leave 続き6

144: 名前:浅葱☆10/01(金) 22:22:32

恥ずかしさを隠そうとしている津田がなんだか可愛くて、思わず笑みが零れる。


「お仕置きしよっかなぁ」
「えっやだ」
「じゃあキスして」


なんだその交換条件。
あれか、理不尽ってこういうことを言うのか。


心の中で一人で解決しても、今置かれている状況は何ら変わらなかった。
目の前には口角を上げて意地悪な顔を向ける津田が居て、それにイラつきながらも津田を拒否できない私が居る。


そして考える。
――お仕置きか、キスか。
選ぶならキスだろう。
お仕置きなんてなにをされるか堪ったものではない。


「……わ、分かった。じゃあ、目、閉じて」
「ん」


津田が目を閉じ、無防備な顔を私に向ける。
肩に手を置き、さっきから五月蝿いくらいに高鳴る心臓を抑え込み、恐る恐る顔を近付ける。


そして、僅かに二人の唇が重なった。


軽く唇を押しつけただけのキス。
私にはそれが精一杯だった。


直ぐに離そうとしたが、そうはいかず、後頭部を掴まれ、更に深いキスをされる。


お湯の熱さと、湯気と、息苦しさで逆上せそう……――。
って、本当にクラクラしてきた……。
私の様子がおかしいことに気付いたのだろう、津田が唇を離し、私の名前を数回呼んだ――気がした。
徐々に意識が遠のいて行く。
そこからぱたっと私の意識は無くなった。




150: 名前:浅葱☆10/06(水) 20:05:28

次に目が覚めたとき、私はリビングのソファーに寝かされていた。
良く見たらいつの間にか服を着ていた。
津田が着せてくれたのだろうか。
身体を起こして、津田の姿を捜す。


「津田? 居ないの?」


立ち上がって、廊下に出る。


「津田?」


部屋かな?
階段を上がって恐る恐る津田の部屋の扉を開く。
やはりいない。


「……津田、何処?」


急に孤独感が襲う。
迷子になった時と同じ。


すると何処からか物音が聞こえた。
1階?


「津田っ?」


階段を駆け降りる。
人の後ろ姿。


「津田……」


安心した顔を浮かべる私の声で、彼は振り向いた。
……あれ?
津田じゃ、ない……?
津田よりずっと背も高いし、それに――年上?


「……誰?」


目の前の男が不審そうな眼で私を見つめ、そう言った。






151: 名前:浅葱☆10/06(水) 20:18:28

綺麗な顔立ちをした男に私が見惚れていたことに気付き、ハッとした。
急いで自分の身分を示そうとする。


「わ、私は、津田の……」


そこで、言葉が途切れた。
“彼女”
そう言おうと思ったのに、言えなかった。
その言葉が出なかった。


どうしてだろう、お互い両想いだと再確認した筈なのに、何を迷うことがあるのだろう。
私は津田の彼女じゃない。


私が黙っていると、男は「ふぅん」と言って、さらに質問した。


「なんで此処に居んの?」
「えっと……」


逆に私が聞きたい。
貴方は誰で、どうして此処に居るのか。


「まぁ、いいや」


男が私の方へ近づき、お姫様だっこした。


「えっ、え!?」


ソファに私を下ろす。
男は私の上に跨り、焦る私など無視して随分と楽しそうな表情を浮かべていた。


そして衝撃の一言を口にした。


「一回ヤっとく?」


…………は?






152: 名前:浅葱☆10/08(金) 18:53:16

突然のことに頭がついていかなかった。
一体どういう考え方をしたらそうなった?


「な、何言って」
「名前なんて言うの?」
「……み、三島」
「下の名前」
「う、憂、です」
「憂ちゃんね。可愛い名前だね」


にっこり微笑み、私が来ていたぶかぶかのTシャツを脱がし始めた。


「ちょ、ちょっと! 何して……っ」
「だからヤるんでしょ?」
「私っ了承してません!!」
「いいじゃん。俺、今凄い気分良いんだよね」


いやいやいや、貴方の気分なんか知りませんよ。


私の抵抗も虚しく、Tシャツを下着が見えるくらいまで上げられ、ホックを外された。
そういえば、私下着も着けられてる。
これも津田が……?
恥ずかしくなったが、呑気に考えてもいられない状況。
ヤバい、これ、流されてる。


「だだだ駄目ですって!!」
「恥ずかしがってんの? かわいーね」
「ひゃっぁ」


胸の突起を舐められた。
津田以外にこんなことされているという恥ずかしさでもう泣きそうだった。


「感度イイね」
「ん、ゃっあ!」


集中的にそこを弄られる。
すると男の手が下へ伸びた。
これ以上は駄目……っ


「やっ津田、津田……!!」


半泣きで津田の助けを求める。
津田は居ないというのに。






153: 名前:浅葱☆10/08(金) 19:17:17

「……んの、馬鹿兄貴っ!!!」


叫び声と、ゴッという音。
……ゴッという、音?


