有色人種。続き5

165: 名前:みるみる☆06/14(日) 20:56:57
163限様 私の記憶を舐めて貰っちゃあ困りますw
コメントを下さった方はみんな覚えてます(多分←)
そのくらい大切にしたいんです。うふw←
あげありがとうございます!

164せいな様 えひゃああああ←
ありがとうございます!
「すき」って平仮名で表記すると良いですよね。平仮名好きです。
言われるともっと嬉しいですよ!
感謝します!


「いやっ、離してよっ!」

まるで人間を相手にしていないようだ。
ぞく、と背筋が震える。

もたもたするんじゃなかった。
早く、ここから逃げれば良かった。
まさに後悔先に立たず。

どうしよう、蒼太君は小町ちゃんを抱えているし、となると赤音さんしか――

ああ、もう誰でもいいから。

たすけて。

「!」

私の願いが通じたのか、私の足を掴む琥珀さんの手は、青白い手によって引き剥がされた。
青白い手。

小町ちゃんだった。

目の前の、半分狂人になったような琥珀さんでさえ、私と同じ表情をしていたと思う。
動けないはずじゃなかったのか。

小町ちゃんは、ゆっくり琥珀さんの方に向かいなおった。
表情は分からない。

掴んだ手を、優しく包むように握っているのが見えるだけだ。

「琥珀くん」

細いけれど、良く通る声。

「私の方こそ、あなたを縛っていたのかもしれない。ここ数日、あなたを見ていて思ったんです。あなたは、私以外の世界を知らなすぎる。愛情に対して、あまりにも幼稚すぎるんですよ」

誰も、何も喋らない。
小町ちゃんの周りだけ、時間が動いているようだ。

「私が諦めていればそれで良かったのに、私はここから逃げておきながら、あなたを忘れることができなかった。そのときから、あなたは何も変わっていない。もうそろそろ、成長しなくてはならないんです」

だから、と言ってから、小町ちゃんは少し間をおいた。

深く息を吸ってから、また言葉を紡ぎ出す。

「あなたを束縛から解いてあげます。自由になって下さい。そして、世界に溢れるたくさんの愛を、知ってください」

私にだって分かる。
それがどういう意味なのか。

「琥珀くん ――」

できることなら、言わないで欲しい。
今すぐにでも止めたい。
でも、私に止める権利はない。

「きらい」

ずる、と琥珀さんの手首が床に落ちた。


170: 名前:みるみる☆06/24(水) 00:08:33
169夜様 ありがとうございます! 忙しいのに、本当に毎回コメント下さって;;
只今、期末考査からの逃避を謀っております←
書いたら勉強しますから。本当ですよ!?
とか言いながら爆睡……。


石畳の道を、4つのコートが歩いていく。
見ようによっては可愛くも見えるが、頭までフードをすっぽろかぶっているので、怪しい宗教団体にしか見えないだろう。

「いやいや、無事奪還って感じで」

赤音さんが最近見せなかった心から愉快そうな表情を浮かべている。
多分小町ちゃんが戻ってきたのが嬉しいんだろう。
感情と表情が癒着しているかのような現れようだった。

「それにしても、頑張ったねぇ、小町。詳しいことは、まだ分かんないけどさ」

蒼太くんが、自分と同じ色の、朝の晴れやかな空を仰ぎながら言った。

「すっきりしました」

小町ちゃんも、吹っ切れたようで、笑顔でそれに応えた。

そんな表情の小町ちゃんを見て、蒼太君は何を思ったか、両手を前に差し出すポーズを取る。

「?」

「おいで」

言われるままにする小町ちゃん。

「ぎゅう」

抱きしめられた。

「っう、ぇえ!?」

腕の中で猫のようにじたばたする小町ちゃんを腕力で押さえつけて、肩をぽんぽんとたたく。

「よしよし、頑張った頑張った」

何か、愛情表現がアメリカンっていうか……。

「あー! あーあーあー、それはあたしんだ! 返せよ!」

小町ちゃんを引き剥がして自分も抱きしめようとする赤音さん。
おもちゃの取り合いか。


172: 名前:みるみる☆06/28(日) 20:30:02
171夜様 ありがとうございます! また明日からテストです……。4日間の地獄っ;;


