有色人種。続き4

120: 名前:みるみる☆04/29(水) 22:44:59
116高坂 陽様 いえいえ、そんなことないです。私くらいの文章だったら日本中の誰でも書けますよw
何度も応援してくださって嬉しいです!
涙もちょちょ切れます(死語

117有加様 元気いっぱいのあげありがとうございます!
そんなこと言っていただけると涙もちょちょ切れ(ry
もっと面白く書けるようになりたいです。

118Linux様 あまり私の小説を快く思われていないようですね。そういえば、あなたはこの板にスレを立ててらっしゃいますよね。そのスレといい、このレスといい、何か悩みでもあるのですか? 私で良かったら聞きますよ。

119夜様 そうなんですか!? 嬉しいです! 書き込みは気軽にして頂ければ良いですよ!
何度もありがとうございます!


「……ごふっ」

咽せるような咳を一つして、小町ちゃんの瞳が薄く開いた。
一瞬だけ、私の心にも安心が戻る。
だが、状況は深刻だ。

一体、どうしてこんな事になっている。
考えろ。
何か、ひっかかる事はなかったか。

赤音さんが、「悪い予感がする」と言っていたことを思い出した。
皮肉にも、それは現実となってしまったのだ。

「小町ちゃんっ、大丈夫?」

誰がどう見ても大丈夫ではなかったが、そう言った。
安心させようとしているのか、小町ちゃんはうっすらと笑った。
唇が引き攣って、綺麗な笑い方ではなかった。

「あ、碧ちゃん。……どうしたんですか?」

それを聞きたいのはこっちだ。

「ねぇ、どうしたの!? 何があったの? はやく、救急と警察を――」

「呼んでどうするんですか?」

小町ちゃんの笑みに自嘲が混じる。

「『colored』の為に国家権力は動きませんよ」

人権なんて、ありませんから。
そう小町ちゃんは付け加えた。


134: 名前:みるみる☆05/11(月) 17:06:09
歯痒い。
国までもが、私達を差別するの?
守ってはくれないの?

しかし、私は喉からこみ上げる悔しさを、奥歯で噛み潰した。
ここで悔しがっているだけでは、状況は何も変わらない。
早く、この状態から抜け出さなくてはならないのだ。

だって、こんな事が出来るのは、この家に住む人だけだから。
2人だけだから。
帰ってきたら、そこで終わりだ。

「逃げよう、小町ちゃん」

「無理ですね」

強い決心と共に小町ちゃんを見つめたが、小町ちゃんは力の抜けた笑顔で首を振った。

「もうすぐ、パン屋から彼が戻ってきます。私に朝食を与えるためです。時間がありません。それに――」

痩せ細った右腕が、ぶらぶらと振られた。
そこには金属の輪が揺れている。
鎖が触れ合って、じゃらじゃらと音を立てた。

言わんとしていることは、誰の目にも明らかだった。

「どうぞ、碧ちゃんだけ帰って下さい」

そんな、と私が言いかけたそのときに、タイミング良くドアの開く音がした。
否、タイミングは悪かったのかも知れない。

慌てて、さっき入ってきたところを振り返る。

現れたのは、茶色の彼だった。

私は、犯人が誰であるか確信した。


137: 名前:みるみる☆05/12(火) 21:15:25
「あ、いらっしゃい」

こんな状況だというのに、琥珀さんはまるで気付いていないような口振りだった。
どうしよう。
もう、逃げられない。

「……なんで」

少しだけ声が震える。
理由は恐怖と、勿論怒り。

「何でこんな事したの? 意味分かんない! ねえ、なんで!?」

一瞬だけ驚いた顔をした琥珀さんは、それからにっこりと笑った。

「それはねぇ、小町が逃げようとしたからだよ。だからちょっとだけ、繋いでおいた」

繋いでおいた?
ふざけるな。

「あなた、小町ちゃんを何だと思っているの!? 少なくともあなただけの所有物じゃない! 犬じゃない、小鳥じゃない、にんげんなんだから!」


140: 名前:みるみる☆05/16(土) 22:08:08
138高坂 陽様 何度もお越し下さって有難うございます! 楽しみだなんて、そんな……;;ペースは亀並みですが、よろしくお願いします!

139藍様 そうなんです、こんな奴なんです。こんな奴、えいっ(プチッ ←
コメント有難うございます!