目の前を見ると、私に跨っていた男が頭を抱えて床に転がっていた。


「えっ、だだ大丈夫ですか!?」


一体何が起こったのだろう。
そういえばさっき津田の声が聞こえたような……。
確か津田が、


「馬鹿兄貴!! 何してんだよ!」


そう、こんな風に兄貴って……。


「って、津田!?」
「憂、っ悪い! ちょっとコンビニ行ってたら、まさか兄貴が帰ってきてるなんて」


兄貴?
……ってことは?


「津田のお兄さん!?」


男が起き上がり、私に手を振る。


「そう。津田直昭。あーそれにしてもいってぇなぁ……」
「当たり前だろーが。俺の大事な彼女に手出して」


“彼女”
私が言うのを躊躇った言葉を、津田は呆気なく口にした。
心が途端に温かくなって、それがじんわりと身体中に広がり、分散するように消えていった。


ただ純粋に、嬉しかった。




157: 名前:浅葱☆10/09(土) 19:31:45

「へー彼女なんだ……てっきり千昭の遊び相手かと思ったのに、彼女なんて珍しいこともあるもんだな。道理で“印”がついてるわけだ」


“印”?
頭にはてなマークが浮かんだ。
一体、何のことだろう……。


「もう一発殴ってもいいんだけど」


津田の言葉に怖くなったのか、お兄さんが居間を出て行こうとしていた。


「まーまた来るわ。じゃあね、憂ちゃん。可愛かったよ。千昭、あんまり束縛すんじゃねぇぞ?」


満面の笑みを浮かべて出て行った。
嵐が通り過ぎたかのようだ……。


「大丈夫か?」
「あ、うん。私は全然」


寧ろお兄さんの方が心配なのだが。


「でも、触られたろ。何処触られた?」
「あ、えと、胸……」


すると、私の手を退かせ、Tシャツとブラを脱がされた。
突然のことに一瞬頭がついていかなかった。
抵抗する隙など与えられず、津田が胸全体に触れ、突起に吸いつく。


「んんっ、あ」
「消毒」


下に手を伸ばし、下着越しに秘部に触れた。


「ちょ、そこは触られてないって……!」


ズボンもパンツも脱がされ、足の間に顔を埋められた。


「や、っ駄目……!」






158: 名前:浅葱☆10/09(土) 19:59:37

ぺロ、と舐められる。
その瞬間、ビクッと身体がすぐさま反応した。
ざらざらとした舌独特の感触がリアルに伝わってくる。


「津田、そんなとこ……っ、んあぁっ」


すると津田は舌の愛撫を止め、ズボンのベルトを外し始めた。


「わり、なんか我慢できなくなった、っ」


大きくなったそれを宛がい、ゆっくりと沈めて行く。


「あ……っ」


全て入りきり、ピストン運動を始めた。


「ひゃ、あっあぁ、っ……!」


リビングに、私の喘ぎ声が響く。
未だ昼間だというのに、こんなことをしているという羞恥。
窓から誰かが見ていたら、とか、もし誰かが訪問してきたら、というスリル感が一層私をドキドキさせた。


「あ、もっ、んんぁあっ!」
「……っく」


リビングに響く、2人の荒い息遣い。
行為を終えて第一声、私は不満の声を口にした。


「……朝、からなにすんの」
「あー悪い。ってかお前が悪い」
「なっ、なんで私の所為になるの!?」
「お前がエロい声出すからだ、馬鹿」


私の頭を小突く。
また馬鹿って言った!!
ついでに「逆上せてんじゃねぇよ」と吐き捨てるように言った。


津田がティッシュを持ってきて、私のお腹の精液を拭く。
そのとき、「悪かったな」という言葉が聞こえたような気がした。


自然に顔が笑顔になった。




163: 名前:浅葱☆10/12(火) 19:48:20

服を着て、津田が買ってきてくれた朝ご飯(昼ご飯?)を食べ始めた。


「……ねぇ、津田?」


私が話し掛けると、津田は丁度二口目のパンを口に入れようとしているところだった。
「あ?」と聞き返して、パンを頬張る。


「なんで津田はこんな広い家に一人暮らしなの?」
「なんでって、一緒に住んでる人がいないから」


口をもごもごと動かしながらそう言った。


それは見れば分かりますよ。
心の中で一人ツッコミ。


「お兄さんと一緒に暮らさないの?」


津田とは違う種類の、チョコが多めのパンを一口大に千切りながらそう問うた。
千切ったパンを口に運ぶ。
甘さが口全体に広がって行く。


「兄貴はずっと前に家を出てったからな」


それじゃあ、


「……ご両親は?」


私が恐る恐る訊くと、津田は一瞬だけ目を見開いて驚きを露わにした。


「知らね、どっかで2人で幸せに暮らしてんじゃねぇの?」


私が何も言わずにじっと津田を見つめると、津田は私が何を言いたいのか察したようで、「分かったよ」と言って、ポツリポツリと説明し始めた。


「兄貴が卒業して、家を出て行ってから俺らはちゃんと3人で暮らしてたんだ。
でも俺が高校に入った時、もう子供じゃないんだから1人でも生きていけるだろって言って、2人で家を出て行った。
多分今は海外のどっかにいるだろ。
……別に寂しいとか思ったことなんかねぇし、寧ろ今では1人の方が気楽だ」


