萌えます。年下男子 続き17

462: 名前:HARU☆03/26(土) 18:46:42




天気快晴、夏休み前最後の学校



「くるみちゃん誕生日おめでとう!」



相沢くるみ、17歳の誕生日

登校中、学校に近くなるにつれて祝福の言葉やプレゼントを送る男子生徒達

一人で、団体で、と数々の人がくるみにプレゼントを渡す



「あ、ありがとう」



既に両手いっぱい

嬉しいけど朝から荷物多すぎて、困る……


教室に入ると机の上にもいくつかプレゼントが積まれている

お供え物されてるみたいだ…



「ほい、紙袋」



私の頭の上にポスッと置く



「のり、ありがと」
「いいえ。で、これは私から」



そう言うと可愛くラッピングされた袋を渡す

手荷物を机の上に置き、のりがくれた袋を開けると
可愛いデザインをしたいくつかの髪留めが入っていた



「ありがとーっ、大事にする!てか今つける!」
「よかった」



後ろ髪をとって右サイドに緩くお団子をつくり、
編まれた小花が飾りについているゴムで髪を留める

鏡で確認をして更に嬉しくなる



「似合ってんじゃん」
「本当っ?ありがとっ」



他のものも毎日つけるからね、ありがと






463: 名前:HARU☆03/26(土) 19:10:32

今のところ貰ったプレゼントをまとめると丁度紙袋一つ分になった



「さすがに去年は越えない、か。奏太くんの影響だな」



のりが笑って言うが、私の顔が暗くなったのか真顔になる



「もしかして、…仲直りできなかった?」
「…わかんない」
「はあ?わかんないって何?」



わかんないんだもん

俺が悪かった、ってそう言ったけど私は何も言えなかったし

それに、あんな顔させてあんなふうに怒らせて…、仲直りなんて言えないよ



「今日、一緒にいるんだろ?」
「学校終わったらって、約束はしてたけど……」



具体的に何かを決めたわけじゃないし、正直どうなるかわかんない

こんな時でも伊藤さんって子は奏太くんの近くにいるのかな…


のりはふう、とため息をついて頭をぽんぽんとしてくれる



「奏太くんがくるみの誕生日ほっとくわけないでしょ。自信持ちな。
それに年に一度の誕生日なんだ、笑って過ごさなきゃ損するだろ?」
「うん…、ありがとね」



優しく言葉をかけてくれるのり

せっかくだもん、笑わなくちゃね



「ふわぁっ、間に合ったあっ」
「満里奈っ」



チャイムが鳴るぎりぎりに飛び込みで満里奈が登校する

そして手に提げている紙袋を「はいっ」と渡してくれる



「お、いい匂い」
「のりにじゃないんだからねー」
「わかってるっつの」



中身はすごくいい匂いの林檎ケーキ

お菓子作りに限らず料理全般得意な満里奈は
いつも私やのりの誕生日には手作りケーキをくれる



「ラッピングに時間かかって、セーフっ」
「ありがとーっ、家族で頂きますっ」



やっぱり友達がくれるものって特別だよね

私、幸せだあ


終業式も終え、夏休み課題の確認や注意事項、クラスHRも順々に終えていく

気付けばプレゼントをまとめた紙袋は二つになっていた






464: 名前:HARU☆03/26(土) 19:52:03

「で、どうすんの」



夏休み前最後の授業も全て終わり、もうすぐ12時

お腹すいたなー、…ではなくて



「ちょっ、二人とも顔近いっ」



周りは夏休みの予定を立てたりしながら下校していく

本来なら私もそうしたいんだけど、…けど



「このままただ待ってんの?奏太くんから来るの」
「……来ないかもしんない。伊藤さんといるかもしんないし…」



二人に朝した伊藤さんの話

「そんなぽっと出に負けていいわけ?」とかいろいろ言われる



「くるみが告白されるとか今更じゃん。てか本人もそれは重々承知でしょ?」
「問題はそこじゃないだろ。隠していたつもりじゃなかったことが
他人のせいで奏太くんに伝わって、結果"隠してた"になってしまったことだろ?」