その後、蒼太君は小町ちゃんを抱っこして、「あんまり無理すると倒れちゃうよ」と言った。

そう言えば、小町ちゃんはまともに起き上がることもできなかったはずだ。
琥珀さんとの出来事ですっかり忘れていたが、相当無理をしていたようだ。

そんなことを考えながら、お姫様抱っこをしている蒼太君の背中をついていく。

しかし、お姫様抱っこって実はもの凄く腕に負担がかかってるよな……。
小町ちゃんは軽そうだけど。

それからしばらく歩いて、やっといつもの路地に着いた。

なんだか、長い間ここに帰っていなかったような気がする。
ほんの1時間前くらいには、まだここにいたはずなのに。

小町ちゃんは深く眠っていた。

そんな小町ちゃんをゆっくりと寝かせて、私は脱脂粉乳でホットミルクを作ってあげた。
目が覚めたら、飲ませてあげるつもりだ。

赤音さんは、大きなたらいを調達してきた。

「何に使うの? それ」

「へっへっへ、風呂に入ろうぜ、風呂」

そう言って自慢げに笑う赤音さん。
一瞬、どうやって使うのか分からなかった。

「つまりだな、このたらいにお湯はって女3人温泉ごっこするんだよ! うわ、あたしって超冴えてる!」

ええ……。
この浅さで、この狭さで?


175: 名前:みるみる☆07/05(日) 15:12:40
173夜様 テスト終わりました! 長らく更新してなくて申し訳ないです。テストの結果は悲惨でしたが、まあ気にしません←

174容子様 夏休みですか、良いですねー!
7月からってかなり長めですよね。アメリカとかは2ヶ月あるって聞きましたけど。
私は8月から18日間あります。何をしようかなーw


176: 名前:みるみる☆07/05(日) 15:28:11

「このたらいは、流石にないと思う」

「たらいかぁ、洗濯物みたいだね」

蒼太君までもが、赤音さんに突っ込みを入れた。
自信とお手柄自慢に満ちあふれていた赤音さんの表情が引き攣る。
さあ、どうする。

「ふ、ふん」

強がっている。

「じゃあさ、お前等ならどうするんだよ、あん? 風呂に入りたい、だけどバスタブがない、この状況をどう打破するってぇんだい、あ?」

精一杯威張っている。

そんな様子を見ていた蒼太君は、「ふう」と仕方なさそうに溜息をついた。

「普通の思考回路なら、たらいよりも先にドラム缶を思い浮かべそうなものだけどなぁ」

「はっ、ドラム缶じゃ3人いっぺんには入れねーだろうが」

「いや、たらいでも無理だと思う」

思わず突っ込みを入れてしまった。
て言うか、本気で3人いっぺんに入ろうと思っていたのだろうか。
窮地に追い込められた赤音さんは、今度は蒼太君に詰め寄った。

「じゃあ、お前はドラム缶3つ調達できるって言うんだな? 言ったな、おい。仕方無ぇから楽しみに待っといてやんよ。ほら、さっさと行ってきな」

なんだか滅茶苦茶偉そうだった。
そこまでして風呂に入る意味って、なんだろう。


179: 名前:みるみる☆07/16(木) 22:28:40
177高坂 陽様 ありがとうございます! 最近忙しくて、私の文才のなさが露見してますね。いや、最初からですけど;
すみません、もっと頑張ります!

178夜様 ありがとうございます! 本当に更新できなくてすみません……。


今日の出来事をただ見守っていた、ある意味残酷な日の光も、世界を赤く染め上げながら沈んでいった。
壁によって四角く切り取られた空がすっかり蒼闇色になったのを見て、蒼太くんは立ち上がった。

「よし、行こうか」

その言葉を聞いて、赤音さんと私、そして寝ぼけなまこの小町ちゃんもよろよろと立ち上がった。
向かうのは、すぐ近くにある廃棄所。
だって、この路地に3つのドラム缶を運び込むのは流石に無理だから。

羽織った分厚いコートの中に、なぜか高揚した気分がぽこぽこと弾けるようだ。

このコートも、そこに着けば脱ぐことができる。
人目につかない。
夜を選んだのは、そのせいだ。


186: 名前:みるみる☆07/25(土) 16:13:10
185夜様 ありがとうございます。焦らず頑張ります^^


着いたのはそれはそれは荒れ果てた廃棄所だった。
鉄屑、自動車、冷蔵庫、ボートまで、いろんなものが無造作に積み上げられていて、この街の雰囲気とはかけ離れていた。

「まるで世界のゴミ箱ね」

私がそう呟くと、視界の端で赤い髪が揺れた。

「うん、あれもゴミ、これもゴミ。廃棄物同士、仲良くやろうぜ」

そう言って、赤音さんは転がっていた電子レンジを乱暴に蹴った。
横に転がり、コードやら何やら、人間で言えば内臓をさらけ出した状態のそれに、とどめを刺すように赤いハイヒールが振り下ろされる。

