leave 続き10

258: 名前:浅葱☆01/27(木) 20:36:20

「……津田」


右手と左手をギュッと合わせ、津田の少し後を歩く。
さっきから言葉を発しない津田の名前を恐る恐る呼んでみた。


「ん」


怒ってる、のかな。


「ごめん、ね」


取り敢えず謝っておこう。
うん、それが一番良い。


「なんで謝んの。憂は悪くないじゃん」


……尤もだ。


そして静寂。
やっぱり怒ってるじゃん、馬鹿。


「憂」
「は、はィッ」
「……声裏返ってるけど」


だって馬鹿とか言っちゃったからてっきりまた心を読まれたのかと思って。


「俺、さ。今まで誰かを本気で好きになったことなんてなかったと思うんだ」


津田の顔を確認しようにも、夕陽に邪魔をされ、上手く見えなかった。
思わず目を細める。
そして聞いた。
「優奈ちゃんは?」


津田は先程よりも少しだけ寂しそうな顔をしたような気がした。
そして少しだけ弱々しくなった声を発した。


「優奈は、きっと本気じゃなかったんだ。今なら分かる。憂のおかげで気付けた」
「……私の?」


私がそう問うと、津田は此方を見て、「うん」と頷いた。
笑顔、でもどこか寂しそうな表情。


どうして、そんな顔するの?
私の前で寂しそうな顔しないで、私の前で我慢なんかしないでよ。


「俺、憂がホントに本気で好きなんだ。迷いなんて何にもないくらい、はっきり言える。俺は憂が」


津田の言う次の言葉を、私はなんとなく分かっていた。
だけど、どうしてだろうか。
言わせたくなかった。


貴方が言うより先に、先に。


「好……「好きっ!」


私が突然大きな声でそういうもんだから、津田が目を丸くして私を見た。
二人とも同時に足が止まる。


「あ、ご、ごめっ」


反射的に謝る。
そして言い訳を述べた。


「あの、津田がいっつも私のこと好きだって言ってる気がして、津田寂しそうな顔してて、ってか兎!って感じで、
だからあの好きだって言いたくて、割り込みして悪かったけど……っきゃ」


繋いだ手を吸い寄せられ、津田の温もりに包まれた。
そのまま力強く抱き締められる。
身動きが取れなくなってしまうほど。


「……何言ってっか分かんねーよっ、バーカ」


……今、すっごい良い雰囲気だったのに、馬鹿って、馬鹿って……っ!


「馬鹿って言わなくても良いじゃんっ」


顔を上げて、反論する。
何もしないままは悔しかった。


すると津田の顔は優しい顔に戻っていて、口調もとても柔らかくて。
嗚呼、いつもの津田だ――と思った。


「……好きだよ、津田」
「知ってる」


そして自然に唇が繋がった。
私たちはきっと大丈夫だって、そう思えた。




264: 名前:浅葱☆02/04(金) 22:52:23

――あれからというもの、津田先生は普通の“先生”に戻り、私に話し掛けることはなくなった。
いっそのこと何もかも嘘だったのかと錯覚するほどのその普通さに、私は少し戸惑っていたが、暫くするとそれにも慣れた。
津田も津田で身構えていたようだが拍子抜けしてしまったらしい。
兎に角、一件落着……かな?






そんなこんなで学校は冬休みに突入し、本日はクリスマス。
津田と過ごす、初めてのイヴだ。


「津田っ何処行く?」
「や、だから俺人混み嫌いだって何回言わせ「あっ津田、あそこのお店入ろう!」


津田の言葉などシカトして、強引に彼を引っ張って行く。
津田は溜息を吐きながらも渋々私に付き合ってくれた。


色んな店を巡り、イルミネーションを眺め、満足のいく一日を過ごした。
本当に、久し振りに感じた“平和”な日だった。




「あーあ、あと少しで着いちゃう」


帰り道、私の家への道をゆっくり、ゆっくり、出来るだけ時間を掛けて歩く。
楽しかった時間はあっという間に過ぎ去るもので、そしてそれが終わるのはやっぱり何時になっても寂しいと感じるものだ。