その言葉を聞いて、琥珀さんは困ったように笑って、「君は何か誤解しているようだね」と言った。

「僕だって、好きでこんな事やってる訳じゃないよ」

じゃあ、仕方なくやったとでも言うのだろうか。
仕方なかったら、やっても良いことなのだろうか。

「どういう事?」

「いや、僕は小町が幸せになるなら何でもしてあげようと思っているんだ。実際そうしてきた。なのに、こいつったら『そんなのは愛じゃない』とか綺麗事を言うんだよ」

「…………」

「だから分からせてあげようと思った。認めさせようと思った。駄目かな?」

相変わらず薄気味悪い笑みを浮かべている琥珀さんに、しばらく喋っていなかった(喋れなかったのかも知れない)小町ちゃんが、口を開いた。

「母親を、」

床に横たわる瞳は、じっとりと茶色の髪を見つめている。

「殺しまでして、まだ、そんなことを言うんですか」

「な、殺しっ……!?」

急に目の前の男が恐ろしくなった。
確信する。
この人は狂っている。
やめろ。
自分の母親を殺して尚、そんな薄笑いを浮かべているのか。
やめろ。
そんな目で私を見るな。
見ないで。


149: 名前:みるみる☆05/31(日) 20:01:28
人物を前にして吐き気がするのは生まれて初めての経験だった。
これが正真正銘の「ムカつく」。

「……なんちゃって、あはっ」

つまらない独り言では、この場の雰囲気は和まなかった。
自分でも笑顔が引き攣っているのが分かる。

琥珀さんは近づいてくる。
私は、いつの間にか床にへなへなと腰を下ろしていて、すぐに逃げるどころか立つことさえできなさそうだった。

「僕は、何か間違ったことをしているかな?」

亜麻色の笑顔は崩れない。
喉がひくついたが、それでも私は精一杯、「ええ」と言った。

「さっきも言ったじゃない。……人間が、人間を束縛する権利はどこにもないの」

「君はなかなか面白いことを言うよね」

琥珀さんは至極つまらなさそうに言う。

「人間は駄目なんでしょ? じゃあ、さっきからの君の発言では、鳥や犬や猫は縛ってもいいんだよね? 人間は駄目なのに、動物はいいんだ?」

「話を逸らさないで」

強気にそう言ってみたが、その言葉は胸に刺さった。
確かにそうだ。
動物も植物も、もちろん人間だって、命の重さは変わらない。
そんなこと、わかりきっているはずなのに。
差別する人たちを憎んでいた私だけど、自分自身が差別をしている――?

「ましてや僕のは差別じゃない、愛情だ。それでも駄目だと、君は言うのかい?」

「…………」

私が何も答えないのを見て、琥珀さんは満足げに笑った。
悔しい。
これは確かに駄目なことなんだ。
それなのに、言葉にすることができない。

「お別れだ、碧ちゃん」

小町ちゃんが「つながれて」いるのを知って。
その犯人が琥珀さんであると知って。
その状況で言われた「お別れ」が、どのような意味を持つかが分からないほど、私は馬鹿ではなかった。

長い指が伸びてくる。
琥珀さんは凶器を持っていない。
でも、女子高校生が、成人間近の男性に力で敵うだろうか。
その指で、その腕で、首を絞められたらどうなるだろうか。

「やっ……助けっ――!」

来ないはずの助けを呼ぶ。
視界の端に、驚愕と絶望の表情を浮かべた小町ちゃんがいる。
腕を掴んだ。
びくともしなかった。

目を閉じることさえ、できなかった。

こんな感情は生涯二度目だ。
もうこの先は味わうこともないだろう。
ああ、もう駄目だ。

ぱーん、とガラスが勢いよく割れる音が聞こえたのは、そのときだった。

目の前の琥珀色が、ゆっくりと前のめりになって。
私の腹と腿に、ずしんと倒れた。

そして、その向こう側に、艶めく赤と、深い青が見えた。


154: 名前:みるみる☆06/01(月) 20:45:48
150高坂 陽様 なんて優しいお言葉っ……!
はい、これからもよろしくお願いします!
えっ、うえおぅっ(号泣

もう、一週間に一度も更新できてないです……。

151茨城まり亜様 そうなんです。そこは私も常々「どうしたもんだろうなぁ」と思っているところです。
なかなか上手く文にできません。あああ。

良かったね琥珀、あんたのことまだ好きっていってくれる人がいたよ←
琥珀の言ってることは微妙に筋が通ってるからみんな困っちゃうんですよね。
彼は幼稚ですw

153沙希様 ありがとうございます!!
更新、かなり遅いです。
すみません……。


首もとまできていた指が、ずるりと滑り落ちた。

「ちょっと赤音、後頭部はまずかったんじゃないの?」

「いーんだよ、このくらい」

赤い彼女――赤音さんはそう言いながら不敵に笑って、握っていたワインの瓶を放り投げた。
もっとも、それは容器が広がるところで粉々に砕けていて、瓶とは形容しがたかったが。

