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銀田一 雪さんとシェンフォニー様と後、なんかの話 続き11

258: 名前:サスライ☆10/08(木) 17:02:11
 現代バージョンのシェンフォニー様が、珍しくシリアスな顔をして、私は魅入って「何かネタに出来ないかな~」とか考えていると、晶ちゃんが動いた。

「…駄目。暴走は危ないから」
「だ~が断る。
俺は、他人の意見にNOと言うのが好きなんだ。
それにだ、晶ちゃんと、俺なら、十分に止められるだろう?
兎に角、俺は変わらないさ」

 口調は何時もと変わらない、ちゃらんぽらんな感じ。なのに不思議と、重くて低い声に、感じる。
 目付きも、何時もと変わらない、緩いタレ目。なのに不思議と、三白眼よりも鋭く感じる。
 その力を人は、【魂】と呼ぶのだろうか。

「…そう、か」

 晶ちゃんは本棚から、一冊の本を引く。
 すると壁を作るブロックの一つが、開いた。いや、正確には、ブロックに見せた隠し棚だが。
 晶ちゃんは隠し棚に手を入れる。そして何やら、金色の棒の様な物を取り出した。
 よく見れば、飾り付けがされている事が分かる。
 更によく見れば、輪帝国の紋章が入ってる事が分かる。
 そして更によく見れば、ソレは鞘に入った剣だと分かった。
 私はその剣の名前を知っている。輪帝国帝王にしか持つ事を許されず、鬼の心臓を貫いた剣。

「…これは、王剣・輪王。
悪いけど、通さないよ?」

 晶ちゃんは、顔を真っ赤にして、目を潤ませて叫んだ。此処まで感情を出した晶ちゃんは初めて見る。

「だって!シェンフォニーが居なくなったら皆で愉しめ無いじゃないか!
約束したじゃん、『宴会には、また呼んで』ってさぁ!!」


261: 名前:サスライ☆10/09(金) 19:52:07
 ボクは剣を見せるが、シェンフォニーは至って冷静だった。まるで、子供をあやす顔つきで此方を包む様に語る。

「ほう。
だけど、いかんでしょ?
俺を殺したら、元も子も無い」
「知っ ているよ。
だから戦えない程度にする」

 顔つきは、まだまだ余裕だ。
 寧ろ、遊んでいる。
 しかし、見下している訳でも無い。それが逆に苛つかせる。
 優し過ぎるよ…。

「…足を斬る」
「そりゃ怖いな。
で、失敗したらどうするのさ?」

 寒くも無いのに、指が震えた。その原因は、心が冷えたからだろう。
 様々な負の感情が、ボクの小さな心を、取り込もうとしているのだ。
 それでも!
 ボクは、ありったけの勇気を振り絞る。視界が涙でぼやけて、振り払ったから直ぐに元に戻る。

「死 んでやる!
失敗したら、死んでやる!」
「あんま、物事は勢いで言う物じゃないよ?
疲れるから」

 苦笑いを浮かべて、此方に目を合わせて来るシェンフォニーに対してボクは駆けた。何よりも速く。常人では捉えられないスピードで。
 狙いはシェンフォニーの左足。
 抜刀のタイミングは過去最高。失いたく無いんだ!

「…てな、訳で。
口に出すのは、出来る事の方が良いよね」

 金属音がして、シェンフォニーの語りが聞こえた。
 見るとソコには、シェンフォニーに踏み潰されて、しかも折れた剣。
 呆然としてるボクの頭上に、彼は手を置いた。

「大丈夫。俺は強いからさっ、見守っててよ」
「……
…あ、ああ、あああああ!」

 何故だか涙が止まらない。心が熱い。
 悔しいな、安心している自分が居る事が。


262: 名前:サスライ☆10/10(土) 20:04:28
 たまには、シェンフォニーのトコにでも、遊びに行こうか。
 私、天童 宗厳。
 ピッチピチ(死語)の約10歳。帝国が人形兵と鉄兵を起用して、さっさと滅んだから意外と若かったりする。
 とは言っても、人格は故人の、女兵士を基にしてるらしいから、精神年齢は高かったりする。

「…ロリババアって言うなよ!?」
『いや、何を突然』
「ひゃひ!
ク、クロガネ!?居たのか、居たならノック位せんか!」
『野外だから、無理』

 電波で小うるさく抗議をするクロガネ。よく考えたら、クロガネは室内に入らない。
 ん、そんな巨体が見えない程の距離からの電波だったな。

「て、 事は…まさか、独り言が無意識の内にそんなデカく!」
『そうだな。始め聞こえた時は見逃そうと思ったけど、こうも長い時間、デカい声で喋られるとなぁ』
「バ、バカァ~~~!!
聞こえたなら、さっさと言わんかぁ!
あ、でもそれだと何か多く言われそうだ!!」
『そうだな。過去にどれ程、似たケースがあったか…。えぇと、例を上げるなら、
メソ…』
「うわぁ~!言うな言うな言うなぁ~~!!」

 顔をクシャクシャにした私は、頭を抱えてしゃがみこむ。恐らく、耳まで真っ赤だろう。

 拝啓、社博士。
 作中からハブられたりしてるけど、私は元気です。


265: 名前:サスライ☆10/11(日) 11:36:19
 これは、宗厳と私、向日葵 社が別れた、その後の私の話である。

「も しも、私が帰って来たら…
いや、よそう。科学者らしくないが野暮というものだな」

 そう言って白衣を翻し、月光を正面へ。タイミングも完璧に、それは、宗厳にとって印象深さを作る。
 フフン、格好良いだろう!正に芸術的!嗚呼、美しい、なんて美しいんだ!!

