萌えます。年下男子 続き14

390: 名前:HARU☆03/19(土) 19:42:07

「は、はいはい!私も二人に言ってないことがあった!」



もう隠し事はこれからも空気を悪くすると思い、焦って手を挙げる

何?と二人が聞いてくるので顔を近付けてこっそりと伝える



「や、八尾くんに……、告白された、の」



のりが「嘘っ、いつ?」とすぐに聞いてきたので、文化祭の帰り道と答えた

言わない方がよかったんだけど、やっぱクラスの仲良い人だったし
いずれちょっとした違和感で気付かれるかな…、とも思ったわけでして…

本当、今更ながらなんですけど、…ね



「あっ、も、もちろん断ったよっ?」
「いや、当然だろ。まさか八尾までくるみ狙いだったとはねー。な、満里奈」



満里奈から一向に返事がない



「ま、満里奈?」
「何それ」



ぱちっと満里奈と目が合うと、ぞくっとした

いつもの満里奈じゃなくて



「満里奈…、どした」
「結局いつもくるみなんだ」



私が言い終わる前に満里奈が口を開く

満里奈の拳がぎゅっと握られていることに気付く

満里奈…?




392: 名前:HARU☆03/19(土) 19:56:08

満里奈の様子がおかしくて手をかけようとした瞬間、手を振り払われた

私ものりも驚いて目を丸くしていると、きっと睨まれる



「いいよね、二人とも幸せそうで」
「満里奈…、何言ってんの」
「私馬鹿みたい。友達のこと好きな人に想いをよせてて」



満里奈とのりのやりとりで気付く

のりも同じく気付いた様子だった



「八尾のこと、好きだったわけ…?」



のりが私より先に問い掛ける

知らない、私は知らなかったよ…?