「そうだけど…。でも、そんなこと関係ないよ」



告白したとかされたとか、隠した隠してないとか関係ない

例えそれが最初の原因でも



「傷つけたことに変わりはないから」



そう言って二人に弱々しく笑う


正直奏太くんが怖かった、あんなふうに怒るなんて

でもそうさせたのは私だから、もう一度話さなくちゃ謝らなくちゃ



「うん…、やっぱ私から会ってくるっ」



ぐっ、と意気込み決意を固める



「いっておいで。連絡忘れないでよ?」
「夏休みの計画も忘れんなよ」



二人に約束の返事をして教室を飛び出る






465: 名前:HARU☆03/26(土) 20:13:16

真っ先に教室に行ったけど奏太くんはいなかった

鞄があったからまだ校内にはいるみたい



「あ……っ」



窓から見える花壇に伊藤さんがいるのが見えた

一瞬悩んだが階段を降りて伊藤さんのもとに向かう



「―――相沢先輩?」



花壇に着くと伊藤さんがこっちに気付き、先に名前を呼ぶ

走って乱れた呼吸を整えながら、目を合わせる



「何、してるの?」
「お花とお話してたんですっ。明日から夏休みだねーって」



お話しって…、本当危ない子…!

引く気持ちを抑えながら本題に移る



「…伊藤さんに聞きたいことあるんだけど」
「ちょうどよかった、私も言いたいことあるんです」



にこっと笑って、スカートをはらいながら下ろしていた腰を上げる



「北條くんは私を選んだの」



――――――………え




467: 名前:HARU☆03/26(土) 20:32:22

動揺、



「また…、伊藤さんの妄想でしょ」
「他の男にも良い顔するあんな女、お断りって」
「違う!奏太くんはそんなこと言わない!」



言わない、言わない、言わない……っ

ぎゅっと拳を握る



「隠し事する人、自惚れて笑顔振りまくような人、……大嫌いって」
「い、言わないもん!」
「自惚れんのも大概にして下さい。自分が一番わかってるんでしょう?」



伊藤さんの言葉は嘘なのに、胸に痛く刺さる

…ううん、嘘だって思いたいだけ

奏太くんを傷つけたことに変わりはないんだから…



「北條くんの腕の中は温かくてね」
「やめて…」
「触れる手が心地よくて」
「やめて…っ」
「私を呼ぶ声も愛しくて」
「……っやめてよ!」



「大好き、ってキスをくれたんです」



―――思考が止まりそうになる

聞きたくない、聞き間違いかもしれない言葉



「もう北條くんの彼女は私なんですよ?」



信じたい、信じたいけど

今の奏太くんと私の状況じゃ何が真実かわからない

伊藤さんの言葉が痛く頭に響く



「北條奏太は春菜のものなんです。先輩はもう彼女でもなんでもありません…よ?」




471: 名前:HARU☆03/26(土) 21:53:46

「―――くるみ先輩?」



その声にはっとして瞑っていた目を開くと、伊藤さんの後ろに人影



「か、なたく……」



小さく力なく呟く

探していた奏太くんが目の前にいるのに、上手に呼べない



「―――……っ!」



その場から逃げ出した

泣きそうなのを堪えて



「くるみ先輩!?」



くるみが逃げ出す前に一瞬間があった

弱く泣きそうなくるみの顔を目の当たりにして、奏太の動きが鈍ったのだ

すぐにくるみを追おうとするが、傍にいた春菜に目をやる



「何か言ったの…、あの人に」
「何も言ってないよ?」



にこにこと笑う春菜

「正直に言って」という奏太に対して「何も?」と春菜は答え続ける



―――ガンッ!

大きく鈍い音を立てて奏太が校舎の壁を殴り付ける

春菜は驚き目を丸くする



「―――あの人に、何言ったの」



空気が凍る




481: 名前:HARU☆03/27(日) 15:55:23

強く鋭い瞳が春菜に突き刺さる

春菜は顔を少し引きつらせて、渋々口を開く



「し、真実を言っただけだもん…っ」
「真実?」
「北條くんは…、私のだって……っひゃ!」



奏太はもう一度壁を強く叩く

ビクッと身体を跳ねらせ、春菜は目を瞑る



「そんなの伊藤さんの妄想。くるみ先輩だってわかってるはず」
「なっ、なによ!あの先輩に隠し事されて北條くんだって怒ってたじゃん!」



冷たい目を逸らさずに春菜に向ける

それに耐えきれなくなったのか「言えばいいんでしょ!」と自爆する



「北條くんに抱きしめられた、好きって言われたって言ったの!
彼女はもうあんたじゃないって言われたって…、キスしてくれたって!」

「本気で言ってんの……?」

「本気よ!だってあんな子が彼女なんてムカつくもん認めたくないもん!
それに今の二人の状況からしたら北條くんはあの子を捨てて私の方に来る!
あんなわがままな子は放って大好きな私を彼女にしてくれるはずだもん!」



