2: 名前:冷夏☆08/28(土) 11:55:44
プロローグ
目が覚めたら暗闇に存在していた。
声が、出ない。
身体が、動かない。
微かな音。
誰かが、泣き叫んでいる。
誰?
ココから出して?
怖いよ。
お願い。
「死なないで! お願い! 目を覚まして!」
ア……。
次は、ハッキリと聞こえてくる。
誰?
誰なの?
そして、その言葉は、誰に言っているの?
不安で、押しつぶされる。
泣きたい。
なのに、涙が出ない。
……そうか。
今、私は身体が無いんだ。
アレ?
『私』
って誰?
気づいたら、何もかもが分からない。
『心』
だけが有るんだ。
身体も記憶もない私。
どうなるの?
「手はつくしましたが……残念です」
「嫌ぁぁ!」
―……!
ア……これは、光?
眩しい。
気づけば、身体が有った。
けど、透けてる。
ズキンッ―……
頭が、割れそう。
あれ?
あそこで泣いている人は誰?
―あれは、お前の親だ―
頭に直接入ってくる言葉。
『親』
―お前は、死んだんだ―
―ズキン……
まただ。
また痛い。
その瞬間、次は真っ白い場所についた。
「ここは、どこ?」
ア……。
声が出る。
身体も、透けてない。
けど、背中が痒い。
「こっちへ来なさい」
あれ?
さっきの声?
3: 名前:冷夏☆08/28(土) 17:04:35
私は、声のする方へ向かった。
真っ白だった世界に、ちっぽけな人影が。
私は、その声の人物を見て驚いた。
黒い羽根。
全身真っ黒。
フードで、顔は隠している。
そして、片手には本。
見るからに、
『死神』
だ。
「お前は、前世の記憶が無いな?」
前世?
アレ?
そう言えば、ここに来る前に……
『お前は、死んだんだ』
って、言ってたよね?
私は、死んだの?
なんで?
「お前は、自らの命を自らで絶ったな?」
自らの命を自らで絶った……。
つまり、それは
『自殺』
「自殺した人間は、記憶は消え……、死神になるのだ」
私は、自殺したの?
何で?
「死神になり、記憶を取り戻せば新たな魂に変われる。
自殺してしまったら、その魂は、朽ち果てる。
別に、死神にならなくても良い。
ただ、お前は2度と生き返れない。
消滅する」
私は、消滅と言う言葉が恐ろしくなった。
私は、自殺した理由が知りたい。
……。
死神になろう。
シュッ―……
鏡が、私の前に立ちふさがった。
私の背中に、小さい黒い羽根が……。
「死神の証だ。 それと、人間リスト、鎌だ」
私は、受け取った。
「人間界に行き、お前は担当地域を担当する。
お前の担当地域は、日本だ」
『日本』
聞いたこと有る……。
そうか、私が住んでいた所だ。
「あぁ。 言い忘れてた。
私は、シダ・ジョンソンだ。
そして……お前は、アスカだ」
『アスカ』
「その名は、お前が人間界に属していた時の名だ」
そうなんだ。
全く分からない。
5: 名前:未来☆08/28(土) 19:42:36
名前かえました。
―――――――――――――――――――――――――――
「お前の地区を担当するリーダーは、シュリだ。
リーダーの言う事は絶対だ。
移動は、テレポートだ」
「て、テレポートって!」
「簡単だ。 ただ行きたい場所の名前を頭で唱えたら着くさ」
ホントかな?
「お前は、リストに乗っている人物を生かすか殺すか……それを判断して仕事をしろ」
私が、人の生死を定めるの?
9: 名前:未来☆08/29(日) 20:27:58
第01話 初仕事
私は、人間界へと降りてきた。
あの後、基本的な事を学んだ。
正直、実感が無い。
何の実感と聞かれると応えられない。
自殺、死神、摩訶不思議な世界にいた事。
私は、とある薬を貰った。
これを飲めば、人間になれるそうだ。
相手は、大城 晃さん。
まだ高校生の女子。
事故にあったらしい。
私は、まず晃さんの元へ行った。
私は、壁をすり抜けて、晃さんがいる病室へ向かった。
「うぅ! 何で?