だってそんなこと一言も…



「くるみに奏太くんいるから安心してたけど、
それでもやっぱくるみは男の心掴み取っちゃうんだね」
「満里奈、そんな言い方する必要ないだろ」

「のりは綺麗だからね。くるみと違う要素で八尋っていう人捕まえたんでしょ?」
「満里奈!いい加減にしろ!」



やだ、やだ、やだ……

満里奈おかしい、そんなこと言う子じゃないのに…



「私だけ知らないこと多くて、不毛な想いよせてて…、馬鹿みたい」
「満里奈…、私」
「ごめん、頭冷やすわ」



満里奈に声をかけるも、そう言ってどこかに行ってしまう

肩にのりの手がおかれ、無言で首を横に振る



「――――――…っ」



満里奈、謝るのは私の方なのに……




394: 名前:HARU☆03/19(土) 20:40:54

浮かれてたんだ、私

奏太くんばかり見て、すごく幸せで自分のことばかりで

もっと満里奈のこと見れていたはずなのに

人の気持ちには疎い方だけど気付けたかもしれないのに

馬鹿だ



「ごめん、くるみ。…がらにもなく怒鳴った」



のりが頭をがしがしとかきながら申し訳なさそうに謝る

ううん、のりが言わなきゃ私が同じように怒ってたかもしれない

首を横に振り、廊下の壁に腰掛ける



「…八尾が、くるみを好きじゃなけりゃ本人に話もできないことはないけど」



のりが呟く

うん、私もそう思うよ



「酷だよなあ……。好きな人いんのに他の子を、なんてさ…」



八尾くんはすごく良い人

幸せになってもらいたい

本当にそう思ってるよ


…だけど、私から八尾くんに満里奈を勧めることはできない

できないよ……



「こればっかりは、なるようにしかならないだろ…」
「……、うん…」



恋愛って難しい

大切な友達を二人とも傷つけずに二人とも幸せになればいいのに






395: 名前:HARU☆03/19(土) 20:55:46




立ち入り禁止の鎖がかかっている屋上の前の階段に座る



「馬鹿だな…、私」



ふう、とため息をつく

くるみにものりにも、ひどいこと言った

知らないことが悔しかった

くるみと奏太くん、その上にいつの間にかのりもいて

仲間外れみたいで



「…あ、やば」



涙が出そうになる


本当はね、薄々気付いてたのかもしれない

八尾はくるみのこと、…って


くるみは可愛い子

顔とかそういうんじゃなくて、性格、仕草も

いつも真っ直ぐで嘘一つなくて一生懸命で


自分もそうなりたいって、心のどこかで思ってた

羨ましがってたの


私を恋愛経験豊富ってくるみは慕ってたけど、そんなことない

好きな人には好きって言ってもらえない

全然、恋愛上手でもなんでもないの……っ



「………っ、馬鹿だ…私。本当に……っ」



顔を膝に伏せ、ぎゅっと服を掴む

想いも伝えてないのに、くるみやのりにあたるなんて最低な人間だ




400: 名前:HARU☆03/20(日) 22:37:11

その日一日、満里奈とは一切口を聞かなかった

……というか、満里奈が一方的に避けて聞いてくれなかった

ぎこちない空気が流れる



「柴丘と、なんかあったの?」



とんとん、と肩を叩かれて振り向く

ものすごく悪く言ってしまえば今回の元凶



「や、八尾くん……」
「今日ずっと倉重と二人だけど、喧嘩?」
「喧嘩…ってゆうか…」



八尾くんに告白されたこと言ったら実は満里奈が八尾くんを好きでした

なんて言えるか!

どっちも爆弾事実だよ!



「はーい、八尾。あんたこっち来な」
「え、倉重っ?」



答えに困った顔をしていると、のりが八尾くんの腕を引いて連れていく

のりは目を合わせてにこっと笑う

……うん、ありがと


ふと目を余所にやると満里奈がその二人の様子を見つめていた

本当に八尾くんのことが、好きなんだな…


ずるい発言かもしれないけど、胸が痛む






401: 名前:HARU☆03/20(日) 22:55:21

「ちょっと、倉重っ?」



紀子は八尾を廊下に連れ出す

八尾には何が何だかわからない様子で、ただ引っ張られる



「私と腹割って話そうか」
「腹割って、って…。何を?」
「まず、一つ目」
「無視かい」



八尾の問い掛けをスルーして話を始める

腕組みをして、壁にもたれかかる



「相沢くるみを好きですか?」
「好きって…、そりゃ好きだけど」
「違うな。今の答えは"友達"として、でしょ?」



八尾は口を歪ませて言葉を詰まらせる

そして黙った後に、



「……好きだよ。相沢のこと」



と、表情が変わり答える

わかっていた答えだが、紀子はふう、と息をつく



「くるみに告白されたって聞いたけど、まだ今も好きなわけ?」
「…女子ってそういう話好きだよね」
「ま、ね」



少し呆れたように軽く笑う紀子



「ん…、まだってか今は…相沢以外好きになれない、かな」



そう八尾は優しく笑う




405: 名前:HARU☆03/21(月) 14:23:43

「満里奈のこと、どう思う?」



紀子はストレートに聞く

「柴丘?なんで?」と八尾は尋ねるが「答えろっての」と強引な紀子

腑に落ちない顔をして渋々答えを探す



「どう…って、いい子?」
「他の答え」
「あのねぇ……、何なの?」
「他の答え」



有無を言わさない紀子

八尾は苦笑いしながら顔に汗マークを浮かべる



「んー…、委員とかやってるし頼りがいあるよね」
「他の答え」
「……またか。えー、他の答えー…?」



「んー」と八尾は考えるが、やはり紀子が求めるような答えはでてこなかった

紀子はわかっていた

今の表情と、くるみをまだ好きだと言った八尾の表情が明らか違うことを

八尾はくるみにしか今は感情がないことを



「聞くだけ野暮だった、かな」



ぼそっと、紀子は呟く

ため息をつくと「ごめんね」と八尾に一言謝る



「もう戻っていいよ」

「あ、俺も聞きたいことあるんだけど」






406: 名前:HARU☆03/21(月) 14:43:32

質問に答えていた八尾が逆に質問をしてくる

「何?」と紀子が返事をすると、



「柴丘となんかあったの?」



と問い掛けてくる

紀子は目を伏せ少し黙る



「…知りたいなら、私やくるみに聞くべきじゃないね」
「え?」



もたれかかっていた壁から背中を離し、八尾の肩にぽんっと手を置く



「満里奈に直接聞きな。あんたが満里奈を少しでも気に掛けてんなら、ね」



「じゃあね」と置いた肩から手を離し、先に教室に戻っていく

八尾は意味がわからず、その場に立ち尽くす



「意味わかんね……」



ふう、とため息をつくと紀子の後を追うように続けて教室へと戻る

教室に戻ると八尾の目は一度満里奈に向くが、どうも聞く気にはなれなかった

三人にできた溝を無関係の自分が抉るのはどうかと思ったからだ

再びため息をつくと、意識せずとも八尾の目はくるみに向く

まだ好きな証拠


その八尾の姿を同じように意識せずとも見てしまう満里奈がいる




410: 名前:HARU☆03/21(月) 22:08:07

言わなきゃ始まんない

ずっとくるみとのりとこんな状態を続ける気?

ずっとくるみを羨ましがるつもり?

ずっとくるみを見る八尾を見て、ただ悩むの?