自然と会話が減って行く。


「また学校で会えるだろ?」
「そうだけど……」


沈黙が、二人を包む。


「――……あ」


目の前に見えるのは我が家。
もう着いてしまった。


「それ、じゃあ」


寂しさを残したまま、一言だけそう言い、津田に背を向ける。


「――おい、こら」


背後から聞こえる僅かに怒りを含んだ声と、不穏なオーラ。
恐る恐る振り向く。


するとそこには右手をこちらに伸ばし、頬を僅かに赤らめた津田がいた。


「……へ?」
「“へ?”じゃねぇよ。ほら」


そう言って更に腕を私の方へと伸ばして来た。






265: 名前:浅葱☆02/04(金) 23:14:23

手の内を覗きこむと、そこには津田の掌の上でキラキラ輝く指輪が。


「つ、津田、これ」


顔を上げ、津田を見つめる。
津田はやはり顔を赤くして私から目を逸らしたまま一向に此方を見ようとしない。


「ん、やる」


そう言ったにも関わらず何の反応も示さない私に痺れを切らしたらしい津田がとうとうこっちを見た。
視線がぶつかる。


「いらねぇの?」
「えっ、あ、や、あの」


津田の言葉に慌てふためく私。
そして恐る恐る聞いてみた。


「……く、くれるの?」


私がそう聞くと、軽く息を吐き出し、「当たり前だろ」とだけ言った。


手を伸ばし、指輪を受け取る。
津田はずっと腕を伸ばしていた所為で疲れたのだろう、腕をぷらぷらを振っていた。


「有難う、凄く、嬉しい」


顔が緩む。
どうしよう、凄く嬉しい。


「……俺、絶対、何があっても。憂を独りにしねぇから。憂が何て言っても。……“これ”はその誓い」


津田の宣言のような言葉に今度は私が頬を赤く染めた。
なんでそんな言葉を軽々しく言えてしまうのだろう。


そこではた、と気付く。


「あ、でも私、津田に、何にも用意してない……」


ああもう、私の馬鹿。


「いいよ、別に」


大した問題でもないようにさらっと言う津田。
その言葉にホッとした自分が馬鹿だった。


私のおでこに唇を落とし、一言。


「俺へのプレゼントは、憂を貰うから」


は?
ちょっと待て。
さっきの可愛い津田は何処へ行った。


「ははっ可愛い。じゃあね」


そう言って去って行ってしまった。


やっぱり私は津田に振り回されっぱなしだ。
だけど、それも悪くないかな。
……ほんのちょっとだけ、本当にほんの少しだけそう思った。


晴れ晴れとした表情を浮かべながら、私は家族に「ただいま」を告げた。






266: 名前:浅葱☆02/06(日) 19:50:23

そして年も明け、冬休みも明け、先輩たちが卒業し、季節が春に移り変わった。
あんなにあった雪も次第に解け、桜が蕾を見せ始めたころ
――クラス替えが行われ、私たちは見事別々のクラスになった。
そして津田のクラスにちょっとした変化が。
女の転校生がやってきたのだ。




「ったく、マジでうぜぇ」


酷くうんざりした表情でそういう津田は、何処か疲れ果てているよう。


「だ、大丈夫?」


どうやらその転校生が津田に一目惚れしたらしく、毎日のように付き纏ってくるらしい。
それを全力でまいてきた結果がこれ、らしい。


「大丈夫なわけあるか」


そう言って私を引き寄せ、唇にキス。
不意打ちについ顔が赤くなる。


「もう無理もう限界」


そのまま流されるままに押し倒された。
……え!?


