萌えます。年下男子 続き3

78: 名前:HARU☆01/26(水) 19:15:26

何を話してるかはよく聞こえなかった


奏太くんが朱美ちゃんの傍に行って、
心配してるような怒ってるような、そんな表情



またそうやって
心配ばっかかけんな
手、見せて
無茶はしないでよ



うわ、私目がいいな

言葉は聞こえないのに奏太くんの口が何言ってるかわかっちゃうわ

これも愛かな、なーんて…


窓を静かに閉める

奏太くんはそのまま朱美ちゃんの手を引いて保健室へと向かったようだ



「なんだ、あの子彼氏いんじゃん」
「ちょっと!…あの男の子はくるみちゃんの…」
「え?…あ、あれが噂の?」



周りの二人の話も気を使った言葉も全部聞きたくない



「くるみ…」
「…平気だもん」



満里奈にもたれかかって強気な発言をするしか涙を止められない






79: 名前:HARU☆01/26(水) 22:52:54

奏太は朱美を引っ張り保健室に連れていく



「失礼しまーす」
「はい、こんにちは。どうしたの?怪我?」



保健室の中村千穂先生(28)

机に向かっていた身体を椅子ごとこちらに向ける



「この人が左腕痛そうにしてるんで見て下さい」
「ちょっと見せてね」



奏太が朱美を差し出すと朱美は不満げな顔をするが
先生がおいでと手招きをするので渋々腕を差し出す



「…痛っ」
「んー、ひねってるぽいわねぇ。冷やす?」
「や、いいです…」
「朱美!」

「…わ、わかったわよ…」



奏太の言葉に仕方なく頷く

先生はそれを見てクスッと笑う



「あとシップも貼ろうね。隣の男の子心配性みたいだから」
「は、はい…」



朱美の照れた表情を見て奏太もふう、と息をつき笑う


一通りの処置を終えるとお礼を言い、保健室を後にする



「ちゃんと家でも気つかうんだよ?」
「わかってるって」



本当?と奏太は不安げに笑うと朱美も大丈夫と笑う



「朱美もっと笑った方がいいって」
「…は?ほめても無駄だからね」



と、また「ははっ」と笑う






80: 名前:HARU☆01/26(水) 23:09:44

賑やかな廊下をひたすら歩く



「で、さっきなんで喧嘩してたわけ?」
「…私なんもしてないし」
「またぁ?」



奏太はため息をつく

また、とは前も同じようなことがよくあったからだ


答えは単純

朱美は外見でわかるように誰に対しても冷めた性格と睨むような目つき

普段からこんな態度のせいで勘違いされたり
相手から反感を買うことが今までも多々あったのだ



「睨んだだろ?って言われた。睨んでないっつーに、てか見てもない」
「…またそれ口に出したんでしょ。火に油じゃん」



朱美はツン、とする

奏太は頭をポリポリとかき、朱美の頭を撫でる



「とりあえず、あんまり反感買うようなことは言わない。わかった?」
「奏太は私の保護者かっての…」



「反抗期の妹みたいなもんかな」と言った奏太の言葉を
朱美は「そっか…」と小さく困ったように笑った




85: 名前:HARU☆01/29(土) 11:26:48

昔から好きなのはいつも年下だった

幼さやあどけなさ、年下独特の敬語

その全部が私の中でどんぴしゃで、萌える要素だった



奏太くんも同じ

年下で且、すごくタイプだったから


…本当に最初はそれだけだった



「…私、面倒くさい女かなあ」
「くるみ…?」



年下=好き
…だったのに変わってしまったのかな



「人を好きになるってもっと楽しくて幸せなことだと思ってた。
 恋愛して付き合って…、奏太くんと一緒にいて幸せで死にそうなの」



他の年下の男の子と奏太くんへの感情がどんどん違っていく



「好きで好きで毎日萌えて幸せで仕方ないのに

