34: 名前:HARU☆01/16(日) 11:45:12
毎日でも奏太くんに会いたい
「くるみ、顔」
「えぇ~?」
「…気持ち悪いほどにやけてんな」
もう満里奈とのりは呆れ顔
でも気にしなーい
私は今幸せだもん
「あの、相沢」
声をかけられて後ろを振り向くとクラスメイトの原くんがいた
「…ちょっと、今いいかな?」
「…あ、うん」
満里奈とのりに「行ってくるね」と言い、二人で教室を出る
私だって馬鹿じゃない
自慢する気も自意識過剰なわけでもないけど
相手の顔を見れば何の用かくらいもうさすがにわかる
でも、みんな外見だけでしょう?
中身はただの年下大好きな萌え女子なんだから
「あのさ、か、…彼氏できたって本当…?」
「うん」
教室の外の廊下でそう質問される
周囲は「またくるみちゃんに告ってる人がいる」という目で見る
日常的な光景のように
「そっ、か…。俺じゃ駄目かな…」
「ごめんなさい」
余計な期待は与えない
だって本当に好意がないのに希望や思わせ振りな態度は最低だから
だから綺麗にシンプルに断るんだ
もし自分だったらそうしてほしいから
35: 名前:HARU☆01/16(日) 11:59:19
「おかえり」
「お疲れさん」
教室に戻ると満里奈とのりが迎えてくれる
たぶん言わなくても何があったかわかっている
「あっ!奏太くん!」
素早く窓に張りつく
外に見えるのはジャージ姿の奏太くん
もっ、萌えぇぇーっ!
似合いすぎ!さすがスポーツマン!
体操服の下に黒い長袖を着て、下はジャージを無造作に捲り上げ足首が見えている
あぁ……、触りたい
「くっるっみっ!恥ずかしいから窓から離れなさい!」
「いぃーやぁあぁー!」
満里奈が身体ごと離そうとするが意地で窓にへばりつく
……あ、
奏太くんがこっちに気付き目が合った
「……え」
目が合ったのにパッとそらされた
恥ずかしいから…、ってわけじゃないと思った
だって一瞬だけど悲しそうな顔が見えたから
36: 名前:HARU☆01/16(日) 16:29:10
奏太くんの顔が頭から離れない
……会いたい、会って「何でもないですよ」って言って欲しい
「…はぁ」
軽くため息をつきながら学校を終えて帰宅する
あれから奏太くんを見かけることもなく何も聞けないまま
…電話、した方がいいのかな
いや、なんでもないことかもしんないし私の早とちりかも
「くるみちゃん」
後ろを振り返ると青いネクタイのうちの学校の人
…三年の先輩
「はい?」
「聞いたよ、彼氏できたって。年下だって?」
「…はぁ」
知らない先輩、だけどどこか自信があり気で上目線
だから年上は嫌なの
「でも大丈夫?年下って頼りにならないし。ほら、あっちの方も上手くないでしょ?」
しっ、下ネタ…っ!
てゆうか下心満載じゃないこの先輩!
後退りするが距離を詰めてくる
「くるみちゃんみたいな可愛い子、大人の男の方がいいと思うんだけどな」
「おっ、お断りします!それに年下にしか興味ないですから!」
……あ、
先輩の後ろに赤いネクタイの……、ってか
「か、奏太くん!」
先輩を追い越して奏太くんの所へ走る
そして腕を握って先輩に向かって、
「私の彼氏です!だからもう関わらないで下さい!」
すると先輩は頭をポリポリかき、呆れたように帰って行った
ふぅっ、助かった
奏太くんにも会えて一石二鳥~、って…
……なんでまたそんな顔してるの?
37: 名前:HARU☆01/16(日) 16:56:23
「くるみ先輩、やっぱ人気なんですね」
「えっ、…あ、巻き込んじゃってごめんねっ」
口は笑ってる
…でも目は悲しそう
それにいつもなら腕に抱きついたりしたら
照れながら「離して下さい」って抵抗したりするのに
「奏太くん?」
「…先輩は俺が年下じゃなかったら……」
年下じゃなかったら…?
なんでそんなこと聞くの?
「奏太くーん?奏太くんは年下じゃん」
「…そうなんですけど、その…」
何か言いたそうだ、けどわからない
ただ何となく背伸びをして頭をぽんぽんと撫でる
「何?言いたいことは何でも言って?」
「…子供扱いしないで下さい」
「え?」
どきん、とした
声が一瞬怒ってるようなものに聞こえたから
今日の奏太くん…、変だよ
「か、奏太くん?」
「…年下でも中身まで子供じゃない…っ」
「何言って…っ、か、奏太くんっ?」
少し声色が変わったと思うと腕を思い切り引っ張られ入り組んだ道に率いられた
「ねぇっ?奏太く……んっ」
男の人だった
壁に押さえつけて強引に唇を重ねる奏太くんの姿は男の人だった
も、萌え……とか言ってる場合じゃない!