「ちょっとっ津田」


肩に置いた手に力を込め、抵抗する。


「お前、なぁ。あれから何回拒否ってんだよ」


そう、クリスマスにあんな約束をしたにも関わらず、私たちは一度もカラダを重ねていない。
私が全力で抵抗、及び拒否している所為だ。


「だ、だだ、だって」
「だって、何?」


「いつもして、たら、かっ価値が減っちゃうじゃん……」


私の言葉を聞いた津田は私の上から退けてくれた。
愛想、つかれちゃったかな。


「いいよ、憂がしたくないってんなら待つから」
「え……」


驚いた。
津田がそんなことを言うなんて。
意外、だと言えば津田は怒るだろうか。
でも嬉しかった。
心の底から沸き立つ想いを口にする。


「あり、がとう」






267: 名前:浅葱☆02/06(日) 20:11:12

そして放課後。
委員会だという津田を待つ間、持て余した時間を埋めるため私は屋上に居た。
生憎、人は一人としていない。
徐々にオレンジ色へと変化して行く空を見上げ、溜息を吐いた。


「何時までも津田に甘えてちゃいけないよね」


独り言が空に消える。


ごろん、と寝そべり、雲が流れる空を見上げた。
陽射しが、気持ち良い――……。




……ん?
なんか突っつかれてる気がする。
恐る恐る目を開くと、目の前に男の顔。
津田、だと思ったがどうやら違った。


そこに居たのは最近は全くと言って良いほど会うことの無かった、津田先生だった。


「っわ」


慌てて飛び起き、全力で津田先生から離れる。


「なっ、ななななんでここにっ」
「いや、それ俺の台詞ね」


面倒臭そうにそう言って煙草に火を灯す。
先生を見つめる。
そこに居るのは紛れも無く“先生”で、私を好きだと言った津田先生じゃなかった。
やっぱりあれは何かの間違いだったんだな、と一人頭の中で解決し、開き直った。


「……って、あれ? 先生って屋上で煙草なんか吸いませんよね?」
「そーだねぇ」
「なんで此処に居るんです?」


二度目の質問。


「逆になんで此処に居るの? 千昭は?」


質問に質問返し。
そう言えばこんなこと前にもあったな。


「委員会です。先生兼お兄さんのくせに御存じないんですか」


取り敢えず皮肉めいた言葉を返してみる。
先生は軽く笑っただけで、特に反論しようとしなかった。
やっぱり、大人、なんだなぁ。


時々、自分が凄く小さいものに思える。
どれだけ背伸びをしてみても私は子供で、どれだけ頑張ったとしてもそんなに早く大人にはなれないから、
私が出来るのはゆっくり今という時を刻むこと。
そう、津田と、限りある時間を過ごしていくこと。


「っていうかさ、良いの?」
「? なにがです?」


主語が抜けている先生の言葉に、頭に疑問符を浮かべた。


「俺と今二人きりなんだけど」






268: 名前:浅葱☆02/06(日) 20:35:35

至極楽しそうな顔の先生。


「こんな誰も来ない屋上でさぁ……」


勿体つけたように言葉を濁す。
そして続けた。
「襲っていいの?」と。


私が何か言葉を発する前に先生に腕を引っ張られ、視界が反転した。
私の目には津田そっくりの整った顔と真っ青な空だけが映っていた。


――……あ、どうしよう、これ、ヤバい。


「先生、なにやって」
「見りゃ分かるでしょ、押し倒してんの」


制服のボタンが一つ一つ外されて行く。


「そしてこれから、俺たちは」


驚きで、抵抗するのが遅れた。
ボタンが全て外れ、先生が私の耳元に軽く息を吹きかけ「セックスすんの」と言った。


「へぇ、指輪ねぇ。あいつもやるじゃん」


私の胸に光るチェーンに通した指輪。
落とさないようにと、それでも何時でも身に付けていられるようにと、こうやってネックレスにしたのだ。
見られた。
何故だろう、この人には見られたくなかった。