神様ぁ!
ヒドイよ!」」
事故にあった事がそんなに悲しいんだ。
晃さんは、写真を見つめながら泣いていた。
誰なんだろ。
気になる。
胸が、高鳴る。
―……けど、やめておこう。
いくら晃さんに見えないからと言って……見るのは……。
それに、仕事には関係の無い事。
「!」
顔を上げた、晃さんが私の姿を見て驚いた。
そういえば、仕事相手には見えるって。
ただ、あっちがこちらに心を通わせなきゃ無理。
つまり、難しい事。
「明日花!?」
私?
なんで、名前を分かるの?
「もしかして、天使になったの?
それで、私を迎えに来たの?」
この人、私を知ってる。
そして、私もこの人の事、知ってる。
ズキ―……ズキ―……
胸が、痛い。
「晃さん」
「何で? 明日花。 さん付けなの?」
ズキ―……ズキ―……
この人に、名前を呼ばれる度胸が苦しい。
「私は、天使では無いの。
こんな黒い羽根に、黒い服はどう考えてても死神でしょ?」
「死神なの? 明日花は?」
お願い。
名前を呼ばないで。
1人にかけて良い時間は、2日。
それが、守れないのならば……、その人は死ぬ。
10: 名前:未来☆08/29(日) 20:34:03
「明日花……、会いたかったの。
自殺なんて!」
晃さんは、泣きじゃくる。
でも、何も思い出せない。
記憶を取り戻すって難しい。
「ねえ。 晃さん……」
駄目だ。
聞けない。
15: 名前:未来☆08/30(月) 18:15:12
もしも、晃さんにとって……私が嫌な存在だったのなら?
思いだして、悲しませるのなら……。
「明日花……、私。 ゴメンね。
明日花の事、裏切っちゃったね」
晃さんは、涙を流していた。
悔しそうな顔で。
「グス……そう言えばえね。
ついさっきまで、この写真を見てたの」
笑顔で話しかける晃さんは本当に天使のようだ。
私は、写真に目を向ける。
そこに、写っていたのは……肩を組む、私と晃さん……。
「覚えてる? 私と晃が同高に入れてめちゃくちゃ喜んでた写真だよ。
けど……、こんな事になるなら……不合格だったらよかった」
私は、この人をこんなにいなくなって悲しんでもらえる存在だったんだね。
けど、記憶は無い。
思いだしたい。
早く生まれ変わりたい……。
けど、それと同時に失うモノが有る。
16: 名前:未来☆08/31(火) 20:33:58
なんで、自殺なんかしたんだろ。
不思議でたまらない。
けど、記憶がよみがえれば……納得できるのかな?
バタン―……
えっ?
晃さん……?
急に倒れた晃さんを起こそうとするが……手が透ける。
悔しい。
「晃さん!」
……そうだ!
人間になれる薬。
飲むしかない。
……パクッ……ゴクッ!
苦い、けど……我慢。
私は、コールを鳴らした……。
早く来て……。
アレ?
涙が、止まらない。
この人の事……忘れてるはずなのに……。
「どうしました!?」
医者と、看護師が来た。
「あ。 あき。 晃さんが……倒れたんです」
人間になって、喋るって難しい。
苦しい。
なんでだろ?
人間じゃないから?
感覚が、掴めない。
「なんで、寝させていなかったんですか!
もう……助からないかもしれない確率から手術して……。
安静にしていれば、助かったかもしれないのに!」
え?
そんなに、酷かったの?
私は、涙を流しながら病室を出た。
17: 名前:未来☆08/31(火) 20:43:26
そして、死神に戻る時間は、2時間。
まだ、時間ある。
けど、決めた。
私は、晃さんを……手にかける。
私は、死神にすぐ戻れる薬を飲んだ。
一応、貰っておいてよかった。
……パクッ……ゴクッ……
私は、鎌を手に持った。
私のせいだ。
ならせめて……楽にする。
私は、重病患者室に入っていく晃さんに言った。
「有り難う」
ズキ……ズキ……
頭に直接入ってくる。
『晃ー』
『同高に入れたね。 明日花』
そこで、途切れた。
これが、私達?