荒く奏太に叫ぶ



「どうせ今だって別の男の人の所に行ってるはず!泣き縋って同情を得て」



春菜の言葉を遮るように、今度は春菜の顔近くの壁を殴り付ける




「――――――次、あの人にそんなこと言ったら殺すよ」




その表情は春菜が想像する奏太の表情ではなかった

「殺す」という言葉がいかに本気か、刺さるように伝わってくる






482: 名前:HARU☆03/27(日) 16:11:15

壁にぶつけた拳を離す

春菜は驚きと恐怖を隠せずに口をぱくぱくするも、何も言葉が出ない

そんな春菜を放って奏太は足をくるみの向かった方向へ進めようとする



「……ま、待って!」



春菜が離れた距離から声を振り絞る

奏太は背を向けたまま足を止める



「な、んで……、あの先輩がいいの…っ。人気者だから……っ?」



「お願い、それだけ聞かせて」と小さく訴える

奏太は優しく笑い、



「好きだから」



と、ただそれだけ言って足を進め始めた

春菜は力の抜けたようにその場にへなへなと崩れ、座り落ちる


奏太は歩く足を速め、校内でくるみを探し始める

校舎の中には見当たらないため、一度校舎周りを探す



「………………、」



旧校舎裏の古びた階段に座っている、小さな影が見えた






483: 名前:HARU☆03/27(日) 16:22:38

階段の二段目に縮こまるように膝を曲げて、顔を完全に伏せている少女



「見つけた………」



奏太がそう呟いても返事はない

涙をすする音しか聞こえなかった



「くるみ先輩…、帰りますよ…」



夏風が髪を揺らす



「ねぇ…、聞いてます…?」



ぴくりとも動かないくるみ



「―――…っくるみ先輩!」



そう強めに呼ぶとくるみの両腕を掴み、無理矢理顔を曝させる

細く白い肌の腕をどけると、泣き腫らしたぐしゃぐしゃな顔が目に映る



「……や、だ…っ、…離して……!」



目を瞑り涙を零すくるみ

必死に奏太の腕を振り払おうと藻掻くが、それさえも力が感じられない


―――脆い女の子

自分のせいだ、と奏太は胸を痛める




485: 名前:HARU☆03/27(日) 18:20:40

何も言葉が出てこない

聞きたいことはたくさんあるのに


ごめんね、泣いて
伊藤さんの言ってたことは本当?
信じていいの?
それとも私はもう彼女じゃない?

―――奏太くんは私をどう思ってるの?


聞きたいのに、答えが欲しいのにできない

問い掛ける勇気がないの



「…誕生日、おめでとう」

「……え」



今の状況からの意外な言葉に顔を上げる

奏太くんの顔を見ると優しく笑っていた



「ちゃんとプレゼント用意してるんだから、…泣きやんで下さい。ね?」
「な、んで…優しいの…っ?」
「え?」

「―――っ私奏太くん傷つけるようなことして…っ、私のこと嫌いになって…」
「嫌いになんかなってない」



その言葉を聞いても素直に受け止めることができない

自分の嫌気に胸の中がもやもやする



「くるみ先輩」



名前を呼ぶから顔を再び上げると、奏太くんの顔が近づいて唇が重なろうとする



「……っい、や!」



目をぎゅっと瞑り、奏太くんを拒んだ




487: 名前:HARU☆03/27(日) 18:54:58

目の前を自分の手で覆った

触れそうな唇を拒んだ



「くるみ先輩……?」
「だ、だって伊藤さんと…キス、したかもだし…」
「してません」
「……で、も……っ」



あぁ、情けない

信じることもできない、奏太くんの言葉に頷くこともできない



「してないって言ったらしてない。…何で疑うの?」
「…疑ってるつもりは…っ、でも…やっぱりって思っちゃって…」
「"でも"とかいらない。信じて」
「………っ、」



頷けない

「くるみ先輩」と奏太くんが強めに呼ぶ



「か、奏太くんには私の気持ちわかんないよ…!だってどう考えても
私達の雰囲気悪くなったのは元はと言えば私のせいなんだし…!」
「なんでそこまで遡るの!?今はもうそんなことどうでもいいじゃん!」
「どうでもよくないよ!私が…っ、どれだけ悩んだか知らないでしょ!?」
「知らないよ!俺はくるみ先輩じゃないもん!」



