萌えます。年下男子 続き9

232: 名前:HARU☆02/24(木) 19:01:45



あれからどれくらい時間が経ったかわからない

目が覚めて隣を見ると奏太くんの寝顔



「……、可愛い…」



静かな吐息をたてる奏太くんの髪の毛に触れる

ゆっくりと起き上がって傍にある服に手を伸ばして着始める

自分の頬に手をあて、どきどきを抑えようとする



「本当に…、しちゃったんだ…」



かーっと体温が上昇する

すると後ろで「んー」と小さな声で奏太くんの声がする



「お、おはようっ」
「んーう…、今何時ー…」
「じ、12時半」



重そうに体を起こし、頭をがしがしと雑にかく

布団がはだけて見える上半身にどきんっとする

さっき見たのにさっき見たのに…!



「ひゃわっ」



後ろから首もとに腕を回されて引き寄せられる

私の肩にこてん、と自分の顔を乗せる奏太くん



「大丈夫ですか?腰とか痛くない…?」
「だ、大丈夫、ですっ」
「…よかった」



なんだか奏太くん寝起きのせいか、とろーんとしてて可愛すぎる…っ

それから少しの間、二人そのままでいた






233: 名前:HARU☆02/24(木) 19:41:25

「先輩先輩!絶対焦げてますって!」
「えー、大丈夫だよう」



1時から台所で昼食作りを始める

が、出来上がったのは茶色いオムライス

卵が焦げて黄色から茶色に変化したのだ



「もっと早く行ってよーっ!」
「散々言いましたって!」



くるみが食器を並べているうちにあっという間に卵が焦げてしまったのだ



「強火で放置するから…」
「大丈夫だもん!中の炒飯は美味しいもん!」



奏太くんの頭をぺしぺし叩く

ケチャップをかけて「いただきます」と言い、食べ始める奏太くん



「あ、美味しい」
「でしょ?」
「炒飯だけ」
「黙りなさい」



思ったより炒飯が良い味をしていたので卵の味はそこまで気にならなかった

うん、普段料理しないわりには上出来だな



「何じっと見てんですか」
「ん?夫婦みたいだなーと思って」



はいはい、と言って適当にあしらわれる

むう、とわざとふくれるとこっちこっちと手招きされるので
向かいに座ってる席から身を乗り出すと不意討ちにキスをされる



「は、反則ーっ!」
「早く食べなきゃ冷めますよー」
「この変態奏太っ」
「先輩に言われたくありません」



何気ない言い合いもこんなふうに過ごす昼下がりも

全部君とだから幸せなんだよ?




237: 名前:HARU☆02/25(金) 22:27:01

ブーブー、と携帯のバイブの音がする

奏太くんの黒い携帯から聴こえている

ご飯を食べ終えた奏太くんが携帯を開き、通話ボタンを押す



「どした?」



誰だろう、と思いながらも口は出さないでいた

が、奏太くんの顔色が徐々に変わっていく



「今どこにいんの、朱美はどこも怪我してない?」



どくん、と激しく動揺した

朱美ちゃんの名前が出たから

それから奏太くんは場所を確認して通話を終える



「ど、どうしたの?」
「先輩、俺帰ります。行かなきゃなんない所あるんで」



食器を片付けてばたばたと準備を始める

今の電話誰?朱美ちゃんに何かあったの?

奏太くんは…、朱美ちゃんのとこに行くの?

急に不安の波が押し寄せる



「い、や…」
「先輩?」



服の裾をぎゅっと掴む

でも奏太くんはその手を優しくはずす



「すみません…、でも行かなくちゃ」
「わ、私も行くっ」
「…いて下さい」



奏太くんの目が真剣でもう何も言えなかった

もう一度謝ると急いで家から飛び出していった


何が起こったの…?






238: 名前:HARU☆02/25(金) 22:44:24

奏太は走って待ち合わせの公園に行く



「あ、奏太!こっち!」



手を振っていたのはクラスメイトの山岡と津村

そしてその横のベンチに座っていたのは朱美



「山岡、電話ありがと…。で、ひったくりの犯人は?」
「その場にいた私服警官に取り押さえられて捕まったよ」
「そっか…」



ふう、と一安心する

奏太にかけられた電話の内容

お婆さんの鞄がひったくりに合い、朱美がそれを追って行ったところ
相手はナイフを持っていて朱美は腕に傷をつけられた、という話だった

たまたま通りかかった山岡と津村が警察、そして今まで付き添っていた



「千葉と奏太幼なじみだし、知ってんの奏太の番号くらいだし」
「うん、ありがと」



千葉、とは朱美の苗字だ

奏太は朱美の腕の目をやると左腕に包帯が巻かれていた



「朱美、痛い?」
「たいしたことないし。油断しただけ」
「また…、とにかく致命傷じゃなくて安心した。二人共ありがとね」



強気な朱美の発言にため息をつく

山岡と津村とは公園で別れる

奏太も朱美の隣に腰をかける



「あのね、女の子なんだからそういうことしないの。
大声出すとか他の人を呼ぶとか、朱美が追う必要ないでしょ?」
「私ああいう頭悪いことする奴嫌いなの」
「朱美が危険になる。今日みたいに凶器持ってるかもだし」