 ……時々すごく自分が小さな人間になってしまう」

「…小さな人間?」
「うん」



奏太くんへの感情は好きや萌えるだけじゃなくなったの



「誰にも渡したくないって独り占めしたいって思っちゃう」



ねぇ、奏太くんと一緒にいてわかったんだよ



「そんなの…、ただの我が儘だよね」
「くるみ…」



年下だから奏太くんを好きじゃないの

今は奏太くんだから好きなの


声を押し殺して満里奈にしか見えないように涙を流した






86: 名前:HARU☆01/29(土) 11:53:46

「やったぁー!今週最後の授業終わりぃーっ!」



金曜日の6限目の終了チャイムと同時にくるみが、んーっと伸びをする

早々と帰る準備を始める



「くるみ、大丈夫なわけ?」
「たぶん強がり。いつものように振る舞うことで
 何とか自分を保ってるみたいだけど…、ね」



のりが満里奈に小さく耳打ちをする

明らかに二人には無理しているように見える



「じゃ!また月曜日ね!」
「あ、うん。またね」



くるみは足早に教室から出る

二人はその早さにぽかんとする



「…奏太くん、じゃなさそうだよね」
「完全に会わないようにさっさと帰ろうとしてるな」



廊下を早歩き、というよりほぼ走るに近い状態で駆け抜ける


…今奏太くんに会ってもどんな顔していいかわかんないし

嫌なことたくさん言っちゃいそうだもん…


門を抜けある程度学校から離れた距離をとると
ふう、と一息つき歩くスピードを落としながら歩く



「相沢さん!」



腕を捕まれて少しびっくりして振り向く



「あっ、急にごめんっ」

「…今岡くん?」
「お、俺のこと知っててくれたんだ」



一組の今岡…なんとかくん

苗字しか知らないけど



「なに?」
「…っあの、相沢さんのこと前から見てて可愛いなって…」



あぁ…、いつものパターンだ

追っかけてきてくれたのが奏太くんだったら…

なんて期待をしてしまった






87: 名前:HARU☆01/29(土) 12:18:42

告白されるのは普通に嬉しいこと

でもその内何人が本当の私を本気で好きと言ってくれてるの?

感覚が鈍ってしまいそう



「あっ、年下好きっていうのは知ってるんだけど「好きじゃない」
「え?」



今岡くんの言葉の途中で想いが飛び出した

鞄を握っている拳にぎゅっと力が入る


年下が好き、大好き

でも今はそれ以上に



「年下じゃなくてもいいからぁ…、奏太くんがいいのー…っ」



一番は年下だから、じゃない

"奏太くん"がいいの…



「…な、泣かないで」
「やだぁ…っ、も…、ぐすっ、辛いー…っ」



今岡くんは少し戸惑いながら私を抱き締めた

奏太くんとは違う温もり



「俺だったら…、辛い思いはさせない、から…。
 だから…、相沢さんの傍にいたい、です」



ぎこちない言葉で低い声でそう言ってくれる

わ、私は……



「………!」



どくん、と心臓が大きく鳴った

今岡くんの背中の向こう側に人がいた



「…な、んで……」



驚いた表情の奏太くんが立ちすくんいでた






88: 名前:HARU☆01/29(土) 12:47:35

慌てて今岡くんから離れる

今岡くんも後ろを振り返り奏太くんを見る

でも、よくわからない様子で一度黙って



「じゃあ…、返事考えてくれたら嬉しいな。…またね」



と言って帰って行った


ていうか…、なんで



「なんで泣いてるんですか」
「え…っ」



焦って頬や目に溜まっている涙をふく

その間に奏太くんが距離を詰めてくる



「か、奏太くんはなんで…」
「朱美を助けてくれたのはくるみ先輩だって聞いたんで
 …お礼を言おうと思って。満里奈先輩に聞いて追ってきたんです」
「あ…、そう、なんだ」