 私は芸術が好きだ。だから、発明が好きだった。
 ある本で読んだ事がある。「おしなべて観察者を無言のままに触発する人間の触発作用」、それが芸術の定義だと。
 思ったのだが、ベクトルが違うだけで、発明も同じでは無いか?それを考えると、『アレ』を失敗作で済ませていいのかなと思う。

 『人形兵に千鳥流を使わせる為のプログラム』を。
 何故か暴走するから、封印しているが、もしかして、私の捉え方が間違っているのかも知れない。
 そこで私に、ある閃きが浮かんだ。

「…まさか、暴走の原因は」

 それを確かめる為に、私は助手に研究所を任せて、プログラムが封印されている場所。
 井時の元へ向かう事にした。井時に向かって私は、戸惑いなく言って見せる。
 まるで、地雷を踏んだが、突っ走る様に。

「井時。
あのプログラムなんだが、【私に】入力してくれ」
「……ブハァ!」

 取り敢えず、予想通りに井時は吹き出した。


266: 名前:サスライ☆10/11(日) 12:05:48
 ボクは混乱していた。
 思わず、自分を攻撃してしまう程に。しかし、頬をつねっても痛いと言う事は、これは現実らしい。

「…えぇと、秀才に良くある、ノイローゼってヤツ?」
「いや、大丈夫。ついでに言えば、研究し過ぎで、アホの衝動に目覚めた訳でもないさ」

 確かに、社は何時も通りだった。小さい身長に、白衣に、シルクハットに、小さい身長に、伏せ目に、小さい身長と。
 ボクは社に考えを聞く事にした。

「うむ。
先ずは本国から、技術者不足の知らせが、届いた。
しかし、あの国は近い内に間違い無く滅ぶ。
私は、此処で作った絆を失いたくない。」
「早い話、死にたくないと」
「話が早くて、良いことだ。40Y追加だな。
暫く、此処で隠れさせて貰う。尚、私が本国に行く船は、沈んだ事になっている」
「…Yって何さ」
「今考えた単位だから、後でゆっくり会議で決めよう」

 やっぱりコイツ、ノイローゼか、なんかじゃないか?兎に角、グダグダしてても話が続かなそうなので話を続ける。
 何故、プログラムを己に入れるか。

「芸術は、押し付ける物では無い。無理に感性を押し付ければ、それは拒絶反応が出て当然なんだ」

 …だから、その芸術を一番理解している、作者が実験台となる訳か。
 しかし、あのプログラムは、笑師範を筆頭とした、様々な人々の魂の言葉。
 それに耐えきれなかったら廃人にもなりかねない。

「覚悟の上さ。
それに、どちらにしろ私は抑えられないんだ。
心が熱くなるコレを
『試したい』ってさ」

 白い歯を見せて、笑っていた。


267: 名前:サスライ☆10/12(月) 22:08:44
 仮面がある。
 材質は木に見える。
 しかし、その正体は強化繊維、つまり、化学合成物質だ。
 私はコレが何故、井時の部屋に在るかを知っている。コレこそが、千鳥流プログラム装置だから、此処に在るのだ。
 決して、一人仮面舞踏会をして、人に見つけられ、恥ずかしさで「ギャー」と叫んで逃げるのが井時の趣味では無い。
 むしろ宗厳の趣味だと思う。

『捏造せんで下さい!』
「…?
井時よ、今何か言ったかね」
「…いや、別に。研究し過ぎで君がボケたんじゃないの?」

 不思議な空耳。まあ、そんな事は、どうでも良い。
 風の振動を、声とでも勘違いしたのだろう。

 この仮面を付ける事で、千鳥流の入力は完了する。
 しかし、人形兵なら割と簡単に済むが、人間だと時間がかかったりする。
 それはきっと、人形兵の心が純粋だから。純粋だから、我に囚われず、現実を受け入れる事が出来るのだ。

「井時。
人間を保存するカプセルは無事だね?」
「…うん」

 井時を発見した時、井時を保存していたアンドロイド保存カプセルも回収した。
 それに改造を加えて、人間を保存するカプセルを作る事に成功していた。

「人は経験を得れば、変わる。あの太子の様に。
さて、井時。この仮面を被って、千鳥流と言う経験を得た後、私はどんな人間になっているか分からない。
耐えられなくて、廃人かも知れない。力を得て、外道になっているかも知れない。
しかし、しかしだ。
その中で、【私】が残って居たら、また会おう」