けど、少し頭が軽くなった。
ゴメンね。
晃さん。
やっぱり……手には掛けれない……。
私は、リストにペンで
『生存可』
と書いた。
これで、次の時誰が来るか……。
また、私だったたら……どうしよう。
けど、これで……。
晃さんは、生きられる。
これから、もっともっと楽しい人生を送ってね……。
19: 名前:未来☆09/01(水) 19:49:19
凰仙花様
ですよね……。
どちらも頑張ります!
―――――――――――――――――――――――――――
第02話 「切なき想い」
私は、晃さんとの記憶はほんのちょっぴりしか思い出せなかったけど……新たな仕事をすることにした。
次のターゲットは百白 香 (ももしろ かおる)
次は、二十歳の女性。
結核らしい。
日に日に身体は弱っているのに……心はなおさら強くなっているようだ。
私は、前と同じように壁をすり抜けた。
確かにここだ。
私は、ベットで寝ている人の顔を見た。
綺麗な顔立ち。
白い肌。
綺麗なロングの黒髪。
花は高い。
顔は、小顔……けど……泣き後が残っている。
何がそんなに辛いのだろうか。
何がそんなに悲しいのだろうか。
『人』で無い私は分かりはしない問題。
私は、香さんの手をすり抜けない様に触れた。
感触など有るわけがないだろう。
けど、何処からか……熱が伝わってくる。
空っぽで、冷たい私に中身をくれて……熱を分けてくれるように……温かい。
「あら……。 神様? 私も……光一の元へ連れて行ってくれるの?」
そう言い……また瞳を閉じる香さん。
光一と言うのは……、大切な人の名だろうか?
20: 名前:未来☆09/02(木) 20:38:49
「私は、神でも……死神だ」
そう一言いうと、彼女は、瞳を開き悲しそうな顔をした。
「光一は、貴方にやられたの?」
私は、首を横に振るだけにした。
あまり話しすぎても悲しむだけだ……。
「お前は、私が見えると言う事は……私と心を通わせた。
死神と心を通わせるなど……死にたいというものだ」
私は、冷たい口調で話す。
『死神』らしくいるために……。
絶対に……仕事で泣かない……。
「……ねぇ……。 死にたいの……。
自殺でも、しようかな?
あ。 そうすると……貴方の仕事取っちゃう」
自殺……。
この人、心の中では……生きたいって思ってる。
強がっているだけ……。
何かに脅えるように……。
21: 名前:未来☆09/02(木) 21:53:32
これが、自殺をしたがる人間なんだ。
私も、こうだったんだ。
けど……。
この人と私は関係していたの?
そこまで、世界は狭いの?
考えても考えても時間だけが消えていく。
「あのね……死神さん。
死神さんは、好きな人いた?」
好きな人……
『あの……森先輩! 前から……好きでした』
『あ……、悪いけど……、オレ。 彼女いるし』
そうだ。
人間だった頃……。
私は雨の中、森って人にフラれたんだ。
それで、自殺?
前は、頭が軽くなったのに今回は重くなっていく。
謎が、増えただけだ。
「死神さん?」
「私は、記憶が無い。
けど、今のお前の言葉でほんの少し、よみがえった。
私は、好きな人にふられたみたいだ」
彼女は、俯いた。
ア……。
きっと失礼な事聞いたと思っているんだ。
「フ……」
フ?
泣いているの?
笑っているの?
「フはははははは。 死神って、前世有るんだ~。
ばかばかしい。
まだ、死ぬかっての!
光一が、浮気するから……ナイフで喉を切り裂いてやったの」
人……殺し?
22: 名前:未来☆09/03(金) 18:13:27
何で?
愛してたんでしょ?
「でね? ここで、貴方にお願い」
お願い?
「まぁ。
まだ、心の奥深くから死にたいって、
訳じゃないけど……。
折角、彼をあんな醜い女のいない場所へ連れてってあげたの。
今度は、貴方が私を彼の元へ連れて行ってよ」
あぁ。
そうか……。
さっき、何かに脅えていたのは……、光一さんにだ。
愛していたのに。
ホントは、殺したくなかったのに、身体が勝手に動いて。
そして、光一さんに嫌われると思ってたんだ。
それで、強がって。
24: 名前:未来☆09/04(土) 18:48:06
ちう様
あげ有り難うございます><
さてさて、どうなる事か……。
―――――――――――――――――――――――――――
「それは……出来ない。
お前が、この世に来て悔いが無いように死なせる」
きっと、内心それを願っているはず。
お節介かもしれない。
けど……。
これは、私の願いだ。
意味もなく死んでほしく無い。
「何でよ! 折角!
