萌えます。年下男子 続き13

360: 名前:HARU☆03/16(水) 19:08:48

晴天の土曜日の午後、奏太くんの退院の日

まとめた荷物を日和さんが車に積む



「じゃ、奏太歩いて帰んなさい」
「へ?」



日和さんがそう言うと気の抜けた声を出す奏太くん



「あ、あの日和さん。車じゃないんですか?」
「だってせっかくくるみちゃんいるんだしー、デートでもしてくれば?」
「デ……っ」



かぁーっと赤くなる

いやっ、普段二人きりなら素直に喜ぶけど…

日和さんに、…親に言われるとなんだか痒くて恥ずかしい…

奏太くんをチラッと見ると、同じように頬を染めていて余計に恥ずかしくなった



「いい気分転換にもなるし。じゃ、私用があるからもう行くね」
「ひ、日和さ……っ」



あっという間に車に乗り込み、行ってしまった日和さん


う……、えーと、…んーと、……。



「行きましょっか」
「う、あ」
「ここにいたって仕方ないし、…ね」



ね、と笑った顔の奏太くんにきゅんとする

あう、抱きつきたい…けど我慢



「じゃあ、…行こう」
「はい」



私がそう言うと、またにこっと笑いながら奏太くんが返事をする

やっぱり可愛いなあ…




362: 名前:HARU☆03/16(水) 19:42:27

人通りの多い道

休日だから余計に賑わう



「う、わっ」
「相沢さん?」



他人より断然背の小さい私は、集団で前から人が来るとそっちに流されそうになる

せ、選択ミス!

人が多い所に触れると奏太くんも何か思い出すかなーとか思ったけど…

何!?今日何かあるの!?セール!?


また人に流されそうになると腰に手が回され、ぐいっと引き寄せられる



「大丈夫ですか?」
「あ、りがと…」



一気に距離が縮まり、きゅーんとしてしまう

私との記憶がなくたって優しい奏太くんに変わりはないんだ



「あ、あの。手……」



そう奏太くんに右手を差し出す

奏太くんは「え?」と聞いてくるけど、手を出したら理由は一つ



「は、はぐれないように……、繋いで?」



一瞬戸惑った様子の奏太くん

でもすぐに、何も言わずに左手で私の手を繋ぎ、前を歩き始めた




366: 名前:HARU☆03/16(水) 22:05:31

な、なんか緊張する!

変に手汗とかかいちゃうんですけど、…ですけど!


繋いだ手から同じように緊張感が伝わってくる

奏太くんも、同じなのかな…?



「ごめんなさい!」
「え?」



急に振り向く奏太くんに少し驚く

な、なにが?



「歩くスピード、速くなかったですか?」
「あ、あぁ。大丈夫、です」



変に敬語になる確率私高い!

そう頭の中できょどっていると、「よかった」と優しく笑ってくれる

…紳士的だなあ


こうやって手を繋ぐとか気を遣い合うとか、改めて実感する

今の奏太くんだから、って…

本当にいつか戻るのかな…?



「わっぷ!」



奏太くんが急に立ち止まり、背中にぶつかる

痛たた…、と鼻をさする



「奏太くん?」
「知ってる」
「へ?」



何が?と聞こうとするが、目の前を見て私も言葉が止まった

立ち止まった先の横断歩道

確かに見覚のある店の並び

間違いない、ここはあの日の


―――事故現場






367: 名前:HARU☆03/16(水) 22:34:00

頭の中に、ここに自分がいた映像が流れる

やっぱりこの人の、相沢さんの手を握っていた





「――――――……っく!」
「奏太くん?」



急に奏太くんが地面に崩れ落ちる

頭を押さえて辛そうに呼吸をし、表情も歪んでる



「か、奏太く…っ?」
「大丈夫…っ、だ、いじょぶ…っ」



泣きそうな声になる

奏太くんは辛そうに笑って言うけど、大丈夫そうじゃない…

なに?なにが起こってるの?