どうせ悩むなら、体当たりしてからでも遅くない

―――ううん、むしろそれが正解なのかもしれない






放課後、下駄箱で靴を履き替える八尾に声をかける



「よ。途中まで一緒に帰んない?」
「柴丘。別にいいよ?」



いつも通りに笑って返事をする八尾

満里奈と共に足並みを揃えて門をくぐる

会話はいたって普通の日常会話

お互いの別れ道はあっという間に近づく



「じゃ、俺こっちだから。また明日ね」
「うん」



手を振り、また明日とありきたりな別れ際


……変わらなくちゃ



「八尾!」



少し距離の離れた八尾をいつもより大きめの声で呼ぶ

「ん?」という表情で振り返る




「好きだよ……っ!」




泣きそうな顔を、震える声を抑えた

八尾の胸に、心に

―――"届け"、と






411: 名前:HARU☆03/21(月) 22:20:19

身体が芯から震える



「……何泣きそうな顔してんの」



八尾は困ったように柔らかく笑う

お互いの間に少しの距離

伝えたい想いは声に出さなきゃ届かない



「泣いて、ない…!」

「泣きそうって言ったの」



くすっと八尾は笑う

身体を全て満里奈の方へと向け、



「……ごめん」



と、ただ一言だけ伝える


満里奈は言葉を詰まらせ、拳をぎゅっと握り締める

一度俯き、表情を切り替えて前を向く



「うん、ありがとっ」

「……俺も、ありがとう」



目を合わせ笑い、「また明日」と再び言葉を交わす

八尾が歩いて帰っていく姿を少しの間だけ見つめ、
満里奈も自分の帰るべき道へと足を進め始める

閉じていた口から小さく鳴き声が漏れ、ぼろぼろと涙が零れる


短く儚い時間

ただ本当に好きだった人






412: 名前:HARU☆03/21(月) 22:42:30




「あ…、満里奈…」



学校で一番初めに満里奈と顔を合わせた

目が…、腫れてる

なんて声をかけていいかわからず黙っていると、満里奈が柔らかく笑う



「私、ずるい人だったんだ」
「え?」
「自分何もしてないのに、くるみやのりにあたってて」
「満里奈……」



上手い言葉を未だに見つけられない

満里奈が言葉を続けていく



「くるみが羨ましかったんじゃない。くるみの一生懸命さが羨ましかった。
いつも奏太くんを追っかけてたり、奏太くんの為に頑張ってるくるみが」



満里奈は私を褒めてくれる、見てくれてる

でも違うよ、私だって同じだよ?



「満里奈がいなくちゃ私嫌だよ…?のりも満里奈も必要なの、大事なの」
「くるみ…」

「だって今の私も奏太くんといる私も満里奈がいなくちゃ今いないもん…っ。
私、まとめる力も周りを見ることもできないし満里奈を頼ってばかりで…、

私だって満里奈みたいになりたいって思ってたもん……っ」



満里奈は私にないものを持ってるんだよ

大切なんだよ

だからお願い



「満里奈は満里奈の良さを、心を大切にして…?」



満里奈がいなくちゃ、三人じゃなくちゃ私、寂しいよ…



「ごめんね、くるみ。
 ―――……ありがとう」



そっと優しく、手を握った






413: 名前:HARU☆03/21(月) 22:57:50




「もーらいっ」
「ちょっ、のりそれ3つ目!」
「え?これ私のだっけ?」
「くるみ4つ目!」



昼休憩にドーナッツを頬張る三人

いつもの三人の風景

その様子を見てくすっと笑う八尾



「八尾何笑ってんの?」
「ん?や、なんでもない」
「そ?早くグランドで陣取っとこーぜ」



仲直りしたみたいでよかった、と心の中で呟く



「柴丘、良い顔してんじゃん」
「は?お前さっきから何言ってんの?」
「なんでもないって。行こ行こ」



温かい日常が戻る



「もうすぐ夏休みだなー」
「その前にくるみ、誕生日来るじゃんっ」

「……おお」



時間差で思い出す

すっかり忘れてた

…17歳になるんだ、私



「去年の誕生日、プレゼントの量半端なかったよな。男から」
「でも今年は減るんじゃない?奏太くんいるんだし」



思考が一瞬止まる

…奏太くん、


私の誕生日知ってるっけ?




416: 名前:HARU☆03/22(火) 19:10:15

私、奏太くんと誕生日の話したことあったっけ?

よく考えたら誕生日とか基本中の基本だよね

もしかして奏太くんの誕生日ってもう終わってる…?