私を見て、「これで満足か?」と言って来た。
素直に頷く。






164: 名前:浅葱☆10/12(火) 20:13:09

急に後ろめたい気持ちになる。
津田のため、なんて言って、実は津田を傷付けていたんじゃないの?
津田は本当は寂しくて、私はそれに追い打ちをかけるようなことをしたんじゃないの?


拳をギュッと握りしめ、生唾を飲み込む。
そうだ、私は言わなければ。
ちゃんと津田に説明しなければ。
何もなかったことには出来ない。
蓮君が居たという現実をなかったことにしちゃいけない。


「……津田、私も、津田に言わなきゃいけないことがあるの」


津田からの返事は無い。
聞く、という意思表示だろうか?


「私、ね……「良いよ、無理して言わなくていい」


津田が私の言葉を遮った。
頭を掻きながら、少し面倒そうな。
――そう、無愛想な態度。
だけど私知ってるんですよ?
津田が本当は凄く優しい人で、凄く私のことを想ってくれてるって。
その態度だってそうでしょう?


「……有難う、津田。でも私、津田に聞いて欲しい。知ってほしい」


私の覚悟を受け取ったのか、ただ一言、「分かった」と言った。


それから話し始めた。
小さい頃、蓮君を事故に遭わせてしまったこと。
それによって記憶を無くしてしまったこと。
それを思い出して1人だけ幸せに生きることに罪悪感を感じて、津田を傷付けてしまったこと。
でも、周りに背中を押されて、漸く津田の大切さに気付けたこと――……。






165: 名前:浅葱☆10/12(火) 20:25:20

「私、好き。津田のこと好き。本当に好きなの。津田のことも周りのことも傷付けて、最低だって思う。
だけど、もう我慢したくなくて、自分の気持ちに素直に生きたくて。
信じて欲しいの……津田のことが本当に好「分かった!」


椅子のガタッという音と同時に津田が立ち上がった。
私の方へ来て、私を抱きしめる。


「分かったから、もう泣くな」
「泣いてないよ」


津田が勘違いをしていると思い、取り敢えず否定。
どういう表情を作って良いのか分からず、へらへらと笑ってみた。


「泣いてんだろーが馬鹿」


またしてもそう言った津田。
目を擦ってみても、涙はつかない。


当たり前だ、私は泣いてない。
津田は何を言っているのだろう?


「お前の言いたいことは分かったから、泣くな……」
「泣いて……ない、よ?」


思った以上に、掠れた声。
それと同時に視界が滲んで行く。
それを合図に、涙が、止めどなく溢れた。
抑えきれなかった。


「俺の方こそ、追い詰めるみたいなことして、ごめん」


津田がより一層強く抱きしめた。
もう、離したくない。離れたくない。
私も応えるように強く抱きしめた。


「好きだよ、憂。愛してる……」


津田の言葉が胸にすとんと落ちてきた。
「私も」そう言おうと思ったのに、叶わなかった。


ただ津田の胸の中でわんわん泣くことしか、出来なかった。




169: 名前:浅葱☆10/16(土) 19:30:16

「落ち着いたか?」


優しい津田の声。
こく、と頷く。


「ねぇ、津田?」
「ん?」
「どうして、あの時朋榎と一緒に居たの?」


津田は一瞬考えて、それから説明し始めた。


「あれは、急に呼ばれて――……




「憂と別れたんだって?」


突拍子のない言葉が、目の前の女の口から飛び出した。
急に呼び出したかと思えばそれかよ。


「そうだけど、何?」


声と、態度で不機嫌さを露わにする。
っていうか、えーっとこいつ、確か憂の友達の――佐伯だっけ?


「憂を振ったの?」


先程から質問ばかり。
詮索か?


「いや、俺が振られた」


苦笑いを浮かべ、佐伯の言葉を否定した。
俺の言葉が意外だったのか、佐伯は信じられないといった顔をした。


「嘘でしょ!? 千昭君が振られるなんて」


そんなに驚くことなのだろうか?
「ホントだって」と笑いながら言った。


「……憂が好き?」
「あんたに言う必要もないだろ」
「私は憂の友達よ!」
「はっ、陰でこそこそ嫌ががらせしてた奴が良く言うよ」



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最終更新:2011年07月10日 16:53
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