…また朱美ちゃんのこと

胸が痛い



「まあ、そんなこと今はどうでもいいんですけどね」



奏太くんはため息をつく

なんか…、機嫌悪いってゆうか…空気が怖い



「なんで抱き合ったりしてたんですか」
「違…!今岡くんはたぶん私が泣いてたから慰めようと…っ」
「なんで泣いたんですか」



言葉が強くて痛い

いつもの奏太くんじゃないみたい…



「あのねぇ、慰めって思ってても下心がないわけないでしょう。
 何かされてからじゃ遅いんですよ。それくらい気付いて下さいよ」



苛々したように頭をかきながら言う

唇が震える


初めて奏太くんを怖いと思った






89: 名前:HARU☆01/29(土) 13:43:41

「ご、…ごめんなさい」



目を見れない

俯きながらでしか言えない謝罪



「さっきの人、告白ですか?」
「あ、うん…。たぶん…」
「ちゃんと断ったんですか?」



その質問に黙ってしまう

奏太くんじゃなきゃ駄目とは言ったけど
今岡くんは返事を考えてほしいと言っていった

…てことは、返事をしなきゃいけないってことだから



「…断ってないんですか?」
「やっ、そうじゃなくて…、なんてゆうか…」



上手い言葉が見つからない

これ以上奏太くんの機嫌を損ねないように言葉を必死に探す

それが余計に奏太くんを苛つかせていたみたいで



「…泣いてるし、男の人と抱き合ってるし、何も言わないし…

 もしかして否定する必要はないってことですか?」



…な、んで?

なんでそんなこと言うの…

今岡くんと抱き合ってるそれが合意してるなら

…奏太くんはそれでいいってこと……?