状況理解と心臓の爆発で死んじゃいそうなんですけどっ…!
40: 名前:HARU☆01/17(月) 18:25:16
うきゃーっ!
ここここんなに密着してるよ!?
…って、萌えてる場合じゃない!
身長差のせいか、ずっと真上を向いたままの状態で
そこに奏太くんのくくく唇がかぶさってる!
「んっ、…う」
強引に浸入してくる奏太くんの唇は男の人だ
正直キスなんてしたことないからどうすればいいかわかんない
てゆか初キスがこれって難易度高すぎ!
どこか乱暴に奏太くんの舌は口内を乱す
苦しくなり奏太くんの胸をどんどんと叩く
「……あっ、」
奏太くんは慌てたように唇を離し、目を大きく見開いた
「…っご、ごめんなさい!」
「ぷはあっ…、びっくりしたあ」
大きく呼吸をする
奏太くんを見ると顔が真っ赤だった
…まあ、私も赤いし身体が火照ってるんだけども……
「…今日の奏太くん、何かおかしいよ…?
気のせいじゃなかったら今日体育の時間
目合ったのに無視しちゃうし…、なんで?」
「…え、えっと…っ」
ずっと何か言いたそう
なんで口ごもるの?
41: 名前:HARU☆01/17(月) 18:40:52
「せ、先輩が年下好きって…」
「へ?」
年下好き?
いや、まあそうだけども…
「…そんなこと?ってゆうかそれが原因?」
「そ、そんなことじゃありません」
何やら必死な様子
こんな一面も萌え。
「年下が好きってことは…、俺にも当てはまってる…」
「うん」
「でも、逆を言えば俺が年下じゃなかったら…っ、
くるみ先輩は俺のことを好きになることすらなかった…」
……あ、
ようやく奏太くんの言いたいことがわかった
そっか、そうだったんだ
「不安…、だった?」
「………」
「私がそれだけの理由で告白したって…」
奏太くんは言葉を発しはしなかったけど、目で伝わってきた
奏太くんの頬に手をあてる
「私は年下好き。なんてゆうかきゅんってするし萌えちゃうんだ」
えへへ、と笑う
「でもね、奏太くんのことそれだけじゃないよ?
萌えるのは年下の魅力っ、奏太くんも該当者っ。
……好きなのは奏太くんだけが該当者、なんだ」
奏太くんの顔から力が抜ける
言葉にすれば伝わる
「恋する気持ちは君にしかないんだぞ?なんてねっ」
指を差してキメると奏太くんは柔らかく笑ってくれた
42: 名前:HARU☆01/17(月) 18:55:58
「わっ、奏太くん?」
奏太くんはヘタヘタと力が抜けたかのように地面に座り込んだ
どっ、どうしたのかな?
「大丈夫?体調悪い?」
「…や、違くて…ホッとしちゃって…」
「へ?」
口に手をあて顔を赤くしてそう言った
かっ、可愛いっ……
「あーっ、すみません!なんか勝手に落ちちゃって…。
…し、しかも、先輩に断りもなく……っ「キス?」
あ、顔が更に赤くなった
私も奏太くんの目線にしゃがむ
「なかなか萌えたよ?」
「…もー、嫌だぁ…」
「なんでー?だって私のこと好きだからしてくれたんでしょ?」
「……先輩ストレートすぎる」
いひっ、と笑って真っ赤な顔した奏太くんの髪をわしゃわしゃとかく
大きい犬みたい
…や、犬より可愛い生き物かも
43: 名前:HARU☆01/17(月) 22:49:35
正直悲しくて、腹が立っていた
年下だから、
そんな簡単な理由から先輩が傍にいることに
先輩の無鉄砲なところとか真っ直ぐなところ
発言に問題がありつつも可愛いと思ってしまうところ
なんで今まで知りもしなかった人のことでこんなに気持ちが動く?
なんでこんなに傷ついたりする?
答えなんてとっくにわかってた
ただ、くるみ先輩が好きだから
初めて会ったその瞬間から間違いなく惹かれてたんだ
「奏太くん、帰ろっ」
年下とか年上とか関係ない
ただ俺が数日見てきた「相沢くるみ」が好きなんだ
「何?またちゅーしてくれるの?」
「っんな…!先輩!」
「半分冗談だよ~」
あなたに振り回されるのも嫌いじゃないんです
44: 名前:HARU☆01/18(火) 19:08:22
付き合って数週間立ったけど奏太くんとは順調!