「そんな事してないで手伝ってよ」

少し離れたところで蒼太君が呼ぶ。
ドラム缶の3つ目を立てているところだった。

力仕事はできないので、小町ちゃんと2人で石を焼いた。
正確に言うと石は焼けないので、火をおこして石を熱した。
それを、水を張ったドラム缶に投げ入れる。

じゅわじゅわと、花火をバケツに入れる時のような音がして、少しずつ水が温まっていく。
肩が疲れてきた頃になって、ようやく水はお湯に変わった。
赤音さんも満足げだ。

「お疲れ蒼太。あんたはもう帰って良いよ」

「え、僕入れないの?」

「入れるとでも思ってたの?」

うわあ……。
蒼太君におおいに同情した。
まあ、入浴するから仕方ないとも思うけど。

空には一番星が出ている。


192: 名前:みるみる☆08/02(日) 15:03:58

青く寂しそうな背中が去っていくのを見て、私達はコートを脱いだ。
今まで外でコートを脱いだことはなかったので、何だか新鮮。

「ひゃっほう!」

赤音さんが早速ドラム缶にダイブ。
エナメル地のような赤い服は脱がなかった。

「赤音さん、服は?」

「脱ぐわけ無いだろ! みんなも入って入って!」

私は自分の服を見た。
制服なんだけどなぁ……。
プリーツとか、もう結構とれかけなのに完璧駄目になっちゃうじゃん。

そんなことを考えているうちに、小町ちゃんは赤音さんとは対照的に、非常に女性らしい動きで「とぷん」とお湯に浸かった。

「なあ、気持ちいいだろ?」

「はい、服の汚れも取れます」

ああ、そういう考えもあってのことだったのか。
もういいや、制服なんて改造しまくって原型あんまりとどめてなかったし。

ドラム缶に足をつけると、少しぬるめのお湯が私を包み込んだ。

「ぅああー……」

「うわ、碧おっさんみてー」

気分が良いのでここは言い返さなかった。


197: 名前:みるみる☆08/05(水) 13:35:06
気付かないうちに、空には満天の星が輝いていた。
あの四角く切り取られた黒い闇とは別のもののように思われた。
そう言えば、自分の住んでいる街に比べると、ここは極端に車の数が少ない。
この空気の透明度はそのせいかもしれなかった。

「お湯、見て」

赤音さんが言ったので水面を見ると、金箔を散らしたように星がゆらゆら揺れていた。
夜空に自分が包まれている錯覚に陥る。

「う、わぁ……」

「綺麗ですね」

小町ちゃんの声が震えていたので、心配になって横を見た。
水面に、ぽたぽたと涙が散っていた。

「ぎょっ」と効果音が出るほど私は驚いて、狼狽した。

どうしよう。泣いてる人の慰めかたってどうしたらいいの?
自分だったら放っておいて欲しいけど、小町ちゃんがそうとは限らないし。かといって下手に慰めても逆効果かもしれない。
それに、この涙は「お化けが怖い」とか、そんなに安いものじゃないはずだ。

結局どうすることもできずに、私はドラム缶の中で洗濯機のようにぐるぐる回った。
情けない。

「ん?どうかしたのお前、おい、小町」

ぴたり。
洗濯機、一時停止。

なに直球聞いちゃってんの赤音さん!


198: 名前:みるみる☆08/07(金)
「え、何がですか?」

小町ちゃんがとぼけてみせる。
しかし赤音さんには通じない。

「お前、泣いてる?」

「泣いてないです」

「嘘つけ、ぜってー泣いてる」

「泣いてないですってば」

「この夜空に感動したってか。あーやだやだ、この子って本当に純粋なのねぇ。ぴゅあぴゅあの真っ白しろじゃないの。おねーさんは背筋が凍るくらい感激するわよ、企画したあたしに感謝しなさい?」

なにその言葉遣い……。
しかし、指を唇に当てているだけなのに、どうしてそんなに妖艶なんだろう。
爪が赤いのが手伝っているのだろうか。

「違います。ちょっと自分が情けなくなったんです」

小町ちゃんが薄い桜色の唇を尖らせて言った。
泣いたのを間接的に認めてしまっている。

「情けない?」

その問いかけに応えるまで、いくらかかかった。

「自分の我が儘が、あのひとを駄目にしたんです」

そんなことを、小町ちゃんは今朝も言っていた。
小町ちゃんが我が儘なんて、私の我が儘に比べたら零に等しい。
私は、傲慢なお姫様気取りってところだろうか。

「信じて貰えないかもしれませんが、彼は本当はいい人なんですよ? 一途で真っ直ぐで、曲がったことが大嫌い。そんな彼にさよならも言わないで逃げたのは私です。彼は、何年も私を待っていた」

帰ってくると信じて。
他のものなど、目に入らなくて。
自分を、過去に留めたまま。

「私が帰ってきて、どうしていいか分からなかったんだと思います。彼は大事なものを大切にすることさえ分からなかったんです。自分のやっていることが正しいかどうかさえ、彼は分からなかった」

