフォニー教諭」
雪さんに聞いた後、廊下で呟く。
恐怖の対象でありながらあんなに信頼を寄せてくれている侍女が居る。
どこまでも遠く感じる廊下をサングラス越しに見た。サングラス無しでは常人と接せ無い世界。
真っ暗だ、怖いよ…。
最終更新:2010年05月08日 17:48