相変わらず萌えさせてくれるし可愛いし
なんてゆうかこんなに幸せでいいのかってくらいに
「でねっ、今日も一緒に帰るんだあ」
「うざー」
「満里奈」
満里奈が顔を歪めて暴言を吐く
のりは相変わらず冷静で淡々としている
天気の良い午後の時間
お昼のこのいつもの時間が大好き
「で、そろそろ付き合って一ヶ月が経つわけだけど」
「うん?」
「その先の発展はないわけ?」
「…うん?」
満里奈は手に顎を乗せて紙パックのジュースをただ飲みながら言う
その先って、…その先?
「えぇぇえぇえぇっ!」
「うっ、うるさ!」
「むむむ無理無理無理!ちゅーだけでもいっぱいいっぱいなのにっ!」
「ばっ、大声でそんなこと言うなっての!」
満里奈が私の口を焦って塞ぐ
のりも困り顔の様子
「くるみ、あんた前さ襲われるのが萌えとか言ってなかった?」
「もご…、ぷはっ、……い、言ってたけど…」
のりの問いに答えようとすると満里奈が手を離してくれた
…確かにそれは萌えって言ったけど……
でも今は幸せだけど前みたいな余裕はないってゆうか…
ぶっちゃけ初めてのキスですら心臓破裂しそうだったのに
その更に先…ってなると萌えとか言ってらんない状態になってしまいそうで
正直…進むのが少し怖い
45: 名前:HARU☆01/19(水) 20:28:30
「くるみ先輩?」
「えっ、何?」
奏太くんと放課後帰宅中
なのに、上の空
呼ばれて慌てて我に返る
「どこか体調悪いんですか?」
「ううん、何でもないよ」
あぁ~、昼に満里奈が変なこと言うから頭でエンドレスしちゃってる
そもそもあの日以来、奏太くんは私にキスはしない
残念なようなホッとしたような
…まあ構えちゃってる自分もいるんだけどね
「無理しないで下さいね」
心配そうに顔を覗き込んでくれる
もうそれだけでキュンキュンです
ご飯三杯いけちゃいます
「…あ、また萌えとか思いましたね…」
「えへ」
照れたような困ったような顔をする奏太くん
「もー」と、頭をぐしゃぐしゃとかく
「可愛いぞ?」
「…はいはい」
そうだよ、私だけありもしないことに悩んだって仕方ないよ
今は普通に幸せなんだから
先走らない先走らない
「ずっと傍にいてね?」
「また…、恥ずかしいこと言う…」
「約束っ」
小指をさしだすと奏太くんも恥ずかしそうに小指を絡ませた
私は知らなかったんだ
この小指の約束に不安を感じる日が来るなんて
49: 名前:HARU☆01/20(木) 20:29:48
「奏太くんが告白されてる現場を見た」
「え」
昼休み、下の自販機に飲み物を買って行っていたのりが
帰ってくるなり普通にジュースを飲みながらそう告げた
「自販機裏の駐車場で、同い年の子に」
「う、そお」
「ショートの女の子。まあ普通に可愛い感じの子?」
ま、まじで?
そんな話一度もしたことないしそんな感じもなかったし…
「くるみ、箸止まってる」
「のり、あんた淡々としすぎ」
満里奈がのりの話し方に突っ込みを入れる
そこでハッと我に返る
「へっ、返事はっ?奏太くん断ってたっ?」
「そこまで聞こえなかったよ。まあ、普通に考えて断ってるっしょ」
「だ、だよね」
ホッとしたが内心焦りまくり
いやいや、変な汗までかいてきたよ
「ま、可愛い顔してるもんね奏太くん」
「高校入って2ヶ月近く経つんだから奏太くんの内面知って
いいな、好きだなって思ってる人はいてもおかしくないと思うよ」
ががががーんっ!
完全に安心しきってた…
そりゃあんな萌え男子ほっておかないよね…
ど、どうしよう!
52: 名前:HARU☆01/21(金) 19:44:25
不安になって一年生の教室に向かう
奏太くん…、ちゃんと断ってくれたよね?
くるみが通ると一年の廊下がザワザワする
先輩?
何、あの可愛い人
二年の相沢先輩だよ
あぁ、北條くんの
奏太くん大丈夫かな?
あぁ~っ、不安だよう!