「や……っ」と、私が抵抗を見せると先生が私の首元に顔を埋めた。
津田同様、男のくせに無駄にさらさらな髪が頬にかかってくすぐったい。


すると首筋に小さな痛みが生じた。
思わず声が漏れる。


そしてそんな行為が数回。
正直なにをしているのか分からなかった。


「……っん、津田、せんせ……なに、して」


ずっと覆い被さった体勢のまま、津田先生は尚も首元に顔を埋めたままだった。
そろそろ津田の委員会が終わるころだと思うのだが……。


抵抗しようにも力が上手く入らない。
っていうか先生が重くて動かせない。


「もう良いかな」


先生はそう言うと、私の上から起き上がり、ボタンを一通りつけ直してくれた。


いともあっさりと終わるものだから拍子抜けしてしまった。
と、言うか、あの言葉はなんだったんだろう?
てっきり最後までシてしまうものだと思っていたのに。


まぁ、良いか。
多分先生の気が変わったのだろう。
兎に角助かった。


「じゃあね、憂ちゃん」


先生はひらひらと手を振り、屋上を出ていった。


……本当、なんだったんだろう?




272: 名前:浅葱☆02/12(土) 22:18:37

頭に疑問符をいくつも浮かべながら、私も屋上を後にした。
もう津田は戻ってきているだろうか。
そう思って教室に向かうと目の前から見慣れた顔がやってきた。


「憂!」


腕を引っ張られ、引き摺られるように何処かへ連れていかれた。




「あーもう、疲れた」


肩を回しながらそう言う津田。
まぁ、津田が疲れる理由など、大体分かっているが。


「もしかして、転校生の……?」
「あぁ、もうマジでうぜぇ、アイツ」


はは、と苦笑い。


「俺には憂っていうちゃんとした可愛い彼女がいるって言ってんのに」


独り言のように呟いたその言葉に顔を真っ赤にして照れてしまった。
見られないように顔を背ける。


「やっぱさぁ、一回会わせて諦めてもらうし、か」


津田の言葉が、不自然に途切れた。
ん?
と思って、津田の方を見る。


津田は何故か私を凝視したまま固まっていた。


「津田?」


声を掛けても返答なし。
もう一度呼ぶ。
だが返答はない。


肩を揺らしてみようと思い、手を伸ばすと急に腕を引っ張られた。
「わっ」と小さな叫び声を上げて、そのまま倒れ込む。


私は理解できなかった。
突然のことに頭がついて行かなかった。
……私は、どうして今津田に押し倒されているんでしょうか?




275: 名前:浅葱☆02/14(月) 22:25:26

「つ、津田?」


津田の顔が、怖かった。
怒ってる……よね。
なんか睨まれてる感満載だし。
え、でもなんで急に?


「これ、何?」


津田の心の奥底から出したような低い声が、私の身体を震わせた。
首筋辺りを、津田の少し冷たい指がすーっとなぞる。
え、何って、なに?
逆に聞きたい。
何って、何が?


「え、何って、なに?」


純粋な疑問が、思ったままに飛び出した。
私の言葉を聞いた津田が僅かに眉間に皺を寄せたこと――私は見逃さなかった。


「キスマーク」


……キスマークって、キスマーク?
なんか確か前に朋榎が私に見せつけてきた、あれ?
あの赤い痣みたいなやつ?
あれが、なんだって?


「ついてるんだけど、どういうこと?」


思考停止。
というか私の身体の全ての機能が停止した。


え、どうして?
いつ?
なんでそんなものが?


疑問が次々と浮かぶ。
記憶を遡って行く中で、私は思い出した。
そう、ついさっきの出来事。
私の首筋にずっと顔を埋めていた、あの行為。
『もう良いかな』
そう言った、あの言葉。


津田先生、だ。


「つ、津田っあの違うのこれは、!」


ビクッと身体が跳ねた。


「津田……っあ、な、にしてっ」


津田の唇が私の首筋を強く吸った。
その度に身体が反応してしまう。


髪が乱れるのなど気にせずに、必死で抵抗した。
だけど津田は一向に止めようとはしなかった。


「黙って」


ただ一言、そう告げただけだった。


「や、っ」


止むことのないキスの雨。
それでも尚私が抵抗し続けると、津田は鬱陶しそうにネクタイを緩め、私の手首に巻き付けた。
強く縛られて、抵抗さえも出来なくなる。
津田は私が抵抗できなくなり、大人しくなったことに満足したのか、先程までの行為を再開させた。
だがそれだけではなく津田の両手が制服の中に侵入してきて、いとも容易くブラのホックを外してみせた。