彼を殺したのに!」
香さんは、拳で自分の足を殴る。
どんどん……と。
「それじゃぁ、私のしたことは無駄だったの?」
静かに、瞳から涙を流す香さんは……とても純粋な人に見えた。
「お願い!
さっき言った
『まだ、死ぬか』
なんて、嘘!
だから、彼の元へ連れて行ってよ。
なんなら自殺でもしてやる!」
私は、ゆっくりとほほ笑む。
「自殺したら、私の様になる……。
それじゃぁ、彼の元へは行けない。
そして、私は貴方を殺さない。
死んで、彼と会えるなんて無理」
25: 名前:未来☆09/05(日) 10:48:53
私は、香さんの手を透けないように握った。
もちろん掴めいない。
けど、私と香さんの手の狭間に何かが有る気がした。
「ゴメンなさい。 光一……。
生まれ変わったらもっと、幸せに生きて」
私は、喉が熱くなった。
私は知った。
死神でも、感情を持てること。
死神でも、涙を流せること。
そして、疑問ができた。
なぜ、光一と言う人を担当した死神は光一さんをしとめたの?
不思議でたまらない。
涙を私は、必死にこらえた。
喉が熱くて、苦しくても我慢した。
「死神さん、私間違ってた。
光一を殺して良い事なんて無かった。
私、死神さんが残してくれたこの『生命』大切にする。
だから、病気治して、自主するね」
「うん」
私は、そう言ったら病室を抜けた。
その瞬間、こらえていた涙を制御できなかった。
沢山の雫が頬を通る。
私は、涙でぼやける目を使いながら
リストに生存可と記録した。
26: 名前:未来☆09/05(日) 14:38:57
第03話 「迷い」
「貴方。 そんなんで、死神をやって行けるとでも?」
目の前には、黒いロングヘア。
黒い瞳。
そして、黒い服に……黒い羽根の女の人が立っていた。
「アスカ……さん」
ズキ
この人に名前を呼ばれると何かが反応する。
「貴方は、誰?」
「あら? 自己紹介していなかったかしら?」
私は静かにコクコクッと頷いた。
「私は、この国の死神のリーダー。
ま、まだなりたてだけどね」
27: 名前:未来☆09/05(日) 21:47:26
リーダーって事は……、シュリさん?
「名前は、知っていた様ね。
私は、貴方よりほんの2日早く死神になったの」
2日!?
それだけで……リーダーに?
「あのね。 死神の偉さは成績だけでは駄目なの。
死んだ時の悔いの大きさ。
大きければ大きい程偉いわ。
つまり貴方は悔いなく死んだの。
死神にはふさわしく無いわ。
そして、貴方の事教えてあげる。
私達は、同じ時に飛び降りたの。
けど、私の方は手遅れだった。
けど、貴方は助かったの」
ズキ、ズキ
頭が激しく揺れる。
『ッコノ! 死ぬならお前だけで死ね!』
『嫌だ! 道連れにしてやる!
そして、私と同じ苦痛を味あわせる』
モノクロの記憶。
映っていたのは私とシュリさんだった。
そしていた場所は、崖。
「これ以上は言えないわよ。
私も知らないから」
28: 名前:未来☆09/06(月) 20:29:02
※ミス
27
の
9行目
つまりです。
―――――――――――――――――――――――――――
この事から言える。
『絶対』という確率で。
私とシュリさんは、仲が悪かったんだろう。
29: 名前:未来☆09/06(月) 20:45:30
※またミス
28
文無いですね、すみません。
―――――――――――――――――――――――――――
私達は、あの場所で死んだの。
「私は、仕事に戻るわよ」
そう言い、シュリさんは去った。
私は、目の前が暗くなった。
あれ?
ここは、死神になる前に通った道?