「…何、説教しに来たの」
「心配して来たの」



相変わらずの強気な朱美に呆れもする

「もう無茶はしないでね」と奏太は一言伝えると頭を優しく撫でる






239: 名前:HARU☆02/25(金) 22:57:08

「…朱美?」



朱美の異変に気付き、奏太が顔を覗き込むと
眉間にしわを寄せ唇を震わせながら泣きそうな顔をしていた



「…怖かった?」
「うん…」
「強がってた?」
「うん…っ」

「泣いていいよ」



昔から一緒の奏太は知っていた

朱美には根っからの強気と本音の裏の強がりがあることを

泣くことなんてない朱美

いつだって自分が鎧を纏っているかのように強く

それが剥がれると弱く



「大丈夫、大丈夫」



朱美の顔を自分の肩に寄せ、子どもを落ち着かせるように
ぽんぽんと頭を優しく、大丈夫とまじないのように唱えながら叩く



「俺しか見てないから」



静かに声を押し殺して泣く朱美

正義感が強いのも困りものだ、と奏太は困ったように笑う



「……奏、太…っ」
「んー?」



朱美はぎゅっと奏太の服を掴む



「やっぱり…、奏太が好きなの…っ」




244: 名前:HARU☆02/26(土) 20:22:32

いつだってそうだった

小学生から親ぐるみの付き合いで朱美といるのは当たり前で

決して人に好かれる性格ではなかったけど
みんなに批判されようと不思議と俺は嫌いにはなれなかった

それは朱美の内の心の芯の強さを、脆さを知っていたから

どこかで俺を必要としてくれていたことを知っていたから

だから千葉朱美の傍にいたんだ





「…朱美、こんな時には泣くのはずるいよ…」



奏太は静かに口を開く

返事もなく声を押し殺して泣く朱美に言葉を続ける



「大切な存在に変わりはない。普通の幼なじみよりも
強い繋がりがあるって十分俺は思ってる。…でもそれだけなんだ……」



朱美が本気で自分を好きなら諦められない気持ちも奏太には痛い程わかる

自分が応えてあげられない事実も悲しさも



「私には奏太しかいないの…、今までもこれからも…っ
我が儘な私の傍にいてくれるのはあんたしかいないんだよっ…!」

「…朱美は自分の世界を狭めすぎてる」



それはずっと奏太が思ってきたことだった



「俺が理解してくれるなら他には理解者はいらない、って…。
最初から他人を他人とでしか見てないし、嫌われても構わないって。
ごめんね…、俺が保護者のように朱美に干渉してたから」
「ち、違う!」
「違わないよ。俺が朱美の世界を必然的に狭めてたんだ」



過去全ての想いを奏太が朱美のぶつける

それは朱美を大切に思うが故、もっと朱美を内側から
見てくれる人に出会って欲しいという奏太の願いでもあったのだ






245: 名前:HARU☆02/26(土) 20:48:55

奏太は朱美の頭をぽんっ、と叩き



「そろそろ俺達、幼なじみ離れしなきゃなっ」
「奏太…」
「あ、別に"幼なじみ"ってカテゴリーに変わりはないから。
ただ、もう少しお互い自由に周囲に目を配りませんか?ってこと」



奏太はそう言い、にこっと笑うと朱美もつられて微笑む

その顔の方が似合ってる、と奏太もまた笑う



「ありがとね、朱美の気持ちすっごい嬉しい。自分に自信持てる」
「…調子に乗んなっつーの」



すみません、と奏太は笑って謝る

それがおかしく感じ、朱美もまた笑う


二人の"幼なじみ"としての何かが変わった日だった






着信の音楽が鳴り、勢いよく通話ボタンを押す



「も、もしもし!」
『あ、まだ家にいますか?』
「いる!戻ってきて!」
『あはは、了解です』



くるみは通話終了ボタンを押し、携帯をぎゅっと握りしめる


よ、よかったあ…

ちゃんと連絡来た…、それも割と早めに…

ほっと大きく息をつく


そして電話から20分くらいでインターホンが鳴る






246: 名前:HARU☆02/26(土) 21:16:43

走って玄関に向かい、誰かを確認もせずにドアを開ける



「うっわ!びっくりした…っ?」



驚いた顔の奏太くんに何も言わずただ飛び付くように抱きつく



「…ごめんなさい」
「…許さん」



頭を撫でながら奏太くんが謝るけど少しムカついて拗ねてみる

けど、頭を撫でられたら許してしまう



「急に一人にして、ちゅーしてくれなきゃ許さな…」



許さない、と言う前に唇を塞がれる

そして目が合いながら離れる



「許さな…?」
「…ゆ、許す……」
「ありがとうございマス」



やられたな、…なんて


それから家に再び上がってあったこと全部話してくれた

朱美ちゃんのことも全部



「あれ、でも私朱美ちゃんに宣戦布告されたんだけど…」
「たぶん本気じゃないですよ。朱美は自ら人の嫌がることはしませんから」



そう笑って言った奏太くんの顔が今までと違って
…でも不思議とそれが嫌だとは思わなかった



「私も朱美ちゃんと仲良くなれるかなあ…」
「なれますよ」



そっか、と少し嬉しげに返事をする




251: 名前:HARU☆02/28(月) 16:49:07

「で、先輩は何があったんですか」
「え?」



私の部屋に戻り、ドアを閉めると同時に奏太くんが聞いてきた

まさかだ…、もう気にしてないと思ったのに



「泣くなんてそれなりの理由があったんでしょ?」
「で、でも」
「隠し事なんて卑怯です」



うっ、と言葉に詰まる

だって話したら奏太くん気分悪くしない?