「…な、こと言わないで……」
「え?」



涙が止まらない



「そんなこと言わないで…!」



気持ちが爆発する






90: 名前:HARU☆01/29(土) 14:11:38

止まらない止まらない

不安も悲しみも何もかも



「奏太くんがいけないんだよ!不安にさせるから!」
「な…っ!」



言っちゃいけないのに言葉が止まらない



「私は我が儘なのやきもちやきなの!
 朱美ちゃんのこと大切なのはわかるけど…っ、不安で仕方ないの!」
「あ、朱美?」



奏太くんは朱美ちゃんの名前が出て頭に?マークを浮かべる



「私はずるい女だから…っ、
 朱美ちゃんより私のこと大切に思っててほしいって…っ

 こんな面倒くさい女の子嫌でしょ、嫌いでしょ…?」



はぁはぁと息をする

涙は止まらないけど唇の震えはもう治まった


あぁ…、私最低だな

奏太くん怒らせて困らせて



「…もっと良い人いるよ」
「くるみ先輩…?」



震える手をぎゅっと握りしめて、笑顔で正面を向く



「さよなら」



奏太くんの言葉を聞かないまま走って逃げた


大好きでした




93: 名前:HARU☆01/29(土) 19:08:38

「くるみー?ご飯はー?」
「いらなーい…」



良く晴れた日曜日の午後

土曜日も部屋から出なかった

同じく今日も朝から部屋から出ずにベッドの上で抱き枕と寝転がっている


お母さんもさすがに心配して部屋までご飯を
持ってきてくれるけど全然食事が喉を通らない


携帯を開く

メールも電話もなし



「……ま、…別れたんだしね……」



パコン、と音を鳴らして携帯を閉じる


最低だな、私

もっと気持ち良く別れられなかったのかな

恋人初心者だもんね

…きっと奏太くんならもっといい人がいる



「……ぐすっ」



たったの二ヶ月

それでも幸せだったの

大好きだったの…っ


人生の半分以上の涙を流しきったよ






94: 名前:HARU☆01/29(土) 19:24:27

コンコン、と部屋をノックする音がする



「くるみー?入るわよー?」



お母さんの声

私の返事を待たないままドアを開ける


ベッドに転がって伏せたまま「何…?」と問う



「……くるみ先輩」



一瞬息が止まりかけた

勢いよくベッドから起き上がるとお母さん、と



「か、…奏太くん……」



慌てて目をごしごしとふく

お母さんは「ゆっくりしてってね」と言い、下の部屋に下りていった

そういえばインターホンの音が聞こえたような気もしたけど…



「…目、真っ赤じゃないですか……」
「あ、…う」



私服姿の奏太くん

制服と違って細身に見えるし雰囲気も全然違う

正直萌える…、なんて



「ご飯食べてないって…、さっき聞きました」
「嫌だ…っ、見ないでっ!…私今すごい不細工だから…っ」



泣き腫らした目に整えてない身なり

見られたくないから両腕で顔の前を隠した


ギシ…、と奏太くんがベッドに踏み込む音がする



「顔、見せて下さい…」
「や、やだ!…てゆか帰ってよ!さよならって言ったじゃん…っ」



私の固めた手を奏太くんが優しく解く


ゆっくり見上げると悲しそうな顔をした奏太くんがいた






95: 名前:HARU☆01/29(土) 19:44:13

心はまだ好きだと叫ぶ



「俺は一言も別れるなんて言ってません」
「私がそう決めたの…っ、もう奏太くんは彼氏じゃないの…!」



静かに奏太くんが詰め寄ってくる

身体の震えが止まらない



「私は…っ、奏太くんといると辛いの…っ、苦しいの…っ。
 あ、朱美ちゃんのこと大切な幼なじみなのはわかる…っ。

 …でも、どうしても不安なの寂しいの…っ、ずっと私は泣くの…っ」



でもだからって朱美ちゃんと話すななんて言えない

奏太くんの大切な人を奪ったりはできない



「だ、から…さよならするの…っ。
 私も楽になって奏太くんも面倒な女から解放されて…!」
「…前も言ったけど朱美は幼なじみ。それだけです」



奏太くんは真剣にそう言う



「……でも、ね。普通に考えてよ。
 …私が男だったら私みたいな泣き虫で我が儘な女とは付き合わない…」



大好きな人、大好きだった人



「別れた方が奏太くんのためなんだ、ねっ?」



精一杯の笑顔を向ける


奏太くんといたら私が私じゃなくなるから

お互いきっと辛いから



「…ふざけんな」



背筋が凍りそうな声が聞こえた






96: 名前:HARU☆01/29(土) 19:59:27

聞いたことのない声



「か、奏太くん?」
「何今の話全部。俺の意見何一つ関係ないじゃん」



え、…お、怒ってるっ?

し、しかも敬語忘れてません?



「先輩勝手に自分で決めて、勝手に俺の幸せだとか言って泣いてさ。
 いつ俺がそれが幸せだっていいました?
 何時何分地球が何回廻った時でっすっか!?」



こ、子供ーっ!?

驚きで涙もぴたりと止まる



「な、何時何分とか知らないよ!子供!?」
「へー、先輩の方が子供でしょ。泣いてばっかなんだから」
「んな…!」



奏太くんは悪気のなさそうにへらっと言う

む、むかつくーっ!



「先輩が俺を信用してないからそんな答えに辿り着くんです。
 …俺は俺なりに先輩しかいないって伝えてきたはずです」



確かに言葉をくれた

不安な時はいつも私だけ、って…

その度嬉しくて信じて信じて…、


でももしかしたらどこかで疑っていたのかもしれないのかな…?



「だ、って…怒るじゃん…」
「そりゃ先輩が勝手だから」
「違う!…こ、この前とか……」
「この前?」



奏太くんは頭の中を探っている様子だ

そして、あぁと思い出す






97: 名前:HARU☆01/29(土) 20:21:53

思い出すと更に機嫌が悪くなる



「だってあれは怒るでしょ」
「な、なんで」



私がそう言うと、はあ?という顔をする

本当…、子供か!



「なんか知りませんが彼女が抱き合っててしかも泣いてて。
 更に尋ねてもはっきり否定も何もしないし、怒るでしょ普通」
「…だって怒ってたから何言っていいかわかんなくて…、その…」



ぺしっ、と頭を叩く



「余計な誤解を生むでしょ。すぐに否定して下さい」
「あ、あい…」



さっきまでわりとシリアスな空気だったのに
いつからこんな少し砕けた雰囲気になったわけ?



「で、今聞きます。なんであの時泣いてたんですか?」



奏太くんが叩いた頭を奏太くんが優しく撫でる

前もこんなことあったな…



「奏太くんが、よかったから…」
「はい?」



あの時泣いた理由を思い返した



「告白されて、でも私は奏太くんじゃなきゃ嫌だ…
 って思ったらなんか涙止まんなくなっちゃって…」

「何それ」
「だ、だよねっ。私本当泣き虫で「違う」



掴まれていた手が引き寄せられる

静かに、ただ奏太くんの胸の中に落とされる


私の知っている匂い、温もり




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最終更新:2011年05月04日 05:48
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