足を進めていると前から女の子が歩いて来る
そのまま通りすぎるのが普通なはずなのに
何故だかその子の視線が私から外されない
その女の子は前髪を七三に分けていて胸まである綺麗な黒髪が印象的だ
顔は綺麗めな顔をしてるんだけど…、眉間にしわがよっている
てゆうか、ガン見されてる…?
「あんたが相沢くるみ?」
「へ?え、あ、…はい」
目の前で足を止め、腕組みしたままその子はそう言った
「本当に先輩?私より子供じゃん」
な、ななな何この子ーっ!?
54: 名前:HARU☆01/21(金) 20:01:40
ふんっ、とその子は馬鹿にしたように鼻を鳴らした
「二年の相沢くるみってそんなに大したことない女じゃん」
「たっ、大したことないとか周りの勝手な評価は知らないけど
いきなりあなたにそんなこと言われる筋合いなんてないんだけどっ」
「自分のこと可愛いとか思ってんでしょ?」
んな…っ、話を聞けってのーっ!
身長のせいなのはわかってるけどこの子に見下されると嫌な感じ!
「初対面の人にその態度はなくない!?私あなたに何かしましたか!?」
「別に。ただ気に食わないだけ」
シレッと目も合わさずに言う
胸がムカムカしてくる
「あなたねえっ「くるみ先輩!?」
出そうな言葉がぐっと止まる
奥のクラスから出てきた奏太くんが驚いた様子でこっちに向かって来る
「…と、朱美っ?」
「あ、あけみ?」
奏太くんがその黒髪の子をそう呼んだ
知り合い…ってゆうか、朱美?
「これ、奏太の彼女気取りでしょ」
「…っ、こら!」
これ、と私を指差す
しかも彼女気取りって…!
「彼女ですっ!」
「わぁあぁっ!くるみ先輩!」
奏太くんが顔を赤くして私の口を手で抑える
「みんないるのに大声でそんなこと言わないで下さい!
…あと、朱美?先輩にこれとか失礼だろ。ちゃんと謝って」
「やなこった」
「朱美!」
…なんか、違う意味でムカムカしてきた
なんでそんな親しげなの?
56: 名前:HARU☆01/21(金) 20:47:17
「と、とりあえずくるみ先輩は戻って下さい!」
「なんでっ?私奏太くんに話があって…」
「帰り聞きますから!今は目立っちゃうんで…、ね?」
ずきゅーんっ!
その「ね?」の子首傾げは反則だよお…
「…わかった。帰り、ちゃんと聞いてね?」
「約束します」
奏太くんは頭を優しく撫でてくれた
朱美ちゃんに目を合わせると変わらずの見下した顔
むかつく…けど、奏太くんの言う通りに私は二年の教室に帰って行った
朱美ちゃんと仲良いのかな…、と不安を抱きながら
「で、くるみ先輩に何であんな態度とってんの?てか知り合いなの?」
「全然。ただどんなもんか知りたくてさ」
「なんでそんな上から目線…」
奏太は頭をポリポリとする
「本当にあのちびっこが彼女なわけ?」
「こらっ、先輩だっての!」
朱美は腕組みしたままチッと舌打ちをする
「好きなの?」
「え?」
「あの先輩のこと」
朱美は奏太を横目で見る
ポケットに手を突っ込み、奏太は顔を赤くする
「……す、き」
少し途切れながら恥ずかしそうに言う
朱美はその顔を見て、視線を前に戻す
「…あっそ」
57: 名前:HARU☆01/22(土) 17:28:06
「ムカつく!」
「な、何が?」
教室に戻る早々、満里奈とのりにそう叫ぶ
二人は何が何だかできょとんとしている
「奏太くん何かしたの?」
「奏太くんは何もしてない!」
「じゃあ何なんだよ…」
思い出しただけでもムカッとする
あの人を見下した態度
「子供とか気に食わないとか何で初対面、
しかも年下に言われなきゃなんないの!?」
「おぉ、珍しくキレてる」
「てか初対面?」
のりはキレてるくるみを見て少し面白そうにしている
満里奈の言葉に「そう!」と勢いよく返事を返す
「なんかその一年生に散々小馬鹿にされた!」
「肝が座ってんね、その子」
「しかも奏太くんと超親しげだった!」
怒ってる理由の一番はそれか、と二人はため息混じりに笑う
「名前で呼んでたし、奏太くんその子の扱いに慣れてそうだった…!」
ぐすっ、
と、涙が出そうになる
クラスの男子はそんな半べそなくるみを見てきゅんきゅんしている
「落ち着きなって、ね?」
「うっ…、なんか悔しいーっ、嫌だあぁーっ」
「泣くなっての!」
奏太くん奏太くん
私、不安だよ?
最終更新:2011年05月04日 05:39