周囲の騒めきを余所に奏太くんの状態を必死に見守る



「ねぇ、ねぇっ…、」
「すみません…、ちょっと無理…っぽいで、す」

「あ…わ、奏太くん…?」



奏太くんの身体が私にもたれかかる

苦しそうな表情で気を失っている



「や…、奏太く……っ」



私の心臓うるさくて、…怖い

もうこのまま起きないんじゃないかって…

不安で涙が止まらなかった






368: 名前:HARU☆03/16(水) 22:56:04



「大丈夫、一時的に眠ってるだけだから」



ほっ、と肩の力が一気に抜ける

奏太くんが倒れた後、近くにいた人がタクシーを呼んでくれた

日和さんに連絡すると、家に連れて来てと言われその通りに

今は奏太くんの家でゆっくりと眠っている



「たぶん事故現場目の前にして記憶が混雑したのね。
頭痛もそのせいだと思うし、とりあえず様子を見ましょ」



震えもだんだん静まる

…怖かった、すごく

あんな辛そうな奏太くんを見て、大丈夫だって言ってる奏太くんを見て

何もできなくて……



「ごめんね、不安だったよね」



日和さんが肩に手を置いてそう言ってくれる

大丈夫、と私は無言で首を何度も横に振る



「大丈夫よお、奏太頑丈だし。むしろ奏太の
弱いところ見れてラッキーって思わなきゃ、ね?」



優しく慰めてくれる日和さん

こくん、と小さく頷く

今日はごめんね、と何度も謝ってくれる日和さんに何だか申し訳なくなる

ぺこっと頭を下げて今日は帰ることにした


怖くて怖くて、……いつまでたっても握った拳が解けない




372: 名前:HARU☆03/17(木) 18:32:00

「ん……」



くるみが帰って数分後に奏太が目を覚ます



「お目覚め?気分はどう?」
「…母さん……?」



ゆっくりと身体を起こす

そっか…、俺倒れて……



「映像が流れた…」
「映像?」

「…急に事故に合った日のことも、中3の夏以降のことも…、全部」



思い出した、無くした日々

だけど…、



「フィルターがかかってる」
「?、何に?」
「……相沢さんに」



高校に入ってから、確かに彼女といた

だけど当時の想いや今までの感情に黒くフィルターがかかっている

なんで、どうしてあの人のことだけこんなに情報が不足してるんだ…っ



「…いいもの見せてあげる」



頭を抱える奏太に日和が「少し待ってて」と言う

下の部屋から数枚何かを取ってきた



「写真……?」
「大切なもん、写ってるわよ」



日和が優しく微笑む






373: 名前:HARU☆03/17(木) 18:45:43

奏太は一枚一枚写真をめくる

そして息が止まりそうな衝動にかられた




「―――…行かなきゃ」




写真をその場に落とし、急ぎ慌て、部屋を飛び出す

日和はその写真を拾い、温かい目で眺める



「…よかった、効果あったみたい」



くすっ、と笑う

日和が奏太に渡した写真

それはいつか、日和の作った服を着たくるみの写真だった

撮影用の写真

そしてそれとは別に日和が数枚こっそりと撮っていたもの


"くるみと奏太の二人の写真"


二人が戯れていたり、笑っていたり、撮影の合間の何気ない様子

そこに二人の"時間"が存在した



「急いで現像してよかった」



ふふ、と日和は幸せそうに写真を見つめる


その写真がきっかけで、奏太の中のくるみからフィルターが取り払われ、

記憶が、自分自身の無くされたはずの想いが


―――くるみを好きだと言う






374: 名前:HARU☆03/17(木) 19:02:51

いっつも人をひっかきまわして、そのくせ憎めなくて

俺のこと好きとか、爆弾発言平気で言っちゃうし

泣き虫で面倒くさくて、……でも一緒にいると温かくて


大好きな人






「―――相沢くるみ!」



後ろから私を呼ぶ声がした

振り返ると少し息苦しそうな人



「奏太くん…?」
「っはぁ…、追いついた…っ」



目、覚めたんだぁ…

ほっと胸を撫で下ろし、小走りに奏太くんの元に行く



「大丈夫?頭痛くない?」
「……くるみ先輩」



言葉が止まる

今、「くるみ先輩」…って

聞き間違い、かな…



「ごめんなさい」
「え?」
「忘れてて、…ごめんなさい」



優しく笑う奏太くん

唇が震える

勘違い、しちゃうよ?



「…ちゃんと言ってくれなきゃ…、わかんない…っ」
「…もう絶対忘れません」
「そうじゃなくて……っ」



ぎゅ…っと優しく抱き締められる

ねぇ、不安だよ

ちゃんと言葉をちょうだい?