こんなことが言いたいんじゃないのにたまっていた想いが奏太くんにぶつかる

素直に「ごめんね」って言いたいだけなのに



「キスでもなんでもしたんならもうそれでいいから…!もういいから!」
「いいわけないっての!」
「な、んで…!私がもういいって言って―――…んっ」



私の言葉を塞ぐように唇も塞ぐ






488: 名前:HARU☆03/27(日) 20:17:19

半ば強引に、「それ以上言わないで」と言うかのように

奏太くんが私の心に踏み込んでくる



「ちょっ…、ん…やっ」



甘いくせにとろけそうになるくせに、言葉を伝える隙間もない荒いキス

胸をどんどんと叩いても、後ろへ逃げようとしても適わない

いつだってそう

奏太くんは私を逃がしてはくれない



「奏、太く……っ…んぅ」



あのね苦しいの、奏太くんを想うことが

幸せばかりじゃないし、私達は普通の人達より多くの壁にぶつかってる

良かれ悪かれ、喧嘩やすれ違いも多くて時々嫌んなるの


奏太くんと出会う前の私は何事も楽観的で、泣いたりなんてしなかった

出会って、幸せと同じくらい辛くて


…でもね、

嫌いになんてなれないの



「―――…ちゃんと話を聞いて…?」



息荒く唇が離れると奏太くんは至近距離のまま私を見つめてそう言う

続けて「お願いします」と少し弱々しく言い、額をこつんとあてる

こんな私を見てくれて、ちゃんと真正面からきてくれる奏太くんが嬉しかった

ぎゅ…っ、と奏太くんの服を掴んで「うん」と小さく返事をした


嫌いになんてなれない

だって、…苦しいほど好きなんだもん






489: 名前:HARU☆03/27(日) 21:47:28

奏太くんも隣に座り、手と手を繋ぐ

こてん、と奏太くんに寄り添う



「落ち着きました?」
「うん…」
「…よかった」



優しい声がする



「本当に伊藤さんとは何もないし、何も言ってません。
もし俺が嘘ついてたら顔面グーで殴り飛ばしてもいいですから」
「……わ、かった」



「信じて下さいよ」と、奏太くんは一応念押しをする

くすっ、と「わかったってば」と笑う

不思議とさっきより落ち着いてるし、言葉が胸にすーっと入ってくる



「それよりも前の、喧嘩の原因。…あれは俺が悪かったです」



先に奏太くんが「ごめんなさい」と言った

「違う!」と、奏太くんに目を合わせて私も伝える



「私が…っ、言わなかったから…」
「確かにくるみ先輩が誰かに想いを告げられるたびに言ってたら
きりがないのは本当、わかってるんです。…ただの嫉妬、やきもちだから」



そう言ってくれるけど違う

奏太くんがそんな顔しないで…?



「どこか甘えてたんだよ、私。奏太くんなら言わなくても大丈夫…って。
でも伊藤さんが奏太くんに付きまとってるなんて知らなくて
なんで相談してくれなかったんだろう…、言うほどのことじゃないのかな…って」
「それは…っ、…俺の問題だから巻き込みたくなかったし
…迷惑かけたくなかったからそのままにしておこうって、思って…」



ようやくわかったよ

私達お互い同じこと考えてて、すれ違ってたんだ

言葉を上手く交わせなくて、勝手に相手の気持ちを解釈していて

……まだまだ、だね






490: 名前:HARU☆03/27(日) 22:18:36

急に深いため息をついて頭をぐしゃぐしゃとし始める奏太くん



「ど、どうしたの?」
「や…、自分小さいなー…と」



顔に手をあてて、またため息をつく

小さいって…、性格とか?



「完全に嫉妬です、本当。挙げ句の果てには逆ギレして、……情けねぇ」
「わ、私だってやきもちやくよっ?」
「いや、俺のは異常な嫉妬です」



「本当にごめんなさい」と謝る

なんでそんなに謝るの?

だって…、それって



「私のこと好きだから…、でしょ…?」
「……まぁ、ね」



恥ずかしそうに返事をする

なんで私に信じさせる時には甘い言葉も強引なキスもするのに
こうやって普通に話してると一言一言を少し恥ずかしそうに言うんだろう

…でもそんなところがすごく好き、可愛いって思うよ?


奏太くんの顔を覗き込むと、ちゅっと音をたてたキスをされる

べっ、と舌を出して「隙がありすぎ」と言われる



「萌え男子め…っ」
「はいはい」



奏太くんは腰を起こし、繋いだ手ごと私も起こす



「じゃ、めでたく17歳になったわけだし、お祝いしますか」



と、奏太くんは私の手を引く



「うんっ」



ねぇ、奏太くんがいるだけで幸せだよ?



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最終更新:2011年07月16日 15:25
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