するとベッドに座っていた奏太くんの手が
私の腰に伸びてきて自然に引き寄せられる

ぽすっ、と奏太くんの身体の中に埋まる



「あ、あの奏太く…」
「俺が知りたいんです」



耳元に喋る息がかかり、どきどきする

そして肩に顔をこてん、と乗せ、



「…駄目ですか?」



と低く甘い男の人の声で尋ねられる

…そんなの駄目なんて言えません

私はゆっくり口を開いた






252: 名前:HARU☆02/28(月) 17:07:35

「わ、私のクラスに八尾くんって人がいてね。…それで、その…」
「告白されたんだ」
「…は、はい」



奏太くんが先に答えを出す

仕方なく認めざるを得ない



「八尾くんは頼りになるし気が利くし、優しくて。
私も友達としてすごく尊敬して満里奈やのりと同じくらい大好きな人…」



奏太くんからの返事はない

とにかく返事が来るまで喋り続ける



「八尾くんに好きな人がいるって…、でも私はそれが誰かも知らずに
奏太くんの話したり無神経に発言してたり、自分の幸せばっかで…。

満里奈達と同じくらい大切な人を傷つけてた…」

「…それは仕方ないことじゃないの?」
「し、仕方なくないよ!…少なくとも私には何もできないんだし……」



ぎゅっと拳を握る

今でも覚えてる

想いを伝えてくれた時に八尾くんが見せた悲しそうな顔



「どうやったって気持ちに応えられないのはわかってる…。
でも、何かできないかなとか、どうすれば…とかずっと考えちゃうの…」
「…うん」
「それって、ずるい考えなのかな…?」



奏太くんからの言葉が少ない

一応一通り話終わったんだけど…、他にはえーとえーと…



「あ!」
「何?」
「な、なんでもないっ」
「言え」



耳元から聞こえる声に圧倒され、渋々小さく答える



「…キ、キス。されちゃっ…た?」






253: 名前:HARU☆02/28(月) 17:37:43

わざとらしく軽めに答えると一瞬空気が凍った気がした



「……はい?」
「…はい」
「いや、はいじゃなくて。何でですか?」
「ふ、不意討ち…?」



緩めに答えてみると感に触ったのか、顎を無理矢理向かされ唇が重なる

それも荒く貪るような



「ちょ…っん、奏太く…っ、やっ」



急でびっくりしたから抜け出そうと身体を動かすけど
手首や顔を固定されて全然抜け出すことすらできない

…てゆうか苦し…っ!

唇が離れると力強くぎゅっと抱き締められる

男の人の力で余りにも苦しくて胸をどんどんと叩く



「かっ、奏太くん!」
「…ムカつく」
「えぇ?」



苦しくて喉から変な声が出る

もしかして…、嫉妬?



「あ、あのねっ、本当に不意討ちで防ぐとかできなくて「わかってる」



言葉が止まる

わかってる…んだよね?



「わかってるけど…、けど嫌」
「奏太くん…?」
「なんかもう子供みたい…、情けな……」



声が焦って、でも消えそうになる

胸の奥がきゅうってなって抱き締めるこの力強さも愛しく感じた




255: 名前:HARU☆02/28(月) 20:17:20

最近の私は駄目だな

心配かけたり怒らせたり不安にさせたり

私自信は泣いて我が儘言って



「すみません…、俺本当小さい男で…。もっと大人になりたいのに…っ」



奏太くんの腕にぎゅっと力が入る

私、愛されてる?



「大丈夫。ごめんね、私の方が駄目駄目で」



そう言うとゆっくり奏太くんは私を離す

奏太くんの鼻に人差し指をあてて、



「奏太くんは奏太くんのままで。ね?
私を好きな奏太くんだったら全然問題なしだっ」



と笑って言うと、奏太くんの目が柔らかく笑う


私は我が儘に生まれた

周りに好かれる外見を持って大好きな人に愛されて

だから人を傷つける人にはなりたくないの

身近な、目の前の大切な人を傷つける人には



「ちゃんと八尾くんにはごめんなさいって言うよ。
大切な人だけど、奏太くんの方が私にとっては必要な人だから」
「…くるみ先輩」
「もーっ、そんな顔しないのっ。怒るよっ?」



口をへの字口にして奏太くんの頬をびろーっと引っ張る

痛い痛いって言うから信じる?って聞くと何度も頷く奏太くん

最後は軽くおでこにチョップで許してあげた


ごめんね

もう不安にさせないから




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最終更新:2011年05月22日 06:48
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