―いいか。 お前は、まだまだ力が弱い。
死神は、人の命を奪い、エキスにして喰らう。
エキスは、他の死神から貰う事は出来ない。
自分で、奪った分しか喰らえない。
お前みたいに、人の命を奪わなくて、消滅した死神は何人
もいるんだ。
いいな?
殺さなければ未来は無い―
その瞬間、元の場所にいた。
命のエキス?
私は、死神は食わずとも生きていけると思っていた。
けど、違うんだ。
人の命を私が喰らう。
残酷だ。
死神と言うモノは。
私は、次の人の元へ行った。
前回等とは違い、次は、遠い街だ。
私は、ゆっくりと浮いた。
まだ、浮くのは難しい。
飛ぶのは、泳ぐ感覚なのに、浮く感覚は、ジャンプとは全く違う。
ほわって感じで浮くの。
そして、屋根よりちょっと上を飛ぶ。
風を感じる。
けど、勿論通り抜ける。
でも、この感覚が好き。
私は、天気が良い良い空を下りた。
道をちょっと歩きたい。
人間に近づきたい。
皆、私の姿は見えない。
どこからか聞こえた。
「空を飛べたら」
と。
私もそう思った事が有るのだろうか。
学校から、
「ファイトー」
「頑張れー」
などの声援が聞こえる。
こうしてみると、私も薬を飲めば人間だ。
なんで、人になりたいのに使わないのかな。
自分が不思議だ。
30: 名前:未来☆09/07(火) 18:23:56
少しずつ前へ、進む。
一歩一歩。
気づいたら隣町に着いていた。
そして、萩原 勝一(はぎわら まさいち)さんの居る病院へ入った。
部屋は、1階だった。
病室に入るとおじいさんがいた。
今年で、120歳を迎えるそうだ。
31: 名前:未来☆09/07(火) 19:37:12
ずっと外を見つめている。
今回は、心は通じないようだ。
死神が訪れるのは私で、4回目。
そうとう、生かされているのだろう。
きっと皆歳を取るたび長生きしてねとか、すごいね、おめでとうを繰り返すのだろう。
けど、勝一さんの心の中では、生きていてもしょうがないそう思っているはずだ。
そうやって120年近く生きているカラダは何を味わっているのか。
この薬臭い病室。
苦い薬。
今日も死ぬかもしれない、誰かが死んだかもしれない世界。
そんな、苦しくて怖いだけの世界、居ない方がマシだったのかもしれない……。
なんて思わない人は逆に凄いのかもしれない。
せめて、心が通じれば生きたいのか聞けたのに。
そう思うしかない。
「もしもなぁ。 この世に生まれんかったらワシは、どうなっておったかなぁ。
神様には、感謝だが、そろそろ潮時でもいいんだけどなぁ。
神様、わしをバー様のところに行かせてくれへんかぁ」
微かな声で話す勝一さん。
そうだ!
私は、人間になる薬を飲んだ。
「おじいさん」
一言かけた。
ベットで管につながったまま寝ながら外を見つめていた勝一さんが、こちらをゆっくりと向く。
個室に、勝一と私だけ。
なのに、やたら機械音がする。
色々な機械が勝一さんにつながっていた。
「おや、おや。 可愛いお譲ちゃんだ。
ワシにどんな……様かね?」
やっと聞き取れる声。
必死に生きていることが分かる。
私が鎌を振りかざさなければ……勝一さんはこのまま。
けど、簡単にそんなこと出来ない。
勝一さんのように心が綺麗な人が死んで、汚い人間が生きるなんて嫌だ!