そのまま、私の胸を弄り始める。
乳房全体を優しく揉まれたり、胸の先端を摘まれたり、激しく擦られたり、くるくると指でなぞられ、焦らされたり。


「っあ」


こんな僅かな刺激だけで感じてしまう自分が憎らしかった。
声を抑えようとしても漏れてしまう自分が恥ずかしかった。


「これだけで感じるんだ、憂ってば何時の間にこんな淫乱になっちゃったの?」


私を見下して誇らしげにそう言う津田を否定しようにも、漏れ出る声を抑え込もうと必死で首を左右に振ることしか出来なかった。
油断していたら突然津田の右手が秘部に触れ、再び身体が跳ねた。


「うーわ、ぐっちゃぐちゃじゃん」


尚も首筋辺りを啄まれながらそう囁かれる。
顔がもうこれ以上無理ってくらい赤くなって、熱くなって。
恥ずかしさに目を強く瞑った。




276: 名前:浅葱☆02/14(月) 22:49:46

てっきり、そのままナカに侵入してくるものだと思って身構えていたが、そうはならなかった。
津田の手は秘部の周りを撫でるように触ったり、時折秘部を弱く押すくらいだった。
そんな行為に物足りなさを憶え、腰を捩る。


「ん? どうしたの、腰動いてるよ?」
「そ、んなこと……」


咄嗟に否定してしまった。
どうしよう、このパターンは。


「ふーん、違うんだ。じゃあ止めよっか?」


その言葉に、涙目になる私。
そんな私を見て津田は薄ら笑いを浮かべている。


「止めて欲しくないんだろ? 触って欲しいんだろ? なぁ、憂」


津田は恐らく、一種の征服感を覚えていることだろう。
だけど津田が指摘したその言葉は紛れもない事実だった。


「言わなきゃ触ってやんねぇよ? 欲しいなら、ちゃんと“おねだり”しなきゃなぁ」


疼く身体を抑える術を知らず、津田を軽く睨み付ける。
……悔しい。


「……っ、つ、だ」
「なに?」


頗る楽しそうな顔の津田。
ぶん殴ってやりたい。
意を決し、思いっきり目を瞑って私は言った。


「さ、わって、くださ……っあ!」


私が言葉を言い終わる前に、津田の指が勢い良く入り込んできた。
突然のことに、割と大きな声が出てしまった。


「ひゃ、あっ」
「イイだろ? 恥ずかしい思いしたんだから、たっくさん味わえよな」


津田の指が二本、三本と増えて行くのが分かった。
掻き混ぜられ、敏感な箇所を何度も攻められ、私は早くも限界だった。


「っ、あ、んあぁ!」


ただただ喘ぎ続け、そして果てた。
脱力して、絶頂の余韻に浸っていた私に快感は再び襲って来た。


「ああ!」


今までずっと首元に顔を埋めていた津田が、またしても満面の笑みを浮かべて、私を見下していた。
何も言わずにただ黙って自身を挿入する。
津田のそれが入ってくる圧迫感。
未だ慣れない感覚。
私はひたすら快感に顔を歪めていた。


「んっ……あ、あっ」
「は、もっと感じろよ、なぁ?」


そう言って、何度も奥を突いてくる津田。
快感が波のように押し寄せる。
さっきイッた所為で、私は再び絶頂を迎えようとしていた。


「あっ――ぁあっ!」


身体を仰け反らせ、二度目の絶頂。


「何先にイッてんの? 俺未だイッてないから」


止まらない津田の腰の動き。
流石に二度も絶頂を迎え、体力的に大分厳しくなっていた。
にも関わらず津田は容赦なく私に快感を与え続ける。
自由にならない両手がもどかしい。