375: 名前:HARU☆03/17(木) 19:29:23

胸がきゅうって締め付けられる



「私のこと、覚えてる…?」
「超覚えてる」



―――…記憶、


ぎゅーっと更に奏太くんに抱き付く



「先輩に告白されて付き合い始めて、勝手に勘違いでやきもちやいて
わがままで泣き虫でメイドさんで、…なかなか飽きさせてくれない人」
「むかつく…、けど超当たってる」
「でしょ?」



ははっ、と笑う

抱き付いたまま、がばっと奏太くんを見上げる



「奏太くんが好きっ」
「はい」
「奏太くんが大好きっ」
「はい」

「…奏太くんは好き?」



少し不安気に尋ねてみると優しく笑って、



「当然、大好きです」



嬉しすぎて、顔がにやけるのを抑えて奏太くんの胸にぽすっと顔を埋める

するといつもみたいに頭を撫でてくれる



「奏太くんだ……」
「奏太くんです」



ふふっ、とにやける

―――奏太くんが戻ってきた






376: 名前:HARU☆03/17(木) 20:50:46

そのまま再び奏太くんの家に戻った

ずっと私はにやにやしたまま



「おかえり」



日和さんが笑顔で迎えてくれる

ここに戻る時に奏太くんが言っていた写真を見せてもらった



「わ、すごい綺麗…」
「でしょ?」



真っ白い背景に日和さんの服が栄えている

私も私じゃないみたいだった

一枚一枚めくると、奏太くんの記憶のきっかけになった二人の写真が出てきた

…笑ってる、幸せそうな顔

本当、いつの間に撮られたんだろう



「奏太いつもこーんな顔でくるみちゃんのこと話してんのよ。やーね」
「母さん黙って」



温かい

全部戻ってきたんだ



「この写真、貰ってもいいですか…?」
「どーぞ、いくらでもあげるわよ」



日和さんにそう言われ、嬉しそうに写真を抱き締める



「本当、可愛い子ね。ね、奏太」
「……俺に振らないでよ」



なんていつもらしい会話が後ろで聞こえる

みんな、みんな


ありがとう




381: 名前:HARU☆03/18(金) 19:24:22

「あのー…、くるみ先輩?」



部屋で二人きりになってから、ずーっと奏太くんに抱き付いたまま

だって我慢してたんだもん

てゆうか今、こうしてたいんだもん



「いつまでくっついてるんですか…」
「駄目っ?」
「いや、駄目じゃないけども…」



その言葉に、ぱぁっと笑顔になり再びぎゅーっとくっつく

顔がずってにやけっぱなし



「私ね、奏太くんが私のこと忘れて思ったの」
「ん?」
「私は奏太くんじゃないと駄目だー、って」
「…はいはい」



恥ずかしそうに返事をする

可愛くて頬にちゅっと軽いキスをした

頬を手で押さえて、目を丸くして驚き気味の奏太くん



「えへへ」
「…随分積極的ですね」
「今日はそんな気分なのー」



たちが悪い、と奏太くんが呟くと逆に抱き締められた

胸がきゅんとなる



「じゃあ、くるみ先輩からキスしてもらおっかな」
「へっ?」



至近距離で甘い声で言う奏太くん

とんとん、と自分の唇を指で触り、



「ここ」



と、私に言う


や…っ、逆にしてって言われると恥ずかしくてできません…!






382: 名前:HARU☆03/18(金) 19:43:48

かぁーっと顔も身体も熱くなる

少し意地悪そうに奏太くんが笑う



「今日はそういう気分なんでしょ?」
「そ、うだけど…っ」



「ん」と再び指で唇を示す

奏太くんは目を閉じて、私を待っている様子



「―――……っ!」



目をぎゅっと瞑って触れるだけの短いキスをした

恥ずかしくてすぐに唇を離す

奏太くんが目を開けると私の赤い顔を見てはにかむ



「すっごい可愛い」



こつん、と額をあてる

可愛いのは奏太くんだって同じです



「目、閉じて」
「へ?」
「物足りない」



物足りない、って……!

なんてゆーエロい発言!