 仮面を被り、処理に困る情報が流れ込んで来る。
 意識を失いつつも、倒れているのが自覚出来た。
 まるで、墜ちている心地だった…


268: 名前:サスライ☆10/13(火) 20:08:20
 此処は何処だ。
 私は誰だ。

「この仮面の男が、社博士だとはねぇ」
「…恨む?君を裏切った事を」

 目の前の男は誰だ。
 目の前の女は誰だ。
 何故、こうにも懐かしい。

「いんや、恨まないさ。彼は彼なりに戦い、俺はソレに気付かなかった。
俺は敗者さ。
敗者は何も言えない」

 柔らかく、飄々と動く目の前の男の台詞には、独特の深みがあった。
 この男は、この男である事を自覚しているからだ。

 ならば
 私は何だ、私には何がある!
 解らない。解らない解らない解らない解らない解らない解らない解らない解らない解らない解らない…
 ワカラナイ。

「で、ボタン押したんだから、社博士ってば、意識はある筈なんだよね?」
「…廃人じゃ無ければ」

 記憶の奥底に光明が見えた。それは、知識。
 私が、私である為の命綱。
 四肢を用いて、モノを壊す為の、知識があった。

 コレが、私が私である為に存在するなら、それに従おう。
 私は何故、此処に居るのだ?それは、壊す為だ。

 先ずは、目の前の男を壊そう。四肢に異常は無い。プログラムから、行動の為のフォルダを探す。
 フォルダ名;【龍虎咆哮】
 体に力が沸く。
 心臓と脳が高ぶり、そこから発せられる力が臓器と連結して、増幅した力の流れは髪の先まで達する心地だ。

 さて、壊すか。
 私が私である為に。


269: 名前:サスライ☆10/14(水) 19:34:21

 それは奇襲だった。
 社博士の手刀は、カプセルの強化アクリルを貫き、俺の顔面を切り裂こうとしていた。
 突然で焦ったが、バックステップで回避して、抑え込む。

 その予定だった。
 が、何か違和感があった。避けた筈だが、右頬から鼻を通して左頬にかける、熱。
 流血しているからだ。深々と入った傷口から。

「こ りゃ、参ったね」

 軽く言って見せるが、実は、かなり焦っている。と、言うのも、俺の龍虎咆哮では、あそこまでの肉体強化は出来ないからだ。
 つまり社博士は、才能なら俺を超えるかも知れない。

 さて、取り敢えず血止めかな。
 俺は掌を合わせ、目を閉じ、瞑想。
 神経を顔の器官に集中させる。
 千鳥流瞑想術、【蓮華】。傷口の筋肉を締める事で、止血を行う上に、ホルモンを操作して治癒能力を高める。

 その作業の内に、社博士はメリメリとカプセルを破壊しながら、這い出て来た。

「や~れ、やれ。君はアレか、ジェイソンか?タイラントか?シュワちゃんか?
っての!」

 最後の一言のタイミングで、今度は、右足で飛び蹴りを放って来る。今度は、受け流し、足を掴む。
 しかし、掴まれた足を軸に、俺を地面代わりにして、左足回し蹴りを放って来た。俺は下にしゃがむ事で回避、そのまま間合いを取る。お~怖い、頭が吹っ飛ぶトコだった。
 まあ、そんなヤツに言う事は一つ。

「まったく、危ないじゃないか!」


271: 名前:サスライ☆10/16(金) 13:47:58
【BGM;L・O・V・E!OUTSIDER】

 君が俺と戦う事を望むならば、俺はそれに答えよう。
 社博士に対して、そう思う。しかし、本当にそうだと言う、疑念も浮かぶ。
 もしかしたら俺は只、この傷に対する恨みで、戦っていないか?
 もし、そうならば、それはエゴだ。国を腐らせて逃げ出した貴族と変わらない。しかも、大義を盾にしているから、俺のは尚、質が悪い。

 そこまで考えて、笑った。
 希望だの、恨みだの、これは、そんな大層なモノじゃ無いだろう。

 俺は、動きに合わせて、上から拳を繰り出し、社博士はアッパーを繰り出していた。
 俺の方が早い。
 しかし、相手は避けずに、額で受ける。
 「メリ…」と鈍い音が仮面の繊維を裂く音で、しかし、衝撃は奥まで伝わる筈だ。
 が、怯まずにアッパーを振り切った。これはアレか。
 笑が、ロケットランチャーを受けた時の、【玄武咆哮】って技か。笑の記録が基になってるから使えるんだな。

 俺の手刀は無駄になったのかと言えば、そうでは無い。
 アッパーの軌道をずれさせて、顎を砕くのを、顔の左半分の下から上までの肉をエグれさせる程度に留めた。

 距離を取り、大流血で俺は笑う。

「十字傷の方が格好良い。ありがとよ。格好良くしてくれて。
良いぜ、楽しもうぜ、
利口な自分探しも、陰湿な戦争も無い。
只の喧嘩をよ」

 そして叫ぶ。

「やああああぁって…やるぜ!!」

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最終更新:2010年05月08日 17:55
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