「あ、あっ……や、あぁ!!」
「っ……イッ、」


三度目の絶頂と共に、津田も絶頂を迎えたようだった。
――終わった。
ホッとして、身体をだらけさせ、息を整えた。
それも束の間。
津田が再び動き始めたのだ。


「えっ……ひぁ、っ」
「未だ休ませてなんてやんねぇよ? 気絶するくらい愛してやっから」
「や、嘘っ……津、田!」


腰を打ち付けて、激しく奥を突き上げる。
気持ち良すぎて、頭がおかしくなりそうだった。


「あッぁ、んぁっ!」


もう助けて欲しい。
本当に限界。
身体が私のものじゃない感覚。
快感は、直ぐ傍に。


「ひ、あ、ったすけ、無、理っあぁあッ!!」


津田のシャツをギュッと握り、大きな嬌声を上げ、私は四度目の絶頂を迎えた。


言葉の通り、私はもう限界だった。
イッた途端に頭が真っ白になって、酷い脱力感と、眠気が同時に襲って来た。
意識を保つことも出来ず、私は気を失った。




280: 名前:浅葱☆02/18(金) 22:37:17

「ん……」


眩しいくらいの光に照らされている気がして、私は目覚めた。
冷静に辺りを見渡して現状を把握する。
どうやら私は保健室のベッドに寝かされていたようだ。


「あら、起きた?」


カーテンから顔を覗かせて私にそう言ったのは保健医の先生だった。


「体調は良い?」
「あ、えと、はい」


そう、と保健医ははにかんだ笑顔を見せた。
そういえば、なんで私は此処に寝かされてるんだっけ?
記憶を辿る。


――そうだ。
確かさっき津田に何回も……。
想像したら顔が熱くなってきた。
両手を頬に当てて、なんとか熱を下げようと試みる。
だが、両手首に見えた赤い痣、それが縛られた痕なのだと気付いて更に顔が熱くなった。


辺りを見渡すとふと目に留まった時計。
時刻は放課後だということを私に明確に告げてくれていた。
成程、どうやら先程の光の原因は窓から漏れる夕陽の所為だったようだ。


「そういえば、三島さんは前にもこうやって保健室に来たことあったわよねぇ」


考えるような仕草。
口角を上げ、見透かすような目で私を見ている。
かと思えば急に何かを思い出したかのように「そうそう」と呟いた。


「その、前に三島さんを運んできてくれた男の子からまた伝言よ。“今日は先に帰ってて”だって」


やっぱり彼氏でしょ?
やはり以前と同じような質問をしてきた保健医。
私は「はい」と、はっきり言った。
はっきり言えた。
私は津田の“彼女”、津田は私の“彼氏”。
もう迷いも無くはっきり言える。




それにしても“先に帰ってて”なんて、一体どうしたんだろう。
何かあったのだろうか。
っていうか、自分の所為で彼女が倒れたってのに“先に帰って”なんてどういう神経してんだ。


はぁ、と大きな溜息を吐いてズキズキと痛む腰を擦りながら家路までの道を歩いた。




286: 名前:浅葱☆02/19(土) 15:29:34

ガシャーンッ!!


「な、なに?」


驚き、音が聞こえた方を見る。
すると、そこは見覚えのある一軒家だった。
此処津田の家!


「あ、空き巣?」


真っ先に考えたことがそれだった。
津田が帰ってきている可能性もあったが、もし、空き巣とかだったら?
今この瞬間にも犯人は津田の家から何かを盗んでいるかもしれない。
そう考えると居ても経っても居られなかった。


恐る恐る玄関に近付く。
私の心臓は、恐怖心でドクンドクンと脈打っていた。
取っ手に手を掛け、捻る。
扉は呆気ないほど容易く自らを開放した。


開いてる。


唇を引き締め、覚悟を決めた。
僅かに開いた扉を自分が通れるくらいに開け、静かに中に入って行った。
緊張しすぎて、腰の痛みなど全然気にならなかった。
出来るだけ物音をたてないように、足音も聞こえないように。
静かに、ゆっくり、ゆっくり。


リビングに近付き、ドアから中の様子を確認した。
何やら声が聞こえる。
誰の声?