一気に緊張が解けて、目の奥が燃えるように熱くなった。

「どうして、」

「さて、ここで差別について少し話そう」

赤音さんは、私の質問を遮るように言った。

「『差別』と『区別』ってのは、違う意味を持つよな。近いけど全然違う。『区別』ってのは、分け隔てることだ。『差別』ってのは、そこに蔑みが混じってるっていうのかな、まあいいや、そんな感じだ。上手く言葉にできねーけど」

「…………」

「でも、蔑みとかいうのは、感情じゃん。本人がそう思ってるかどうかなんて、本人にしか分からない。だから、『差別』と『区別』』の境界線があやふやなんだ。ここが難しいところなんだと思う。以上」

「つまり、赤音は『さっきの鳥とかの下りは、難しいところだよね』って言いたいんだよ」

蒼太くんが助け船を出してくれた。
小町ちゃんは楽に理解できたようだけど、私にはもう少し時間が必要だ。
本当に、今はそれどころじゃない。

「自分でも途中で何が言いてーのか分かんなくなっちまった。あーあ」

「……怖かったよおおおおお」

両手を差し出すと、赤音さんはお母さんのように抱きしめてくれた。

「よしよし、てかお前泣いてんの? だっせー。鼻水つけんなよ?」

「ううううううううううううううう」

涙が止まらなくて、そんな自分が恥ずかしくて、でもとても嬉しくて。
だから、赤い服に瞼を押しつけて、この感情を抱きしめた。


156: 名前:みるみる☆06/02(火) 21:20:09
155夜様 好きなんて言っていただけると、本当に調子に乗りますよ、私。
すごく嬉しいです!
できるだけ、迷惑かけないように頑張ります

「最初はね、僕らも一緒に会いに行こうかって言う話だったんだよね」

少し落ち着いてきた私に、蒼太くんは話し始めた。

「店の方にいなかったから、こっちかなって。そしたら、中から叫び声が聞こえるもんだから、慌てたよ」

「まったく、ひでー有様だぜ。あとで説明してくれるんだろうな」

何がどうなってんだか、さっぱり分かんねぇ。と、呆れた様子で、赤音さんは言った。

説明しなければならないだろう。
小町ちゃんは辛いだろうけど、ここであったこと全部を話してしまわないと、みんながその傷を庇ってあげられないから。

「さあ、帰ろうか。もう、ここに用はないよね」

「あ、待って」

まだ、小町ちゃんの手首には、手錠が巻き付いている。
鍵は多分、琥珀さんが持っている。
どうしよう。

「うーん」

蒼太くんが、困ったような笑いを浮かべ、鎖をしげしげと眺めた。
そして、その中の一カ所を両手で持ち上げると――


引きちぎった。


唖然。
赤音さんまでもがぽかんと口を開けている。
当然だ。

だって、こんな鉄の鎖が ――



162: 名前:みるみる☆06/10(水) 21:38:43
157高杉郁斗様 お、おおおお男だったんですね!?
すみません、なんかずっと勘違いしてました!
人はHNで判断しちゃいけないってことですね←
蒼太はギャップの多い奴ですw

159夜様 毎回有難うございます! 私がこうやって諦めずに書き続けられるのも夜様のおかげです。
まさに女神ですv

160容子様 度々お越し下さって嬉しい限りです!
ああ、何か本当に嬉しいなぁっ←
ありがとうございます!

161翠雨様 ボカロですね、わかります。
赤と青って言ったら、そのふたりですよね。
青なんて、結構頭から抜けないですw
悩んだんですけど、分かりやすい色で行きたかったので……。
あげ有難うございます!


「こういうのはね、瞬発力と弱いところを見極める力だけなんだよ」

照れたようにはにかんで、蒼太君は説明をしてくれた。
赤音さんの顔には「嘘だ」と油性ペンで書かれていそうなくらいの疑惑の表情が浮かんでいる。
そりゃそうだ。
蒼太君いわく、金属は瞬間的な力に弱いらしい。
スプーンぐらいなら、子どもだって簡単に曲げられるそうだ。

でも、スプーンと鎖じゃ例え話にならない。
だって、変形させるどころか、千切ったよ?

「さあ、帰ろうか」

この上なく妙な空気を流した張本人は、まるで気にする様子もなく、小町ちゃんを抱きかかえた。

「……そうだな、事情も聞かないといけないし」

赤音さんも立ち上がったので、私も腰を浮かした。

「……、待てよ」

足首に、信じられない圧力がかかった。
足下に、人間の手。

「あ、えええ?」

振り返った。
琥珀さんが、目を覚ましていた。
床から少しだけ顔を起こして、こっちを見ていた。

「何、終わらせようとしてるんだ?」

「え、ちょっとっ――」

「返せよ、」

ずるずると、近づいてくる。
足首が、砕けるように痛い。

「それは、僕のだ。返せ」

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2010年05月10日 19:29
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。