149: 名前:HARU☆02/05(土) 21:59:30
「くるみー、こっち手伝ってー」
「あ、はーいっ」
学内はすっかり文化祭モード
一週間前になり、一日の授業の一枠が文化祭準備の時間にあてられる
装飾を考えていたり、衣装の調整を行ったりと仕事は様々だ
「そこの端からここまで測って欲しいんだけど」
「おっけいっ」
大きめの脚立に上がり、指定された教室の
一番上の窓の長さを手渡されたメジャーで測る
「ありがとっ。それから、その隣の枠もお願い」
「あいあいさーっ」
くるみがそう返事をするとガシャンッと音がする
それと同時に脚立の脚が崩れ、くるみの身体も落ちていく
「くるみ!!」
バタンッと鈍い音が響く
約2メートルの高さから勢いよく教室の床に叩きつけられた
教室が騒めき、倒れたくるみに集中する
「くるみ!大丈夫!?」
「脚立のねじが外れてる…っ」
「う、動かないんだけど…!」
「気ぃ失ってる!保健室だ!」
152: 名前:HARU☆02/06(日) 12:12:29
何が起こった…?
身体が落ちて頭打って、みんなの声が遠くて…
てゆうか頭痛い…
「目、覚ました…、よかったあ…」
「ふう…、一安心」
目を開けると白い天井と私を囲むカーテン
そしてその部屋独特の薬品の匂い
……保健室?
「気分はどう?くるみ」
目線を左にすると心配そうな表情をしている満里奈と…八尾くん?
「脚立が崩れてくるみも落ちたの。軽い脳震盪だって先生言ってた」
「大丈夫?相沢」
あ、そういえば脚立に上がってたんだっけ
「八尾がくるみを運んでくれたの」
「そっかあ…、ありがとー」
「超焦った。ま、無事なら問題ないっ」
八尾くんはニカッと笑う
満里奈もホッとしたような顔をする
「まだ授業中?」
「うん。…で、私まだ委員の仕事あるんだけど…」
満里奈が申し訳なさそうに話す
クラス委員で忙しいのにわざわざ来てくれて…
「教室戻りなよ?忙しいし、付き添ってくれただけで嬉しいから、ね?」
「本当ごめんねっ、また次の休憩に来るから!」
ごめんっ、と謝ると慌ただしく保健室から出ていった
153: 名前:HARU☆02/06(日) 14:53:55
「八尾くんも戻っていーよ?」
八尾くんと目が合い、そう伝える
「先生ちょっと出てるみたいだし戻ってくるまではいるよ」
「えー、いいのにぃ…」
「病人は気を遣わないのー」
笑いながら布団を掛け直してくれる
優しいような、申し訳ないような複雑な気持ち
「寝ときな」
「もう大丈夫だってー、心配しすぎ」
「心配するでしょ。みんな大騒ぎだったんだから」
そんな他愛のない話をただ延々と続ける
その間に保健室の先生が帰ってくる
「よかった、思ったより大丈夫そうね」
「すみません、心配かけて…」
いいのよ、と先生は笑ってくれる
そして授業終了のチャイムが鳴る
「教室戻る?」
「あ、うん。でも髪とか直して行くから先戻ってて」
「わかった。無理しないでよ」
失礼しました、と言うと八尾くんは保健室から出ていった
すごい気遣う言葉ばっかりかけてくれて、心配性だなあ
八尾くんの彼女になる人は幸せだろうなとつくづく思う
154: 名前:HARU☆02/06(日) 17:52:16
ベッドの上に座り直して髪の毛を手ぐしで戻す
スカートのシワも手で直す
「くるみ先輩!」
「ひゃあっ!」
いきなりカーテンがシャッと勢いよく開き、身体がびくっとなる
「か、奏太く…?」
「こらー、病人なんだから驚かすようなことしないーっ」
「え、わ、すみません!」
私の位置からは見えないけど先生が奏太くんに注意をする
焦ったように謝る奏太くん
てか……、
「な、なんでー?」
「満里奈先輩が教えてくれて…っ、大丈夫ですか!?」
「大丈夫、です」
ホッ、と力が抜けたような奏太くん
お、体操服姿だ
「次、体育?」
「え?…あ、いや、さっきの授業が体育で
一年は次が文化祭準備のHRなんです」
着替えないでわざわざ真っ直ぐここに…?
「…何にやけてんですか」
「え?笑ってた?」
「また一人で考えてたんでしょ。もー…」
奏太くんは恥ずかしそうに顔を隠す
そりゃ嬉しいでしょ
一番に私のとこに来てくれたら、ね?