「黙ってんじゃねぇよ。答えろ!」


――津田の声、だ。


じゃあさっきの音は空き巣じゃなくて津田がやったの?
あれ?
でも津田、一人じゃ……ない。
誰と一緒に居る。
そして、その人に凄く怒ってる。


暫くそのままそこに居て、中の様子を窺うことにした。






287: 名前:浅葱☆02/19(土) 15:53:45

「なぁ、いつまでそうしてるんだよ」


非難する津田の声。
どうして、こんなに怒ってるの?
誰に対して怒ってるの?


「……はぁ、五月蝿いなぁ」


この声……津田先生の声だ。
じゃあ津田は自分のお兄さんに怒ってるの?
兄弟喧嘩、ってこういうことを言うのかなぁ?
一体何があったか知らないけど、私が介入したら邪魔だよね。
……帰ろう。


「憂ちゃんにキスマーク付けたのは俺だよ。だから、なに?」


自分の名前が出た瞬間、踏み出した一歩を留めた。
津田は私のことで怒ってるの?
私の所為、で?


「だからなに、だと? ふざけてんのか!?」
「ふざけてなんかないよ。もー独占欲強い男は嫌われちゃうよ? 俺言ったよな、“あんまり束縛すんじゃねぇぞ”って」


ガラス張りの扉から中を覗き見ると、ソファーに座りネクタイを緩めリラックスしている津田先生が見えた。
溜息を吐き、面倒臭そうな態度を取っていた。
津田の質問の一つ一つに。


「だからなんだよ。俺は憂の彼氏だ。あいつは俺のもんだ。独占欲云々の問題じゃねぇんだよ」


そんな先生の態度など無視し、本気で怒ってる津田の声に、思わず肩が竦む。
“俺のもの”。
私はものじゃない!
とかツッコむ以前に、津田がそう言ってくれたのが、何故だか嬉しかった。
だけど喜んでも居られない。
怒りに任せて叫ぶ津田を止めなくては。


「はぁ、めんどくさ」


その言葉を聞いた途端、津田が右手を高らかに掲げた。
――駄目だ、殴る。


ドアを勢い良く開けて、衝動に任せて叫んだ。


「津田、駄目……っ!!」






288: 名前:浅葱☆02/19(土) 16:20:57

リビングに響いた私の声。
その瞬間、リビングが静寂に包まれ、二人が同時に私を見た。


「憂?」
「憂ちゃん、なんで此処に」


投げかけられた疑問に、慌てた。
出て行った後のことを考えていなかった。
あぁもう、だからいつも津田に馬鹿だと言われてしまうんだ。


「あ、えと、あの、これはその」


慌てふためき、思いついた言葉を並べてみるものの、言い訳が出てこない。
すると、津田が私の前に立ち、私の手をギュッと握った。


「……お前は、憂に振られたら、諦めるか?」


突拍子もない言葉が、津田の口から飛び出した。
津田先生も突然のその言葉に驚いたようだった。


「そんなことで諦めるわけないだろ? 俺、こう見えて結構本気だから。何もかも中途半端にはやらない主義なの」


「……どうやったら」


静かになったリビングに震える私の声が響いた。
津田という壁を超え、先生に近付く。


「どうやったら諦めてくれますか」


津田先生が本気だってことは伝わった。
目が、本気の目だった。
たまに津田が私に向ける瞳。
それと全く同じものだった。


「私は津田が好きです。これからもずっと。断言できます」


津田も、先生も、一切口を挟まなかった。
否、もしかしたら私が無意識に口を挟まないでという空気を醸し出していたのかもしれない。


「私は、津田以外に恋をする気はありません」


自然と顔が笑顔になった。
笑う所じゃないのに、不思議と。
去年までの私じゃない。
私は変わった、変われた。
津田のお陰で。
迷ったりしない、揺らいだりしない。


私は津田だけを想って、津田だけを愛して、生きて行く。


そしてもう一度口にする。


「どうしたら、諦めてくれますか」






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最終更新:2011年07月13日 05:49
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