水面の星が、波紋で揺れている。

「私が逃げなかったら、事態は変わっていたかもしれない。さよならを言っていたら、彼の時間は止まらなかったかもしれない。私の体が、こんな風にならなかったら――」

磁器のような白い指が、漆黒の髪の毛をむしり取るかのように引っ張っていた。


202: 名前:みるみる☆08/12(水) 01:01:59
199夜様 もう本当に何回もありがとうございます;
早く夏休みが終わって欲しいです。夏休みの方がきついです……。

200manaka様 200おめでとうございます!
私の中で200は初めてかな?
皆さんのおかげです。冗談じゃなく。


「気にすることないと思うよー?」

突然、この3人では絶対に出せない低い声が響いたかと思うと、小町ちゃんの肩に青い爪の指が巻き付いた。

「っ……!?」

3人とも目を見開いて、絶句した。

嘘、いつからここに?
赤音さんの服を脱がない方針がこんな事で役に立つなんて!

「あのねぇ、小町はちょっと考えすぎ。背負い込みすぎ。そんなことばっかり考えてたら、この髪全部白髪になっちゃうよ? 小町が諦めて琥珀くんと別れたとしても、あいつなら絶対未練たらたらだったと思うし、成長がないのはあいつのせいじゃん」

いきなり説教。

しかし、登場の仕方はともかく、蒼太くんは私の考えていることを見事に言葉に変換してくれた。
語彙って大事。

「あのさぁ、格好良いこと言いたいのは分かるけど、お前の登場に対する突っ込みのタイミング逃しちまったぞ。お前あっち行ってたんじゃないのか、ずっとここにいたのか、ったく、男子禁制なのに」

呆れたように赤音さんが言う。
それに対して蒼太くんは「そこはスルーで」と笑った。

小町ちゃんの涙は、びっくりした拍子に止まったようだ。
それよりも、濡れた服の上に巻き付く腕を、むずがゆそうにしていた。



207: 名前:みるみる☆08/20(木) 00:15:29
204夜様 あげありがとうございます! 読み返してみると何だか文字の羅列で、もう二度と読み返したくはない感じです←
ああ、誰か文才を分けてください……

しばらく来られない間にちょっと荒れちゃったみたいですけど、気にせず行きましょう!


「っぐしゅっ!」

変なくしゃみが出た。
少し風邪気味かもしれない。

というのも、あの後、びしょびしょの服のまま路地に帰ったのだ。
赤音さんはタオルを忘れるという初歩的にして決定的なミスを犯してしまった。
気付かなかった私も悪いのだろうけど、もうちょっと考えて欲しい。

恨めしい目線を赤音さんに送ってみたが、本人は全く気付かない様子で、食料の入っている箱をまさぐっていた。
ばりばりと、プラスチックがこすれる音がする。

「あ、やべえ」

音が止むと共に、赤音さんの少し強ばった声。

「どうしたの?」

「食料がない。パンがない。何もない」

「あー。調達しようかと思ったけど、琥珀くんの家には行けなくなっちゃったからねー。どうしよっかなぁ、ん、んんん」

のんびりした口調だけど、言っていることはとても深刻だ。
そうか。
忘れていたけど、琥珀さんの家以外に、私達を受け入れてくれるお店って、あるのだろうか。



213: 名前:みるみる☆08/26(水) 23:48:51
思い立ったらすぐ行動。
但しやる気がある時のみ。

「そんな私、結構好き」

がば、と隣の赤音さんと小町ちゃんを起こさないように、それでも素早く起き上がった私は、朝の冷たい空気に自賛の言葉を浮かべた。

昨日寝る時から、赤音さんの言っていたことが気になって仕方がなかったのだ。
パンがなければケーキを食べればいいのに。
そんないつぞやのお姫様が言ったことを頭に思い浮かべ、世界は本当に不公平だと思った。

「赤音さん、私行ってくるね」

と、髪を手ぐしで解きながらコートに手を掛けた。
自分も、この人達の為に何かしてあげたい。
赤音さんみたいに大人じゃないし、小町ちゃんのように賢くもないし、蒼太君みたいに力があるわけでもない。
それでも、私ができることならなんだってやる。

「職を探して、三千里」

自分で言って、少しだけ笑った。


216: 名前:みるみる☆08/31(月) 20:21:35
214夜様 まとめますね。何度もあげありがとうございます!


朝の街というのは、静かなのにそわそわしていて、自然と自分も早歩きをしてしまう。
夜の間に星空に冷やされた空気は頬をぴんと張らせる。
そんな私を悠然と眺めるように、朝焼けはレンガ道を照らすのだ。

「さて」

頭の中に何となく詩的な言葉を連ねたが、そう長く現実逃避してはいられない。
なにせ、こちとら4人の胃袋がかかっているのだから。


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最終更新:2010年05月10日 19:30
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