「大変だ!行ってくる!」
「は!?どこに!?」



のりの問い掛けを無視して教室を飛び出す

食べかけのドーナッツを頬張りながら、一年の教室へ足を進める


するとこの階の一番奥の英語科の教室からタイミングよく奏太くんが出てきた



「奏太くーん!」
「わぁー!手ぇべとべとっ!」



ドーナッツを食べた手で奏太くんの腕を触ると、驚き困ったリアクション

わわっ、と手を離す



「とりあえずそこの水道で手、洗ってきて下さい」
「…はーい」



渋々水道で手を洗ってくる


くるみちゃんだ
くるみちゃんの彼氏だ
まだ続いてたんだ
今日も可愛いなあ

などが周りの声が奏太の耳に聞こえる



「だから二年の階は嫌だ」
「ん?何か言ったー?」
「いえ、なんでも」



くるみには周りの声が聞こえていないことにふう、と奏太はため息をつく






417: 名前:HARU☆03/22(火) 19:22:15

「ねねっ、奏太くんの誕生日っていつ?」
「誕生日?」



終わってないよね、まだきてないよねっ?



「12月24日」
「……っ、クリスマスイブじゃんっ」



ロマンチックすぎる!

萌える誕生日!羨ましい!



「なんでそんな喜んでるんですか、理解不能」
「だって素敵じゃんっ。萌えるしっ」
「また意味のわからんことを……」



でもよかったあ

まだ誕生日終わってなくてっ



「先輩は7月15日でしょう?」
「……へ?」



びっくり、正解

私言ったことないはずなのに…

なんでそんな胸きゅんなこと、



「本当、人殺し…」
「やめて、聞こえが悪いです」



人殺し、いや、くるみ殺しだなこれは

「言うんじゃなかった」と照れた表情をする奏太くん

可愛いすぎます。






418: 名前:HARU☆03/22(火) 19:43:02

「私の方が誕生日早いってことは数ヶ月間は2歳差になっちゃうね」
「大丈夫です。中身は俺の方が5つくらい上なんで」



げしっ、と奏太くんに軽く足蹴りをする

失礼しちゃうなっ



「15日って終業式で半日授業だし俺も部活ないんで、……一緒にいますか?」
「っいる!超いる!約束!」
「くはっ、慌てすぎ」



口に手をあてて、吹き出し笑いをする

いるよいますよ!奏太くんといつもよりたくさんいれるんだもん!



「一応参考に聞きますけど欲しい物は?」
「奏太くんっ」
「…変に聞こえるからやめて下さい」



照れた顔で私の額にでこぴんをする



「ま、考えときます」



自分でやった額を優しく撫でてくれる

こういうとこ、本当好き



「プレゼントなんていらないよ?一緒にいてくれればいいっていうか」
「…はいはい。でもプレゼントは必ず渡します」
「いいのにー」



奏太くんがいてくれれば、充分なのになあ






419: 名前:HARU☆03/22(火) 20:05:54

くるみと別れた後に教室に戻ろうとする奏太を階段で呼び止める女の子



「北條くん…!」



階段を上っていた足を止めて、振り向く

同じ色のネクタイ、一年生

でも見たことのない顔



「えっと…、」
「あ、7組の伊藤春菜っていいます…っ」
「…どうも」



軽くぺこりと頭を下げる

長い黒髪の綺麗な女の子



「あのっ、もうすぐ夏休みだね…っ」
「?う、うん」



急になんだ?
全然意味がわからない

控え目な喋り方のせいか話しづらく感じてしまう



「あの…、何…?」
「なっ、夏休みに北條くんといたいなって…っ」



恥ずかしそうに顔を隠す

えっと、つまり…



「好き……、です」



まじですか?




423: 名前:HARU☆03/22(火) 20:19:22

「えーっと…、俺伊藤さんのこと知らないし、伊藤さんと接点ないっていうか…」

「いつも部活姿見てるの…」



いや、それは伊藤さんが一方的にで、俺は知らないっていうか…



「ひゃーっ、言っちゃった…っ」



この人、掴めなくて…困る

言い方悪いけど一人で盛り上がってるみたいで



「もしっ、よかったら…その、付き合ってくれたら…」
「ごめん。彼女いるから…」



伊藤さんの言葉を遮ってそう言うと、動きが止まる

もう一度謝ろうとすると、



「……っぐす」
「へ?」



ぽろぽろと涙を零して泣き始めた

な、なんで!?



「い、伊藤さんっ?」
「私が可愛くないから…っ、ぐす…っ」
「あぁ、もう、そうじゃなくて!」



この状態を誰かに見られる前になんとかしなくちゃ…!

急いで手を握り、旧校舎に引っ張って連れて行く



「手…、嬉しい…っ」



な、なんなのこの子!




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最終更新:2011年05月22日 08:21
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