「…で、頭の方は大丈夫ですか?」
「何、馬鹿って言いたいの?」
「違うでしょ…。軽い脳震盪って聞いたんですけど…」
「ん、痛むけど大したことじゃない」
陽気にピースサインをする
奏太くんは疑うような目をするが、私が大丈夫と言うと
顔の力が抜けたようなため息をつき、頭を優しく撫でてくれる
こういう私に触れる奏太くんの手がいつも優しくて好き
155: 名前:HARU☆02/06(日) 18:41:49
「前髪、分かれてる」
「え?」
奏太くんの前髪がいつもと違うことに気付く
「あぁ、走ってきたからかも…」
「ふうん?」
私がちょっと意味有りげに笑うと、嫌そうな顔をしながら頬が染まる
「なんで走ってきたのかな?」
「ドSですか……」
「えへへ、可愛いなあ」
手を伸ばし、奏太くんの前髪に触れる
いつものように直してあげる
「本当に大丈夫なんですか?早退とか…」
「だーいじょーぶだって、心配性だなあ」
元気もりもりっ、と腕に力こぶを作る真似をする
それを見た奏太くんは、ははっと笑う
「はーい、そこの夫婦。もうすぐ次の授業が始まりますよー」
「「わあっ!」」
先生が覗きながらそう告げる
私も奏太くんも驚いて身体が跳ね上がる
奏太くんに至ってはむせ気味
「いちゃつくのもいいけどー、授業にはちゃんと出なさいよう」
「いっ、いちゃついてません!」
「これからいちゃつこうと思ってたんだよね?」
「くるみ先輩は黙ってて下さい!」
顔真っ赤だ、ふふ、面白ーい
奏太くんは私の手をとり、保健室から退出した
閉めた扉の傍でまだ取り乱している
「冗談だよ?」
「達の悪い冗談ですね…」
「えへっ」
と、わざとらしくぶりっこをしてみせる
それを奏太くんは困った表情で見る
「もう大丈夫だから。教室に戻っていーよ?」
「本当に…?」
「大丈夫だってーのっ。
間に合わなくなるから、ね?」
握っていたままの手を離し、ありがとね、と一言言う
奏太くんは、わかりましたと言うと周りを見渡し
ちゅっ、
と軽いキスをした
「…さっきのお返しです」
べっ、といたずら気に舌を出し、走りながら帰っていく
「や、やられた…」
顔が熱くなるのがわかる
あんの萌え男子め…、
頭痛いのなんてどっかにいっちゃったじゃないか、馬鹿
159: 名前:HARU☆02/08(火) 18:25:41
日に日に迫ってくる文化祭
遂に当日は明日になり、今日は午後から文化祭準備
教室の飾りもみんなの雰囲気作りも順調
待ち遠しくてたまりません!
「そういや朱美ちゃんのこと今どうなってるわけ?」
「んが!」
のりが気持ち悪い声出すな、と突っ込んでくる
作業していた手が止まる
す、すっかり忘れてた……
「どうって…、さあ?」
「は?宣戦布告されたんじゃないの?」
「された、けど…」
あれから朱美ちゃんには会わないし
部活や準備で奏太くんとはなかなか会えないし
…そんな話聞けないし
「ああああ不安になってきた…!」
「忘れてたってことはさぞかし幸せな毎日を送ってたんだね」
そうなのっ、奏太くんが前より積極的で嬉しいの
……って違ーうっ!
「どうなんだろ…、どうなんだろう!」
「知らねーよ!」
怒られた、ぐすん
でも奏太くん、朱美ちゃんにちゃんと断ったって言ってたし
でもでも奏太くんと朱美ちゃんは同じクラスで幼なじみなわけだし
…急に話さなくなるような関係じゃないし……
「私暗い!」
「うるさい!」
頭をぺしっとのりに叩かれる
そうだよ!今日は一緒に帰れるんだからその時に聞こう!
……うざくない程度に、ね
160: 名前:HARU☆02/08(火) 18:51:53
文化祭の準備も終わり、委員以外の人はちらほら下校し始める
6月末ということで気温も高くなり
上に着ていたブレザーやカーディガンを脱いでいる人が増えてきた
門で待ち合わせしていた奏太くんの姿も
カーディガンを脱いでシャツ姿に腕を無造作に捲っていた
「萌えーっ!」
「人前人前っ!」
しがみつくと顔を赤くする
腕は筋が見えてたりするし骨々してて男の子だあ…
「明日だねっ、文化祭!」
「そうですね、…てか離れて下さい」
このやりとりはこの学校の人がよく目にし、もうお馴染み
最初こそくるみに彼氏ができたことに皆驚きとショックがあったが
今では軽い学校の名物的なものになりつつあり、楽しく見物をしている
いつも通りみんなが下校する道を歩く
「メイドさんでみんなを萌えさして超売り上げ良くするからねっ」
「…それ俺としては複雑ですけどね」
ずっきゅーん!
か、可愛い…、ちょっとふてくされてる…
「やきもち?」
「さぁね」
「ご主人様は奏太くんだけだよ?」
「…はいはい」
呆れたように返事をする
でもその笑った顔、好きだな
こうやって歩いてて、いつも車道側に行ってくれたり
さりげなく人混みから守ってくれたり気を遣ってくれたり
……本当、優しい人
「でも時にはその優しさが不安なんだな」
「え?」
「なんでもなーい」
優しい、が私だけにだったらいいのに
なんて思ってる私はずるい女ですか?
166: 名前:HARU☆02/10(木) 18:30:12
忘れそうだったけど本題に移らなきゃ
今までよりも少し控え目気味に聞く
「あの、さ…、最近どう?」
「?、どうって?」
控え目ってゆうかこれじゃ何も伝わんないって、私馬鹿!
…そりゃ控え目にもなるか
信じるって言ったのにこんな催促してるみたいなこと
…疑ってるって思われちゃうもんね
「なーに。言いたいことあるなら全部どうぞ?」
奏太くんは「ん」と目を合わせて言う
うじうじしてる私の方がよっぽど情けないな
「あ、朱美ちゃんに何もされてない!?」
「はあ?何もって…、何もされてないですけど」
ひょうきんな声を上げる奏太くん
どうやら本当に何もないっぽい
ホッと安心する
「なんか今まで通りでいて、って言われたんで今まで通り普通です」
「へ?朱美ちゃんがそう言ったの?」
「はい」
私から奏太くんを奪ってやるって…、そういうことじゃないの?
負けない、って…
朱美ちゃんの考えが一ミリもわからない
「そ、っか…。ならいいんだけど…」
「?、話したいことってもう終わりですか?」
「え?あ、うん」
奏太くんは、そんなこと気にする程のことじゃないのにと言った
や、…気にしますよ
最終更新:2011年05月21日 20:47