でも私の顔を覗きこむ奏太くんが可愛すぎて、つい何でも許しちゃう

甘いなあ…、私






383: 名前:HARU☆03/18(金) 20:11:14

恥ずかしい気持ちを抑えながらゆっくり目を閉じる

すると奏太くんの手が頬に触れて、少し身体がびくっとなる



「好きだよ、くるみ先輩」



奏太くんの囁く言葉にどきんとすると、すぐに唇が触れた

舌が入ってくる濃厚なキス

可愛い顔して反則だと思う

いつも奏太くんのキスは私をいっぱいにして、何も考えられなくするの



「んっ…、ふ…ぁ」



身体が密着する

も…っ、頭がぱんぱん…っ



「そんな顔で見ないで下さい」
「えぇ…?どんな顔…」



呼吸が苦しかったため唇が離れると一生懸命息をする

身体が熱くて目がとろーんとなる



「本当よかった…」
「?、何が?」

「記憶なくなってる間にくるみ先輩とられなくて」



ど、どっきゅーん!

頭をぽりぽりかきながら言う奏太くん

か、可愛い!可愛すぎる!



「わ、私奏太くん以外好きになんないよっ」
「…ありがとうございます」



額にちゅ、とキスをくれた




387: 名前:HARU☆03/19(土) 18:45:28

「盛ってんねー、奏太くん」



八尋さんが扉に肩肘ついてもたれかかりながら言う

いっ…、いつの間に…っ!

わざとらしく「奏太くん」とにやにや言う



「んな…っ、八尋いつ帰ってきたんだよ!」
「えー、いつだろ。奏太がくるみに夢中になってる時?」
「死ね!」



わざとらしく棒読みに言う八尋さんに向かって顔を赤くしながら怒鳴る奏太くん

ひゃーっ、見られてた…っ

私も顔を赤くして両手で頬を押さえる

本当いつも神出鬼没な人なんだから…っ



「飴あげるから許してよ」
「いらん!出てけ!」



ポケットから飴を出す八尋さん

そういえばいつも飴持ち歩いてるなあ



「くるみもいる?」
「やっ、遠慮しますっ。てゆかなんでいつも飴…」



私が尋ねると「んー」と考えるふりをして、



「紀子に聞いてみ?」



と、にこっと笑って言われた

……のりに?






388: 名前:HARU☆03/19(土) 19:10:48




「飴?」
「そう、飴」



学校に着くなり、のりを捕まえて尋ねる

や、別に八尋さんに興味はないけど「紀子」ってなると興味も湧くもので



「煙草、やめろって昔言ったことくらいかな」
「煙草?吸ってたの?」
「うん。私煙草の匂い苦手でさ、禁煙する変わりに
口の中が寂しくなんないように飴をよくあげてたんだ」



そう言い終わると急にくすっと笑い始めたのり

な、なに?どしたの?



「ご、ごめん…っ。や、なんかうける」
「?、なにが?」
「まだ私が言ったこと守って、わざわざ飴持ち歩いてんだなーって」



幸せそうに笑うのり

やっぱりなんだかんだお似合いな二人だなあ、って思う



「それより、奏太くん記憶戻って本当よかった。一応八尋も心配してたんだよ?」
「うん、ありがとね」



にやにやしちゃう

奏太くんが戻ってきたことにか、
それとものりが八尋さんのことを話すからか

だってのり、言葉遣いとか少し変わったもん

八尋さんの話する時、すごく可愛くなる






389: 名前:HARU☆03/19(土) 19:24:24

すると時間差で満里奈が合流する

記憶戻ってよかったね、と笑顔で言ってくれる



「で、何の話してたの?」
「八尋さんの話」
「八尋?」



満里奈はきょとん顔

あれ?知らない…の?

のりに目を合わせると「あー」と頭をぽりぽりとかく



「彼氏?…できたんだ」
「うっそ。いつ?」
「2週間前?…かな」



「くるみ知ってた?」と満里奈が尋ねるので、



「…う、ん。奏太くんのお兄さん…」
「なんで私だけ知らないわけ」



満里奈の口調が少し強くなった

なんか、いけなかった…かな?



「や、言おうと思ってたけど奏太くんの事故とかあったから
なんてゆうか…、言うタイミング?みたいなのがなくて…さ」
「二人だけで話共有してたわけ」
「違うって」



のりが説明すると満里奈の眉間にしわが寄る

のりも焦って「ごめんね」と謝るが、満里奈は不機嫌な様子



「まっ、まあ気にすることじゃないって!ねっ?」
「くるみは面識あるの?八尋って人と」
「え…、ま、まあ……」

「なんか…、仲間外れな気分」



そんなつもりなんて全然ないのに…

満里奈は顔をふせ、口を頑なに閉じる

やばい、隠し事的なものは禁句だ…っ

次の瞬間、私は地雷を踏む




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最終更新:2011年05月22日 07:30
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