「おじいさん、1人なの?」
「アぁ……、何年間1人かなぁ。
バー様も、子供も先に行きおって。
孫まで。
今は、この管や薬、機械だけじゃ」
そう言い、上を見た。
「そっか。 今年で、120なんでしょ」
「やけに詳しいのぉ」
「前まで、ここに入院してて看護師の人が話していたの」
必死に言い訳する。
32: 名前:未来☆09/07(火) 19:54:31
「皆は、すごいすごいいうだが、わしゃぁ、死にたくてのぉ。
しかし、神様が下さったこの命大切にせんとなぁ」
「そっか、私行くね」
そう言い残し、私は屋上へ向かった。
そして、戻る薬を飲んだ。
その瞬間涙があふれだした。
あの人は、良い人だ。
さっきから私に見えていた。
幸せのオーラが。
死神は、一応神だからそう言うのは見える。
生きたくなくても生きているからだを憎んだりせず、必死に生き抜こうとしていた。
だから、決めた。
あの人の命、頂く。
私は、鎌を取りだした。
そして、勝一さんの部屋へ向かった。
そして、寝ていた勝一さんに、
「来世は、幸せになれるよ」
といい、鎌を振り落とす。
ガシャ……
胸から、白いものが抜けた。
そして、私の手の平にとった。
それを、小瓶に入れた。
そうすると、小瓶の中でエキスになっていった。
ピーという機械音が部屋に響く。
私は、勝一さんを殺したんだ。
これが、死神になって始めて命を奪った日だった。
リストには、生存不可と書いた。
33: 名前:未来☆09/07(火) 19:58:24
第04話 「いじめ」
結局、記憶は手に入らなかったが他の何かが手にはいった。
けど、他の何かが手に入った。
私は、次の人の元へ行く前に屋上で一休みした。
私は、適当な屋上に入る。
見えないし……。
35: 名前:未来☆09/08(水) 17:40:33
私は、ふぅっと溜息をついた。
「きゃはははは」
どこからか、頭が痛くなるようなかん高い声が聞こえた。
「佐藤、馬鹿じゃんね~」
この光景。
見たくない。
知ってる。
この光景。
けど、カラダが動かない。
「佐々木さん。 謝ってくれるんでしょ?」
「うん。 ココから、飛び降りたらね」
やめて。
お願い。
見たくない。
動け、カラダ。
この光景は、とても残酷だ。
嫌だ嫌だ。
これは、『イジメ』だ。
お願い。
「そんな、無茶だよ」
「無茶ぁ? アンタ、生意気」
36: 名前:未来☆09/08(水) 19:26:33
この頃……、私はまだ予想もつかなかった。
あんなことが、起きるなど。
「やめて。 やめて」
私は、言うが聞こえるはずもない。
佐々木という少女が、佐藤と言う少女にカッターを突き付ける。
お願い、傷つけないで。
どうすれば、彼女は助かる?
なんで、彼女じゃなくて、佐々木という少女が生きる?
佐々木が、死ねばいい。
そうだ。
私は、鎌を手に取った。
そして、迷いもなく佐々木に向けた。
……バタン
佐々木は、死んだ。
あれ?
リストに載っていない人間を殺すとどうなる?
目の前が真っ暗になった。
37: 名前:未来☆09/08(水) 20:19:16
ここは、ドコ?
始めの頃のような、不安が私を襲う。
その瞬間、眩しくて仕方なかった。
「おはよぉ!」
目の前に、女の子が立っていた。
「晃さん?」
「もぉ。 どうしたの!?」
もしかして、これは、過去?
「あはは……。 なんでもないよ?」
それらしく、いつも通りのフリをした。
「学校、生きたく……無いね」
「うん。 そうだね。 晃」
さんは、付けない。
ばれたら駄目。
何故かそう思っていた。
38: 名前:未来☆09/09(木) 17:23:46
私達は、校門を通る。
2人共、重い足取りで。
晃さん、嫌な事でもあるのかな?
そう思いつつ、明日花という名前を探す。
すると、1番下に、白川 明日花というのがあった。
ココだろう。
そう思い、ロッカーを開けた。
……ビチビチ!
まだ、生きている魚が出てきた。
上靴を見ると、悪臭は漂い、濡れている。
気持ち悪い。
「だ。 大丈夫!?」
晃さんが、近寄ってきた。
その時、どこからか、声が聞こえた。
「あぁれぇ? 晃ぁ。
まだ、そいつと仲良く友達ごっこしてんの?
心の中では、嫌なんでしょ?
こっち側にきなよ」
……シュリサン?
「あ……。 お願い!
見逃して!
ゴメンなさい!」
「だったらとっとと失せろ!」
シュリさんの叫び声とともに、晃さんも消えた。
もしかして……イジメ?
最終更新:2011年05月23日 17:41